なぜ地震のマグニチュードには複数の求め方があるのか?

地震のマグニチュードは、地震そのものの規模を、地震計で記録された波や断層のずれの大きさから数値化した指標です。単純に「地面が何cm揺れたか」を表す数字ではなく、震源から放出された地震波の大きさや、断層運動の規模を対数という仕組みを使って表しています。

ニュースで「マグニチュード7.0の地震」と聞くと、一つの決まった測り方があるように思えますが、実際にはマグニチュードには複数の種類があります。日本では気象庁マグニチュード(Mj)とモーメントマグニチュード(Mw)が主に使われ、それぞれ速報性や巨大地震への適用性などに違いがあります。

目次

マグニチュードは何を表しているのか

マグニチュードは、ある地点の揺れの強さではなく、地震そのものがどれくらい大きかったかを表すための値です。

一つの地震には、その規模を示す代表的なマグニチュードがあります。一方、各地で観測される震度は場所ごとに異なります。震源に近い場所では強く揺れやすく、遠い場所では一般に弱くなりますが、地盤条件によっても震度は変わります。

USGS(米国地質調査所)も、マグニチュードは地震のサイズを表す値であり、各地点の揺れの強さとは区別されると説明しています。

この違いをたとえるなら、マグニチュードは「電球そのものの明るさ」、震度は「ある場所から見た明るさ」に近い関係です。同じ光源でも距離や周囲の条件で見え方が変わるように、同じ地震でも地点ごとの揺れは変わります。

なぜマグニチュードは対数で表すのか

地震の規模には非常に大きな幅があります。人がほとんど感じない小さな地震から、数百kmにわたる断層が動く巨大地震までを、同じ尺度で扱わなければなりません。

そこで使われるのが対数尺度です。対数を使うと、非常に大きな範囲の数値を、比較的扱いやすい数字に圧縮して表すことができます。

振幅をもとにしたマグニチュードでは、マグニチュードが1大きくなると、地震計に記録される代表的な波の振幅はおおむね10倍になります。しかし、地震が放出するエネルギーの差はもっと大きく、マグニチュードが1増えると約32倍になります。

気象庁も、M8の地震1回が放出するエネルギーはM7の地震約32回分、M6の地震約1000回分に相当すると説明しています。

つまり、M7とM6の違いは「1だけ大きい」という単純な差ではありません。数字の差が小さく見えても、地震の物理的な規模には大きな違いがあります。

最初のマグニチュードは地震波の振幅から考えられた

マグニチュードという考え方は、1930年代にチャールズ・リヒターが、地震計で記録された地震波の最大振幅を使って地震の大きさを比較したことから広まりました。

基本的な発想は、震源からの距離によって地震波が弱くなる効果を補正したうえで、地震計に記録された波の振幅を比べるというものです。

ただし、現在「マグニチュード」と呼ばれる値がすべてリヒターが最初に定義した方式で計算されているわけではありません。地震計の種類、使う地震波の周期、震源までの距離、地震の大きさによって適した計算方法が異なるため、現在では多くのマグニチュード尺度が使われています。

USGSも、局地マグニチュード、実体波マグニチュード、表面波マグニチュード、モーメントマグニチュードなど複数の種類があると説明しています。

日本で使われる気象庁マグニチュードとは

日本で地震情報を発表するとき、気象庁が代表値として基本的に用いているのが気象庁マグニチュード(Mj)です。

気象庁によると、Mjは地震計で観測された速度波形や変位波形の最大振幅に、震源距離による減衰などの補正を加えて計算します。

この方式の大きな利点は、地震発生後に比較的すばやく計算できることです。地震直後の情報や津波警報の初期判断では、短時間で地震の規模を把握する必要があります。そのため、速報性の高いMjは実務上重要です。

また、日本では長期間にわたって一貫した方法でMjが求められているため、過去の地震活動と現在の地震活動を比較しやすいという利点もあります。

なぜ巨大地震では別のマグニチュードが必要なのか

地震波の最大振幅を中心に求めるマグニチュードには、非常に大きな地震になると値が頭打ちになりやすいという問題があります。これをマグニチュードの飽和といいます。

巨大地震では断層の破壊が広い範囲に及び、長い周期の地震波を大量に放出します。しかし、特定の周期や最大振幅だけを見る尺度では、その巨大さを十分に反映できない場合があります。

気象庁も、MjはM8を超えるような巨大地震では規模を正しく表せないことがあると説明しています。そのため、巨大地震ではモーメントマグニチュード(Mw)が重要になります。

