なぜ雪を考えるときの湿度は気温とセットで見る必要があるのか?

天気予報で「湿度80%」と聞くと、空気中に水蒸気がかなり多い状態だと感じます。しかし雪について考えるとき、湿度の数字だけを見ても十分ではありません。同じ水蒸気量でも、気温が違えば相対湿度は変わり、雪の結晶が成長しやすいかどうかの意味も変わるからです。

結論からいうと、相対湿度は「今ある水蒸気量」が「その気温で空気が含める最大量」に対してどれくらいかを表す値なので、気温が変われば同じ水蒸気量でも湿度が変わるからです。雪の生成や成長では、水蒸気そのものの量と、気温によって変わる飽和状態の両方を見る必要があります。

目次

湿度は水蒸気量そのものではない

気象庁が通常「湿度」と呼ぶのは相対湿度です。相対湿度は、実際に空気中にある水蒸気量と、その気温での飽和水蒸気量との比を百分率で表したものです。

つまり湿度50%とは、「空気中の水蒸気が一定量しかない」という絶対的な意味ではありません。その温度で空気が含める最大量に対して半分程度である、という相対的な指標です。

気温が下がると飽和水蒸気量も減る

空気が含める水蒸気の最大量は、気温が低いほど小さくなります。そのため、実際の水蒸気量がほとんど変わらなくても、気温が下がると相対湿度は上がります。

逆に、同じ水蒸気量の空気を暖めると、飽和水蒸気量が増えるため相対湿度は下がります。湿度の数字は水蒸気量だけでなく、気温の影響を強く受けているのです。

雪の雲では「飽和に近いか」が重要になる

雪の結晶は、雲の中でできた小さな氷晶に水蒸気が付着して成長します。気象庁も、氷の結晶にさらに水蒸気が凍って付着することで雪の結晶が成長すると説明しています。

そのため重要なのは、水蒸気が単に多いか少ないかではなく、その温度条件で氷晶へ水蒸気が供給されやすい状態にあるかどうかです。

同じ湿度でも気温が違えば雪結晶の成長条件は違う

たとえば同じ相対湿度でも、気温が大きく違えば、空気中に実際に含まれている水蒸気量は同じとは限りません。また、雪結晶の成長のしかたも気温によって変わります。

NOAAは、雪の結晶の形が気温と空気中の水分量のわずかな違いによって変化すると説明しています。つまり湿度は単独の数字としてではなく、気温と組み合わせて読む必要があります。

高い湿度では大きく複雑な結晶が育ちやすいことがある

気象庁の南極・昭和基地の解説では、気温がおよそ−15℃で湿度が高く、風が弱いときに、大きな樹枝状の雪結晶が成長しやすいとされています。

これは、結晶へ供給できる水蒸気が多く、枝や先端の成長が進みやすい条件がそろうためです。ただし「湿度が高ければ必ず大きな雪になる」という意味ではなく、気温や風など他の条件との組み合わせが重要です。

低温の空気は湿度が高くても水蒸気量が少ないことがある

冬の空気では、相対湿度が高くても、絶対的な水蒸気量は夏よりずっと少ないことがあります。低温では飽和水蒸気量そのものが小さいからです。

このため「湿度80%だから水蒸気が非常に多い」と単純には言えません。雪の成長材料としてどれくらいの水蒸気があるかを見るには、気温も合わせて考える必要があります。

雪の結晶の形も気温と湿度の組み合わせで変わる

雪の結晶には、板状、柱状、針状、樹枝状など多くの形があります。NOAAは、雪の結晶が雲の中を移動するときに経験する気温と湿度の違いによって形が変わると説明しています。

つまり、湿度は雪結晶の成長速度だけでなく、どのような形に育つかにも関係します。ただし、その作用は気温との組み合わせで現れます。

気温が変わると同じ空気でも湿度が変わって見える

たとえば夜になって気温が下がると、水蒸気量がほぼ同じでも相対湿度は上昇しやすくなります。反対に、日中に気温が上がると相対湿度は下がりやすくなります。

このため、湿度の時間変化を見たときに、それが水蒸気量の増減だけで起きたとは限りません。気温変化だけでも湿度の数字は動きます。

露点温度を見ると水蒸気量を考えやすい

気象庁では、露点温度を「水蒸気圧を一定にして温度を下げたとき、相対湿度が100%になる温度」としています。

露点温度は、相対湿度よりも空気中の水蒸気量そのものを考える手がかりになります。雪の予測や雲の状態を理解するときには、気温、相対湿度、露点温度などを組み合わせて見ると、空気がどれだけ飽和に近いかを把握しやすくなります。

地上の湿度と雲の中の湿度は同じではない

地上で観測される湿度は、その観測地点付近の空気の状態を表します。しかし雪の結晶が実際に成長するのは、数百〜数千メートル上空の雲の中です。

そのため、地上の湿度だけから雪結晶の成長状態を直接判断することはできません。上空では気温も湿度も異なり、雪結晶はその環境を通過しながら成長します。

雪が降る途中では乾燥した空気が冷却を起こすこともある

雪片が乾いた空気の中を落ちると、雪や付着した水分の一部が昇華・蒸発し、その際に周囲から熱を奪います。この冷却によって、雪片や空気が冷え、雪が融けにくくなることがあります。

つまり湿度は、雲の中で結晶を育てる場面だけでなく、雪が地上まで落ちてくる途中の熱収支にも関係しています。

W00703との違いは「湿度の影響」ではなく「湿度という値の仕組み」

既存のW00703では、湿度が雪結晶の成長や降り方にどう影響するかを中心に扱っています。

この記事ではそこから一段手前に戻り、相対湿度という数字がそもそも気温によって決まる相対的な値であり、なぜ雪を考えるときに湿度と気温をセットで読む必要があるのかを中心に説明しています。

湿度100%でも必ず大雪になるわけではない

相対湿度が100%に近いことは、その気温で空気が飽和に近いことを示します。しかし、それだけで雪の量は決まりません。

雪が多く降るには、雲の厚さ、上昇気流、水蒸気の継続的な供給、気温構造なども必要です。湿度は重要な条件の一つですが、降雪量を単独で決める指標ではありません。

まとめ

雪を考えるときに湿度を気温とセットで見る必要があるのは、相対湿度が水蒸気量そのものではなく、その気温での飽和水蒸気量との比だからです。

気温が下がれば同じ水蒸気量でも相対湿度は上がり、気温が上がれば下がります。さらに雪結晶の成長や形は、気温と水蒸気量の組み合わせによって変わります。

つまり、雪と湿度の仕組みを理解する鍵は、「湿度何%か」だけを見るのではなく、その湿度がどの気温のもとで成り立っているのかを一緒に考えることです。

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参考資料

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