なぜ湖の色は季節や天候によって変わって見えるのか?

湖の色が季節や天候によって変わって見えるのは、水の中にある植物プランクトン・土砂・有機物などの量が季節や雨で変わるうえ、空の色、日差し、見る角度、水面の波によって反射して目に届く光も変わるからです。

つまり、湖の色の変化には二つの要因があります。一つは湖水そのものの状態が変わること、もう一つは同じ水でも光の当たり方や反射のしかたで違って見えることです。

晴れた日には青く澄んで見えた湖が、曇りの日には灰色がかって見えたり、夏には緑色が強くなったり、大雨の後に茶色く濁って見えたりするのは、この二つの要因が重なっているためです。

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湖の色は「どの光が目に戻ってくるか」で決まる

太陽光には、赤、橙、黄、緑、青などさまざまな波長の光が含まれています。光が湖へ入ると、一部は水や水中の物質に吸収され、一部は散乱され、一部は水面で反射します。

そのうち私たちの目に届いた光の組み合わせが、湖の色として見えます。

米国地質調査所(USGS)は、自然の水の色は、水そのものに加えて、藻類、浮遊土砂、タンニンなどの溶存成分によって変わると説明しています。透明で溶存・浮遊物が少ない水は青く見えやすく、藻類が多ければ緑色、土砂が多ければ黄・茶・赤褐色などに見えることがあります。

そのため湖の色は、「水に色素が入っている」という単純な現象ではなく、水・水中物質・光の相互作用の結果です。

春・夏・秋・冬で植物プランクトンの量や種類が変わる

季節による湖の色変化で特に重要なのが、植物プランクトンです。

植物プランクトンにはクロロフィルなどの色素があり、増えると湖水が緑色や黄緑色に見えやすくなります。しかし、同じ種類が一年中同じ量でいるわけではありません。

琵琶湖北湖を1978年から2014年まで解析した研究では、植物プランクトン群集には明瞭な季節変化があり、その季節的な出現パターンが湖の栄養状態や水質の変化を反映することが示されています。

