なぜ地震の液状化では地盤が液体のように変形するのか?

地震の液状化は、水で満たされた緩い砂質地盤が繰り返し揺さぶられることで、砂粒どうしを押し付けていた力が弱まり、地盤が一時的に大きなせん断抵抗を失うことで起こります。その中心にあるのが、地震動による「過剰間隙水圧の上昇」と「有効応力の低下」です。

地面が本当に水へ変わるわけではありません。砂粒と水からなる地盤の中で、水が一時的に荷重の多くを受け持つようになり、砂粒どうしの接触力が弱くなるため、地盤が液体のように変形しやすくなる現象です。

目次

液状化する前の地盤はどうやって重さを支えているのか

砂質地盤は、砂粒だけでできているわけではありません。砂粒と砂粒の間には「間隙」と呼ばれるすき間があり、その中に空気や地下水が入っています。

地下水位より下では、多くの場合、この間隙が水で満たされています。このような状態を飽和といいます。

建物や土そのものの重さは、地盤の内部では砂粒どうしの接触と間隙水によって支えられています。ただし、地盤の強さを大きく左右するのは、砂粒どうしが実際に押し合っている力です。この粒子骨格に働く力を地盤工学では有効応力と呼びます。

有効応力が十分にある間は、砂粒どうしがかみ合い、摩擦抵抗を発揮できるため、地盤は固体として建物や道路を支えることができます。

地震で砂粒はなぜ詰まろうとするのか

液状化しやすい緩い砂地盤では、砂粒が比較的ばらばらに並び、粒子の間に大きめのすき間があります。

そこへ地震による繰り返しのせん断変形が加わると、砂粒はより安定した並び方へ移ろうとし、全体として体積を小さくする方向に変形しようとします。簡単に言えば、揺さぶられることで砂粒がもっと密に詰まろうとするのです。

乾いた砂なら、粒子が詰まると空気が抜けたり、地盤の体積が実際に小さくなったりできます。しかし、水で飽和した地盤では事情が違います。

水が逃げられないと「過剰間隙水圧」が上がる

地震の強い揺れは、数秒から数十秒程度の短い時間に繰り返し作用します。その間に砂粒が詰まろうとしても、間隙にある水が地盤の外へ十分に排出されるとは限りません。

特に、地下水位が高く、排水に時間がかかる地盤では、砂粒が体積を縮めようとする動きが間隙水を圧縮する方向に働きます。その結果、地震前よりも余分な水圧が生まれます。これが過剰間隙水圧です。

液状化の発生機構を扱った土木学会論文では、繰り返しせん断によって過剰間隙水圧が徐々に上昇し、それが初期有効応力に近づくと、有効応力が非常に小さくなって砂地盤のせん断抵抗が大きく低下する過程が説明されています。

有効応力が下がるとなぜ地盤が液体のようになるのか

地盤の全体的な圧力を単純化して考えると、土粒子の骨格が受け持つ有効応力と、間隙水が受け持つ水圧に分けて考えることができます。

地震中に過剰間隙水圧が上がると、同じ全体荷重の中でも、水が受け持つ割合が増えます。すると、砂粒どうしを押し付けている有効応力は小さくなります。

砂のせん断強さは、砂粒どうしの摩擦やかみ合わせに大きく依存します。有効応力が極端に小さくなると、粒子同士が強く押し付け合えなくなり、摩擦抵抗も発揮しにくくなります。

この状態になると、地盤はそれまでのように上からの荷重や横方向の力を支えにくくなり、わずかな力でも大きく変形します。これが「地盤が液体のようになる」と表現される理由です。

国土交通省も、液状化を、地震の強い衝撃によってそれまで互いに接して支え合っていた土粒子が支えを失い、地盤全体が液体のような状態になる現象と説明しています。

液状化しやすい地盤にはどのような条件があるのか

地震が起きれば、すべての地盤が同じように液状化するわけではありません。液状化には複数の条件が重なる必要があります。

  • 砂質やシルト質を中心とした粒状地盤であること
  • 地下水位が高く、間隙が水で満たされていること
  • 地盤が比較的緩く、繰り返しせん断で収縮しやすいこと
  • 十分な強さと回数の地震動を受けること

USGSも、液状化は地表付近の緩く堆積した水で飽和した地盤が、強い地震動によって強度を失う現象と説明しています。

つまり「埋立地だから必ず液状化する」「砂だから必ず液状化する」というわけではありません。砂の密度、粒度、地下水位、排水条件、地震動の強さや継続時間などを合わせて考える必要があります。

密な砂はなぜ液状化しにくいのか

緩い砂は、地震で揺さぶられると体積を小さくしようとする傾向が強いため、非排水に近い状態では過剰間隙水圧が上昇しやすくなります。

一方、よく締め固められた密な砂は、せん断されたときに粒子が互いを乗り越えるような動きをし、体積を増やそうとする性質が現れることがあります。この性質はダイレイタンシーと呼ばれます。

