冬は、多くの昆虫にとって一年の中でも特に厳しい季節です。気温が下がると体温も低下し、筋肉や神経、消化などの働きが遅くなります。さらに、餌となる植物や他の小動物が減り、乾燥や凍結の危険も増えます。
それでも温帯や寒冷地には、毎年春になると多くの昆虫が再び姿を現します。これは、すべての昆虫が冬の間も普段通り活動しているからではありません。種ごとに、卵・幼虫・蛹・成虫のいずれかの段階で発育を止めたり、代謝を下げたり、凍りにくい体へ変化したり、落ち葉の下や土中など温度変化の小さい場所へ移動したりして冬をしのいでいます。
このような冬季生存の仕組みをまとめて「越冬」と呼びます。ただし、越冬と休眠は同じ意味ではありません。休眠せずに冬を越す昆虫もいれば、休眠と低温順化を組み合わせる昆虫もいます。
つまり昆虫の越冬は、一つの特殊能力ではありません。冬を事前に予測する季節時計、発育を止める休眠、寒さへ耐える生理変化、体内のエネルギー管理、そして安全な微小環境を選ぶ行動を組み合わせた総合的な季節適応なのです。
昆虫にとって冬が厳しいのは、体温が外気温に左右されるから
多くの昆虫は外温動物で、自分の代謝熱だけで体温を一定に保つ能力が限られています。
外気温が下がれば体温も低下し、酵素反応、神経伝達、筋肉収縮、消化などの速度が落ちます。低温が強くなると、正常に動けなくなったり、細胞膜やタンパク質が損傷したりします。
さらに、水分を含む体組織が凍れば、氷結晶によって細胞が傷つく危険があります。
一方、冬の問題は寒さだけではありません。餌が不足するため、新しいエネルギーを得にくくなります。長期間活動できなければ、秋までに蓄えた脂質や糖を使いながら春まで生き延びる必要があります。
冬越しは「寒さに耐える能力」だけでなく、「少ないエネルギーで長期間生きる能力」でもあります。
越冬と休眠は同じではない
冬を越す昆虫の説明では、「越冬=冬眠=休眠」と一つにまとめられることがあります。しかし、生理学的には区別が必要です。
越冬は、冬季を生き残るという現象全体を指します。
休眠は、季節的に不利な時期を乗り越えるため、発育や繁殖をあらかじめ抑えるプログラムされた状態です。英語ではdiapauseと呼ばれます。
これに対して、急な低温で一時的に活動が止まり、暖かくなるとすぐ再開するような状態は、休眠とは異なる単純な低温反応である場合があります。
また、休眠をせず、落ち葉の下や地表近くへ移動するだけで冬を越す種もいます。1993年のヤサイゾウムシの研究では、成虫と幼虫は強い耐寒性を持たない一方、寒くなると地表近くの比較的暖かい場所へ移動し、行動的な凍結回避によって冬を越す可能性が示されました。
したがって、昆虫の越冬戦略を理解するには、「休眠するかどうか」と「低温へどう耐えるか」を分けて考える必要があります。
休眠は、寒くなってから慌てて始める仕組みではない
冬が本格化してから準備を始めても、遅すぎる場合があります。
そのため多くの昆虫は、秋のうちに冬の到来を予測します。特に重要な手掛かりが日長です。
日長は毎年ほぼ規則正しく変化するため、気温よりも季節の進行を安定して知らせる信号になります。日が短くなることを感知すると、発育速度、ホルモン分泌、摂食、貯蔵物質の蓄積などが変化し、休眠へ入る準備が進みます。
2021年のタンボコオロギ研究では、日長と温度が幼虫発育を調節し、越冬に関わる発育停止のタイミングを決めることが示されています。
つまり休眠は、低温そのものへの受動反応ではなく、「これから冬が来る」という季節情報を利用して先回りする適応です。
休眠に入ると、発育や繁殖をいったん止める
休眠中の昆虫は、通常の成長・繁殖状態とは大きく異なります。
幼虫休眠なら脱皮や成長が止まり、蛹休眠なら羽化が延期され、成虫休眠なら卵巣発育や交尾・産卵が抑えられる場合があります。
これには幼若ホルモン、エクジステロイド、インスリン様シグナルなど複数の内分泌系が関わります。
