なぜ銀河では冷たいガスから星が生まれ、星形成が自己調節されるのか?

銀河には何千億個もの星があるものもありますが、星は最初から銀河の中に完成した形で存在していたわけではありません。銀河の中にあるガスが集まり、冷え、密度を高め、自分自身の重力で縮むことで新しい星が生まれます。

ただし、銀河の中のガスがすべて一度に星へ変わるわけではありません。星が生まれると、その星自身が強い光や恒星風を放ち、さらに大質量星は最後に超新星爆発を起こします。これらは周囲のガスを温めたり吹き飛ばしたりして、次の星形成を抑えることがあります。一方で、圧縮されたガスから新たな星形成が始まる場合もあります。

つまり銀河の星形成は、冷たいガスが集まって星になる過程と、生まれた星が周囲のガスを変えるフィードバックが繰り返される循環として成り立っています。

目次

結論:冷たい高密度ガスが重力で収縮し、生まれた星のフィードバックが次の星形成を調節するから

星形成の出発点は、銀河に存在するガスです。特に、温度が低く密度の高い分子ガスが星の材料になります。ガス雲の中には密度のむらがあり、周囲より少し密度の高い場所では重力が強く働きます。

その場所が重力によってさらにガスを集め、内部の圧力や乱流、磁場などの支えを上回ると、ガスは収縮を始めます。収縮した高密度領域の中心に原始星ができ、周囲のガスを取り込みながら成長します。

しかし星が生まれると、今度は新しい星からの紫外線、恒星風、超新星爆発などが周囲のガスにエネルギーを与えます。その結果、ガスが電離・加熱されたり、分子雲が吹き散らされたりして、星形成の材料が減ることがあります。

この「ガスから星が生まれる作用」と「星がガスへ影響を返す作用」の組み合わせが、銀河全体の星形成率を調節する重要な仕組みです。

星の材料は銀河のどこにあるのか

銀河の中には、星だけでなく星間物質と呼ばれるガスやちりが広がっています。ガスの大部分は水素で、温度や密度によって、電離ガス、中性原子ガス、分子ガスなど異なる状態になります。

星形成と最も直接的に結びつくのは、低温で密度の高い分子雲です。分子雲では水素が主に水素分子の形で存在し、温度が低いため熱運動による圧力が比較的小さくなります。

国立天文台は、星が「分子雲」と呼ばれる低温のガス雲の中で誕生し、分子雲内の密度の高い部分が重力で周囲のガスを集めて星形成へ進む様子をシミュレーションで示しています。

渦巻銀河では、分子ガスは円盤、とくに渦巻腕や中心部などに多く分布します。そのため、星形成も銀河内のどこでも同じ強さで起こるわけではありません。

ガスはなぜ高密度になるのか

星を作るには、ガスがただ存在するだけでは足りません。重力によって収縮できるほど密度が高くなる必要があります。

ガスを圧縮する仕組みはいくつもあります。銀河円盤の中でガス雲同士が衝突したり、渦巻構造に沿ってガスが集まったり、銀河中心へガスが流れ込んだりすると、局所的に密度が高まります。銀河同士の相互作用や衝突によって大量のガスが圧縮され、星形成が急激に活発になる場合もあります。

国立天文台のアルマ望遠鏡によるNGC 253銀河中心部の研究では、高密度分子ガスが多く存在し、ガス雲同士の衝突によって分子ガスが圧縮されていると考えられる兆候が観測されています。

ただし、ガスを圧縮すれば必ずすぐ星になるわけではありません。分子雲の内部には乱流があり、磁場も存在します。これらは場所によっては重力収縮を妨げる方向にも働きます。星形成は、重力とそれを支える作用との競争の結果として起こります。

分子雲はどのように原始星へ変わるのか

分子雲の中で重力が優勢になる領域では、ガスが中心へ向かって落ち込みます。密度が上がるにつれて小さな高密度の塊が形成され、その一部がさらに収縮して原始星になります。

