なぜ雷は電荷の分離と移動によって起こるのか?

結論からいうと、雷は「雲の中で正と負の電荷が分かれてたまり、その差が大きくなった結果として起こる放電」だから、電荷と直接関係しています。

発達した積乱雲の中では、氷晶やあられなどの氷粒子が激しく動き回り、衝突します。その過程で正負の電荷が分かれ、さらに上昇気流や粒子の重さの違いによって、正の電荷と負の電荷が雲の別々の場所に集まりやすくなります。

この電荷分離によって強い電界が生まれ、空気が電気を通しにくい状態を保てなくなると、一気に電流が流れます。これが雷の放電です。つまり、電荷は雷の「材料」、電荷の分離は雷の「準備」、放電は雷そのものと考えると理解しやすくなります。

目次

そもそも電荷とは何か

電荷とは、物質が持つ電気的な性質です。大きく分けて正の電荷と負の電荷があり、同じ符号の電荷どうしは反発し、異なる符号の電荷どうしは引き合います。

普段の物体では、正負の電荷がほぼつり合っているため、強い電気現象は目立ちません。しかし、何らかの仕組みで正負の電荷が別々の場所へ分かれると、その間に電気的な力が働くようになります。

雷雲では、この「電荷が分かれて偏る」状態が非常に大きな規模で起こります。

雷は「電荷が流れる現象」

気象庁は、雷を大気中で大量の正負の電荷分離が起こり、放電する現象と説明しています。

放電とは、たまっていた電荷が電気の通り道を通って急速に移動することです。雲の中だけで起こる場合もあれば、雲と雲の間、雲と地面の間で起こる場合もあります。

雲と地面の間で起こる放電が落雷です。一方、雷の多くは雲の内部や雲どうしの間でも起こります。

このため、「雷と電荷は関係がある」というより、雷そのものが大規模な電荷移動の現象だと考える方が正確です。

雷雲の中で、なぜ正負の電荷が分かれるのか

雷の発生で重要なのが、積乱雲の中の氷晶とあられです。

気象庁は、発達した積乱雲の中で、細かい氷晶とあられが衝突するときに電荷が生じ、正と負の電荷が分かれて分布するという考えが有力だと説明しています。

NOAAのNational Severe Storms Laboratory(NSSL)も、過冷却水滴を取り込みながら成長するあられ状の粒子と、小さな氷粒子が衝突してはね返る過程で、両者が異なる符号の電荷を持つことが、雷雲の帯電に重要だとしています。

細かな物理過程には未解明の部分がありますが、氷粒子どうしの衝突が雷雲の電荷分離で中心的な役割を持つことは、観測・実験・研究で広く支持されています。

上昇気流が電荷を上下に分ける

粒子が帯電しただけでは、雲全体に大きな電位差は生まれにくい状態です。そこで重要になるのが、積乱雲の強い上昇気流です。

小さく軽い氷晶は上昇気流に乗って雲の上部へ運ばれやすく、比較的大きく重いあられは下側に残ったり落下したりしやすくなります。

その結果、雲の上部と中・下部に異なる符号の電荷が集まり、正負の電荷が空間的に分離します。

NSSLは、一般的な雷雲では上部に正電荷、中央付近に大きな負電荷領域が形成される構造がよく見られると説明しています。下部に小さな正電荷領域ができる場合もあり、実際の雷雲の電荷構造は単純な二層だけではありません。

「あられは必ず負、氷晶は必ず正」ではない

雷の仕組みを簡単に説明すると、「氷晶は正、あられは負」と表現されることがあります。

しかし、実際の帯電の符号は温度や雲水量、粒子の成長状態などで変わります。NOAAも、あられ状粒子がどちらの符号を持つかは温度や成長条件に依存すると説明しています。

