なぜ雲の水滴は場所や条件によって大きさや数が違うのか?

結論からいうと、雲の水滴には、雲の高さや温度、上昇気流の強さ、空気中の水蒸気量、凝結核となる微粒子の量や種類などが場所ごと・時刻ごとに違うため、大きさや数、液体のまま存在できる割合などに違いが生まれます。

雲は一見すると均一な白いかたまりに見えますが、内部では水滴や氷晶の大きさ・数・状態が場所によって変化しています。海の上の雲と大陸上の雲、雲底付近と雲頂付近、弱い上昇気流の雲と発達した積乱雲では、同じ「雲の水滴」でも性質が同じとは限りません。

この記事では、なぜ雲の水滴に場所や条件による違いが生まれるのかを、「温度」「高度」「凝結核」「上昇気流」「雲の成長段階」の違いから整理します。

目次

雲の水滴は、どこでも同じ大きさ・数ではない

雲をつくる水滴は非常に小さく、一般的な雲粒は直径0.01〜0.03ミリメートルほどの大きさです。気象庁は、霧や雲の粒がこの程度の非常に小さな水滴であり、氷点下でも凍らず液体のまま存在することがあると説明しています。

ただし、これは「すべての雲粒が同じ直径」という意味ではありません。実際の雲の中には大小さまざまな粒があり、その分布は高度や温度、空気の流れ、エアロゾルの状態などによって変わります。

気象庁の雲物理に関する資料でも、大気中の水は液体・固体・気体のさまざまな相を取り、液体や固体の粒子も大きさや形によって多様であるとされています。雲の水滴は「一種類の決まった粒」ではなく、大気の条件に応じて絶えず変化する粒子なのです。

違いを生む第一の条件は「雲の高さと温度」

雲の水滴の状態を大きく左右するのが温度です。一般に高度が高くなるほど気温は低くなります。そのため、比較的暖かい低い雲では液体の水滴が主体になりやすい一方、高く冷たい雲では氷晶の割合が増えます。

ただし、0℃を下回ったからといって、すべての水滴がすぐ凍るわけではありません。非常に小さな雲粒は、凍結のきっかけとなる核が少ない場合などに、氷点下でも液体のまま存在できます。これを過冷却水滴といいます。

つまり、同じ雲の中でも、下の比較的暖かい部分には液体の水滴が多く、上の冷たい部分では過冷却水滴と氷晶が混在し、さらに低温になると氷晶が多くなることがあります。雲の上下で水の状態が違うのは、温度条件が異なるためです。

雲底と雲の上部では、水滴の成長段階が違う

雲底付近は、上昇した湿った空気が冷えて飽和し、水蒸気が凝結して雲粒ができ始める場所です。そのため、形成されたばかりの比較的小さな水滴が多く存在します。

雲の内部をさらに上昇すると、水滴には水蒸気が追加で凝結したり、ほかの水滴と衝突したりする機会が増えます。その結果、条件によっては上部ほど粒が成長することがあります。

ただし、実際の雲では周囲の乾いた空気が混ざる「エントレインメント」なども起こり、水滴が蒸発して小さくなることもあります。そのため「必ず上へ行くほど大きい」と単純には決まりません。雲の高さごとの違いは、凝結による成長と蒸発、空気の混合のバランスで決まります。

上昇気流の強さで水滴の成長が変わる

雲の水滴の違いには、上昇気流も深く関係しています。

上昇気流があると、地表付近の湿った空気が雲の中へ供給されます。空気は上昇すると膨張して冷え、水蒸気が凝結しやすくなります。上昇が続けば、新しい水滴が生まれ、すでにある水滴も成長しやすくなります。

積雲や積乱雲のように強い上昇気流を持つ雲では、水滴や氷の粒が長時間雲内に保たれ、衝突や併合を繰り返すことがあります。粒が十分に大きくなると、上昇気流では支えきれず雨やあられとして落下します。

一方、弱い上昇や安定した大気の中にできる層雲では、激しい上下運動が少なく、雲粒の成長過程も積乱雲とは異なります。雲の種類によって水滴の大きさの分布が違うのは、内部の空気の動きが違うことも理由の一つです。

海の上と陸の上で水滴の特徴が違うことがある

雲の水滴をつくるには、水蒸気だけでなく、凝結の足場となる雲凝結核が重要です。海塩、硫酸塩、ちり、煙などのエアロゾルが凝結核として働きます。

場所によってエアロゾルの量や種類は違います。清浄な海洋上では海塩などが主な凝結核になり、大都市や工業地域、山火事・焼畑の影響を受けた空気では、より多くの微粒子が存在する場合があります。

凝結核が多い空気では、限られた水蒸気が多数の核に分配されるため、一般に「小さな水滴が多数」できやすくなります。反対に、凝結核が比較的少ない場合には、一つ一つの粒に利用できる水分が多くなり、相対的に大きな水滴が形成されやすい場合があります。

NASAも、汚染された空気では水に溶けやすい粒子が多いため、雲はより多数の小さな水滴を持つ傾向があると説明しています。ただし、実際の雲の水滴サイズはエアロゾルだけで決まるわけではなく、水蒸気量や上昇気流などの気象条件にも左右されます。

観測研究でも「空気の由来」で水滴分布の違いが確認されている

NOAAが収録する2023年の研究では、フィリピン周辺の海上で航空機観測を行い、清浄な海洋性空気、工業起源の影響を受けた空気、バイオマス燃焼の影響を受けた空気に対応する積雲の雲底付近を比較しています。

