地震の余震は、大きな地震で断層が急にずれたあと、周囲の岩盤にかかる力の分布が変わり、新しい力のつり合いへ移る途中で周辺の断層や割れ目が次々にずれることで起こります。本震によって地下の応力状態が一気に変化すると、それまでぎりぎり動かずにいた断層の一部が滑りやすくなり、比較的小さな地震が続いて発生します。
余震は本震直後ほど多く、時間がたつにつれて減っていくのが一般的です。ただし、完全になくなるまでの期間は地震ごとに異なり、数か月から数年、場合によってはそれ以上続くこともあります。
そもそも余震とは何か
余震とは、大きな地震が起きたあと、その震源域や周辺で続いて起こる、通常は本震より規模の小さい地震のことです。
気象庁は、大きな地震の発生後、その震源近くで最初の大地震より小さい地震が引き続いて発生することが多く、これを余震と呼ぶと説明しています。また、最初の大きな地震を本震と呼びます。
ただし、この呼び方は後から変わることがあります。最初に大きな地震が起きたあと、さらに規模の大きい地震が同じ一連の活動で発生すれば、後の地震が本震となり、それ以前の地震は前震とみなされることがあります。
つまり「本震」「前震」「余震」は、地震が起きた瞬間に必ず確定できる絶対的な名前ではなく、一連の地震活動の中での相対的な呼び方です。
なぜ本震のあとに余震が起こるのか
地震は、地下の断層にたまった力が限界を超え、岩盤が急にずれることで起こります。本震で大きな断層運動が起こると、断層面や周囲の岩盤にかかっていた力は大きく変化します。
ここで重要なのは、本震によって周辺の力がすべてきれいに解消されるわけではないということです。
ある場所では力が小さくなりますが、別の場所では逆に断層を動かす方向の力が増えることがあります。その結果、もともと破壊寸前だった周囲の小さな断層や、本震で完全には滑らなかった部分が動き、新たな地震を起こします。
USGS(米国地質調査所)も、余震は本震によって地球内部の応力状態が変わり、その変化が近くの地震を誘発することで起こると説明しています。
このように、余震は「本震の残りの揺れ」が後から伝わってくる現象ではありません。一本一本が新たな断層の急激なずれによって発生する、独立した地震です。
本震で地下の「力のつり合い」はどう変わるのか
本震の前、地下の岩盤はプレート運動などから長期間力を受けながら、ぎりぎりの状態で支え合っています。
そこに大きな断層運動が起こると、数秒から数十秒ほどの短い時間で岩盤の位置関係が変わり、周囲の応力場も変化します。
たとえるなら、積み木を押し合った状態で一つを急に抜いたとき、全体がすぐには安定せず、別の積み木が少しずつずれるようなものです。実際の地殻ははるかに複雑ですが、本震のあとに周囲が新しい安定状態へ移るというイメージは余震を理解する助けになります。
気象庁は、余震について、本震によって生じた地下の力のつり合いの不安定な状態を解消する過程で発生すると考えられていると説明しています。
余震はどこで起こるのか
余震は、一般に本震で断層が動いた範囲とその周辺に集中します。この領域を余震域と呼びます。
大きな地震では断層面が数十kmから数百kmに広がることがあるため、余震も一点ではなく広い帯状の範囲に分布します。
余震分布を詳しく調べると、本震で実際にどの範囲の断層が破壊したのかを推定する手掛かりになります。そのため、地震学では本震直後から多数の余震の震源を決定し、地下の断層形状や破壊範囲を調べます。
ただし、余震域の境界は明確な線で区切れるわけではありません。地震活動は周辺へ広がることもあり、個々の地震が「余震か、それとは別の地震か」を厳密に分けることが難しい場合もあります。
なぜ余震は本震直後ほど多いのか
余震には、発生回数が時間とともに減っていくという非常に特徴的な性質があります。
本震直後は地下の応力状態が大きく変化した直後なので、不安定になった断層や岩盤が多く、余震が頻繁に起こります。しかし、余震が繰り返されるにつれて岩盤の再調整が進み、時間がたつほど地震の発生率は低下していきます。
この時間変化は、地震学では大森・宇津則(改良大森公式)と呼ばれる経験式でよく表されます。
宇津徳治らによる総説では、余震発生率がおおむね時間のべき乗に従って低下する改良大森公式が、多くの余震系列の時間変化を表すのに適していることがまとめられています。
気象庁も、一般的な余震活動では本震発生から1日以内に余震が最も多く、2日目にはおよそ半分、3日目にはおよそ3分の1というように減っていく傾向を示しています。
余震の数は規則正しく減り続けるのか
余震は長期的には減少しますが、毎日きれいに一定割合で減るわけではありません。
しばらく静かだったあとに、比較的大きな余震が発生することもあります。また、その余震によってさらに小さな地震が誘発され、短期間だけ地震回数が増える場合もあります。
そのため、「昨日より余震が少なかったから、もう大丈夫」と判断することはできません。統計的には減少傾向にあっても、個々の地震がいつ起こるかを正確に予測することはできないからです。