この段階では、原始星はまだ周囲のガスやちりに深く埋もれています。原始星の周囲には円盤状のガスができ、そこから物質を取り込みながら質量を増やします。

星形成は一つの大きな分子雲の中で複数箇所に同時に起こりやすいため、多くの星は孤立してではなく星団として生まれます。国立天文台のシミュレーションでも、分子雲の高密度領域から複数の星が形成される様子が示されています。

この過程には数十万年から数百万年以上かかり、星の質量や周囲の環境によって進み方は変わります。

なぜ銀河のガスは全部星にならないのか

銀河には大量のガスがあるにもかかわらず、そのすべてが短時間で星に変わるわけではありません。これは、星形成を妨げたり弱めたりする作用が存在するからです。

分子雲内の乱流や磁場はガスを支え、重力収縮を遅らせます。また、いったん星が生まれると、その星から放たれる光や風が周囲のガスを加熱・攪拌します。

特に大質量星は強い紫外線を放ち、周囲の水素ガスを電離します。電離されたガスは高温になり膨張するため、元の冷たい分子雲を侵食します。さらに大質量星が超新星爆発を起こすと、大きなエネルギーが星間空間へ注ぎ込まれます。

ESAは、若い星団の形成過程で恒星風、紫外線、超新星爆発がガス雲を散らし、多くのガスが星に使われないまま残ることを恒星フィードバックとして説明しています。

恒星フィードバックとは何か

「フィードバック」とは、生まれた星が周囲のガスへ影響を返し、その後の星形成条件を変えることです。銀河の星形成を理解するうえで中心的な概念です。

フィードバックには、若い星からの強い放射、恒星風、超新星爆発などがあります。これらはガスを加熱し、吹き飛ばし、乱流を増やします。その結果、高密度ガスが壊されて星形成が抑制されることがあります。

NASAのハッブル宇宙望遠鏡による近傍銀河研究でも、星が高密度で冷たいガスから形成された後、恒星風、星の光、そして大質量星の超新星爆発によって周囲のガスを加熱・攪拌する「星形成と恒星フィードバックの循環」が調べられています。

こうしたフィードバックがなければ、銀河の冷たいガスはより短時間に大量の星へ変わってしまうと考えられます。実際の銀河で星形成が比較的ゆっくり続くためには、ガスを星へ変える過程だけでなく、それを抑える過程も重要です。

フィードバックは星形成を止めるだけなのか

フィードバックは単純な「ブレーキ」だけではありません。超新星爆発や恒星風による衝撃波が周囲のガスを押し縮め、別の場所で高密度領域をつくる場合があります。そこで新しい星形成が始まる可能性もあります。

つまり、同じフィードバックでも、ある場所では分子雲を壊し、別の場所ではガスを圧縮します。結果はガスの密度、温度、磁場、周囲の圧力などによって変わります。

銀河全体では、こうした局所的な促進と抑制が同時に起こっています。そのため「星が生まれると次の星形成が止まる」と一方向に考えるのではなく、ガスの状態を組み替える作用として理解する方が正確です。

銀河の星形成を長く続けるガスはどこから来るのか

星形成を続ければ、冷たいガスは次第に星へ取り込まれます。それなのに天の川銀河のような銀河が何十億年にもわたって星を作り続けられるのは、ガスが循環し、新たなガスも供給されるからです。

恒星は進化の途中で恒星風として物質を放出し、最後に超新星爆発でガスや重元素を星間空間へ戻します。こうして一度星に入った物質の一部は再び星形成の材料になります。

さらに銀河の外側にあるガスや銀河間空間から、新しいガスが銀河へ降り注ぐこともあります。NASAの観測では、天の川銀河のハローにある高速ガス雲が銀河円盤へ供給され、星形成を続ける燃料になることが示されています。

銀河の星形成は、閉じた容器の中でガスを消費するだけではなく、流入、星形成、放出、再循環を含む大きなガス循環の一部なのです。

なぜ銀河によって星形成の活発さが違うのか

銀河によって星形成率は大きく異なります。青く見える渦巻銀河には若い大質量星が多く、現在も活発に星を作っているものがあります。一方、赤い楕円銀河の多くでは新しい星形成が弱くなっています。

