結論からいうと、雨が降ると川の水量が増えるのは、流域に降った雨の一部が地表を流れ、別の一部が土や地下を通りながら、最終的に沢や川へ集まるからです。 川は一本の水路だけで成り立っているのではなく、その周囲に広がる「流域」全体から水を集めています。そのため、川の上流や支流の周辺に降った雨も、時間をかけて本流へ集まり、流量を増やします。
ただし、降った雨がすべてすぐ川へ入るわけではありません。植物に受け止められて蒸発する水、地中へしみ込む水、一時的に土壌へ蓄えられる水もあります。そのため、同じ雨量でも、雨の強さ・降り続く時間・それまでの土壌の湿り具合・地質・土地利用・流域の大きさなどによって、川の増え方は大きく変わります。
川は「流域全体」から水を集めている
川へ水を集める土地の範囲を「流域」と呼びます。
山や丘に降った雨は、地形の高い場所から低い場所へ流れ、小さな沢へ集まります。沢どうしが合流して支流になり、支流がさらに本流へ集まります。
そのため、ある地点の川の水量は、その地点だけに降った雨ではなく、上流側の広い流域に降った雨の影響を受けます。
気象庁の「流域雨量指数」も、河川上流域に降った雨が地表面や地中を通り、時間をかけて川へ流れ出し、さらに下流へ流れる過程を計算しています。
理由1:雨の一部が地表を流れて川へ入る
雨が地面に降ると、その一部は土の中へしみ込みます。しかし、すべての雨が地中へ入れるわけではありません。
短時間に強い雨が降ったり、地面がすでに水を多く含んでいたりすると、しみ込みきれない雨水が地表を流れます。これを表面流や地表流と呼びます。
地表を流れる水は、斜面の低い方向へ進み、側溝、小さな谷、沢などを通って川へ入ります。
この水は地下水より速く川へ到達しやすいため、強い雨の後に川の水量が急増する主な原因の一つになります。
理由2:地中へしみ込んだ雨も時間差で川へ届く
雨水のうち、土へしみ込んだ分が川と無関係になるわけではありません。
USGSは、地中へ浸透した水の一部が地下水となり、時間をかけて川底や河岸から川へ流れ込むと説明しています。
地表流が「速く川へ届く水」だとすれば、土壌中や地下水を通る水は「ゆっくり届く水」です。
このため、雨がやんだ後もしばらく川の水量が多い状態が続くことがあります。また、雨が何日も降っていないのに川が流れ続けるのも、地下水が川を支えているためです。
雨がやんでも川の水量がすぐ減らないのはなぜ?
流域の端や山の上流部に降った雨が、川の観測地点まで到達するには時間がかかります。
雨水は、地表を流れるもの、土壌中を移動するもの、地下水としてゆっくり流れるものなど、さまざまな経路を通ります。
さらに、支流へ入った水は本流を下流へ流れなければなりません。
そのため、雨のピークと川の流量のピークには時間差が生じます。小さく急な流域では比較的早く増水し、大きな流域では広い範囲から水が集まるため、より長い時間をかけて水位・流量が上がる場合があります。
理由3:強い雨ほど川へ直接流れ出す割合が増えやすい
土壌が水を吸い込める速さには限界があります。
弱い雨なら多くが地中へしみ込めても、激しい雨が短時間に降ると、土壌が吸収できる速度を上回り、地表流が増えます。
USGSも、浸透量を左右する重要な要因として、降水量だけでなく降雨強度や継続時間を挙げています。
このため、同じ合計50mmの雨でも、長時間に分散して降る場合と、短時間に集中して降る場合では、川の増水のしかたが違うことがあります。
集中豪雨では短時間に大量の雨水が川へ集まりやすく、流量が急増する危険があります。
理由4:すでに土が湿っていると増水しやすい
雨が降る前の土壌の状態も重要です。
乾いた土には水を一時的に蓄える余地があります。しかし、何日も雨が続いて土壌がすでに湿っていると、新たに降った雨をためられる余地が小さくなります。
すると、同じ雨量でも地表流や川への流出が増えやすくなります。
気象庁の流域雨量指数では、降った雨が地中に浸透したり、そこから河川へ流れ出したりする過程をタンクモデルで表現しています。この考え方からも、過去の雨が現在の川の増水に影響することがわかります。
理由5:都市では雨が川へ早く集まりやすい
同じ雨でも、森林と市街地では川への流れ方が違います。
森林や草地では、雨水の一部が土へしみ込みます。植物の葉や枝に受け止められ、そのまま蒸発する水もあります。