そのため、一般に密な地盤ほど液状化に対する抵抗が大きくなります。実際の液状化対策でも、地盤を締め固めて密度を上げる方法が利用されています。

ただし、密度だけで液状化の可能性を決めることはできません。粒子の大きさや形、細粒分の量、固結の程度、地下水条件なども液状化強度に影響します。

液状化したあと水圧はどうなるのか

地震の揺れが収まると、地震中に高まった過剰間隙水圧は少しずつ周囲へ逃げていきます。この過程を消散といいます。

水圧が下がるにつれて有効応力は回復し、砂粒どうしが再び接触して地盤は固体としての強さを取り戻していきます。

しかし、元の状態に完全に戻るとは限りません。地震中に砂粒がより密に並び替わっているため、水が抜けたあとに地盤全体が沈下することがあります。

また、地表近くでは高い水圧によって水と砂が地表へ押し出され、噴砂や噴水が生じることがあります。国土交通省は、液状化による代表的な現象として噴砂、住宅の沈下・傾斜、道路の変形、マンホールや埋設管の浮き上がりなどを挙げています。

なぜ建物が沈み、マンホールが浮くのか

液状化すると、地盤の支持力やせん断抵抗が低下します。そのため、建物の荷重を十分に支えられなくなると、建物が沈下したり傾いたりします。

一方、マンホールや地下タンクなど、周囲の土より見かけの密度が小さい地下構造物には浮力が働きます。通常時は周囲の地盤が抵抗して浮き上がりを抑えていますが、液状化によってその抵抗が低下すると、地表側へ浮き上がることがあります。

また、傾斜地や護岸の近くでは、液状化した地盤が低い方向へ大きく移動する側方流動が起こる場合があります。これは道路、橋台、埋設管などへ大きな変形を与える原因になります。

液状化は地震中だけの現象なのか

液状化の開始は地震動中に起こることが多いものの、地盤の変形や被害が地震の揺れと同時に終わるとは限りません。

地震後も過剰間隙水圧が地盤内に残れば、水圧が消散するまで地盤の強度が十分に回復しないことがあります。また、水が下から上へ移動する過程で局所的な変形や沈下が進むこともあります。

東日本大震災を対象とした研究では、本震で上昇した過剰間隙水圧が完全に消散する前に余震が加わることで、液状化が進行・再発する可能性が示されています。液状化は一回の揺れだけではなく、地震動の継続時間や余震との間隔にも影響される現象です。

「地盤が液体になる」という説明はどこまで正しいのか

液状化という名前から、砂そのものが溶けて水になるように思われるかもしれません。しかし、物質としての砂が液体へ変化するわけではありません。

正確には、砂粒と水からなる地盤の力の分担が変化し、粒子骨格が十分な有効応力を持てなくなることで、固体としてのせん断抵抗が大きく低下します。

したがって、液状化を理解するうえでは「土が液体に変化する」と覚えるよりも、「砂粒どうしが支える力を失い、地盤が大きく変形できる状態になる」と考えるほうが正確です。

液状化対策は仕組みを逆向きに考えるとわかりやすい

液状化の発生機構を理解すると、代表的な対策の考え方も理解しやすくなります。

  • 地盤を締め固める:砂を密にして、繰り返しせん断で収縮しにくくする
  • 排水しやすくする:地震中に過剰間隙水圧がたまりにくくする
  • 地盤を固化する:セメント系材料などで粒子同士を結び、せん断抵抗を高める
  • 地下水位を下げる:飽和している地盤の範囲を減らす

液状化対策は、単に「地面を硬くする」だけではありません。過剰間隙水圧を上げにくくする、あるいは有効応力を失いにくくするという液状化の発生機構そのものに働きかける方法です。

まとめ

地震の液状化は、水で飽和した緩い砂質地盤が繰り返しせん断され、砂粒がより密に詰まろうとするところから始まります。

地震中は水がすぐに逃げられないため、過剰間隙水圧が上昇します。すると砂粒どうしを押し付ける有効応力が低下し、摩擦やかみ合わせによるせん断抵抗が弱くなります。極端な場合には地盤が大きく変形できる状態となり、沈下、傾斜、噴砂、浮き上がり、側方流動などが起こります。

揺れが収まったあとには過剰間隙水圧が徐々に消散し、有効応力は回復しますが、その過程で地盤沈下などの変形が残ることがあります。

つまり液状化は、「繰り返しせん断→砂粒が収縮しようとする→水が逃げられず過剰間隙水圧が上がる→有効応力が下がる→地盤のせん断抵抗が失われる」という仕組みで成り立っています。

参考資料

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