太陽系の惑星はすべて太陽のまわりを公転していますが、地球から見たときの位置関係によって「内惑星」と「外惑星」に分けて考えることがあります。
内惑星は、地球の公転軌道より内側を回る水星と金星です。外惑星は、地球の公転軌道より外側を回る火星、木星、土星、天王星、海王星です。
この分類が重要なのは、単に太陽からの距離を二つに分けるためではありません。地球の軌道を基準に内側か外側かが変わると、地球から見える太陽との角度、見やすい時間帯、合や衝の起こり方、満ち欠けの見え方まで大きく変わるからです。
内惑星・外惑星は「地球の軌道」が基準
内惑星と外惑星を理解するとき、最も大切なのは基準が地球であることです。
水星の軌道長半径は約0.39天文単位、金星は約0.72天文単位で、どちらも地球の1天文単位より小さく、太陽に近い側を回っています。
一方、火星は約1.52天文単位、木星は約5.20天文単位で、その外側にも土星、天王星、海王星が続きます。OpenStaxの惑星軌道データでも、この順序が確認できます。
つまり「内」と「外」は惑星内部の構造を指す言葉ではなく、地球の公転軌道に対する相対的な位置を表しています。
英語のinner planetsとは意味が違う場合がある
ここは混同しやすい点です。
日本語の天文用語で「内惑星」は通常、水星と金星を指します。これは英語ではinferior planetsと呼ばれる分類に対応します。外惑星は火星以遠で、英語ではsuperior planetsと呼ばれます。
一方、英語でinner planetsという場合、水星・金星・地球・火星という「太陽系内側の4つの岩石惑星」を指す使い方もあります。outer planetsは木星・土星・天王星・海王星を指すことがあります。
したがって、内惑星・外惑星という言葉を読むときは、「地球軌道を基準にしたinferior/superior planetsの意味なのか」「太陽系内側・外側の惑星群という意味なのか」を文脈で区別する必要があります。
内惑星は地球から見ると太陽から大きく離れない
水星と金星は地球より内側を公転しているため、地球から見た方向は常に太陽の近くに限られます。
NASAは、水星と金星について、地球より太陽に近い軌道を回るため、地球の朝や夕方の空で太陽の近くに見えると説明しています。
このため、水星や金星が真夜中の空高くに見えることはありません。
太陽が沈んだ直後の西の空か、太陽が昇る前の東の空が主な観望時間になります。
内惑星には「最大離角」がある
地球から見た惑星と太陽の角度を離角と呼びます。
内惑星は太陽からどこまでも離れて見えるわけではなく、軌道の幾何学によって最大の離角が決まります。
国立天文台暦計算室は、太陽と内惑星の地心真角距離が最大になる瞬間を最大離角と説明しています。
太陽の東側に最も離れて見えるときを東方最大離角といい、このころ内惑星は夕方の西空で観察しやすくなります。太陽の西側に最も離れて見えるときを西方最大離角といい、このころは明け方の東空で見やすくなります。
金星が「宵の明星」「明けの明星」と呼ばれる理由も軌道にある
金星は非常に明るく、最大離角のころには太陽から比較的大きく離れて見えます。
そのため夕方の西空に見える時期には「宵の明星」、明け方の東空に見える時期には「明けの明星」として古くから親しまれてきました。
これは金星が夕方だけの星、明け方だけの星という意味ではありません。金星が地球より内側の軌道を回っているため、地球・太陽・金星の位置関係によって見える時間帯が入れ替わるのです。
内惑星には内合と外合がある
地球から見て惑星が太陽と同じ方向に来ることを「合」と呼びます。
内惑星では、惑星が地球と太陽の間に来る「内合」と、太陽の向こう側に来る「外合」の二種類があります。
国立天文台暦計算室は、水星・金星ではこの二種類の合が起こると説明しています。
内合のとき、地球・内惑星・太陽がほぼ一直線になります。軌道面の傾きまで一致して惑星が太陽面を横切れば、水星や金星の日面経過として観測されます。
内惑星は大きな満ち欠けを見せる
水星や金星を望遠鏡で観察すると、月のように満ち欠けして見えます。
NASAは、内惑星が地球と太陽の間を通れるため、細い三日月状から大きく照らされた形まで、広い範囲の位相を見せると説明しています。
内合に近いと地球からは夜側を多く見るため細い形になり、外合に近いと昼側を多く見るため丸く近い形になります。
ただし外合付近では太陽の方向に近いため、明るく照らされていても観察しにくくなります。
外惑星は太陽の反対側まで見える
火星より外側の惑星は、地球より外側の軌道を回っています。
そのため地球から見ると、太陽と同じ方向だけでなく、太陽と正反対の方向にも位置できます。
この位置関係が「衝」です。
国立天文台暦計算室は、外惑星が太陽と地球をはさんで反対側に来るときを衝とし、このころ外惑星は地球に近づき、明るくなり、ほぼ一晩中見えるため観望の好機になると説明しています。
外惑星には「衝」があるが内惑星にはない
