なぜ彗星が残したダストは、地球で流星群として見えるのか?

毎年ほぼ同じ時期になると、ペルセウス座流星群やしし座流星群、オリオン座流星群などが夜空をにぎわせます。流星群の多くは、彗星と深い関係があります。しかし、彗星そのものが地球の近くまで飛んできて、そこで大量の流星を生み出しているわけではありません。

彗星が太陽へ近づくと、核に含まれる氷が昇華し、ガスとともに細かなダストが宇宙空間へ放出されます。その粒子の一部は彗星の軌道に近い経路を太陽の周りで回り続け、時間とともに細長い「ダスト・トレイル」や、さらに広がった「流星体の流れ」をつくります。地球の公転軌道がその粒子群と交差すると、多数の粒子が短い期間に地球大気へ飛び込み、流星群として観測されるのです。

目次

結論:流星群は、彗星が軌道上に残した粒子の通り道を地球が横切ることで起こる

流星群の仕組みを一文で表すなら、「彗星が残したダストの帯と地球の軌道が交差するため」です。NASAは、地球が彗星や一部の小惑星の残したダスト状の破片の流れを通過すると、流星群が起こると説明しています。NASAジェット推進研究所も、流星体の流れは通常、彗星から放出されたダスト粒子を起源とし、それらが母天体の軌道に沿って分布するとしています。

ここで重要なのは、彗星が現在そこにいなくても流星群が起こり得ることです。彗星が何十年、何百年も前に放出した粒子が軌道上に残り続け、後になって地球がその領域を通過する場合があるからです。したがって、流星群は「その夜に彗星から飛んできた粒子」ではなく、過去に彗星が残した軌道上の物質を地球が受け取る現象と考えると分かりやすくなります。

第一段階:彗星が太陽へ近づくとダストが核から放出される

彗星の核には、水などの氷とともに細かな固体粒子が含まれています。太陽へ近づくと核が温められ、氷が昇華してガスになります。そのガスが表面から噴き出す際、周囲のダスト粒子を巻き込みます。

十分な速度を得た粒子は核の弱い重力を振り切って宇宙空間へ出ます。このダストの一部は、太陽光圧によって大きく押されて彗星の尾をつくります。一方、比較的大きく太陽光圧の影響が小さい粒子は、彗星の軌道に近い経路で太陽を回り続けることがあります。

国立天文台も、一般に流星群は彗星活動で放出されたダストが起源だと説明しています。つまり、彗星の活動は見た目の尾をつくるだけでなく、その後長く残る「流星群の材料」を宇宙空間へ供給しているのです。

第二段階:放出された粒子が彗星の軌道に沿って広がる

核から飛び出したダスト粒子は、すべてが彗星と完全に同じ速度・同じ方向を持つわけではありません。放出時にはわずかな速度差があり、粒子の大きさによって太陽光圧の受け方も異なります。この小さな差が公転を何度も繰り返すうちに積み重なり、粒子は彗星の前後へ少しずつ広がっていきます。

NASAジェット推進研究所は、流星体の粒子が母彗星の軌道に沿って分布し、核の近くほど密度が高い場合がある一方、時間とともにより広く分散すると説明しています。最初は特定の回帰で放出された比較的細いダスト・トレイルでも、長い時間がたつと複数のトレイルが重なり、軌道沿いの幅広い粒子群へ発達することがあります。

このため、流星群の材料は一本の固い帯ではありません。粒子の密度には濃い部分と薄い部分があり、古い粒子と新しい粒子が複雑に重なっています。この不均一さが、流星数が年によって変化する大きな理由になります。

第三段階:地球が粒子の流れを横切る

地球は一年かけて太陽の周りを公転しています。彗星由来の粒子群も太陽の周りを回っています。両者の軌道が空間的に交差する場所があると、地球は毎年ほぼ同じ時期にその粒子群を通過します。

このとき、粒子は地球へ静かに落ちてくるのではありません。地球自身も約30km毎秒で公転しており、流星体も太陽の周りを高速で動いています。その相対速度によって、粒子は数十km毎秒という速さで大気へ突入することがあります。

NASAによると、ペルセウス座流星群はスイフト・タットル彗星の粒子、しし座流星群はテンペル・タットル彗星、オリオン座流星群やみずがめ座η流星群はハレー彗星の粒子と結びついています。国立天文台も、ペルセウス座流星群の母天体をスイフト・タットル彗星としています。

ここで彗星は「母天体」と呼ばれます。母天体とは、その流星群の粒子を供給した起源の天体という意味です。

大気へ入った粒子が光ることで「流星」になる

宇宙空間を飛んでいる段階の小粒子は「流星体」と呼ばれます。地球大気へ高速で突入すると、粒子の前方の空気が急激に圧縮・加熱され、粒子自身も激しく加熱・蒸発します。その結果、周囲の大気や蒸発した物質が発光し、空に短い光の筋が見えます。これが流星です。

つまり、私たちが見る「流れ星」は、宇宙空間に光る粒が浮かんでいる姿ではありません。彗星由来などの小さな流星体が地球大気へ入り、短時間だけ明るく発光する現象です。

流星群の粒子の多くは非常に小さく、NASAは多くの彗星由来粒子が砂粒からエンドウ豆ほどの大きさだと説明しています。こうした粒子の大部分は大気中で失われ、地表まで隕石として届くことは通常ありません。

