なぜ銀河にあるブラックホールは、恒星質量級から超巨大級まで質量が大きく違うのか?

ブラックホールというと、どれも同じ種類の天体に見えるかもしれません。しかし実際には、太陽の数倍から数十倍ほどの「恒星質量ブラックホール」、太陽の数百倍から数十万倍ほどと考えられる「中間質量ブラックホール」、そして銀河中心にある太陽の数百万倍から数十億倍以上の「超巨大ブラックホール」まで、質量には非常に大きな幅があります。

この違いは、ブラックホールが同じ方法で生まれたあと、単に時間の長さだけで大小に分かれるからではありません。どのような天体から生まれたか、周囲からどれだけ物質を取り込めたか、他のブラックホールとどれだけ合体したかによって、成長経路そのものが変わります。

つまり銀河の中に質量の違うブラックホールが存在するのは、ブラックホールの「種」の作られ方と、その後に受けた物質供給・合体の履歴が大きく違うからです。

目次

結論:誕生時の質量と、その後に増やせる質量が環境によって違うから

ブラックホールの質量差を理解するには、「最初にどれくらいの質量で生まれるか」と「生まれた後にどれくらい成長できるか」を分けて考えると分かりやすくなります。

恒星質量ブラックホールは、大質量星が一生の最後に重力崩壊して生まれます。そのため誕生時の質量は、もとの星が持っていた質量や、超新星爆発・恒星風でどれだけ物質を失ったかに強く左右されます。

一方、銀河中心の超巨大ブラックホールは太陽の数百万倍から数十億倍以上もあり、1個の普通の恒星が崩壊しただけでは作れません。初期宇宙で生まれた何らかの「種ブラックホール」が、長い時間をかけてガスを取り込み、他のブラックホールと合体しながら成長したと考えられています。

中間質量ブラックホールは、その中間を埋める候補です。星団の中で多数の星が衝突・合体して非常に重い星ができ、その星が崩壊して中間質量ブラックホールになる可能性などが研究されています。

恒星質量ブラックホールはどうやって生まれるのか

恒星質量ブラックホールの出発点は、大質量の恒星です。恒星は中心で核融合を行い、その圧力で自分自身の重力を支えています。しかし燃料を使い切ると、中心核を支えられなくなります。

中心核が十分に重い場合、重力崩壊によって非常に高密度な天体ができます。残った中心核の条件によって中性子星になる場合もありますが、さらに重ければブラックホールになります。

NASAは、恒星質量ブラックホールを太陽の数倍から数百倍程度までの範囲として説明しています。ただし、生まれるブラックホールの質量は、恒星が最初に持っていた質量だけでは決まりません。恒星風でどれだけガスを失ったか、連星相互作用があったか、爆発時にどれだけ物質が外へ飛ばされたかなどによって変わります。

このため、同じ「恒星質量ブラックホール」でも全く同じ質量になるわけではありません。

銀河には恒星質量ブラックホールがたくさんあるのか

大質量星は銀河の中で繰り返し生まれ、その一部がブラックホールになります。そのため、一つの銀河には多数の恒星質量ブラックホールが存在すると考えられています。

ただしブラックホール自体は光を出さないため、単独で静かに存在しているものを見つけるのは簡単ではありません。これまで多く発見されてきたのは、伴星からガスを取り込んでX線を出す連星系や、別のブラックホールと合体して重力波を出した例です。

つまり、観測されているブラックホールは銀河内に存在する全ブラックホールの一部にすぎない可能性があります。

中間質量ブラックホールはなぜ重要なのか

恒星質量ブラックホールと超巨大ブラックホールの間には、非常に大きな質量差があります。そこで太陽の数百倍から数十万倍程度の中間質量ブラックホールが、その間をつなぐ存在ではないかと考えられています。

国立天文台が2024年に発表したシミュレーション研究では、若い高密度星団の中で星同士の暴走的な合体が起こると、太陽の1万倍程度の超大質量星が形成され、その後に太陽の数千倍の中間質量ブラックホールへ進化し得ることが示されました。

星が密集した場所では、普通の銀河円盤よりも恒星同士が近く、重力的な相互作用や衝突が起こりやすくなります。そのため、1個の恒星の通常進化だけでは作りにくい質量のブラックホールが形成される可能性があります。

ただし、中間質量ブラックホールは候補天体こそ見つかっているものの、恒星質量ブラックホールや超巨大ブラックホールに比べて確実な観測例が少なく、形成経路もまだ研究途上です。

超巨大ブラックホールはなぜ銀河の中心にあるのか

大きな銀河の多くでは、中心に超巨大ブラックホールが存在すると考えられています。天の川銀河の中心にある「いて座A*」は太陽の約400万倍の質量を持ちますが、他の銀河には数十億倍、さらにそれを上回る質量のブラックホールもあります。

銀河中心は、銀河全体の重力ポテンシャルが深い場所です。ガスや星が長い時間をかけて中心方向へ運ばれやすく、ブラックホールが成長する材料が集まりやすい環境になります。

また、銀河同士が合体すれば、それぞれの銀河中心にあったブラックホールも新しい銀河の中心へ沈み、最終的に合体する可能性があります。このように銀河そのものの成長と、中心ブラックホールの成長は切り離せません。

超巨大ブラックホールはどのように質量を増やすのか

ブラックホールが成長する主な方法は、周囲の物質を取り込む「降着」と、別のブラックホールとの合体です。

銀河中心へガスが運ばれると、その一部がブラックホールの周囲に降着円盤を作り、角運動量を失いながら内側へ落ち込みます。ブラックホールはこの物質を取り込むことで質量を増やします。

大量のガスを急速に取り込む時期には、降着円盤が非常に明るく輝き、クエーサーや活動銀河核として観測されることがあります。逆に現在の天の川銀河中心のようにガス供給が少なければ、ブラックホールの質量が大きくても成長速度は遅くなります。

