なぜ爬虫類は、肺を主なガス交換器官として陸上でも呼吸できるのか?

爬虫類では、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出の大部分を肺で行います。ただし、「爬虫類になったとき初めて肺が生まれた」というわけではありません。肺そのものの起源はもっと古く、魚類を含む初期の脊椎動物にまでさかのぼります。

爬虫類で重要なのは、すでに存在していた肺を、陸上生活で主なガス交換器官として使う身体システムが発達したことです。角質化した皮膚は水分を失いにくい一方、両生類の薄く湿った皮膚ほどガス交換には向きません。そのため、多くの爬虫類では皮膚呼吸への依存が小さく、肺呼吸が中心になります。

さらに、肋骨や体幹筋、種類ごとの特殊な呼吸筋によって胸腔や体腔の容積を変え、空気を肺へ出し入れできます。つまり爬虫類の肺呼吸は、陸上で水分を守る皮膚と、空気中の酸素を取り込む肺を役割分担させた仕組みとして理解できます。

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肺は爬虫類で初めて進化したの?

いいえ。現在の進化研究では、脊椎動物の肺は爬虫類よりはるか以前に起源をもち、初期の硬骨魚類の系統ですでに肺につながる器官が存在したと考えられています。

2022年のeLifeの研究では、肺をもつ現生魚類の発生を比較し、脊椎動物の肺の祖先的な形態と、水中から陸上への移行で肺がどう変化したかが検討されています。四肢動物へ向かう系統では、左右一対の肺が発達し、空気を取り込む表面積や容量を増やす方向へ変化したと考えられています。

したがって「爬虫類が陸上へ出るために突然肺を獲得した」のではありません。祖先から受け継いだ肺が、陸上生活に適した呼吸器官としてさらに発達したと考えるほうが正確です。

なぜ皮膚呼吸ではなく肺呼吸が中心になったの?

陸上では、呼吸と水分保持の間に大きなトレードオフがあります。

皮膚で効率よくガス交換するには、表面が薄く湿っていて、酸素や二酸化炭素が通りやすい必要があります。両生類では皮膚呼吸が重要ですが、その分、皮膚から水分を失いやすくなります。

一方、爬虫類の皮膚は強く角質化し、脂質を含むバリアによって水分損失を抑えます。日本の皮膚進化研究でも、爬虫類では両生類より強固な角質層が形成され、陸上環境への適応が進んだことが示されています。

この強い皮膚バリアは乾燥防止には有利ですが、ガスを通す面としては不利です。そのため、ガス交換を主に肺へ集約することが理にかないます。

つまり、皮膚は水分保持と防御、肺はガス交換という役割分担が、爬虫類の陸上生活を支えています。

爬虫類の肺はどうやって酸素を血液へ渡すの?

鼻や口から入った空気は、気管を通って肺へ入ります。肺の内部には血管が密接するガス交換面があり、そこで空気中の酸素が血液へ移り、血液中の二酸化炭素が肺側へ移ります。

爬虫類の肺は、哺乳類の肺胞とまったく同じ構造ではありません。種類によって単純な袋状に近い肺から、多数の部屋へ分かれた複雑な肺まで大きな違いがあります。

2026年の爬虫類呼吸器レビューでは、爬虫類の肺は大きく単室型、移行型、多室型などに分けられ、肺内部のガス交換面の配置も種類によって大きく異なると整理されています。

つまり「爬虫類の肺」と一つにまとめても、実際の内部構造は非常に多様です。

どうやって空気を肺へ吸い込むの?

多くの爬虫類では、体幹や肋骨を動かして体腔の容積を広げ、内部の圧力を下げることで空気を肺へ吸い込みます。これは吸引型換気と呼ばれる方式です。

両生類では口腔底を上下させ、空気を肺へ押し込む陽圧換気が重要ですが、多くの爬虫類では胸郭や体幹筋による陰圧換気が発達しています。

肋骨を外側へ動かすと肺の周囲の空間が広がり、肺が膨らみます。筋肉をゆるめたり別の筋肉を使ったりすると、肺が縮んで空気が外へ出ます。

この方法は、体が大きくなり活動量が増えた場合でも、換気量を調節しやすいという利点があります。

すべての爬虫類が肋骨で呼吸するの?

