惑星の「大きさ」は、ふつう半径や直径で表します。しかし、その半径は単に材料を並べた結果ではありません。
惑星内部では、自分自身の重力が物質を中心へ押し縮めようとします。一方、圧縮された岩石・金属・氷・ガスは圧力を生み、その圧力の差が上にある物質の重さを支えます。惑星全体が大きく縮んだり膨らんだりせず安定しているとき、内部ではこの重力と圧力のつり合いが成り立っています。
さらに、同じ圧力を受けたときに物質がどれくらい縮むかは、鉄・岩石・水・水素・ヘリウムなどの組成や温度によって違います。中心から表面まで、その場所ごとの重力・圧力・密度を積み重ねた結果として、惑星の半径が決まります。
つまり惑星の大きさは、質量を持つ物質が自己重力で圧縮され、その圧縮を内部圧力が支える「半径方向の構造」の結果なのです。
惑星の大きさはまず「半径」で表す
惑星の大きさを比較するとき、最も基本になる量が半径です。
半径が分かれば、ほぼ球形とみなした場合の体積をV=4πR³/3で求められます。半径は3乗で体積に効くため、半径が2倍なら体積は約8倍になります。
このため「半径が少し違うだけ」に見えても、内部に入る物質量や体積には大きな差が生まれます。
一方、半径は質量とは別の物理量です。同じくらいの半径でも、内部に高密度の金属が多い惑星と、軽いガスが多い惑星では質量が大きく異なることがあります。
惑星は自己重力によってほぼ球形になる
小さな岩石は角ばった形を保てますが、天体が十分大きくなると自己重力が物質の強度を上回るようになります。
国立天文台が紹介する国際天文学連合の惑星定義でも、十分な質量によって自己重力が固体としての力を上回り、重力平衡形状、つまりほぼ球状になることが条件の一つとされています。
高く突き出た部分には中心方向への重力が働き、長い時間では物質がより安定な形へ移動します。そのため惑星規模では、全体として中心からほぼ同じ距離に表面が来る形へ近づきます。
ただし自転している惑星では赤道方向に少しふくらむため、完全な球ではありません。
内部では「上にある物質の重さ」を下の層が支えている
惑星の内部へ進むほど、上に積み重なる物質の量は増えます。
そのため深い場所ほど大きな圧力が必要になります。中心へ向かう重力で物質が押される一方、内側ほど高い圧力が外向きに支えることで、惑星全体は大きく崩れずに存在できます。
このように、各深さで重力による重さと圧力の差がつり合っている状態を静水圧平衡と呼びます。
惑星の半径方向の構造を考えるときは、「中心から何km」という幾何だけでなく、「その場所でどれくらいの圧力が必要か」を同時に考える必要があります。
中心に近づくほど圧力が高くなる
表面では、その上にほとんど物質がないため圧力は低くなります。
一方、中心近くでは上に惑星の大部分が載っているため、非常に大きな圧力になります。
この高圧によって、地上ではほとんど縮まないように見える岩石や金属も圧縮されます。水素のような物質では、巨大惑星内部の高圧によって地上とは大きく異なる状態になります。
したがって惑星内部の密度は、表面から中心まで一定ではありません。深いほど圧力が高くなり、同じ物質でもより高密度になるのが基本です。
「状態方程式」が圧力と密度を結び付ける
惑星内部を計算するときに重要なのが、物質の圧力・密度・温度の関係です。
鉄、ケイ酸塩、水、分子状水素、金属的な水素など、物質によって「圧力を上げたときにどれだけ密度が増えるか」が違います。
この関係を物理学では状態方程式として表します。
惑星内部モデルでは、重力でどれだけ圧力が必要かを計算し、その圧力と温度で物質がどれくらいの密度になるかを状態方程式から求めます。その密度を次の層の質量計算へ使う、という形で中心から表面まで構造をつないでいきます。
質量が増えても半径が同じ割合では増えない
もし物質がまったく圧縮されないなら、同じ組成では質量が増えるほど体積も単純に増え、半径も一定の規則で大きくなるはずです。
しかし実際の惑星では、質量が増えるほど自己重力も強くなります。
OpenStaxは、惑星の質量が増えると重力による圧縮が強まり、岩石のような物質もより密に詰め込まれるため、半径は質量ほど急には増えないと説明しています。
これが「地球の2倍の質量なら半径も2倍」という単純な比例にならない理由です。
半径と質量を組み合わせると平均密度が分かる
