台風は一年中発生する可能性がありますが、発生数は季節によって大きく違います。気象庁の1991〜2020年の平年値では、北西太平洋・南シナ海での台風発生数は8月が5.7個、9月が5.0個で、冬から春より明らかに多くなっています。
なぜ台風は夏から秋に多く発生するのでしょうか。結論からいうと、海が十分に暖まり、湿った不安定な大気、弱い鉛直シア、台風のもとになる渦や収束など、熱帯低気圧が組織化するための条件が同時にそろいやすくなるからです。
台風は暖かい海だけでは発生しない
台風は暖かい海から供給される熱と水蒸気をエネルギー源とします。そのため海面水温が高いことは重要ですが、「海が暖かければ必ず台風ができる」というわけではありません。
熱帯低気圧が発生・発達するには、海の暖かさに加えて、上空まで対流が起こりやすい大気、十分な湿り気、もとになる低気圧性の渦や収束、そして上下の風の差が強すぎないことなど、複数の条件が必要です。
夏から秋は海が十分に暖まっている
北半球では日射が最も強い時期を過ぎても、海水温はすぐには最高になりません。海には大きな熱容量があり、暖まるまでに時間がかかるためです。
NOAA/AOMLは、熱帯低気圧が夏から秋に多い理由の一つとして、海水温の季節的な遅れを挙げています。日射のピークより数週間遅れて海が最も暖かくなり、同時期に熱帯の大気循環も熱帯低気圧に適した状態になりやすくなります。
このため、北西太平洋でも夏から秋は、台風が利用できる海洋の熱エネルギーが豊富な海域が広がりやすくなります。
湿った空気と活発な積乱雲がそろいやすい
台風の発生には、海からの水蒸気を取り込んだ積乱雲が繰り返し発達し、その活動がまとまって一つの低気圧性循環へ組織化される必要があります。
夏から秋の熱帯・亜熱帯では暖かい海から水蒸気が供給されやすく、対流活動が活発になりやすい環境が広がります。中層まで十分に湿っていれば、乾いた空気の流入で積乱雲が弱められる影響も小さくなります。
鉛直シアが弱いことも重要
鉛直シアとは、高さによる風向・風速の違いです。鉛直シアが強いと、積乱雲の集まりと低気圧の中心がずれ、暖気核を持つまとまった渦へ発達しにくくなります。
NOAA/AOMLは、熱帯低気圧の発生に好都合な条件として弱い鉛直シアを挙げています。夏から秋に発生が多いのは、海水温だけでなく、このような大気側の条件も発生に適した組み合わせになりやすいためです。
台風の「種」になる渦や収束も必要
台風は、何もない海面から突然一つの巨大な渦が生まれるわけではありません。発生前には、低層の風が集まる場所や低気圧性の渦、活発な雲のまとまりなど、組織化のきっかけになる擾乱が必要です。
北西太平洋ではモンスーンに伴う大規模な風の流れや収束帯などが、台風のもとになる擾乱を生みやすい環境をつくります。夏から秋は、こうした大気循環と暖かい海の条件が重なりやすい時期です。
8月と9月に発生数が多い
気象庁の台風平年値(1991〜2020年)では、月別発生数は1〜3月が各0.3個なのに対し、7月3.7個、8月5.7個、9月5.0個、10月3.4個です。年間平均25.1個のうち、多くが夏から秋に集中しています。
特に8月は平年の月別発生数が最も多い月です。ただし、これは毎年必ず8月が最多になるという意味ではありません。海洋や大気の状態は年ごとに変動するため、実際の発生数や発生時期にはばらつきがあります。
夏至の直後ではなく少し遅れて多くなる理由
太陽から受けるエネルギーが大きい時期と、海が最も暖まる時期にはずれがあります。昼の気温が正午ではなく午後に最高になりやすいのと似て、海にも季節的な時間差があります。
さらに、台風発生には海水温だけでなく大気循環や鉛直シア、湿度、擾乱の存在も必要です。これらの条件が重なりやすくなるため、北半球では熱帯低気圧活動のピークが夏から秋になります。
「夏から秋に多い」と「その時期しか発生しない」は違う
北西太平洋では冬や春にも台風が発生することがあります。暖かい海と好都合な大気条件が局地的にそろえば、季節のピーク外でも発生できるからです。
逆に夏や秋でも、強い鉛直シアや乾燥空気などが広がれば、暖かい海があっても発生が抑えられることがあります。季節は発生しやすさを変える背景条件であり、個々の台風の発生を単独で決めるものではありません。
W00651との違い
W00651「なぜ台風は発生するのか?」は、暖かい海、水蒸気、積乱雲、低気圧性循環など、台風が生まれる基本的な仕組みを説明します。
この記事では、その発生条件がなぜ夏から秋に同時にそろいやすくなり、発生数の季節差につながるのかに焦点を当てています。一般的な発生原理ではなく、海と大気の季節変化が主題です。
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まとめ
台風が夏から秋に多く発生するのは、海が十分に暖まるだけでなく、湿った不安定な大気、弱い鉛直シア、低層の渦や収束など、熱帯低気圧の発生に必要な条件が同時にそろいやすくなるためです。
気象庁の平年値でも、台風発生数は7〜10月に多く、特に8月と9月が多くなっています。ただし、発生条件は年ごと・週ごとにも変化するため、夏から秋なら必ず発生するわけでも、冬や春には発生しないわけでもありません。

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