結論からいうと、雲量は「空全体のうち、雲がどのくらいの面積を覆っているか」を観測し、その割合を数値に置き換える仕組みで成り立っています。 雲そのものの重さや厚さを測る値ではなく、観測地点から見た空の「覆われ具合」を表す指標です。
日本の気象庁では、全天を10として雲が占める割合を0〜10で表します。一方、海外の気象観測では全天を8分割するokta(オクタ)という表し方も広く使われます。どちらも基本的な考え方は同じで、「見えている空のうち何割が雲か」を共通の尺度に変える仕組みです。
この記事では、雲量が何を測っているのか、人はどのように空全体の割合を判断するのか、高さの違う雲が重なった場合はどう考えるのか、なぜ雲量が増減するのか、晴れ・曇りとの関係まで順番に解説します。
雲量とは「雲の個数」ではなく空を覆う割合
雲量という言葉から、「空に雲が何個あるかを数えるのでは」と思うかもしれません。しかし、雲量は雲の個数ではありません。
気象庁は、雲量を「全天を10として、雲の占める面積の割合」に応じて表します。たとえば、小さな積雲が何十個あっても、それらが空のごく一部しか覆っていなければ雲量は小さくなります。反対に、一枚の広い層雲が空のほとんどを覆えば、見た目には一つの雲でも雲量は大きくなります。
つまり雲量で重要なのは、雲の数ではなく観測者から見た全天のうち、雲に隠されている面積の割合です。
日本では空を「10」として雲量を表す
日本の気象観測では、空全体を10と考えて雲量を0〜10の整数で表します。
- 雲量0:一点の雲もない状態
- 雲量1:雲がごくわずかにある状態
- 雲量5:おおよそ空の半分程度を雲が覆っている状態
- 雲量9:空の大部分が雲に覆われている状態
- 雲量10:ほぼ全天が雲で覆われている状態
実際の空には目盛り線が引かれているわけではありません。そのため、人が観測する場合は、空全体を見渡しながら「雲が占める見かけの面積」を総合的に判断します。
ここでいう「面積」は、地図上の水平面積ではありません。観測地点から見上げた半球状の空、いわゆる天空の中で、どれだけの部分が雲に覆われて見えるかを評価しています。
なぜ人は空全体を見渡して割合を判断できるのか
有人観測では、観測者が空全体を見渡し、雲に覆われている部分と青空が見えている部分を比較します。空を頭の中でいくつかの区画に分けて考えると、雲の占める割合を判断しやすくなります。
たとえば、東の空はほぼ雲、西は青空、南北は半分程度雲というように、方向ごとの状態を見ながら全天で平均すると、雲量のおおまかな値を決められます。
Met Officeも、全雲量は観測地点から見える空のうち、あらゆる種類・高さの雲が占める割合として説明しています。全空を一度に見渡す必要があるため、同機関では全雲量の報告は人間の観測者がいる観測所で行われるとしています。
高い雲と低い雲が重なったら雲量はどうなるのか
空には一つの高さだけでなく、低層雲・中層雲・上層雲が同時に存在することがあります。このとき注意したいのは、各層の雲量を単純に足して全雲量を出すわけではないという点です。
たとえば、低い雲が全天の半分、高い雲も全天の半分を覆っていたとします。しかし、地上から見て両者が同じ方向に重なっていれば、その重なった部分は一度しか数えません。
Met Officeは、すべての雲を合わせた「total cloud amount」と、各雲層を単独で見た場合の「partial cloud amount」を区別しています。複数層の部分雲量は重なりを含むため、合計すると全雲量や100%を超えることさえあります。
つまり全雲量とは、「各層を合計した雲の量」ではなく、最終的に地上から見て空のどの部分が雲で覆われているかを表す値なのです。
なぜ海外では「8分比」を使うのか
雲量の表し方は、日本の0〜10だけではありません。Met OfficeやNOAAでは、全天を8等分するokta(オクタ)、つまり8分比が使われています。