ただし、休眠ホルモンの仕組みはすべての昆虫で同じではありません。どの発育段階で休眠するかによっても、幼若ホルモンやエクジステロイドの働き方は変わります。
重要なのは、冬の間に不必要な成長や繁殖を進めず、エネルギー消費を抑えることです。
休眠は、低温耐性を高める準備とも結びつく
多くの昆虫では、休眠の開始と耐寒性の上昇が同時期に進みます。
2022年の冬季生存の分子機構に関する総説では、休眠と低温順化が遺伝子発現を大きく変化させ、低温耐性の上昇、凍結保護物質の蓄積、エネルギー貯蔵などへつながることが整理されています。
つまり休眠は単に「動かなくなる状態」ではありません。
冬に適した代謝モードへ切り替え、体を低温ストレスへ備えさせる生理的な再編成でもあります。
ただし、休眠した昆虫が必ず強い耐寒性を持つわけではなく、休眠せずに低温順化だけを行う種もいます。
昆虫の低温耐性には、大きく異なる複数の戦略がある
昆虫が寒さへ耐える方法は一つではありません。
代表的な分類では、体液を凍らせずに過冷却状態を保つ「凍結回避型」と、体液の一部が凍っても生きられる「凍結耐性型」が区別されます。
さらに、凍結する温度よりかなり高い温度でも長時間の低温で障害を受ける「低温感受性」の昆虫もいます。
2010年の昆虫越冬レビューでは、凍結回避と凍結耐性だけでなく、低温による細胞障害、膜機能、エネルギー消費など複数の過程を考える必要があるとされています。
したがって、「昆虫が死ぬのは体が凍るから」と一つの原因で説明するのは正確ではありません。
凍結回避型では、体液が氷になる温度を下げる
水は0℃で必ずすぐ凍るわけではありません。氷の核になる粒子が少なければ、0℃より低くなっても液体のまま保たれる「過冷却」が起こります。
凍結回避型の昆虫では、腸内容物を排出して氷核となる物質を減らしたり、体液中にグリセロールや糖などを蓄積したりして、凍結開始温度を下げます。
抗凍結タンパク質を使って氷結晶の成長を抑える昆虫もいます。
この戦略では、実際に凍ってしまうと致命的になることが多いため、凍結そのものを避けることが重要です。
チョウ目の耐寒性をまとめた2024年の総説では、調べられた多くの種で凍結回避型が主要戦略となり、休眠開始と耐寒性上昇が連動する例が多いとされています。
凍結耐性型では、体の一部が凍ることを制御する
一部の昆虫は、体液の細胞外部分に氷ができても生存できます。
この場合、凍結を無制御に起こさせるのではなく、比較的高い温度で特定の場所から氷形成を始めることで、急激な細胞内凍結を避けます。
細胞外に氷ができると、水が細胞から外へ移動するため、細胞は脱水ストレスを受けます。
そこで糖やポリオールなどが細胞膜・タンパク質を保護し、低温と脱水の両方へ耐えやすくします。
この方式は北方・高緯度の昆虫などで知られますが、すべての昆虫が凍結耐性を獲得できるわけではありません。
グリセロールや糖は「不凍液」だけではなく細胞を守る
越冬昆虫では、グリセロール、ソルビトールなどのポリオールや、トレハロースなどの糖が増える例があります。
これらは体液の凍結温度を下げるだけでなく、低温や脱水によって膜やタンパク質が壊れるのを抑える役割も持ちます。
昆虫によって使われる物質の種類と量は異なります。
また、一種類の化合物だけで耐寒性が決まるのではありません。膜脂質の組成変化、ストレスタンパク質、抗酸化系、代謝抑制などが同時に働きます。
冬季耐性は「体内に不凍液を作れば完成」という単純な仕組みではなく、細胞全体を低温モードへ変える複合的な反応です。
細胞膜は、寒くなると硬くなりすぎる危険がある
細胞膜は脂質二重層でできており、温度が低下すると流動性が低下します。
膜が硬くなりすぎると、膜タンパク質、物質輸送、神経機能などが正常に働きにくくなります。