惑星の半径だけでは内部の物質量は分かりません。
しかし質量も測定できれば、体積Vと質量Mから平均密度ρ=M/Vを求められます。
OpenStaxは、系外惑星について半径と質量の両方を測ることで平均密度を計算し、岩石主体か、ガスを多く持つかなどを考える重要な手掛かりになると説明しています。
半径は「外側までどれくらい広がっているか」、質量は「どれだけ物質があるか」、平均密度はその二つを結び付ける量です。
平均密度は内部構造を調べる最初の手掛かりになる
同じ半径でも、質量が大きければ平均密度は高くなります。
高密度なら鉄や岩石など重い成分が多い可能性を考え、低密度なら水・氷や水素・ヘリウムの厚い層を考えることができます。
ただし平均密度だけで内部構造が一意に決まるわけではありません。鉄の核と岩石マントルの割合、厚い水層、薄い岩石コアとガス外層など、異なる内部構造が似た平均密度を作る場合があります。
そのため平均密度は「中身を確定する答え」ではなく、内部モデルの候補を絞る入口です。
惑星内部は中心から外側へ異なる層を持つ
多くの惑星では、内部の密度や組成は一様ではありません。
岩石惑星では金属質の核、岩石質のマントル、地殻などに分かれます。巨大惑星では、外側の低圧な水素・ヘリウム層から、深部の高密度流体、さらに重元素を多く含む中心領域へ連続的に状態が変化すると考えられています。
こうした層ごとに密度が違うため、同じ総質量でも「どの物質をどこへ配置するか」によって半径は変わります。
惑星の半径は、単一の平均密度だけではなく、中心から表面までの密度分布を積み重ねた結果です。
固体惑星でも「硬さ」だけで形が支えられているわけではない
地球の地殻やマントルは、短い時間では固体として振る舞います。
しかし惑星全体の大きさというスケールでは、自己重力が非常に大きいため、長い時間では内部は重力平衡に近い形へ調整されます。
山や海溝のような局所的な凹凸は岩石の強度で支えられますが、惑星全体を角ばった形に保つほどではありません。
そのため惑星の半径構造を考えるときは、局所的な固体強度よりも、全体としての重力と圧力のつり合いが基本になります。
自転すると赤道半径と極半径が違ってくる
惑星が自転していると、赤道付近では回転による遠心的な効果が働きます。
そのため高速自転する惑星では、赤道方向にふくらみ、極方向が少しつぶれた形になります。
この場合、「惑星の半径」といっても赤道半径、極半径、平均半径など複数の表し方があります。
惑星の大きさを精密に比較するときは、どの半径を使っているのかを確認する必要があります。
巨大惑星には地球のような固体表面がない
地球や火星では、固体表面までの距離を半径として考えやすくなります。
しかし木星や土星のような巨大惑星では、上空の薄い大気から深部の高密度流体まで状態が連続的に変化し、「ここから下が地面」という明確な境界がありません。
そのため巨大惑星の半径は、ある決められた大気圧になる高さなどを基準として定義することがあります。
つまり惑星半径は、天体によって「固体表面までの距離」と「大気中の基準となる層までの距離」で意味が少し違います。
系外惑星の半径はトランジットの減光から測れる
太陽系外惑星では、惑星の円盤を直接見て定規で直径を測ることはほとんどできません。
代表的な方法がトランジット観測です。惑星が恒星の前を横切ると、恒星の光の一部が遮られます。
NASAは、トランジットによる明るさの減少量と恒星の大きさが分かれば、惑星の半径を求められると説明しています。単純化すると、減光率は惑星と恒星の半径比の2乗に対応します。
つまり遠い惑星の大きさは、「どれだけ光を隠したか」という面積比から逆算できます。
トランジット半径は恒星半径の精度にも依存する
トランジットから直接分かるのは、惑星半径そのものではなく、主に「恒星に対して惑星がどれくらい大きいか」という比です。
そのため惑星の絶対的な半径を求めるには、恒星の半径を正確に知る必要があります。
恒星半径の見積もりがずれれば、惑星半径の見積もりも一緒にずれます。
惑星の「大きさ」という一つの数字にも、惑星だけでなく恒星の観測精度が組み込まれているのです。
大気があると観測波長によって「見かけの半径」が変わる
大気を持つ系外惑星では、どの波長で観測するかによって測定される半径が少し変わることがあります。