- 0/8:雲なし
- 1/8〜2/8:少量の雲
- 3/8〜4/8:空の一部が雲
- 5/8〜7/8:空の大部分が雲
- 8/8:全天が雲で覆われている
NOAAの地上天気図資料でも、空を覆う雲の量を0/8から8/8までの記号で表しています。Met Officeも0 oktaを雲なし、8 oktasを完全な雲量として説明しています。
10分比と8分比では数字の刻み方が異なりますが、基本思想は共通しています。どちらも「空全体に対する雲の占有率」を、観測者同士で共有できる数字に変えるための仕組みです。
雲量が増えるのは、雲が広がったり新しくできたりするから
雲量そのものは観測上の指標ですが、その値が増減する背景には実際の雲の変化があります。
雲は、湿った空気が上昇して冷え、水蒸気が水滴や氷晶へ変わることでできます。広い範囲で空気が上昇・冷却すれば、新しい雲が生まれたり既存の雲が横へ広がったりし、観測地点から見た雲の面積が増えます。その結果、雲量も大きくなります。
逆に、空気が下降して暖まったり、乾いた空気が流れ込んだりすると、雲粒が蒸発して雲が薄くなったり消えたりします。すると青空の占める割合が増え、雲量は小さくなります。
つまり雲量の変化は、雲の生成・発達・移動・消散という大気の動きを「空を覆う割合」という形で捉えたものです。
雲が移動するだけでも雲量は変わる
同じ雲が存在し続けていても、風で移動すれば、ある観測地点から見た雲量は変化します。
たとえば西の空に大きな雲の帯があり、それが風に流されて観測地点の上空へ近づけば、雲量は増えていきます。反対に、その雲が通り過ぎて青空が広がれば雲量は減ります。
このことから、雲量は「その地域に存在する雲の総量」ではなく、特定の場所・特定の時刻から見た空の状態を表す値だとわかります。同じ時刻でも数十キロ離れた地点では雲量が違うことがあります。
雲量と「晴れ」「曇り」はどう結びつくのか
雲量は、観測上の天気を決める重要な要素の一つです。気象庁では、降水など別の現象がない場合、全雲量が1以下なら「快晴」、2以上8以下なら「晴れ」とします。
全雲量が9以上の場合は、雲の高さの構成も見ながら「曇り」や「薄曇り」と判断します。気象庁は、全雲量9以上で中・下層雲が上層雲より多い状態を「曇り」、上層雲が多い状態を「薄曇り」としています。
このため、日常感覚では「雲がかなり多い」と感じても、全雲量が8なら観測上は晴れになります。逆に、薄い高い雲が空一面を覆っていても、条件によっては薄曇りになります。
雲量は、感覚的な「空が明るい・暗い」ではなく、雲の覆う割合を基準に天気を共通化する役割を持っているのです。
雲量が多いほど雨が降りやすいとは限らない
雲量が大きいと雨を連想しやすいですが、雲量は降水量を表す指標ではありません。
薄い巻層雲が広い空を覆えば雲量は非常に大きくなりますが、そこから地上へ雨が届かないことがあります。一方、局地的な積乱雲が空の一部にしかなければ、全天の雲量は最大ではなくても、その雲の下では激しい雨が降ることがあります。
雨が降るかどうかは、雲の厚さ、水滴や氷晶の量、上昇気流、雲粒の成長などにも左右されます。雲量が示すのはあくまで「空を覆う面積」です。
雲量が同じでも空の明るさが違うのはなぜか
同じ雲量でも、空の見え方がまったく違うことがあります。たとえば雲量8でも、白い積雲が点在する空と、薄い高層雲が広がる空では明るさが違います。
これは、雲量が雲の「厚さ」や「光をどれだけ通すか」を直接測っていないためです。厚い積乱雲は太陽光を強く遮りますが、薄い巻雲や巻層雲は多くの光を通します。
したがって、雲量だけでは日射の強さや空の暗さを完全には表せません。雲の種類、高さ、厚さなど別の情報と組み合わせることで、実際の空の状態をより詳しく理解できます。
自動観測では雲量をどう推定するのか