また、釧路湿原の達古武沼を調べた研究でも、春から秋にかけて優占する植物プランクトンの種類が順番に入れ替わる明確な季節変化が確認されています。

つまり、春にはある種類、夏には別の種類というように、季節によってプランクトンの量と組み合わせが変わるため、湖の色も一定ではありません。

夏に緑色が強く見える湖がある理由

夏は気温と水温が上がり、日射も強くなります。さらに湖へ窒素やリンなどの栄養塩が十分にあると、植物プランクトンが増えやすくなります。

植物プランクトンが大量に増えると、クロロフィルによって緑色の光が強く見えるようになり、湖全体が緑色や濃い黄緑色に見えることがあります。

環境省は、湖沼の透明度を低下させる主要因の一つとして植物プランクトンを挙げ、クロロフィルa濃度を測定することでその影響を把握できるとしています。

特にアオコのようにシアノバクテリアが水面近くに集中すると、通常の緑色よりも濃い緑、青緑、黄緑の膜や筋のように見えることがあります。

ただし、夏だから必ず緑色になるわけではありません。栄養塩が少ない湖、流れが速い湖、植物プランクトンが増えにくい湖では、夏でも青く澄んで見えることがあります。

春や秋の雨で湖が茶色く見えることがある

季節の変わり目や梅雨、台風などで雨が多くなると、流域から土砂が湖へ流れ込みやすくなります。

細かな粘土やシルトは水中に浮遊しやすく、黄色・茶色・赤褐色などの光を反射・散乱します。そのため、大雨の後には湖が一時的に茶色く濁って見えることがあります。

USGSも、自然水の色は浮遊土砂によって大きく変わり、土壌流出は黄色、赤色、茶色、灰色などさまざまな色を生むと説明しています。

特に流入河川の河口では、茶色い水が湖へ帯状に広がることがあります。時間がたつと重い粒子から沈み、透明度が回復して色も元に戻る場合があります。

つまり、雨の多い時期に湖の色が変わるのは、季節そのものより、雨によって流域から運び込まれる物質量が変わるためです。

落ち葉や湿地の有機物で黄褐色になることもある

湖が茶色や紅茶のような黄褐色に見える場合、土砂だけが原因とは限りません。

森林や湿地では、落ち葉、枝、植物の根などが分解されると、色のついた溶存有機物が水へ溶け込みます。タンニンや腐植物質などが多い水は、透明でも黄褐色や茶色を帯びて見えることがあります。

USGSは、葉や植物遺体に由来する溶存有機物が水を黄色や茶色に見せる代表的な原因だとしています。

秋に落ち葉が増えたり、大雨で湿地や森林から有機物が多く流入したりすると、湖水の色合いが季節的に変わる場合があります。

この場合、泥のような粒子をろ過しても色が残ることがあります。土砂による「濁り」と、溶けた有機物による「着色」は見た目が似ていても仕組みが違います。

晴れた日と曇りの日では同じ水でも違って見える

湖の色は、水質が変わらなくても天候だけで違って見えることがあります。

水面は鏡のように空の光を一部反射します。香港天文台は、大きな水面では水そのものによる光の吸収・散乱に加え、空の色が水面に反射することも見た目の色に影響すると説明しています。

晴れて青空が広がっていると、水面に青い空が映り、湖がより青く感じられることがあります。反対に、厚い雲に覆われた日は空から届く光が白色から灰色中心になり、湖面も灰色や銀色、暗い青灰色に見えやすくなります。

夕方には赤や橙の光が水面で反射し、湖そのものの水質が変わっていなくても赤紫や金色に見えることがあります。

このため、写真だけを見て「昨日より水質が悪化した」と判断するのは危険です。同じ湖でも空の状態だけで見える色が大きく変わるからです。

太陽の高さと見る角度でも色が変わる

湖面の反射は、太陽や観察者の位置によって変わります。

昼間に太陽が高いときと、朝夕に太陽が低いときでは、水面に入る光の角度が違います。また、湖を真上に近い角度から見る場合と、岸から水平方向に近い角度で見る場合でも、空の反射と水中から戻る光の割合が変わります。

香港天文台も、水域の見える色は天候だけでなく、時間帯、見る角度、高さによって変化するとしています。

そのため展望台から見た湖と、湖岸から見た湖で色が違って見えることがあります。これは必ずしも水質の場所差ではなく、光学的な見え方の違いです。

風で水面が波立つと反射のしかたが変わる

風が弱いと湖面は滑らかになり、鏡のように空や周囲の山をはっきり反射します。

一方、風が強く水面に細かな波ができると、反射する面の向きがばらばらになります。そのため空の光がさまざまな方向へ反射され、水面の明るさや色の均一さが変わります。

また浅い湖では、強風によって湖底の泥が巻き上がることがあります。この場合は見え方だけでなく、水中の浮遊物そのものが増えるため、湖が茶色や灰色に濁ることもあります。

つまり風には、水面反射を変える作用と、底泥を巻き上げて実際の水色を変える作用の両方があります。

晴天が続くと水が澄んで見える場合もある

雨がしばらく降らず、風も弱い日が続くと、流域から新しい土砂が入る量が減り、水中の浮遊粒子が湖底へ沈みやすくなります。

その結果、透明度が上がり、青色や青緑色が強く見えることがあります。

反対に、晴天が長く続いて水温が高くなり、栄養塩が豊富な湖では植物プランクトンが増えて緑色が強くなる場合もあります。

つまり「晴天=必ず青く澄む」わけではありません。土砂の沈降による透明化と、藻類増殖による緑色化のどちらが強いかによって結果が変わります。

雪どけの時期にも色が変わることがある

積雪地域では、春の雪どけも湖の色を変える原因になります。

雪どけ水が河川流量を増やすと、流域から細かな土砂や有機物が運ばれることがあります。これによって透明度が下がり、冬に澄んでいた湖が春にやや濁って見える場合があります。