そのため低温順化した昆虫では、膜脂質の不飽和度などを変え、低温でも適切な柔らかさを保つことがあります。
このような変化は数時間で完了するとは限らず、秋の低温を経験する中で段階的に進みます。
季節の変化を事前に感知して準備することが重要なのは、このような細胞レベルの調整にも時間が必要だからです。
低温順化によって、同じ個体でも冬の方が寒さに強くなる
昆虫の耐寒性は、一年中固定されているわけではありません。
秋に徐々に低温を経験すると、同じ種でも夏より冬の方が低温へ耐えられるようになる場合があります。
これを低温順化と呼びます。
順化では、保護物質の増加、膜組成の変化、代謝抑制、ストレス応答遺伝子の変化などが起こります。
一方、急激な寒波では準備が追いつかないため、通常なら耐えられる最低気温より高い温度でも被害が出ることがあります。
冬季生存は「何℃まで耐えられる種か」だけでなく、「どのような温度履歴を経験したか」によっても変わります。
数時間の低温経験だけで耐寒性が上がる「急速低温硬化」もある
季節を通じた低温順化とは別に、一部昆虫では比較的短時間の低温経験によって耐寒性が急速に上がることがあります。
これはrapid cold hardeningと呼ばれます。
天候が急変する秋や春には、長期間かけた順化だけでは対応できないことがあります。急速低温硬化は、そのような短期変動への安全装置として働く可能性があります。
ただし、すべての昆虫が同じ強さの急速低温硬化能力を持つわけではありません。
長期順化、休眠、急速低温硬化は別々の仕組みでありながら、実際の野外では組み合わさって冬季耐性を作ります。
どの発育段階で冬を越すかは、種ごとに違う
昆虫は、卵、幼虫、蛹、成虫のどの段階でも越冬できます。
ただし、一つの種では特定の段階が主要な越冬段階として決まっていることが多くあります。
卵なら動く必要がなく、小さな空間に隠れられます。幼虫なら秋までに栄養を蓄積できます。蛹なら摂食や移動をせずに変態前後を停止できます。成虫なら春にすぐ繁殖場所へ移動できます。
どの段階が有利かは、餌の季節性、繁殖時期、天敵、微小環境などによって異なります。
海外の越冬研究でも、近縁種であっても越冬段階が異なる例が多く、越冬戦略が生活史全体と一体になって進化していることが分かります。
卵で越冬する昆虫は、次世代を冬へ送り込む
バッタ類や一部のカメムシ、チョウなどには、秋に産んだ卵が冬を越し、春にふ化する種があります。
この場合、親成虫自身は冬を越さずに死ぬこともあります。
したがって「昆虫が越冬する」といっても、同じ個体が冬を越すとは限りません。
種として見れば、冬に適した発育段階だけを残し、春に次世代が活動を再開することも立派な越冬戦略です。
この点は、越冬を個体の長寿命化ではなく、年間生活史の配置として理解するうえで重要です。
幼虫で越冬する種は、秋までにエネルギーを蓄える
幼虫は成長と摂食へ特化した段階です。
幼虫越冬する種では、秋までに十分な餌を食べ、脂質・糖・グリコーゲンなどの貯蔵物質を増やします。
冬に入ると摂食を停止し、代謝を下げ、蓄えたエネルギーを少しずつ消費します。
春までの期間が長く、暖冬で代謝が上がりすぎると、春前にエネルギーを使い果たす危険があります。
つまり暖かい冬は、必ずしも昆虫にとって有利とは限りません。
成虫越冬では、繁殖を止めて春まで生きる種がある
テントウムシ、カメムシ、チョウなどには、成虫で冬を越す種があります。
この場合、秋に羽化してもすぐ繁殖せず、卵巣や精巣の発達を抑えて越冬へ入ることがあります。
ネギコガの研究では、秋世代の成虫で卵巣発育が停止し、低温下で長期間生存して成虫越冬することが示されています。
春になると休眠が解除され、餌を取り、交尾・産卵へ移ります。
成虫越冬には、春にすぐ移動・繁殖できる利点がありますが、大きな成虫の体を数か月維持するためのエネルギーも必要です。
越冬場所は、外気温と同じ温度ではない