つまり「大きなブラックホール」と「現在明るく活動しているブラックホール」は同じ意味ではありません。質量は過去の長い成長履歴の結果であり、活動性は現在の物質供給状態を強く反映します。

母銀河が大きいほど中心ブラックホールも重い傾向があるのはなぜか

観測では、銀河中心の超巨大ブラックホールの質量と、その銀河のバルジの質量や恒星の速度分散の間に相関があることが知られています。国立天文台も、バルジの重力源が大きい銀河ほど重い中心ブラックホールを持つ傾向を紹介しています。

これは、銀河とブラックホールが完全に別々に成長してきたのではなく、同じガス供給や銀河合体などを通じて互いに関係しながら進化してきたことを示す重要な手掛かりです。

銀河に大量のガスが供給されれば、その一部は星形成に使われ、一部は中心へ移動してブラックホールを成長させます。また銀河合体では、恒星やガスだけでなく中心ブラックホールもまとめて成長系に組み込まれます。

一方で、中心ブラックホールから出る放射やジェット、風が銀河のガスを加熱・放出し、星形成に影響する可能性もあります。このような相互作用を含めて「銀河とブラックホールの共進化」が研究されています。

超巨大ブラックホールは最初から巨大だったのか

ここは現在も重要な未解決問題です。初期宇宙には、宇宙誕生から比較的短い時期なのに、すでに非常に重いブラックホールが存在していたことが観測されています。

もし太陽の数十倍程度の恒星質量ブラックホールだけを出発点にすると、限られた時間の中で数十億太陽質量まで成長するには非常に効率よく物質を取り込み続けなければなりません。

そこで、初期宇宙の非常に重い星が崩壊して通常より大きな種ブラックホールを作ったという説や、巨大なガス雲がほぼ直接崩壊して太陽の1万倍から10万倍級の種を作ったという説、密集星団内の合体で中間質量ブラックホールを作ったという説などが研究されています。

NASAやESAも、超巨大ブラックホールの起源についてはまだ確定しておらず、複数の形成経路が候補だと説明しています。

ブラックホール同士が合体するとどうなるのか

ブラックホール同士が近づき、重力的に束縛されると、互いの周りを回る連星ブラックホールになることがあります。軌道運動によって重力波を放出するとエネルギーを失い、最終的に合体してより重いブラックホールになります。

恒星質量ブラックホール同士の合体は、LIGOなどの重力波観測によって多数検出されています。銀河中心の超巨大ブラックホール同士でも、銀河合体の結果として連星を形成し、最終的には合体すると考えられています。

したがってブラックホールは、周囲の物質を食べるだけでなく、ブラックホール同士の合体によっても質量を増やせます。

「ブラックホールは何でも吸い込むから、いつか全部超巨大になる」のか

そうではありません。ブラックホールの成長には、近くに取り込める物質があることが必要です。周囲に十分なガスや星がなければ、長い時間がたってもほとんど質量は増えません。

また、ガスには角運動量があるため、銀河中心に存在するだけで自動的にブラックホールへ落ち込むわけではありません。ガスが角運動量を失い、ブラックホール近傍まで運ばれる仕組みが必要です。

さらに、活動中のブラックホールから出る放射や風が周囲のガスを押し返し、過剰な降着を抑えることもあります。成長は「近くの物質を無制限に吸い続ける」単純な過程ではありません。

ブラックホールの質量はどうやって測るのか

ブラックホールそのものは光らないため、質量は周囲の天体やガスの運動から推定します。

天の川銀河中心では、いて座A*の周囲を回る星の軌道を長期間測定することで、中心に太陽の約400万倍の質量が非常に狭い領域へ集中していることが分かりました。

他の銀河では、中心付近の恒星やガスの回転速度、メーザー放射を出すガス円盤の運動などから質量を求めます。国立天文台はアルマ望遠鏡を使って銀河中心のガス運動を測定し、超巨大ブラックホールの質量を推定する研究を行っています。

このような観測を多数の銀河で行うことで、ブラックホール質量と母銀河の性質の関係が調べられています。

同じ質量でもブラックホールの性質は完全に同じなのか

ブラックホールを一般相対性理論で記述すると、基本的な性質は主に質量と自転、電荷によって表されます。天体としてのブラックホールでは電荷はほぼ中和されると考えられるため、実際には質量と自転が重要です。

ただし、私たちが観測する「ブラックホール天体」の姿は、ブラックホール本体だけでは決まりません。周囲の降着円盤、ガス量、磁場、伴星、ジェットなどによってX線や電波の明るさは大きく変わります。

したがって、質量が似たブラックホールでも観測上の姿はかなり違うことがあります。逆に、見た目が明るいからといって必ずしも質量が大きいとは限りません。

まとめ

銀河にあるブラックホールが、恒星質量級から超巨大級まで大きく違うのは、誕生時の条件と、その後の成長環境が違うからです。

恒星質量ブラックホールは主に大質量星の重力崩壊で生まれます。中間質量ブラックホールは、高密度星団での星同士の合体やブラックホール同士の合体などが形成経路として研究されています。超巨大ブラックホールは、初期宇宙で生まれた種ブラックホールが、ガス降着や合体を通じて長期間成長した結果だと考えられています。

さらに、銀河中心のブラックホール質量と母銀河のバルジには相関があり、銀河の成長とブラックホールの成長が深く結びついていることが分かっています。

ブラックホールの大きさの違いは、「同じ天体が年齢だけで大きくなった結果」ではありません。星の死、星団の進化、ガス供給、銀河合体という異なるスケールの現象が重なって、銀河の中に桁違いの質量を持つブラックホールが作られているのです。

関連記事

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次