火山が山の形をつくるのは、地下から噴き出した溶岩や火山灰、スコリア、軽石などが火口の周囲に積み重なり、噴火を繰り返すたびに地形そのものが成長していくからです。さらに、マグマの粘り気や噴火の激しさによって、噴出物が遠くまで広がるか、火口近くにたまるかが変わるため、平たく広い火山、円すい形の火山、急に盛り上がった溶岩ドームなど、さまざまな形が生まれます。
気象庁は、代表的な火山の形として、平たい楯状火山、円すい形の成層火山、盛り上がった溶岩ドームを挙げ、その違いはマグマの粘性と深く関係すると説明しています。USGSも、火山を「噴出物によってつくられる地形」として扱い、流動性の高い溶岩は広い楯状火山を、粘り気の強い溶岩は急な溶岩ドームをつくるとしています。
ただし、火山の形はマグマの粘り気だけで決まるわけではありません。噴火の回数や噴出量、火口の位置、山体崩壊、カルデラ形成、雨や川による侵食なども重なり、現在見えている山の形になります。
火山は噴出物が積み重なってできる
火山という言葉から、地下のマグマが出てくる「穴」を思い浮かべることがあります。しかし地形としての火山は、その火口から出た物質が地表に積み重なってできた山や丘も含みます。
噴火では、液体の溶岩だけでなく、火山灰、軽石、スコリア、火山岩塊などさまざまな物質が出ます。これらは火口周辺へ落ちたり、斜面を流れ下ったりしながら堆積します。
一回の噴火でつくられる厚さが小さくても、数百回、数千回と活動が繰り返されれば、噴出物の層は厚くなります。山体はこうした長い積み重ねによって成長します。
富士山のような大きな火山も、最初から現在の高さと形をしていたわけではありません。溶岩流や火砕物の噴出、山体崩壊などを繰り返しながら、長い時間をかけて現在の地形へ成長してきました。
マグマの粘り気で溶岩の広がり方が変わる
火山の形を左右する重要な性質の一つが、マグマの粘性、つまり流れにくさです。
粘り気の小さいマグマからできる溶岩はさらさらと流れやすく、火口から遠くまで広がります。一回ごとの溶岩流は比較的薄く広く積み重なるため、山全体は低くなだらかな形になりやすくなります。
反対に、粘り気の大きいマグマは流れにくく、火口の近くにたまりやすくなります。溶岩が遠くまで広がらず、その場で盛り上がると、急な斜面をもつ溶岩ドームができます。
気象庁は、高粘性の溶岩が火口上で盛り上がってできた地形を溶岩ドームと定義しています。雲仙岳の平成新山は、その代表例です。
楯状火山はなぜ平たく広いのか
楯状火山は、横から見ると戦士の盾を伏せたような、広くなだらかな形をしています。
USGSによると、楯状火山は主に流動性の高い溶岩流が何度も重なってつくられます。溶岩が火口付近だけにたまらず、広い範囲へ流れるため、山体の幅が大きくなります。
ハワイのマウナロアなどが代表例です。火山としては非常に大きくても、斜面がゆるやかなため、遠くから見ると巨大な丘のように見えることがあります。
つまり、噴出量が大きいから急な山になるとは限りません。大量の溶岩が遠くまで薄く広がれば、巨大でもなだらかな火山になるのです。
成層火山はなぜ円すい形になりやすいのか
成層火山は、山頂を中心とした円すい形になりやすい火山です。富士山はその代表としてよく知られています。
成層火山では、溶岩流だけでなく、火山灰、スコリア、火山岩塊などの火砕物も繰り返し噴出します。溶岩の層と火砕物の層が何度も重なり、火口を中心に山体が高くなっていきます。
USGSは、成層火山を溶岩流と火山灰、スコリア、岩塊などが重なった大型で比較的急斜面の火山として説明しています。
噴火が主に山頂付近の火口で繰り返されると、中心部ほど噴出物が厚くなりやすいため、全体として円すい形に近づきます。ただし実際には、側火山、谷、崩壊跡などがあるため、完全な左右対称ではありません。
溶岩ドームはなぜ急に盛り上がるのか
溶岩ドームは、粘り気の強い溶岩が火口からあまり遠くへ流れず、その場に押し出されて盛り上がった地形です。
気象庁は、溶岩ドームを「高粘性の溶岩が火口上に盛り上がり形成された火山地形」としています。
1990年代の雲仙岳では、普賢岳の噴火活動に伴って溶岩ドームが成長し、平成新山が形成されました。火山活動によって、実際に新しい山の形が短期間でつくられた例です。
ただし、粘り気の強い溶岩は急斜面をつくるため不安定になりやすく、ドームの一部が崩れて火砕流を起こすこともあります。火山は「積み上げる」だけでなく、成長しながら崩れることもあるのです。
スコリア丘は噴き上げられた岩片でできる
火山の山体は、溶岩だけでつくられるわけではありません。
ガスを含んだマグマが噴き上がり、空中で冷えてできたスコリアや火山弾が火口の周囲へ落ち積もると、小型の円すい形の丘ができます。これをスコリア丘や火砕丘と呼びます。
USGSが説明するcinder coneも同じような仕組みで、火口から噴き出した固体の火山物質が周囲へ積もることで形成されます。
一回または比較的短期間の噴火活動でも、火口周辺に大量の火砕物が降り積もれば、数百m規模の新しい丘が形成されることがあります。
噴火の場所が変わると山の形も変わる
火山の噴火は、いつも同じ火口から起こるとは限りません。