モーメントマグニチュードは何から計算するのか

モーメントマグニチュードは、地震の断層運動そのものの物理的な規模を表す地震モーメントをもとに計算します。

地震モーメントは、概念的には次の3つの要素で決まります。

  • 断層がずれた面積
  • 断層がどれくらいずれたか
  • 周囲の岩石がどれくらい硬いか

断層面積が広いほど、ずれ量が大きいほど、また同じ変形に強い力を必要とする岩石ほど、地震モーメントは大きくなります。

USGSでは、地震モーメントを「岩石の剛性×断層のすべり面積×すべり量」として示しています。得られた地震モーメントを対数変換して、人が扱いやすいマグニチュードの数字にしたものがMwです。

この方法は断層運動の物理量に直接結びついているため、巨大地震でも規模を表しやすいという利点があります。

なぜMwはすぐに発表できないことがあるのか

モーメントマグニチュードは物理的な意味が明確ですが、計算には広帯域地震計で記録された地震波形全体を詳しく解析する必要があります。

気象庁では、観測された地震波形を最もよく説明する地震の位置、時刻、規模、発震機構などを同時に求めるCMT解析によってMwを算出します。

そのため、最大振幅を利用するMjに比べると計算に時間がかかりやすく、小さな地震では精度よく決めにくいという短所があります。

このため、地震直後にはまずMjが発表され、その後の詳しい解析でMwが求められることがあります。東北地方太平洋沖地震のような巨大地震では、Mjでは規模を十分に表せないためMwが代表値として使われます。

マグニチュードの数字が後から変わることがあるのはなぜか

地震発生直後は、まだ利用できる観測データが限られています。まず近くの観測点から届いた波形を使って速報値を求め、その後、より多くの地震計の記録や長い時間の波形を集めて精査します。

そのため、速報段階で発表されたマグニチュードが、後から0.1や0.2程度変わることがあります。巨大地震では、解析手法そのものがMjからMwへ変わることで、より大きく修正される場合もあります。

これは地震の大きさ自体が後から変わったのではありません。観測データが増え、より適した計算方法を使えるようになったため、推定値が改善されたということです。

マグニチュードが同じなら被害も同じなのか

マグニチュードが同じでも、被害は同じにはなりません。

被害や揺れの強さには、震源の深さ、断層からの距離、地盤の硬さ、地震波の周期、建物の耐震性など多くの条件が関係します。

たとえば、M6台の比較的小規模な地震でも震源が浅く都市の直下で起これば、局地的に非常に強い揺れになることがあります。一方、より大きなマグニチュードでも震源が遠ければ、ある地点での揺れが必ずしも強いとは限りません。

したがって、マグニチュードだけを見て「危険か安全か」を判断することはできません。実際の防災情報では、震度、震源の位置と深さ、津波情報なども合わせて確認する必要があります。

マグニチュードと震度はどう違うのか

マグニチュードと震度は、地震情報で最も混同されやすい二つの指標です。

マグニチュードは地震そのものの規模、震度はある地点で観測された揺れの強さです。

一つの地震に対して、マグニチュードは代表的な値が一つ示されます。一方、震度は全国の観測点ごとに別々の値が出ます。

たとえば「M7.0、最大震度6強」という情報なら、M7.0は地震そのものの規模、震度6強は最も強く揺れた観測地点での揺れの程度を意味します。

「リヒタースケール」とマグニチュードは同じなのか

海外報道などで「リヒタースケール」という言葉を見かけることがありますが、現在使われるマグニチュードすべてを厳密にリヒタースケールと呼ぶのは正確ではありません。

リヒターが考案した局地マグニチュードは、特定の地震計と地域を前提にした尺度でした。その後、より遠い地震や大きな地震を測るために、さまざまな尺度が開発されました。

現在、大規模地震の比較にはMwが広く使われます。日本の気象庁情報ではMjも重要です。そのため、「M」という記号だけを見るのではなく、必要に応じてMjなのかMwなのかを確認すると、地震規模の意味をより正確に理解できます。

まとめ

地震のマグニチュードは、地震そのものの規模を表すために、地震波や断層運動を数値化した指標です。地震の規模には非常に大きな幅があるため、対数尺度を使って表します。

日本では、地震波の最大振幅などから迅速に求められる気象庁マグニチュード(Mj)と、断層面積・すべり量・岩石の硬さから求める地震モーメントを基礎としたモーメントマグニチュード(Mw)が主に使われます。

Mjは速報性と長期的な比較に優れますが、巨大地震では飽和することがあります。Mwは巨大地震まで物理的な規模を表しやすい一方、波形全体の詳しい解析が必要です。

つまりマグニチュードは、地震の揺れを単純に測った数字ではなく、地震波や断層運動の規模を対数的にまとめ、大小さまざまな地震を共通の尺度で比べられるようにした仕組みです。

参考資料

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