一方、市街地では道路、駐車場、建物の屋根など、水を通しにくい面が多くなります。USGSは、都市化によって浸透できる面積が減ると、より多くの雨水がより速く川へ流れ込み、洪水の可能性が高まると説明しています。
気象庁も、都市域では地面がコンクリートなどで覆われているため、雨水の多くが地表を流れやすいことを流域雨量指数の説明で示しています。
森林では雨水が一時的にゆっくり流れやすい
森林では、樹冠に当たった雨の一部が地面へ届く前に蒸発します。また、地面へ届いた水は土へしみ込み、土壌や地下水を通って川へ向かいます。
森林総合研究所は、森林に降った雨の10〜30%ほどが樹冠などから蒸発する「遮断蒸発」があり、森林流域ではこうした作用や土壌への浸透などが洪水時の流量ピークを抑える要因になると説明しています。
ただし、森林があればどんな豪雨でも増水しないわけではありません。雨が非常に強い、長時間続く、土壌が飽和しているといった条件では、森林流域でも大量の水が川へ流れ込みます。
川の水量は「雨量」だけでは決まらない
川がどれくらい増水するかは、降った雨の量だけを見ても判断できません。
主な条件には次のようなものがあります。
- 雨の強さ:強いほど地表流が増えやすい
- 雨の継続時間:長いほど土壌が湿り、流出しやすくなる
- 先行降雨:すでに土が湿っていると新たな雨が流れ出しやすい
- 地質・土壌:水がしみ込みやすいかどうかが変わる
- 土地利用:森林、農地、市街地などで流出の割合が違う
- 地形:急な斜面では水が速く集まりやすい
- 流域面積:広い流域ほど多くの場所から水が集まる
そのため、同じ100mmの雨でも、流域によって川の水量の増え方は異なります。
小さな川は急に増水しやすいことがある
山地の小河川や短い沢では、流域が小さく、斜面も急な場合があります。
こうした場所では、降った雨が短時間で沢へ集まり、流量が急激に増えることがあります。
一方、大河川では広い流域から水が集まるため、上流の雨が下流へ届くまで時間がかかります。ただし、広範囲で大雨が降れば、非常に大量の水が本流へ集まり、大きな洪水になる可能性があります。
つまり、小さな川は「急に」、大きな川は「広い範囲の雨を集めて大きく」増水することがあると考えるとわかりやすいでしょう。
雨の降っていない場所でも川が増えることがある
自分がいる場所で雨が降っていなくても、川の上流で大雨が降っていれば水量は増えます。
川は流域全体から水を集めているためです。
特に長い川では、上流域で降った雨が時間をかけて下流へ到達します。そのため、下流では晴れていても水位が上がる場合があります。
気象庁が洪水危険度を判断するときに「上流域に降った雨」を重視するのは、このためです。
川の水位と水量は同じものではない
川の増水を考えるとき、「水位」と「流量」は区別するとわかりやすくなります。
水位は、水面が基準からどれくらい高いかを表します。
流量は、川のある断面を1秒間にどれだけの水が通過するかを表し、通常は立方メートル毎秒で示されます。
雨で川へ流れ込む水が増えると、多くの場合は流量が増え、それに伴って水位も上昇します。
ただし、同じ流量でも川幅や川底の形が違えば水位は異なるため、「水位が何cm上がったか」だけで流量を単純に比較することはできません。
雨が降ると川が増える流れを順番に整理すると
- 流域に雨が降る
- 一部は植物に受け止められたり蒸発したりする
- 一部は土へ浸透し、土壌水や地下水になる
- しみ込みきれない水は地表を流れ、沢や川へ入る
- 地中の水も時間をかけて川へ流れ出す
- 支流や沢の水が本流へ合流する
- 流域全体から集まる水が増え、川の流量・水位が上昇する
まとめ
雨が降ると川の水量が増える最大の理由は、流域に降った雨の一部が地表や地中を通り、最終的に沢や川へ集まるからです。
- 川は上流を含む流域全体から水を集めている
- 強い雨では地中へしみ込みきれない水が地表を流れやすい
- 地中へしみ込んだ雨も、地下水として時間をかけて川へ入る
- 雨のピークと川の流量ピークには時間差がある
- 先に雨が続いて土が湿っていると増水しやすい
- 市街地では水を通しにくい面が多く、雨水が速く川へ集まりやすい
- 雨量だけでなく、雨の強さ、土壌、地質、土地利用、流域の形が増水量を左右する
つまり、川の増水は「川に直接降った雨が増える」だけで起こるのではありません。山や街を含む流域全体に降った雨が、速い経路と遅い経路を通って次々に川へ集まることで、水量が増えていくのです。

コメント