なぜ流星群は空の一か所から飛び出すように見えるのか

同じ流星群の流星を観察すると、空のさまざまな場所に光の筋が現れるのに、その軌跡を逆向きに延ばすと一つの領域へ集まるように見えます。この見かけ上の出発点を「放射点」と呼びます。

これは、流星体が本当に一つの点から爆発しているからではありません。同じダスト流に属する粒子は、地球から見るとほぼ平行な方向から大気へ入ってきます。平行な線路が遠くで一点に集まるように見える遠近法と同じで、空では一つの点から流星が広がるように見えるのです。

流星群の名前は、通常この放射点がある星座に由来します。ペルセウス座流星群なら放射点がペルセウス座付近にあり、しし座流星群ならしし座付近にあります。名前は母彗星の名前ではなく、地球から見た放射点の位置で付けられるのが一般的です。

なぜ毎年ほぼ同じ時期に流星群が現れるのか

地球は毎年ほぼ同じ軌道を一周します。そのため、彗星由来の粒子群と地球軌道の交差地点にも毎年ほぼ同じ時期に戻ってきます。これが、主要な流星群が毎年似た季節に見られる理由です。

ただし、極大時刻や流星数は完全には一定ではありません。粒子群自体が太陽や惑星の重力を受けて少しずつ変形し、密度分布も変わるからです。さらに、地球がダスト・トレイルの中心を通るか端を通るかによって、出現数は大きく違います。

そのため、「母彗星が今年近づくから必ず流星群が多い」と単純には決まりません。国立天文台は、おうし座流星群について、現在流星群をつくる塵がかなり古い時期に放出されたものとみられ、現在のエンケ彗星の接近と流星数増加は単純には対応しないと説明しています。

流星嵐は、地球が特に濃いダスト・トレイルを通ると起こる

通常の流星群よりはるかに多くの流星が現れることがあります。これが流星嵐です。仕組みは基本的に同じですが、地球が特に粒子密度の高い部分を通る点が異なります。

ESAは、テンペル・タットル彗星が過去に放出した個別のダスト・トレイルが時間とともに広がり、複数のトレイルが重なった帯も形成されると説明しています。地球が比較的新しく密度の高いトレイルの中心近くを通れば、大規模な流星群や流星嵐になる可能性があります。

しし座流星群では過去に非常に激しい流星嵐が知られています。また国立天文台は、オリオン座流星群で2006年に通常より大幅に多い流星が観測され、その原因として約3000年前にハレー彗星から放出された塵の影響が研究されたことを紹介しています。

この例は、何千年前の彗星活動が、現在の地球上の流星数に影響し得ることを示しています。

すべての流星群の母天体が彗星とは限らない

多くの流星群は彗星を母天体としますが、例外もあります。代表例がふたご座流星群です。その母天体は小惑星フェートンと考えられています。

国立天文台は、フェートンがふたご座流星群の母天体であることは軌道の類似性から確定的だとしつつ、流星群をつくるほど大量のダストがどのように放出されたかは十分解明されていないと説明しています。ESAも、ほとんどの年周流星群が彗星と関連する一方、ふたご座流星群はフェートンという特異な天体に結びつくとしています。

したがって「流星群はすべて彗星がつくる」と言い切るのは正確ではありません。ただし、彗星が氷の昇華によって大量のダストを放出し、その粒子が軌道上に残って流星群を形成する仕組みは、多くの主要流星群を理解する基本モデルです。

彗星と流星群の関係を調べると、過去の彗星活動まで分かる

流星群の観測は、現在見えている流星の数を数えるだけではありません。流星がどの方向から来たか、どの速度で大気へ入ったかを調べると、もとの流星体の軌道を推定できます。その軌道を既知の彗星や小惑星と比較することで、母天体候補を探すことができます。

さらに、特定の年だけ流星数が増えた場合、地球がどの年代に放出されたダスト・トレイルを通ったのかを軌道計算で調べることもできます。つまり流星群は、彗星が過去の近日点通過でどれだけ物質を放出したかを探る手がかりになります。

母彗星が今は地球から遠く離れていても、その軌道上に残されたダストは長い時間をかけて地球へ情報を届けます。流星群は、彗星の「過去の活動記録」を地球上から観測できる現象でもあるのです。

まとめ

彗星と流星群が結びつくのは、彗星が太陽へ近づいたときに放出したダスト粒子が、その後も太陽の周りを回り続け、彗星の軌道に沿った粒子群をつくるからです。地球が公転の途中でその粒子群を横切ると、多数の流星体が短期間に大気へ突入し、流星群として見えます。

放出された粒子は少しずつ彗星の前後へ広がるため、母彗星がその年に近くにいなくても流星群は起こります。また地球が粒子密度の高い新しいダスト・トレイルを横切れば、通常より多くの流星や流星嵐が現れる場合があります。

つまり、彗星と流星群の関係は「彗星が流星を直接地球へ投げる」というものではありません。彗星が軌道上に残したダストの道を、後から地球が横切ることで成り立つ関係です。夜空の流星群は、過去の彗星活動が太陽系内に残した痕跡を、地球が毎年通過して見せてくれる現象なのです。

関連記事

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次