衝では、地球が太陽と外惑星の間に入ります。
夕方に太陽が西へ沈むころ、外惑星は東から昇り、真夜中ごろに高くなり、明け方に西へ沈みます。
NASAも、外惑星は衝のころ地球から見て太陽と反対側に位置し、観測しやすくなると説明しています。
一方、水星と金星は地球軌道の内側にいるため、地球をはさんで太陽と反対側へ回り込むことができません。そのため内惑星には衝がありません。
外惑星は真夜中にも観察できる
外惑星が衝の近くにあるときは、太陽から空の上で大きく離れています。
そのため火星、木星、土星などは、条件がよければ夜中に長時間観察できます。
これは、水星や金星が太陽の近くから離れられないこととの大きな違いです。
「内惑星か外惑星か」という分類は、その惑星をいつ観測しやすいかを考える実用的な目安にもなります。
外惑星の合は太陽の向こう側で起こる
外惑星にも「合」があります。
外惑星の合では、地球から見て太陽と惑星がほぼ同じ方向に並び、太陽が地球と外惑星の間に位置します。
このころ外惑星は太陽の光に近いため観測しにくくなります。
その後、地球と外惑星の公転によって見かけの位置関係が変化し、再び夜空で観察しやすい配置へ移っていきます。
内惑星と外惑星では逆行の見え方にも違いがある
惑星は恒星を背景に東向きへ移動する「順行」を基本としますが、ある時期には一時的に西向きへ戻るように見える「逆行」が起こります。
国立天文台暦計算室は、内惑星では内合の前後、外惑星では衝の前後に逆行が見られると説明しています。
惑星そのものが本当に太陽のまわりを逆向きに公転し始めるわけではありません。
地球と惑星の公転速度・軌道位置が違うため、動いている地球から見た見かけの方向が一時的に逆転します。
公転周期の違いも内外の位置関係に結び付いている
太陽に近い惑星ほど公転周期は短く、遠い惑星ほど長くなる傾向があります。
OpenStaxの軌道データでは、水星は約88日、金星は約225日、地球は約365日で太陽を一周します。火星は約687日、木星は約11.86年です。
この違いがあるため、地球と各惑星の位置関係は一定ではなく、内合、外合、最大離角、衝などが周期的に繰り返されます。
つまり内惑星・外惑星の見え方は、軌道の「場所」だけでなく、それぞれ異なる公転速度とも結び付いています。
内惑星・外惑星は岩石惑星・巨大惑星の分類とは別
内惑星と外惑星を、岩石惑星と巨大惑星の分類と同じものだと考えるのは正しくありません。
内惑星の水星・金星はどちらも岩石惑星ですが、外惑星には岩石惑星の火星が含まれます。そのさらに外側に木星・土星・天王星・海王星という巨大惑星があります。
つまり、地球軌道を基準にした「内惑星・外惑星」と、組成や構造に基づく「地球型惑星・巨大惑星」は別の分類です。
一つの惑星でも、目的によって複数の分類に属します。
この分類は地球から観測するときに特に意味を持つ
内惑星と外惑星という区別は、地球から惑星を観測する際に非常に便利です。
水星・金星なら「最大離角はいつか」を見れば観測好機を判断しやすくなります。火星や木星などなら「衝はいつか」を調べることで、一晩中見えやすく、地球にも比較的近い時期を選べます。
つまりこの分類は、太陽系の惑星をただ暗記するためではなく、「地球からどんな見え方になるか」を予測するための幾何学的な分類です。
地球自身は内惑星にも外惑星にも入らない
この分類では地球の軌道そのものを境界としているため、地球自身は内惑星にも外惑星にも含めません。
水星と金星は地球より内側、火星以遠は地球より外側です。
この点も、「太陽系の内側4惑星/外側4惑星」という別の分類との違いを示しています。
基準が地球だからこそ、地球から見た惑星現象を簡潔に整理できるのです。
W01151・W01170との違い
W01151では、惑星がなぜ恒星のまわりを公転し続けるのかを、重力と慣性から説明しました。
一方、W01160の中心は、公転する惑星を地球軌道より内側・外側に分けると、なぜ観測上の見え方が二つの型に分かれるのかという関係です。
後続のW01170では、内惑星と外惑星の位置関係をより詳しく扱い、合・衝・離角・見かけの運動がどのような幾何学で成り立つかという「仕組み・構造」へ重点を置きます。
ここでは分類が生まれる理由と、その分類が観測上どんな違いにつながるかに焦点を絞っています。
まとめ
水星と金星が内惑星、火星以遠が外惑星と呼ばれるのは、地球の公転軌道を基準にして、太陽に近い側を回るか遠い側を回るかが違うからです。
内惑星は地球から見ると太陽から大きく離れず、最大離角、内合、外合を持ち、月のような大きな満ち欠けを見せます。真夜中に太陽の反対側へ来ることはできず、衝は起こりません。
外惑星は地球軌道の外側を回るため、地球から見て太陽の反対側へ来る「衝」があります。衝のころは地球に近くなり、明るく、ほぼ一晩中観察しやすくなります。
つまり内惑星・外惑星という分類は、惑星の材質を分ける分類ではなく、地球と惑星の軌道配置から生まれ、地球からの見え方を予測するための分類なのです。

コメント