一方、雪どけ水そのものは冷たく、場所によっては湖水の混合を促すこともあります。混合によって植物プランクトンの位置や栄養塩分布が変われば、その後の色にも影響します。

季節変化は気温だけでなく、雨・雪・融雪・風など複数の気象条件を通じて湖の色へ表れます。

季節による透明度の変化も「色の見え方」を変える

透明度が高い湖では、光が深くまで進みます。そのため水そのものの青さや、浅い場所では湖底の色が見えやすくなります。

透明度が低下すると、表層近くの植物プランクトンや浮遊粒子から戻る光の影響が強くなり、緑や茶色が目立ちやすくなります。

環境省は、湖沼の沿岸透明度を左右する主な要因として、植物プランクトン、土粒子などのトリプトン、色付き溶存有機物を挙げています。

これらの量は季節や降雨によって変わるため、透明度の季節変化は湖の色の季節変化とも深く結びついています。

同じ湖でも場所によって色が違うことがある

湖全体がいつも同じ色になるわけではありません。

流入河川の河口では大雨後に土砂が多く、湖心では比較的澄んでいることがあります。風下側では植物プランクトンや浮遊物が集まりやすく、局所的に濃い緑色になることもあります。

浅い湾では湖底の砂や水草の色が見えやすい一方、深い沖合では水中を長く通った光の影響で濃い青色に見える場合があります。

そのため、「今日の湖は緑色だった」という観察でも、場所、時間、風向によって見え方が大きく違うことがあります。

色だけで水質の良し悪しは判断できない

湖の色は水の状態を知る手がかりになりますが、色だけで水質の良し悪しや安全性を判断することはできません。

茶色く見えても、自然の腐植物質や大雨後の土砂が原因の場合があります。緑色でも、自然な植物プランクトンの季節増殖である場合があります。逆に、青く澄んで見えても、目では確認できない化学物質や微生物の問題がないとは限りません。

正確に水質を評価するには、透明度、濁度、クロロフィルa、窒素、リン、溶存酸素、pHなど複数の項目を測定する必要があります。

湖の色は「診断結果」ではなく、「湖の中や空の状態が変わっているかもしれない」と気づくためのサインと考えるのが適切です。

季節・天候と色の関係を整理すると

  • 春:雪どけや春雨で土砂・有機物が入り、透明度が変化することがある
  • 夏:高水温と日射、栄養塩条件によって植物プランクトンが増え、緑色が強くなることがある
  • 秋:降雨や落ち葉由来の有機物、植物プランクトンの種類交代で色が変わることがある
  • 冬:植物プランクトンが少なくなり、条件によっては透明度が高くなることがある
  • 晴天:青空の反射で青く見えやすいが、藻類が多ければ緑色が強くなる場合もある
  • 曇天:空の灰色が反射し、湖面も灰色・銀色に見えやすい
  • 大雨後:土砂流入で茶色く濁ることがある
  • 強風時:波による反射変化や底泥の巻き上げで色が変わることがある

まとめ

湖の色が季節や天候によって変わって見えるのは、湖水に含まれる植物プランクトン・土砂・溶存有機物の量が変わることと、空・日射・見る角度・波によって光の反射や散乱が変わることが重なるからです。

季節変化では植物プランクトンの増減や種類交代、雨や雪どけによる土砂・有機物流入が重要です。一方、短時間の天候変化では空の反射、雲、太陽の位置、風による水面状態が見た目を大きく変えます。

だから同じ湖でも、夏は緑、雨の後は茶色、晴れた朝は青、曇った日は灰色というように、さまざまな表情を見せます。湖の色は、水の状態と光の状態を同時に映しているのです。

参考資料

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