なぜ台風の大雨で洪水や浸水、土砂災害が起こりやすいのか?

台風による大雨では、同じ「雨」でも被害の出方は一つではありません。山の斜面では土砂災害、川沿いでは洪水、都市部や低い土地では浸水害が起こりやすくなり、道路や鉄道、物流など暮らしへの影響も広がります。

結論からいうと、台風の大雨が危険なのは、大量の雨水が短時間または長時間にわたって地面・斜面・河川・排水施設へ流れ込み、それぞれの受け止められる量を超えるからです。雨の降り方に加えて、地形、地質、川の大きさ、土地の低さ、都市の排水能力などが重なることで、異なる種類の災害が同時に起こることがあります。

目次

台風の大雨では「雨量の多さ」だけでなく「降り続く時間」も重要

台風は大量の水蒸気を含む空気を運び、台風本体の雨雲だけでなく、前線や山地の影響によって離れた場所にも強い雨を降らせることがあります。台風の大雨がどのように発生するかについては、なぜ台風が来ると大雨になるのか?で詳しく解説しています。

災害の大きさを考えるときは、1時間にどれだけ強く降るかだけでなく、何時間・何日間降り続くかも重要です。強い雨が短時間に集中すると排水が追いつきにくくなり、長時間降り続くと土壌や河川に水が蓄積して危険度が高まります。

なぜ大雨で土砂災害が起こりやすくなるのか

山や崖の斜面では、雨水の一部が地中へしみ込みます。雨が長く続くと地中の水分が増え、土の粒同士を支えていた力が弱くなります。さらに地下水の圧力が高まると、斜面が崩れやすくなります。

このため、雨が一時的に弱まっても土砂災害の危険がすぐに下がるとは限りません。すでに地中へ多くの水が入り込んでいる場合は、降雨のピークを過ぎたあとも崖崩れや土石流などに注意が必要です。

特に急傾斜地や渓流の近くでは、斜面崩壊や土石流の影響を受けやすくなります。気象庁は、土砂災害の危険度の高まりを「土砂キキクル」で確認できるようにしています。

なぜ川では洪水が起こるのか

大雨が降ると、地面にしみ込まなかった雨水は低い方へ流れ、小さな水路や支流を通って河川へ集まります。流域全体で強い雨が続くと、川へ流れ込む水の量が急速に増え、水位が上昇します。

河川が運べる水量を超えると、堤防を越えて水があふれたり、堤防の損傷や決壊によって周囲へ水が流れ出したりして洪水災害につながります。

重要なのは、自分のいる場所で雨が弱くても、上流で大雨が続いていれば後から川の水位が上がることがある点です。洪水の危険は、その場所の現在の降雨だけでは判断できません。

都市部では排水が追いつかず浸水害が起こることがある

都市では道路や建物など水を通しにくい面が多いため、雨水が地中へしみ込みにくく、短時間で側溝や下水道へ集まりやすくなります。

強い雨が排水能力を上回ると、道路や低い土地に水がたまり、地下室、地下街、アンダーパスなどへ流れ込むことがあります。河川の水位が高いと、排水しようとしても水を流しにくくなり、浸水が悪化する場合もあります。

このような浸水害は、堤防が決壊する大規模な洪水とは別の仕組みで起こることがあります。そのため、川から離れているからといって浸水の危険がないとは限りません。

洪水・浸水・土砂災害は同時に起こることがある

台風の大雨では、一つの地域で複数の災害が同時並行で進むことがあります。山地で土砂災害の危険が高まり、その下流では川が増水し、さらに市街地では排水が追いつかず道路が冠水する、といった具合です。

つまり、台風の大雨による被害は「雨が強いから一つの災害が起こる」という単純なものではありません。雨水が斜面・河川・都市排水という別々の経路に流れ込み、それぞれの限界を超えることで、異なる災害が連鎖します。

道路や鉄道、物流への影響が広がる理由

大雨によって道路が冠水したり、土砂が流れ込んだりすると、通行止めや交通規制が必要になることがあります。鉄道でも線路への土砂流入や冠水、安全確認などによって運休や遅延が発生することがあります。

交通網が止まると、人の移動だけでなく、食料や生活用品の配送、救助活動、企業活動などにも影響が波及します。大雨そのものの範囲より、社会生活への影響範囲が広くなることがあるのはこのためです。

同じ雨量でも被害が違うのはなぜか

同じ程度の雨が降っても、被害の大きさは地域によって異なります。急な斜面が多い地域では土砂災害、低地や河川沿いでは洪水、舗装面の多い都市部では浸水害が起こりやすいなど、土地の条件によって弱点が違うからです。

また、雨が降る前から土壌が湿っていたか、川の水位が高かったか、排水施設に余裕があったかによっても危険度は変わります。したがって、単純に「何ミリ降ったから安全・危険」と一律に判断することはできません。

台風の中心が遠くても大雨災害に注意が必要

台風から流れ込む暖かく湿った空気が前線や山地にぶつかると、台風本体から離れた地域でも大雨になることがあります。また、台風の進路が少し変わるだけで雨の強い地域も大きく変わります。

台風の進路と風・雨・高潮の危険地域の関係については、なぜ台風の進路が少し変わるだけで風・雨・高潮の危険地域が大きく変わるのか?も参考になります。

防災では「雨の強さ」より災害の危険度を見る

防災上は、現在の雨量だけでなく、その雨によって土砂災害・浸水害・洪水の危険がどこまで高まっているかを見ることが大切です。

気象庁は、土砂災害・浸水害・洪水について「キキクル(危険度分布)」を提供しています。自宅や勤務先、避難経路周辺でどの災害の危険が高まっているかを確認し、自治体の避難情報とあわせて早めに行動することが重要です。

まとめ

台風の大雨で洪水や浸水、土砂災害が起こりやすいのは、大量の雨水が地面・斜面・河川・排水施設へ流れ込み、それぞれが処理できる量や安定を保てる範囲を超えるためです。

斜面では地中の水が増えて崩れやすくなり、河川では流量が増えて洪水が起こり、都市では排水能力を超えて浸水が発生します。これらは同時に起こることもあり、道路や鉄道、物流など暮らしへの影響へ連鎖します。

そのため、台風時は中心の位置や雨の強さだけでなく、地域ごとの土砂・浸水・洪水の危険度を確認することが大切です。

関連する「なぜ?」

参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次