そのため、初心者向けには「氷晶とあられの衝突で異なる符号の電荷が生まれ、それらが上下に分かれる」と理解するのが適切です。

重要なのは個々の粒子の符号を丸暗記することではなく、積乱雲の中で正負の電荷が大規模に分離されることです。

電荷が分かれると電界が強くなる

正負の電荷が別々の場所に集まると、その間には電界が生まれます。

電界とは、電荷に電気的な力が働く空間の状態です。正負の電荷量が増え、互いに離れて分布するほど、雷雲内部や雲と地面の間の電気的な状態は強くなります。

NOAAは、雷雲内で正負の電荷領域が発達すると電界が強まり、電荷が十分に蓄積された段階で空気の絶縁性が破られて雷が生じると説明しています。

つまり、電荷分離は、雷放電を起こすための電界をつくる仕組みでもあります。

空気はふだん電気を通しにくい

空気は通常、かなり優れた絶縁体です。そのため、少し電荷が分かれた程度では、すぐに大電流が流れることはありません。

ところが、積乱雲の中で電荷分離が進み、電界が非常に強くなると、空気の絶縁状態を保てなくなります。

気象庁は、電荷が蓄積してある限度を超えると空気の絶縁状態が破れ、雲の中や雲と地上の間で瞬間的に電気が流れると説明しています。

この急激な電流が雷放電です。したがって、雷は「電気が雲から勝手に落ちてくる」のではなく、電荷の蓄積と強い電界が限界を超えた結果として起こります。

雲と地面の間にも電荷の関係が生まれる

雷雲の下部に大きな負電荷があると、その影響で地表側には正の電荷が集まりやすくなります。

NOAAは、負に帯電した雷雲が上空に来ると、その下の地面で正電荷が集まり、木や建物、電柱など高い物体にも正電荷が集中しやすくなると説明しています。

これは、異なる符号の電荷が引き合うためです。

この雲と地面の電荷分布によって、雲と地面の間にも強い電界が生まれ、対地放電の条件が整っていきます。

落雷では電荷の通り道がつくられる

代表的な負極性の落雷では、雷雲から「ステップトリーダ」と呼ばれる負電荷を伴う細い放電路が、段階的に地面へ向かって伸びます。

NOAAによると、この放電路が地面に近づくと、地上の物体から正の電荷を持つストリーマが上向きに伸びます。

両者がつながると、雲と地面の間に電気の通り道ができ、大きな電流が流れます。そのとき非常に明るい光が生じ、私たちには稲妻として見えます。

この流れを見ると、落雷が「電荷の分布」と「電荷が流れる通路」の両方によって成立していることがわかります。

雷の光と雷鳴は電荷移動の結果

雷のときに見える光は、放電路に大きな電流が流れ、周囲の空気が高温になることで生じます。

また、その空気が急激に加熱されて膨張すると衝撃波が発生し、雷鳴として聞こえます。

NSSLは、雷鳴は雷放電によって空気が急速に加熱・膨張することで生じると説明しています。

したがって、電荷分離が直接見えているわけではありません。私たちが見る稲妻と聞く雷鳴は、蓄積された電荷が急激に移動した結果です。

雲の中の雷と落雷は何が違うのか

雷放電には、雲の中だけで起こるものと、地面まで達するものがあります。

気象庁は、雲と地上の間で起こる放電を対地放電、雲の中や雲と雲の間で起こるものを雲放電と区別しています。

NOAAによると、雷の多くは雷雲内で起こります。雲内部には正負の大きな電荷領域が存在するため、その間で放電が起こるからです。

一方、雲と地面の間の電界が十分強くなると、対地放電が起こります。

どちらも本質は同じで、正負の電荷の偏りを一時的に小さくするための急速な電荷移動です。

正極性の落雷もある

よく説明される落雷は、雷雲の負電荷が地面側へ移動する負極性落雷です。しかし、すべての落雷が同じ極性ではありません。

雷雲上部などの正電荷領域から地面へ向かう放電では、正極性落雷になることがあります。

NOAAは、雷雲上部の正電荷領域から始まり、正電荷を地面へ移すタイプを正極性雷と説明しています。

つまり、雷と電荷の関係を理解するには、「雷には正負の電荷が関わるが、どの電荷がどこへ移動するかには複数のパターンがある」と考える必要があります。

なぜ積乱雲で雷が起こりやすいのか

雷に必要なのは、単に雲があることではありません。大量の電荷を分離できる強い鉛直運動と氷粒子が必要です。

発達した積乱雲では、強い上昇気流があり、氷晶・あられ・過冷却水滴が同時に存在しやすくなります。

この環境では粒子同士の衝突が増え、帯電した粒子を上下に分離する力も強くなります。

そのため、普通の薄い雲より、鉛直方向へ大きく発達した積乱雲で雷が起こりやすくなります。

雷の多さは「雲の中の氷」とも関係する

雷雲の帯電では氷晶やあられが重要なので、雲の中にどれだけ氷粒子が存在するかは雷活動とも関係します。

UCARに掲載された研究では、衛星観測や地上観測から、雷頻度と雲内の氷粒子量の間に関係があり、あられ状粒子と氷晶が雷雲の帯電に重要であることが示されています。

この結果も、「雷は単なる高温の雲ではなく、氷相の微物理と電荷分離が組み合わさって起こる現象」であることを裏付けています。

雷と電荷の関係を順番に整理すると

  1. 積乱雲が発達する:強い上昇気流で氷晶・あられ・過冷却水滴が多くなる
  2. 粒子が衝突して帯電する:氷晶とあられなどが異なる符号の電荷を持つ
  3. 電荷が上下に分かれる:上昇気流と粒子の重さの違いで正負の電荷領域ができる
  4. 電界が強まる:雲内や雲と地面の間の電気的な力が強くなる
  5. 空気の絶縁が破れる:電気の通り道が形成される
  6. 放電が起こる:大量の電荷が急速に移動し、稲妻が見える
  7. 雷鳴が発生する:放電路の空気が急加熱・膨張し、音になる

まとめ

「なぜ雷と電荷は関係しているのか?」への最も簡単な答えは、雷が、雲の中で分離・蓄積した正負の電荷が一気に移動する放電現象だからです。

積乱雲の中では、氷晶やあられの衝突によって帯電が起こり、上昇気流と粒子の違いによって正負の電荷が別々の場所へ分かれます。その結果、強い電界が形成され、空気の絶縁が破れると雷放電が起こります。

雷の光も雷鳴も、最初の原因は電荷の分離と移動です。電荷を理解すると、なぜ積乱雲で雷が起こるのか、なぜ落雷と雲放電があるのか、なぜ地面側にも電気的な変化が起こるのかを一つの流れで理解できます。

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次