山頂火口だけでなく、山腹の割れ目や側火口から溶岩や火砕物が噴出することがあります。すると、主山体の横に小さな火山丘ができたり、一方向だけに溶岩流が重なったりして、山の形が非対称になります。
有珠山では、成層火山の山体に複数の溶岩ドームや潜在ドームが形成されており、一つの単純な円すいでは説明できない複雑な地形になっています。
火山の形を見ると、その火山が「どこから、どのような噴火を繰り返したか」という活動史の一部を読み取ることができます。
大噴火では山が高くなるどころか低くなることもある
噴火というと、噴出物が積もって山が高くなる現象だけを想像しがちです。しかし、大規模な噴火では逆に地形が大きく沈むことがあります。
地下のマグマだまりから大量のマグマが短時間に噴出すると、その上の地盤を支えきれなくなり、山頂付近が陥没する場合があります。
このように火山活動によって形成される大きな凹地形がカルデラです。気象庁は、短時間の大量噴出やマグマの移動に伴い、マグマだまり上部の地盤が沈降・崩落して形成されるものをカルデラの代表的な成因として説明しています。
十和田火山では、大規模な噴火を繰り返した結果、直径約11kmのカルデラが形成されています。
山体崩壊でも火山の形は大きく変わる
火山は噴出物が積み重なって急斜面になるため、重力的に不安定になることがあります。
強い地震、噴火、熱水による岩石の変質、大雨などをきっかけに山体の一部が崩れると、山頂や山腹が大きく失われます。
たとえば岩木山には、大規模な山体崩壊の跡として馬蹄形の火口地形と岩屑なだれ堆積物が残っています。
富士山の地質研究でも、溶岩流や火山灰だけでなく、火砕流や山体崩壊などの現象を重ねながら現在の山体が形成されたことが示されています。
火山の形は、噴火による「建設」と崩壊による「破壊」の両方でつくられます。
雨や川も火山を削り続ける
噴火活動が休んでいる間にも、火山の形は変化します。
雨が降れば斜面に水が流れ、火山灰や柔らかい火砕物を削ります。川は谷を深くし、斜面では崩壊や地すべりが起こります。
活動を終えて長い時間がたった火山では、もともとの円すい形が大きく失われ、深い谷や鋭い尾根が発達することがあります。
日本の第四紀火山の地形研究でも、火山体は溶岩面や火砕流堆積面だけでなく、侵食谷、地すべり地形、火山麓扇状地などが組み合わさって発達すると整理されています。
したがって、現在見える火山の形は、噴火直後の形そのものではない場合があります。
同じ火山でも時代によって形が変わる
一つの火山でも、活動期によって噴火様式やマグマの性質が変わることがあります。
最初は流動性の高い溶岩が広く流れ、その後に粘り気の強い溶岩が山頂にドームをつくることもあります。逆に、大きな成層火山を形成した後で山頂部が崩壊し、カルデラや崩壊地形ができる場合もあります。
気象庁が紹介する開聞岳では、玄武岩質の成層火山の頂部に安山岩質の溶岩ドームが存在します。これは一つの山体の中でも、異なる噴火活動が重なって地形がつくられる例です。
火山の形は一度決まったら終わりではなく、噴火のたびに更新されることがあります。
「火山は全部きれいな円すい形」ではない
富士山の印象が強いため、火山はすべて円すい形だと思われがちです。
しかし実際には、楯状火山のように平たく広いもの、溶岩ドームのように急に盛り上がるもの、スコリア丘のように小型の円すい形になるもの、カルデラのように大きなくぼみをもつものまでさまざまです。
さらに、一つの火山の中に成層火山、溶岩ドーム、側火山、火口、カルデラ、崩壊地形が組み合わさることもあります。
「火山の形」は一種類の完成形ではなく、その火山が経験した噴火と崩壊の履歴を表したものなのです。
火山の形を決める主な要因を整理すると
- 噴出物の種類:溶岩、火山灰、スコリア、軽石など、何が多く噴出するかで積み重なり方が変わる。
- マグマの粘性:低粘性の溶岩は遠くまで流れ、高粘性の溶岩は火口近くにたまりやすい。
- 噴火の繰り返し:同じ火口から何度も噴出すると山体が高く・厚くなる。
- 火口の位置:山腹噴火や割れ目噴火があると山体が非対称になる。
- 大規模噴火:大量のマグマ噴出後にカルデラが形成されることがある。
- 山体崩壊:山の一部が失われ、馬蹄形の崩壊地形などができる。
- 侵食:雨、川、雪などが火山体を削り、谷や尾根を発達させる。
結局、なぜ火山は山の形をつくるのか
火山は、地下から出た溶岩や火砕物を地表へ何度も積み重ねることで、山体そのものをつくるからです。
流れやすい溶岩が広く重なれば楯状火山のようになだらかな山になり、溶岩と火砕物が火口を中心に積み重なれば成層火山のような円すい形になります。粘り気の強い溶岩が火口付近にたまれば、急な溶岩ドームができます。
一方で、大規模噴火ではカルデラができ、山体崩壊では山の一部が失われます。さらに雨や川による侵食も長期的に形を変えます。
つまり、火山の形は単に「マグマが盛り上がってできた形」ではありません。噴出物を積み上げる作用と、崩壊・陥没・侵食で削る作用が何度も重なった結果が、現在の山の姿として残っているのです。

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