「風速」と一口にいっても、何を測った値かによって数字は大きく変わります。気象庁では、一般に風速というと10分間の平均風速を指し、瞬間風速はごく短い時間の風の強さを示します。さらに、同じ場所でも地上付近と上空では摩擦の影響が違い、谷や建物の周辺では地形・地物によって風速が局地的に変化します。
そのため、天気予報や観測値を比べるときは、「同じ地域だから同じ風速になる」と考えるのではなく、平均か瞬間か、高さは同じか、周囲の地形は似ているかをそろえて見る必要があります。
平均風速と瞬間風速ではそもそも測っている時間が違う
気象庁は、風速または平均風速を10分間の平均値、瞬間風速をある瞬間の風速と説明しています。短い突風や乱れは、10分平均ではならされますが、瞬間風速には強く表れます。
そのため、同じ観測地点でも「平均風速10m/s、最大瞬間風速20m/s」のように大きな差が出ることがあります。気象庁は、瞬間風速が平均風速の1.5倍から3倍程度に達することがあるとしています。
つまり、平均風速と瞬間風速は同じ風を別の時間幅で見た値であり、直接一対一で比較するものではありません。
地上付近では摩擦によって風速が弱まりやすい
NOAA/National Weather Serviceは、地上付近では地表との摩擦によって風速が低下すると説明しています。上空では摩擦の影響が小さく、気圧傾度に応じた風がより保たれやすくなります。
そのため、同じ場所でも地上の風より上空の風の方が強いことは珍しくありません。関西航空地方気象台でも、地表摩擦などの影響を避けるため、風向風速計を地上10mの高さに設置しています。
風速を比較するときに測定高さをそろえる必要があるのは、この高さによる違いがあるためです。
上空ほど必ず強いわけではなく風速差は大気の状態でも変わる
地上付近では摩擦で弱まりやすい一方、実際の大気では高度による風速変化は一定ではありません。気象庁の航空気象解説でも、下層ほど風が弱い場合だけでなく、下層ほど風が強い場合や、上層ほど風が弱い場合も示されています。
これは、気圧配置、前線、低層ジェット、安定度などによって、鉛直方向の風速分布が変わるからです。したがって、「高いほど必ず強風」という単純な関係ではなく、地上摩擦を基本にしつつ、その日の大気構造が重なって風速差が決まります。
谷や峠では周囲より風速が大きくなることがある
気象庁は、地形の影響によって風速が変化し、谷を吹き抜ける風では周囲との風速差が大きくなる場合があるとしています。
谷や峠では空気の流れる方向が地形によって制限され、風が特定の通路に集まりやすくなります。その結果、近くの平地より強い風になることがあります。逆に、山や建物の風下では流れが遮られて弱くなる場所もあります。
つまり、数kmしか離れていなくても、開けた場所と谷間では風速が一致しないことがあります。
建物や樹木の多い場所では風が乱れやすい
NWSは、地表の障害物との摩擦によって渦や乱流が生じ、その強さは障害物の大きさ、地表の粗さ、風速、大気の安定度によって変わると説明しています。
都市部では建物、郊外では樹木や起伏が風を弱めたり乱したりします。一方、海上や広い平野では障害物が少なく、同じ広域風でも地上付近まで比較的強い風が保たれやすくなります。
観測地点の周囲環境が重要なのは、この局地的な摩擦と乱流の違いがあるためです。
同じ天気図でも場所ごとの風速は一致しない
NWSは、風速の大きな基本要因として気圧傾度を挙げていますが、地上では摩擦や地形の影響によって、天気図から予想される風速と実際の局地風速が異なることがあるとしています。
そのため、同じ低気圧の影響下でも、海岸、都市、谷、山麓では観測値に差が出ます。気圧配置は共通の土台ですが、観測地点の高さ・地形・地表状態が最終的な風速を変えます。
風速を比べるときは「時間・高さ・場所」をそろえる
風速の比較で最も重要なのは、比較条件をそろえることです。平均風速と瞬間風速を混ぜないこと、測定高さを確認すること、観測地点の地形や周囲環境を確認することが必要です。
同じ地域で異なる風速が観測されても、それだけでどちらかが間違っているとは限りません。風速は、時間平均の取り方、高さ、摩擦、地形、乱流といった条件によって自然に違う値になります。
関連して読みたい記事
参考資料
- 気象庁「風について」
- 気象庁「航空機の離着陸時における風との関わり」
- 関西航空地方気象台「風向・風速」
- NOAA/National Weather Service「Prevailing Winds」

コメント