違いを生む重要な要素は、冷たい分子ガスの量と、そのガスがどれだけ高密度になれるかです。ガスが豊富でも、強い乱流やせん断運動、加熱などによって収縮しにくければ、星形成率は低くなることがあります。

また、銀河中心の超巨大ブラックホールが活動すると、ジェットや放射によって周囲のガスを加熱し、冷たいガスが作られるのを妨げる場合があります。逆に銀河同士の相互作用でガスが中心へ集まり、短期間に星形成が急増することもあります。

したがって、銀河の星形成率は「ガスが多いか少ないか」だけではなく、ガスの温度、密度、運動、供給、フィードバックなど多くの条件で決まります。

星形成が特に激しい「スターバースト銀河」とは

一部の銀河では、通常よりはるかに高い割合で星が生まれる「スターバースト」が起こります。銀河同士の接近や合体、棒状構造によるガスの流入などで、大量の分子ガスが一か所に集まると起こりやすくなります。

スターバーストでは大質量星も大量に生まれるため、短い時間のうちに強い紫外線や多数の超新星爆発が発生します。その結果、銀河からガスが外へ流れ出す「アウトフロー」が生じることがあります。

このアウトフローは星形成の材料を銀河中心から運び去り、その後の星形成を弱める可能性があります。つまり、星形成が活発になるほど強いフィードバックも発生しやすくなり、自らの活動を抑える方向へ働く場合があります。

星形成をどうやって観測するのか

星が生まれている場所は、可視光だけでは十分に見えないことがあります。若い星はガスやちりの中に埋もれているためです。

そこで天文学者は、電波、赤外線、可視光、紫外線など複数の波長を使います。アルマ望遠鏡のような電波望遠鏡では、分子ガスが放つ電波を観測し、星の材料がどこにどれだけあるかを調べられます。

赤外線では、若い星によって温められたちりの放射を捉えられます。紫外線では若い大質量星の存在を調べられます。また、水素ガスの特定の輝線を使って、最近生まれた大質量星によって電離された領域を追跡できます。

異なる波長を組み合わせることで、「材料となるガス」「生まれたばかりの星」「星からガスへのフィードバック」を一つの循環として調べることができます。

銀河の星形成は「燃料消費」ではなく循環として見ると分かりやすい

銀河の星形成を単純化すると、まず銀河へガスが供給され、その一部が冷えて分子ガスになります。分子ガスの中で高密度領域ができると、重力収縮によって星が誕生します。

次に、若い星からの放射や恒星風、超新星爆発が周囲のガスを加熱・攪拌します。一部のガスは銀河の外側へ押し出され、一部は冷えて再び銀河円盤へ戻ります。古い星から放出された物質も星間空間へ戻ります。

そして、冷えたガスが再び高密度化すれば、次の世代の星が生まれます。星形成は、一度きりの変換ではなく、銀河のガス循環の中で何度も繰り返される過程なのです。

まとめ

銀河で星形成が起こるのは、冷たい分子ガスの一部が高密度になり、自分自身の重力で収縮するからです。分子雲の中で密度の高い領域が成長し、原始星ができ、周囲のガスを取り込みながら星になります。

しかし、星が生まれるとその星からの放射、恒星風、超新星爆発などが周囲のガスを変化させます。ガスを加熱・分散して星形成を抑えることもあれば、別の場所を圧縮して新しい星形成を促すこともあります。

さらに、銀河には外部からガスが供給され、星から放出された物質も再利用されます。こうしたガスの供給、冷却、重力収縮、星形成、フィードバック、再循環が組み合わさることで、銀河は何十億年もの間、星を作り続けたり、逆に星形成を弱めたりします。

銀河の星形成とは、単にガスが星へ変わる仕組みではありません。ガスと星が互いに影響し合いながら、銀河全体の活動を自己調節する循環なのです。

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