なぜ雪の結晶は雲の中を通る場所や条件によって形が違うのか?

雪の結晶には、六角形の板、細長い柱、針のような形、複雑に枝分かれした樹枝状など、さまざまな姿があります。同じ「雪」なのに、なぜこれほど形が違うのでしょうか。

結論からいうと、雪の結晶は成長中に通過する雲の温度や水蒸気量が場所ごとに違い、その違いによって氷結晶のどの面が速く成長するか、枝分かれがどれほど発達するかが変わるからです。さらに、一つの結晶でも雲の中を移動しながら条件が変わるため、成長途中で形が変化することがあります。

目次

雪の結晶は雲の中で成長する

雪の結晶は、雲の中で小さな氷晶として生まれ、水蒸気を取り込みながら成長します。NOAAは、雪の結晶が成長するとき、周囲の温度や空気中の水分量のわずかな違いが最終的な形を大きく左右すると説明しています。

そのため、雪の結晶の形は「地上の気温」だけでは決まりません。実際に結晶が育った雲の中の環境が重要です。

どの結晶も基本は六角形

雪の結晶の形が違っていても、多くは六回対称を基本にしています。これは氷の中で水分子が六角形を基本とする結晶構造をつくるためです。

ただし、六角形という基本構造が同じでも、横方向へ広がるか、縦方向へ伸びるか、枝が発達するかによって外見は大きく変わります。

温度によって板状になったり柱状になったりする

雪の結晶は、温度によって成長しやすい方向が変わります。Caltechの雪結晶形態図では、温度が下がるにつれて、板状、柱状、再び板状、さらに低温では柱状主体へと結晶形が切り替わることが示されています。

これは、氷結晶の底面と柱面で水分子が付着する速さが温度によって異なるためです。ある温度域では横方向の成長が優勢になり、別の温度域では縦方向の成長が優勢になります。

比較的暖かい温度域では板状結晶ができやすい

0℃に比較的近い低温域では、薄い板状の結晶が成長しやすい領域があります。

板状結晶では、結晶の厚さ方向よりも横方向への成長が速いため、薄く広がった六角板の形になりやすくなります。

別の温度域では柱や針が育ちやすい

温度がさらに下がると、柱状や針状の結晶ができやすい領域があります。

この場合は横へ広がるより、六角柱の軸方向へ伸びる成長が相対的に優勢になります。その結果、細長い柱や針のような形になります。

およそ−15℃付近では樹枝状結晶が育ちやすい

気象庁は、南極・昭和基地周辺で大きな樹枝状結晶が成長しやすい条件として、およそ−15℃で湿度が高く、風が弱い状況を紹介しています。

この温度域では板状成長が優勢になりやすく、さらに水蒸気が豊富だと角や先端が急速に成長して複雑な枝分かれが発達します。

水蒸気量が少ないと単純な形になりやすい

結晶の周囲にある水蒸気が少ないと、成長に使える材料が限られます。そのため、結晶表面にできた小さな凹凸が急速に成長しにくく、比較的単純な板や柱のまま成長しやすくなります。

