同じ星を見ているのに、空高くあるときは白っぽく見え、地平線近くでは赤みを帯びて見えることがあります。また、望遠鏡やカメラでフィルターを変えると、同じ星でも記録される「色」の印象が変わります。さらに、変光星の中には星そのものの表面温度が時間とともに変化し、実際の色まで変わるものがあります。
つまり、同じ星の色が変わって見える原因には、大きく分けて二つあります。一つは地球大気や観測波長などによって見かけの色だけが変わる場合、もう一つは恒星自身の温度や状態が変化して本来の色も変わる場合です。
星の色を時間変化として考えるときは、この二つを区別することが重要です。
星本来の色は主に表面温度で決まる
恒星は広い波長範囲の光を放射していますが、どの波長の光が相対的に強いかは表面温度によって変わります。OpenStaxは、高温の星ほど青白く、低温の星ほど赤く見える傾向があると説明しています。
そのため、星本来の色は表面温度を知る手がかりになります。温度が大きく変わらない通常の恒星なら、本来の色も短時間で大きく変わるわけではありません。
一方で、地球から観測される色には、大気や星間物質、フィルターなどが加わるため、「見えた色=星本来の色」とは限りません。
同じ星でも地平線近くでは赤みを帯びて見える
星が天頂近くにあるとき、その光は比較的短い距離だけ地球大気を通ります。ところが地平線近くでは、大気を斜めに長く通過します。
大気中では短い波長の青い光ほど散乱されやすいため、光の通り道が長くなるほど、観測者へ直接届く光から青い成分が相対的に減ります。その結果、同じ星でも低い空では赤みがかって見えることがあります。
国立天文台は、カノープスが本来は白く輝く恒星であるにもかかわらず、日本では低空に見えるため、地球大気の影響を受けて暗く、赤みがかって見えると説明しています。
つまり、同じ夜の中で星の色が少し変わって見えても、それだけで恒星の表面温度が変化したとは言えません。星の高度が変わり、大気を通る距離が変わった可能性があります。
時刻が変わると星の高度が変わる
一晩の中で星が東から昇り、南の空を通って西へ沈むように見えるのは、主に地球の自転による日周運動です。
そのため、同じ星でも観測時刻によって高度が違います。昇った直後や沈む直前は低空にあり、南中前後ではより高い位置へ来る星があります。
この高度の変化は、星が通過する大気の量を変えます。低い時間帯では赤みや減光の影響を受けやすく、高い時間帯では比較的本来の色に近い状態で観測しやすくなります。
「同じ星なのに時間によって色が違う」と感じる場合、まず観測時刻と高度を確認することが大切です。
大気の透明度や微粒子でも見える色は変わる
大気は毎日同じ状態ではありません。水蒸気、ちり、エアロゾル、薄雲などの量が変わると、波長ごとの光の通りやすさも変化します。
特に低空では光が長い距離の大気を通るため、こうした違いの影響が大きくなります。同じ高度の同じ星でも、よく澄んだ夜と、薄いもややちりの多い夜では、色の印象が少し違って見えることがあります。
この変化も、恒星そのものが短時間で変化したわけではありません。地球側の光の通り道が変化したためです。
星間塵は星を本来より赤く見せる
地球大気だけでなく、星と地球の間にある星間塵も観測される色を変えます。
OpenStaxは、星間塵が短い波長の光をより強く散乱・吸収するため、遠方の星が本来より赤く見える「星間赤化」が起こると説明しています。
ただし、星間赤化は通常、一晩の中で大きく変化するような現象ではありません。時間による色変化を説明するより、「観測された色が本来の色と違う理由」として重要です。
天文学者が星の本来の表面温度を求めるときは、大気や星間赤化の影響を補正して考えます。
観測するフィルターを変えると同じ星でも「色」が変わる
天文学では、星の光をそのまま一つの明るさとして測るだけでなく、特定の波長帯を通すフィルターを使います。
代表的なUBV測光では、Uは紫外線付近、Bは青色付近、Vは可視域の一部を測ります。OpenStaxは、異なるフィルターで得た等級差を色指数として表し、星の表面温度を推定する方法を説明しています。
同じ星でも、青色フィルターで測った値と赤い波長側で測った値は同じではありません。これは星が単色の光を出しているのではなく、波長ごとに異なる強さで放射しているからです。
そのため、「写真Aでは青く、写真Bでは赤く見える」という違いがあっても、まず使用したフィルターや観測波長を確認する必要があります。
画像処理で表示される色と肉眼の色は同じとは限らない
天体写真では、複数のフィルターで撮影した画像を組み合わせたり、人間の目には見えない赤外線や紫外線の情報へ見やすい色を割り当てたりすることがあります。