その結果、工業起源やバイオマス燃焼の影響を受けた雲では、清浄な海洋性の雲よりも直径13マイクロメートル未満の小さな水滴の濃度が高く、13〜34.5マイクロメートル程度の中間的な大きさの水滴は少ない傾向が確認されました。

この研究は特定地域・特定条件の観測結果なので、世界中の雲にそのまま当てはまるわけではありません。それでも、雲凝結核となるエアロゾルの由来や量が変わると、水滴の数や大きさの分布が変化し得ることを具体的に示しています。

水蒸気が多いか少ないかでも違いが生まれる

水滴の成長には、材料となる水蒸気の量も重要です。

湿った空気が大量に雲へ供給されれば、凝結できる水分も増えます。特に暖かく湿った空気が強く上昇する積乱雲では、大量の水蒸気が雲内へ運ばれ、水滴や氷粒が急速に成長する条件がそろいます。

反対に、周囲から乾いた空気が混ざると、雲粒の一部は蒸発します。雲の縁で水滴が小さくなったり消えたりするのは、この影響です。

同じ雲の中でも中心部と縁で水滴の分布が違うことがあるのは、湿度と空気の混ざり方が均一ではないためです。

雲の種類によって水滴の条件はどう違うのか

雲の種類によって、形成される高さや空気の流れが違うため、水滴の状態にも特徴が現れます。

  • 層雲:低く安定した大気にできやすく、微小な水滴が広く一様に分布しやすい
  • 積雲:対流による上昇気流で形成され、雲底から上へ成長するにつれて水滴分布が変化する
  • 積乱雲:強い上昇気流を持ち、上部は低温になるため、水滴・過冷却水滴・氷晶・あられなど多様な粒子が存在する
  • 巻雲:非常に高く低温のため、液体の水滴より氷晶が主体になる

したがって、「雲の水滴」とひとまとめにしても、雲形によっては液体の水滴が主体のものもあれば、氷晶を多く含むものもあります。雲の分類は見た目の違いだけでなく、内部の水の状態の違いとも関係しています。

雨が降り始める前後でも水滴の分布は変わる

雲ができた直後は、小さな雲粒が多数浮遊しています。しかし、時間がたつと、一部の水滴がほかの水滴と衝突・併合し、大きくなります。

気象庁の雲物理資料では、雲粒は水蒸気の凝結や粒子同士の衝突・併合などによって成長し、雨粒などの降水粒子へ変化すると説明されています。

大きな粒ほど落下速度が速いため、落下しながら小さな粒を取り込んでさらに成長することがあります。そのため、降水を始めた雲では、形成直後の雲とは水滴の大きさの分布が大きく異なる場合があります。

同じ場所でも時間によって水滴が変わる

雲の水滴の違いは、地域差だけではありません。同じ場所・同じ雲でも、数分から数十分の間に変化します。

朝から昼にかけて地表加熱が強まれば、積雲の上昇気流が強くなります。湿った空気が流れ込めば雲は発達しやすくなり、乾いた空気が流れ込めば雲粒は蒸発しやすくなります。

また、雲が高く発達して氷点下の層へ入れば、それまで液体だった水滴の一部が過冷却状態になり、さらに氷晶が増えていきます。つまり一つの雲の「水滴の状態」は固定されておらず、雲の成長とともに変わり続けます。

水滴の違いは雲の明るさや雨にも影響する

水滴の大きさや数が変わると、雲の見え方にも影響します。同じ量の水が雲に含まれている場合、小さな水滴が多数ある雲は、光を散乱する粒の総表面積が大きくなり、反射が強くなることがあります。

一方、水滴が大きく成長すると、衝突・併合が進みやすくなり、雨粒へ成長する条件につながります。そのため、水滴サイズの分布は雲の明るさだけでなく、降水の始まり方にも関係します。

ただし、雲から雨が降るかどうかは水滴サイズだけで決まらず、雲の厚さ、上昇気流、氷晶過程、気温など多くの条件が関わります。

場所や条件による違いを整理すると

  • 高度・温度:低く暖かい雲では液体水滴が多く、高く冷たい部分では過冷却水滴や氷晶が増える
  • 上昇気流:強いほど水蒸気の供給と粒子の成長が活発になりやすい
  • 湿度:湿った空気では凝結が続きやすく、乾いた空気が混ざると水滴は蒸発する
  • 凝結核:エアロゾルが多いと、多数の小さな水滴ができやすい場合がある
  • 海洋・大陸などの空気の由来:凝結核の種類と量が違うため、水滴分布にも違いが出ることがある
  • 雲の種類:層雲、積雲、積乱雲などでは内部の空気運動と温度構造が異なる
  • 成長段階:形成直後、発達中、降水中、衰弱中で水滴の大きさや数が変化する

このように、雲の水滴には一つの「標準状態」があるわけではありません。雲がどこにあり、どのような空気から生まれ、内部でどのような運動が起きているかによって、水滴の性質は変化します。

まとめ

「なぜ雲の水滴には場所や条件による違いがあるのか?」への最も簡単な答えは、雲ができる場所ごとに、温度・湿度・上昇気流・凝結核・雲の成長段階が異なり、それぞれが水滴の生成と成長に影響するからです。

低い暖かい雲と高い冷たい雲、清浄な海洋上の雲とエアロゾルの多い空気中の雲、弱い上昇気流の層雲と強い上昇気流の積乱雲では、水滴の数・大きさ・状態に違いが生まれます。雲を「同じ水滴の集まり」と見るのではなく、場所や条件によって絶えず変化する微粒子の集団として考えると、雲の多様さを理解しやすくなります。

参考資料

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