野外の昆虫が経験する温度は、気象観測所の気温そのものではありません。
落ち葉の下、土中、樹皮の隙間、倒木の内部、積雪下、建物内などでは、外気より温度変化が小さくなることがあります。
夜間に外気が大きく氷点下へ下がっても、地面近くや雪の下は比較的安定した温度に保たれる場合があります。
そのため強い耐寒性を持たない昆虫でも、適切な越冬場所を選べば冬を越せることがあります。
ヤサイゾウムシの例のように、植物の根元や地表近くへ移動する行動そのものが冬季生存へ重要になる場合があります。
雪は寒そうに見えて、昆虫を強い冷え込みから守ることがある
積雪は外気より冷たい物質という印象がありますが、雪には多くの空気が含まれ、断熱材として働きます。
十分な積雪があると、雪の下の落ち葉層や地表面は、外気の急激な冷え込みを受けにくくなります。
そのため寒冷地の昆虫にとって、積雪下の微小環境は重要な越冬場所になる場合があります。
逆に、暖冬で積雪が減ると、平均気温が高くても地表の昆虫が寒波へ直接さらされる可能性があります。
冬の生存率は平均気温だけでなく、雪、土壌、植生などの微小環境で決まります。
湿度も冬越しの成功を左右する
寒い季節でも、昆虫は水分を失います。
特に乾いた空気にさらされると、体表や気門から水分が失われます。
一方、水分が多すぎる場所では、カビや病原体が増えることがあります。
そのため越冬場所には、温度だけでなく湿度条件も重要です。
土中や落ち葉層は、温度だけでなく湿度も比較的安定させるため、越冬場所として利用されることがあります。
冬に活動を抑えるのは、餌の少ない時期をやり過ごす意味もある
冬の休眠は「寒さそのもの」だけへの適応ではありません。
植物の葉や花が減り、獲物昆虫も少なくなると、活動しても得られる餌が少なくなります。
その状態で動き続ければ、筋肉や神経を動かすために貯蔵エネルギーを使い、春になる前に枯渇する危険があります。
休眠によって代謝を下げ、成長・繁殖を停止することは、食料不足の季節を低コストで通過する方法でもあります。
冬越しでは、「寒さへ強くなること」と「エネルギーを使わないこと」が同時に重要です。
休眠の解除にも、季節を読む仕組みがある
休眠は、春になった瞬間に自動的に解除されるわけではありません。
多くの昆虫では、一定期間の低温経験、日長の増加、温度上昇などが休眠終了へ関わります。
冬の途中に一時的な暖かい日があっても、すぐ活動を再開してしまえば、その後の寒波で死ぬ危険があります。
そのため休眠には、不利な季節が十分過ぎるまで反応を抑える仕組みがあります。
休眠終了後も、実際の羽化や活動開始には積算温度が必要な種があります。
冬越しとは、休眠へ入る時期だけでなく、いつ解除して春へ戻るかまで含む季節時計なのです。
渡りによって「冬を避ける」昆虫もいる
すべての昆虫が寒い場所にとどまって越冬するわけではありません。
一部のチョウ、トンボ、ガなどは、季節に応じて長距離移動し、より暖かい地域へ移動します。
この場合、低温へ極端に強くなる代わりに、冬そのものを避ける戦略を選んでいます。
移動には飛翔エネルギーや移動途中の死亡リスクがありますが、寒冷地に残るより有利な条件では進化し得ます。
昆虫の冬季戦略には、「耐える」「隠れる」「休む」「移動する」という複数の解決策があります。
暖冬になると、昆虫は必ず越冬しやすくなるわけではない
気候温暖化によって冬の最低気温が上がれば、強い凍結による死亡は減る可能性があります。
しかし、冬季生存の影響は単純ではありません。
気温が高いと代謝が上がり、貯蔵エネルギーを早く消費する可能性があります。休眠解除が早まり、その後に寒波へ遭遇することもあります。
雪が減ることで、地表の越冬昆虫が強い放射冷却へさらされる場合もあります。
2010年の越冬レビューでも、温暖化による影響は昆虫種、地域、微小環境によって異なり、単純に「暖冬=高い生存率」とは予測できないことが強調されています。