そのため、画像に表示された色が、そのまま肉眼で見える星の色を表しているとは限りません。
科学画像では、色が温度差、波長の違い、化学組成などを読み取りやすくするために使われることがあります。写真の色を比較するときは、観測波長と画像処理方法を確認することが重要です。
星自身の温度が変われば本来の色も変わる
ここまでの多くは見かけの変化でしたが、恒星そのものの色が時間とともに変化する場合もあります。
代表例が脈動変光星です。OpenStaxは、脈動変光星が膨張・収縮すると、直径だけでなく温度や全体の色も変化すると説明しています。
星が膨張して表面温度が下がれば、放射は相対的に長い波長側へ寄り、赤みが増える方向になります。収縮して温度が上がれば、より短い波長側の割合が増えます。
この場合は、地球大気による見かけの色変化ではなく、恒星の物理状態そのものが変化しています。
ミラでは膨張と収縮に伴って温度が変わる
国立天文台が紹介するくじら座のミラは、約332日の周期で大きく明るさが変わる長周期変光星です。
ミラは進化の終盤にあり、星自身が膨張と収縮を繰り返しています。国立天文台によると、膨張すると温度が下がって暗くなり、収縮すると温度が上がって明るくなります。
表面温度が変われば放射の波長分布も変わるため、色指数やスペクトルを追跡すると、星自身の温度変化を調べることができます。
このような長い周期の規則的な変化は、低空で一時的に赤く見える現象とは原因が異なります。
短時間の色のちらつきは星自身の温度変化とは限らない
地平線近くの明るい恒星では、肉眼で赤や青に細かくちらついて見えることがあります。
こうした秒単位の不規則な変化を、恒星表面の温度が毎秒大きく変化していると考えるのは適切ではありません。地球大気の揺らぎが恒星光の進み方に影響し、瞬きとして観測されることが主な原因です。
この瞬きの強さや条件については別記事で詳しく扱いますが、色の時間変化を判断するときも、「短時間で不規則か」「長い周期で規則的か」という時間スケールが重要な手がかりになります。
本当の色変化を調べるには色指数を時間で追う
人間の目で「今日は少し赤い」と判断するだけでは、大気や明るさ、観測環境の影響を受けやすくなります。
そこで天文学では、BやVなど標準化された複数のフィルターで明るさを測り、その差である色指数を比較します。
同じ星を同じ測光系で継続観測し、大気の影響を補正しながら色指数が周期的に変化していれば、恒星自身の温度変化を示す手がかりになります。
反対に、星が低空になったときだけ赤みが増えたり、観測条件の悪い夜だけ値がずれたりするなら、大気側の影響を疑う必要があります。
「距離が変わったから色が変わる」わけではない
同じ星までの距離が少し変わっても、それだけで本来の色が変わるわけではありません。
OpenStaxは、星を遠くへ移動させれば見かけの明るさは変わりますが、すべての波長が同じ割合で弱くなるなら色そのものは変わらないと説明しています。
したがって、同じ恒星の短期的な色変化を説明するとき、距離変化を第一の原因として考える必要は通常ありません。大気、観測波長、恒星自身の温度変化などを先に確認します。
色の変化は原因によって時間スケールが違う
同じ星の色が変わって見えたときは、どれくらいの時間で変化したかを確認すると原因を整理しやすくなります。
一晩の中で星が低くなるにつれて赤みが増すなら、大気を通る距離の増加が候補になります。秒単位で不規則に色がちらつくなら、大気の揺らぎの影響が考えられます。
一方、数日から数百日など一定の周期で色指数が変わり、同時に明るさやスペクトルも規則的に変化するなら、脈動など恒星自身の変化を調べる必要があります。
「いつ変わったか」「どの高さで見たか」「どのフィルターを使ったか」を合わせて見ることで、見かけの変化と実変化を切り分けやすくなります。
まとめ
同じ星でも時間や観測条件によって色が違って見えるのは、地球側の観測条件と、恒星自身の物理変化という二つの原因があるからです。
地平線近くでは光が長い距離の大気を通るため、青い光が散乱されやすくなり、白い星でも赤みを帯びて見えることがあります。観測時刻による高度の変化、大気の透明度、使用するフィルターや画像処理も、観測される色を変えます。
一方、脈動変光星のように恒星自身の表面温度が変化する場合は、本来の放射の波長分布も変わり、色が物理的に変化します。
したがって、星の色が変わって見えたときは、「星自身の温度が変わったのか」「大気や観測方法で見え方が変わったのか」を、時間スケール、高度、観測波長、色指数などから切り分けることが大切です。

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