Caltechの形態図でも、同じ温度でも水蒸気の過飽和度が低い領域では単純な結晶が、高い領域ではより複雑な形が現れることが示されています。

水蒸気量が多いと枝分かれが発達しやすい

水蒸気が豊富な環境では、結晶の先端や角が周囲より先に水蒸気を受け取りやすくなります。

すると小さな突起がさらに成長し、その先にまた新しい枝ができるという不安定成長が起こります。これが樹枝状結晶の複雑な形につながります。

同じ雲の中でも温度や湿度は一定ではない

雲の内部は均一ではありません。高度、上昇気流や下降気流の位置、水滴や氷晶の分布によって、温度や水蒸気量は場所ごとに異なります。

そのため、同じ雲の中で生まれた結晶でも、通る場所が違えば経験する成長条件も違います。

結晶は成長しながら雲の中を移動する

雪の結晶は真下へ一直線に落ちるわけではありません。上昇気流や乱流で持ち上げられたり、横へ流されたりしながら成長します。

NOAAは、一つの雪の結晶が雲の中で異なる温度や水分条件を順番に経験し、その履歴によって最終形が決まると説明しています。

成長途中で形が切り替わることもある

最初に柱状に成長していた結晶が、別の温度層へ移動したあと板状成長へ切り替わることがあります。逆に、板状だった結晶が別の環境で柱方向へ伸びる場合もあります。

このため、一本の結晶の中に異なる成長様式が組み合わさった複雑な形が見られることがあります。

場所の違いとは「地名」より雲の中の環境の違い

「場所によって雪の結晶が違う」というと、北海道と本州、山地と平地などの地域差だけを想像しがちです。

しかし直接的に結晶形を決めるのは、その場所の地名ではなく、その地域の雲の中で結晶が経験した温度・水蒸気量・上昇流などの条件です。

地域差は、そうした雲内環境の違いを通じて結晶形へ現れます。

同じ地域でも日によって結晶形は変わる

同じ観測地点でも、雪雲の温度構造や湿り方が変われば、降ってくる結晶の種類は変わります。

ある日は樹枝状結晶が多く、別の日には針状や板状が多いという違いが起こります。これは雲の状態そのものが日ごとに違うからです。

一回の降雪中でも結晶形が変わることがある

雪雲の温度や湿度が時間とともに変化すれば、同じ場所で降っている雪の結晶形も変わります。

気象庁の資料では、2016年11月24日の関東南部で、観測された雪結晶が樹枝状・扇状から針状へ変化し、その変化から雪雲の温度上昇が読み取れる例が紹介されています。

結晶形は雲の状態を知る手がかりになる

雪結晶の形と温度・水蒸気量には対応関係があるため、地上で観測した結晶形から、その結晶がどのような雲内条件で育ったかを推定できます。

このため雪結晶の観察は、単なる形の分類ではなく、雪雲内部の状態を知るための情報にもなります。

樹枝状結晶が多いと積もり方にも違いが出る

NOAAの予報資料では、樹枝状や板状の結晶は枝や突起の間に空気を多く含みやすく、同じ水量でも深く積もりやすい傾向が示されています。

一方、柱や針のような結晶は隙間が少なく詰まりやすいため、同じ水量でも積雪深が小さくなることがあります。

つまり、雲の条件による結晶形の違いは、地上での雪の積もり方にもつながります。

結晶形だけで降雪量を決めることはできない

ただし、雪の積もり方は結晶形だけで決まりません。風、気温、雪片の凝集、着氷、地表面の状態なども影響します。

結晶形は重要な要素の一つですが、実際の降雪や積雪は複数の条件の組み合わせで決まります。

「なぜ雪の結晶は六角形を基本に枝分かれして成長するのか?」との違いは「形をつくる原理」ではなく「条件ごとの差」

なぜ雪の結晶は六角形を基本に枝分かれして成長するのか?では、氷の六角形の分子構造、枝先への水蒸気集中、六回対称など、雪結晶の形を生み出す基本的な成長原理を中心に扱っています。

この記事ではそこから検索意図を分け、雲の中の温度・水蒸気量・通過経路が場所や時間によって違うため、板・柱・針・樹枝状など結晶形に差が生じる理由を比較の観点から説明します。

「同じ雪なのに形が違う」のは成長履歴が違うから

雪の結晶は、同じ氷という物質からできています。それでも形が違うのは、それぞれが成長中に経験した環境が違うためです。

温度、水蒸気量、滞在時間、通過した高さが少しずつ違えば、成長速度や成長方向も変わります。その小さな違いが積み重なって、最終的に異なる形になります。

まとめ

雪の結晶が雲の中を通る場所や条件によって形が違うのは、温度と水蒸気量によって氷結晶の成長しやすい方向や枝分かれの程度が変わるためです。

同じ六角形を基本とする氷結晶でも、ある条件では板、別の条件では柱や針、高い水蒸気量では複雑な樹枝状へと成長します。

さらに、一つの結晶自身も雲の中を移動しながら異なる条件を経験します。つまり、雪の結晶の形は、その結晶が雲の中で経験してきた温度と水蒸気の「履歴」を映した結果なのです。

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参考資料

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