気象庁では、最初の大地震と同程度の地震への注意を、地震発生後おおむね1週間程度呼びかけることを基本としています。特に発生直後の数日間は、強い揺れを伴う地震への注意が重要です。
余震は本震より必ず小さいのか
「余震」という言葉の定義上、本震より後に起きる地震が最終的に本震より小さければ余震と呼ばれます。しかし、最初の大地震よりさらに大きな地震が後から起こる可能性はあります。
その場合、後から起きたより大きな地震が本震となり、それ以前の地震は前震と呼ばれることがあります。
2016年の熊本地震では、4月14日のM6.5の地震の約28時間後、4月16日にM7.3のより大きな地震が発生しました。このような事例があるため、最初に大きな地震が起きた直後に「これが確実に最大の地震だった」と判断することはできません。
現在の防災情報では、この点を踏まえ、単に「余震だから本震より必ず小さい」と受け取られないよう、「大地震後の地震活動」という表現が重視されています。
余震はいつまで続くのか
余震がいつ完全に終わるかを、あらかじめ正確に決めることはできません。
一般には時間がたつほど回数が減り、やがて通常の地震活動の水準へ近づいていきます。しかし、大きな本震ほど余震域が広く、余震活動が長く続く傾向があります。
USGSは、大きな地震の余震が数日、数週間、数か月、場合によっては数年続くことがあるとしています。気象庁も、余震活動が完全に収まるまでに数か月から数年、あるいはそれ以上かかる場合があると説明しています。
つまり、「1週間たったから余震が終了した」という意味ではありません。1週間という期間は、特に大きな地震への注意が必要な初期段階の目安の一つであり、その後も地震活動そのものは続く可能性があります。
本震が大きいほど余震も多くなるのか
一般に、本震が大きいほど断層が破壊する範囲も広くなり、応力状態が変化する領域も大きくなるため、余震の数が多く、余震域も広くなる傾向があります。
USGSの地震系列に関する解説でも、大きな本震ほど、より広い領域で、より多く、より長期間の余震を伴う傾向が示されています。
ただし、同じマグニチュードでも余震活動の活発さには差があります。断層の種類、地下の温度や圧力、周囲の応力状態、岩石の性質などが異なるためです。
特に非常に深い地震では、浅い地震に比べて典型的な余震活動が少ない場合があります。余震の起こり方は本震の大きさだけで決まるわけではありません。
余震と群発地震は何が違うのか
余震と似た現象に群発地震があります。
余震活動では、まず目立って大きな本震があり、その後に小さな地震が多数続くという形が一般的です。
一方、群発地震では、一連の地震活動の中に明確な最大地震がなく、同程度の規模の地震が繰り返し起こることがあります。USGSも、余震系列は明確な本震に続く地震活動であるのに対し、群発地震は特定の本震を識別しにくい地震系列として区別しています。
ただし、活動の途中ではどのタイプか判断できない場合があります。より大きな地震が後から発生すると、それまで本震と思われていた地震の位置づけが変わるためです。
余震が危険なのはなぜか
余震は本震より小さいことが多いものの、被害を受けた地域では注意が必要です。
本震で建物、ブロック塀、斜面などがすでに弱くなっていると、その後の比較的小さな揺れでも倒壊や落石、土砂災害が起こる可能性があります。
また、救助活動や復旧作業中に余震が発生すると、二次災害につながるおそれがあります。そのため気象庁は、大地震後には傾いた建物や崖に不用意に近づかず、家具の固定や避難経路を再確認するよう呼びかけています。
余震の科学的な仕組みを知ることは、「小さい地震だから安心」と考えるためではなく、本震後も地下の状態が変化し続けていることを理解し、安全行動につなげるために重要です。
まとめ
地震の余震は、本震によって断層が大きくずれ、地下の応力状態が急激に変化したあと、周囲の岩盤や断層が新しい力のつり合いへ移る過程で発生します。
本震によって滑りやすくなった断層や、完全にはずれ切らなかった部分が次々に動くため、本震の震源域とその周辺で地震が続きます。
余震は本震直後ほど多く、その後は大森・宇津則で表されるように時間とともに減少するのが一般的です。ただし、完全に終わる時期は決められず、数か月から数年以上続くこともあります。また、後から最初の地震を上回る地震が起こる可能性もあるため、大地震直後は特に注意が必要です。
つまり余震とは、本震の揺れが残っている現象ではなく、本震で変化した地下の力に応じて周囲の断層が再調整されることで起こる、新たな地震の連続です。
参考資料
- 気象庁「地震について」
- 気象庁「大地震後の地震活動(余震等)について」
- U.S. Geological Survey「Earthquake Sequence Product」
- Utsu, Ogata and Matsu’ura「The Centenary of the Omori Formula for a Decay Law of Aftershock Activity」

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