いいえ。ここにも大きな例外があります。

カメでは、肋骨が甲羅と一体化しているため、トカゲのように肋骨を大きく動かして肺を換気できません。その代わり、腹部や四肢帯に関係する筋肉を使って内臓を動かし、肺の周囲の圧力を変えて呼吸します。

ワニ類では、肋骨運動に加え、肝臓を後方へ引く筋肉を使って肺を膨らませる仕組みがあります。

ヘビでは細長い体に合わせて肺も長くなり、右肺がよく発達し、左肺が小さくなったり失われたりする種類が多く見られます。

つまり爬虫類では、「肺呼吸」という基本は共通していても、肺へ空気を送る機械的な方法は体のつくりに合わせて多様化しています。

ヘビは片方の肺だけでも呼吸できるの?

多くのヘビでは可能です。

ヘビの細長い体では、左右に同じ大きさの肺を並べるより、一方を主に発達させる構造が進化しました。多くの種類では右肺が長く発達し、左肺は小さいか、ほとんど失われています。

また一部のヘビでは、気管の途中にもガス交換に関わる構造が発達した「気管肺」があります。

このような左右非対称の肺は、爬虫類の肺が単純に一つの設計図で作られているのではなく、体形に応じて変化できることを示しています。

水中で暮らす爬虫類も肺呼吸なの?

はい。ウミガメ、ワニ、ウミヘビなど水中で長く活動する爬虫類も、基本的には空気を肺へ取り込む必要があります。

そのため、水面へ上がって呼吸し、潜水中は肺や血液に蓄えた酸素を使います。

一部のウミヘビでは皮膚を通したガス交換が補助的に行われ、カメ類でも種類によっては咽頭や総排出腔周辺などで水中の酸素を補助的に取り込む例があります。しかし、これらは肺呼吸を完全に置き換える仕組みではありません。

つまり、水中へ戻った爬虫類でも、祖先から受け継いだ肺呼吸を基本としたまま、潜水生活に合う補助機能を加えています。

爬虫類の肺は鳥や哺乳類より単純なの?

単純な種類もありますが、「爬虫類の肺は原始的で単純」と一括りにするのは正確ではありません。

ワニ類やオオトカゲ類などでは、肺内部に複雑な気道や部屋があり、空気の流れにも高度な特徴が見られます。一部の爬虫類では、鳥類に似た一方向性の気流が肺内で確認されています。

また、羊膜類の祖先の肺は従来考えられていたより複雑だった可能性があり、現在の一部のトカゲやヘビの比較的単純な肺は、進化の途中で二次的に単純化した可能性も指摘されています。

したがって、肺の複雑さは「進化の段階」ではなく、体サイズ、生活様式、代謝要求などに応じて異なると考える必要があります。

肺呼吸は爬虫類の循環とも関係するの?

関係します。肺で取り込んだ酸素を全身へ運ぶには、肺と心臓を結ぶ循環系が必要です。

日本の肺循環研究では、肺循環は脊椎動物の陸上生活と肺呼吸の発達に伴って確立された循環経路として説明されています。

爬虫類では肺へ向かう血流と全身へ向かう血流を調節する仕組みがあり、潜水する種類では状況に応じて肺血流を減らすこともあります。

つまり肺呼吸は肺だけの機能ではなく、心臓・血管・呼吸筋が連携して初めて成立します。

爬虫類が肺呼吸をする理由を一言でまとめると?

爬虫類が肺を主なガス交換器官としているのは、祖先から受け継いだ肺を発達させ、角質化した皮膚で水分を守りながら、空気中の酸素を肺で効率よく取り込む陸上向けの呼吸システムを進化させたからです。

肺そのものは爬虫類で初めて生まれたわけではありません。しかし爬虫類では、皮膚呼吸への依存を小さくし、肋骨や体幹筋、種類ごとの特殊な筋肉によって肺を換気する仕組みが発達しました。

そしてカメ、ヘビ、ワニ、トカゲでは、同じ肺呼吸でも肺の形や換気方法が大きく異なります。つまり爬虫類の肺呼吸とは、乾燥への耐性と空気呼吸を両立しながら、それぞれの体形や生活様式に合わせて多様化した呼吸システムなのです。

参考資料

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