国立天文台のGJ 3470 bの観測では、可視光から近赤外線まで複数波長でトランジットを測り、波長によって見かけ上の惑星半径が異なることが示されました。
大気中の物質が特定の波長を吸収・散乱すると、その波長では大気のより高い層まで「光を遮る惑星」として見えるためです。
この意味で、系外惑星の観測半径は「硬い表面の位置」だけではなく、大気が光を通さなくなる高度も含みます。
大気の厚い惑星では半径が内部の固体部分より大きくなる
水素・ヘリウムに富む惑星では、低密度のガスが中心部からはるか外側まで広がることがあります。
そのため固体や高密度の内部が比較的小さくても、観測される半径は大きくなります。
国立天文台が2026年に報告した若い4つの惑星では、半径が地球の約5〜10倍ある一方、質量は約5〜15倍程度で、非常に低密度であることが明らかになりました。
この観測は、半径が「物質の総量」だけでなく、外層がどれほど低密度に広がっているかにも敏感な量であることを示します。
質量と半径の関係を理論モデルと比べると内部候補を絞れる
惑星の質量と半径が両方分かると、その点を理論的な質量‐半径関係と比較できます。
OpenStaxは、純鉄、岩石、水、水素など異なる組成を仮定したモデルでは、同じ質量でも異なる半径になることを示しています。
観測された惑星がどの理論曲線に近いかを見ることで、鉄に富むのか、岩石主体なのか、水やガスの厚い層を持つのかを推定できます。
ただし現実の惑星は複数の層を持つため、一本の理論曲線だけで内部を確定するのではなく、可能な内部構造の範囲を絞るために使います。
「大きさ」は一つの数字でも、その中には構造情報が入っている
半径だけを見ると、惑星の大きさは単純な長さに見えます。
しかしその半径は、内部の質量分布、組成、温度、圧力、大気の広がり、自転による扁平などを反映した最終的な境界です。
さらに観測では、固体表面、基準気圧面、光を遮る大気高度など、何を「外側」と定義するかによって半径の意味も少し変わります。
したがって惑星の大きさを理解するには、半径の数字だけでなく「その半径がどんな物理構造と観測定義から得られたか」を見る必要があります。
W01154との違いは「要因」ではなく「半径構造の成り立ち」
W01154では、惑星の大きさが質量だけでなく、組成、大気、年齢、形成位置などによってなぜ違うのかを扱いました。
一方、この記事の中心は、そうした条件を持つ惑星の内部で、どのように半径が物理的に成り立つかです。
自己重力によって必要な圧力が決まり、物質の状態方程式によって密度が決まり、その密度を中心から外側へ積み上げることで質量‐半径構造ができます。観測では、その半径をトランジットなどから測定します。
つまり「何が大きさを変えるか」と「大きさという構造がどう成立し、どう測られるか」を分けています。
W01174との違いは「比較」ではなく「構造モデル」
後続のW01174では、地球型惑星・巨大惑星・若い惑星などを比べ、なぜ天体や条件によって大きさの違いが生まれるのかを比較する予定です。
この記事では、惑星同士の違いを並べることより、どの惑星にも共通する「半径を構造として扱う方法」を中心にしています。
半径、体積、質量、密度、重力、圧力、状態方程式、観測半径という量がどうつながるかを理解することで、その後に惑星間の違いを比較しやすくなります。
まとめ
惑星の半径が内部の圧力と重力のつり合いで決まるのは、惑星自身の重力が物質を中心へ押し縮め、その重さを内部圧力が支えているからです。
深い場所ほど圧力は高くなり、鉄・岩石・水・水素・ヘリウムなどの物質は、組成と温度に応じて異なる密度になります。中心から外側へ、その場所ごとの質量・重力・圧力・密度をつなぐことで、惑星全体の半径構造が作られます。
半径と質量を両方測れば平均密度が分かり、理論的な質量‐半径関係と比べることで内部組成の候補を絞れます。系外惑星ではトランジットの減光から半径を求めますが、大気を持つ惑星では観測波長によって見かけの半径が変わることもあります。
つまり惑星の大きさは、外から測る一つの長さであると同時に、内部で重力・圧力・密度がどうつり合っているかを反映する構造量なのです。

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