冬を越せるかどうかは、昆虫の分布域を決める
夏には十分成長・繁殖できる地域でも、冬を越せなければ一年を通じて個体群を維持できません。
そのため冬季最低温度や越冬場所の存在は、昆虫の北限・高標高限界を決める重要な要因になります。
外来害虫でも、夏に一時的に増えることと、その地域へ定着できることは別問題です。
2026年の日本のアザミウマ研究でも、非休眠性外来種について低温耐性と半野外越冬を調べ、地域への定着可能性を評価する研究が行われています。
冬季生存を理解することは、昆虫の分布変化や害虫侵入を予測するうえで重要です。
害虫防除では、越冬場所と越冬段階を知ることが重要
農業害虫を防除するとき、春や夏の成虫だけを見ても一年の個体群動態は理解できません。
どの段階で冬を越すのか、どこに隠れるのか、休眠するのか、春にいつ活動を再開するのかを知れば、防除の時期を絞りやすくなります。
たとえば土中の蛹で越冬する害虫なら、冬季の耕起や春先の発生予察が重要になる場合があります。
成虫越冬なら、建物・樹皮・落ち葉などの越冬場所を把握することが発生予測に役立ちます。
休眠解除や春の発生時期を温度データから予測することも、害虫管理で利用されています。
保全では、夏の餌場だけでなく越冬場所も守る必要がある
希少昆虫の保全では、成虫が見られる季節の生息地だけを守れば十分とは限りません。
夏に花が豊富でも、冬に必要な落ち葉層、枯れ草、樹洞、土壌、積雪下環境が失われれば、年間生活史を完了できません。
草刈りや落ち葉除去を一斉に行うと、越冬中の卵・幼虫・蛹・成虫をまとめて失う可能性があります。
昆虫の保全では、「活動している時期の場所」と「休んでいる時期の場所」を両方考える必要があります。
越冬戦略を知ることは、生息地管理の季節性を考えるための基礎になります。
なぜ多くの昆虫は、休眠・低温耐性・越冬場所の選択によって冬を生き延びるのか
答えは、冬には低温、餌不足、乾燥、凍結など複数の危険が同時に起こるため、昆虫が一つの仕組みではなく、季節を先読みする発育調節と低温への生理適応、行動的な避難を組み合わせているからです。
多くの昆虫は日長や温度から冬の接近を予測し、休眠へ入り、発育・繁殖・代謝を抑えます。同時に糖やポリオールなどの保護物質を蓄え、膜組成や遺伝子発現を変え、凍結回避または凍結耐性など種ごとの低温戦略を強化します。
さらに、落ち葉の下、土中、樹皮の隙間、積雪下など温度変化の小さい越冬場所を選ぶことで、実際に体が受ける寒さを弱めます。強い休眠を持たず、この行動的回避を主に使う昆虫もいます。
卵・幼虫・蛹・成虫のどの段階で冬を越すかも種によって違い、その選択は餌、繁殖時期、天敵、生息環境と結びついています。
つまり昆虫の越冬は、「寒さに強い体」を持つだけでは成立しません。冬が来る時期を読み、成長を止め、エネルギーを節約し、細胞を寒さへ備え、安全な場所へ移動して春まで生活史をつなぐ、複数の適応を組み合わせた季節戦略なのです。
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参考文献・出典
- 篠原従道・富岡憲治「タンボコオロギにおける光周期と温度による幼虫発育の制御機構」比較生理生化学(2021)
- 積木久明ほか「ヤサイゾウムシの低温耐性」日本応用動物昆虫学会誌(1993)
- Teets N.M. et al. “Molecular Mechanisms of Winter Survival”(2023)
- Bale J.S., Hayward S.A.L. “Insect overwintering in a changing climate”(2010)

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