雲底高度の観測には、シーロメーターと呼ばれるレーザー式の装置が使われます。この装置は真上へレーザー光を送り、雲から戻る散乱光を使って雲底の高さを測ります。
Met Officeでは、このような雲底観測装置が一定時間に真上を通過した雲を記録し、各雲層の部分雲量を推定する方法を説明しています。
ただし、装置が見ているのは基本的に観測地点の真上付近です。人間の観測者のように全天を同時に見渡しているわけではありません。そのため、時間平均で部分雲量を推定する方法と、人が全天を見渡して決める全雲量には性質の違いがあります。
人工衛星が見ている雲量と地上の雲量は同じなのか
気象衛星も広い範囲の雲を観測できますが、地上の雲量とまったく同じ見方ではありません。
地上観測は、ある地点から空を見上げて、視野のどれだけが雲に覆われているかを評価します。一方、衛星は上空から地表を見下ろし、広い地域のどこに雲が分布しているかを観測します。
衛星は広域の雲分布を捉えるのに優れていますが、高い雲が低い雲を覆い隠すことがあります。また、雲底高度は衛星画像だけでは直接わかりにくいという制約もあります。
したがって、「雲量」という言葉でも、地上観測・自動観測・衛星観測では見ている範囲や方法が異なります。目的に応じて複数の観測方法が使い分けられています。
雲量の仕組みを順番に整理すると
- 観測地点から見える全天を基準にする
- 雲が覆っている部分と、雲のない部分を見分ける
- 雲が占める見かけの面積の割合を判断する
- 日本ではその割合を0〜10の整数に置き換える
- 複数の高さに雲がある場合は、重なって見える部分を二重に数えず全雲量を考える
- 必要に応じて各雲層の部分雲量も別に記録する
- 時間とともに雲の生成・消散・移動が起きると、観測される雲量も変化する
- 得られた雲量は、天気の判定や航空・気象解析などに利用される
この流れを見ると、雲量は自然界に最初から数字として存在するものではなく、空の雲の広がりを人間が共通の基準で表現するために作られた観測量だとわかります。
よくある誤解:雲量10だから雲が分厚いとは限らない
雲量10というと、「非常に厚い雨雲が空を覆っている」と思うかもしれません。しかし、雲量10が意味するのは、空が雲でほぼ完全に覆われていることです。
薄い上層雲が全面を覆っている場合でも、見かけ上の雲量は大きくなります。反対に、非常に厚い積乱雲があっても、それが空の一部だけなら全天雲量は10にならないことがあります。
つまり、雲量は「雲の厚さ」「雲の水分量」「雨の強さ」ではなく、あくまで「覆っている割合」を表す指標です。
まとめ
- 雲量は、空全体のうち雲が覆っている見かけの面積の割合
- 雲の個数や重さ、厚さを表す値ではない
- 日本では全天を10として、雲量を0〜10で表す
- 海外では8分比のoktaが広く使われる
- 複数の雲層が重なる場合、部分雲量を単純に足して全雲量にはしない
- 雲の生成・消散・移動によって雲量は時間とともに変化する
- 気象庁では雲量が「快晴」「晴れ」「曇り」などの観測上の天気判定にも使われる
- 雲量が多くても必ず雨が降るわけではなく、雲の厚さや種類とは別の情報である
- 自動観測や衛星観測では、人の全天観測とは異なる方法で雲の広がりを把握する
「なぜ雲の雲量はどのような仕組みで成り立つのか?」への最も簡単な答えは、観測地点から見える全天のうち、雲が覆う割合を判断し、それを共通の数値に置き換えることで成り立っているからです。雲量を知ると、「雲が多い・少ない」という感覚的な表現を、比較できる気象データとして扱えるようになります。
参考資料
- 気象庁「国際式の天気記号と記入方式」
- 気象庁「天気」
- Met Office「How we measure cloud」
- NOAA JetStream「Surface Weather Plot Symbols」

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