なぜ地震の震源は場所や条件によって違うのか?

地震の震源に場所や条件による違いがあるのは、地震を起こす断層が存在する場所、プレートの位置、地下の温度や圧力、岩盤の性質が地域ごと・深さごとに異なるからです。そのため、内陸の浅い場所で起こる地震もあれば、プレート境界で起こる地震、沈み込む海洋プレートの内部で数十kmから数百kmの深さに起こる地震もあります。

さらに、震源の「実際の違い」だけでなく、観測点の配置や地震波速度モデルの違いによって、求められる震源位置や深さの精度にも差が出ます。震源の違いを理解するには、どこで地震が起こるかという地球内部の条件と、どうやって震源を決めるかという観測条件の両方を見る必要があります。

目次

震源の違いは「どの場所で岩盤が急にずれるか」で決まる

震源は、地下の断層破壊が最初に始まった地点です。気象庁は、日本周辺で起こる地震を大きく、プレート境界で起こる地震、沈み込むプレート内部で起こる地震、陸側プレートの浅い場所で起こる地震に分けて説明しています。

同じ「地震」でも、発生場所が違えば周囲の岩石、温度、圧力、断層にかかる力が変わります。そのため、震源の深さや断層運動の特徴も変わります。

まず重要なのは、震源が地球内部に均等に分布しているわけではないということです。プレート境界や沈み込むプレートに沿って震源が帯状・面状に並ぶ一方、地震がほとんど起こらない領域もあります。

陸域の地震はなぜ比較的浅い場所に多いのか

陸側プレート内部で起こる地震は、比較的浅い地殻内に震源を持つことが多くあります。

理由の一つは、岩石が地震性の破壊を起こせる温度条件です。地表に近い低温の岩石は、力が限界を超えると割れたり断層に沿って急に滑ったりする脆性破壊を起こしやすくなります。

一方、深くなるほど地下の温度は高くなります。高温の岩石は、非常に長い時間スケールでは割れるよりもゆっくり変形する塑性変形を起こしやすくなります。そのため、地殻内で通常の地震が発生できる深さには下限があります。

日本地質学会の研究では、日本列島の地殻内部で、脆性破壊から塑性変形へ移る境界の深さが地域によって異なり、その分布が地震発生層の下限と大局的に似た傾向を示すことが報告されています。

つまり、内陸地震の震源が浅いことが多いのは、単に「断層が地表近くにあるから」だけではなく、岩石が急激に壊れられる温度・力学条件が浅部に限られやすいからです。

プレート境界地震の震源深さはなぜ場所で変わるのか

日本周辺では、太平洋プレートやフィリピン海プレートが陸側プレートの下へ沈み込んでいます。この二つのプレートが接している境界では、強く固着した部分が急に滑ることでプレート境界地震が起こります。

プレート境界は水平ではなく、海溝やトラフから陸側へ向かって地下深くへ傾いています。そのため、同じプレート境界でも海溝に近い側では浅く、陸側へ進むほど深くなります。

さらに、プレート境界全体が地震を起こすわけではありません。浅すぎる場所、深すぎて高温になった場所、摩擦特性が異なる場所などでは、地震性の急激なすべりが起こりにくいことがあります。

このため、プレート境界地震の震源は「一定の深さ」に並ぶのではなく、沈み込むプレートの形と地震を起こせる温度・摩擦条件に沿って分布します。

沈み込むプレートの内部ではなぜ深い地震が起こるのか

地震は一般に高温になるほど起こりにくくなります。それでも沈み込む海洋プレートの内部では、100kmを超える深さ、世界では約700km近くまで地震が観測されます。

USGSは、深さ70kmを超える地震は沈み込む巨大なリソスフェアの板、つまりスラブの内部に局在すると説明しています。気象庁も、日本周辺では沈み込むプレート内で地下約700kmまで地震が見られるとしています。

これは、沈み込む海洋プレートが周囲のマントルより低温のまま深部へ運ばれるためです。プレート内部では、深部でも急激な変形を起こせる条件が局所的に残ります。

また、沈み込む途中でプレートが曲げられたり、内部の鉱物が圧力・温度の変化によって変化したり、水を放出する反応が起こったりすることも、スラブ内地震に関係すると考えられています。

したがって、深い震源が地球のどこにでもあるわけではありません。深発地震は、沈み込む冷たい海洋プレートが存在する地域に特徴的な現象です。

震源の深さはプレートの形を映している

沈み込み帯で多数の地震の震源を断面図にすると、震源が斜めに深くなる帯として並ぶことがあります。この分布は、沈み込んだプレートの位置や形を推定する重要な手掛かりになります。

USGSは、沈み込み帯に沿う地震の位置と深さを詳しくプロットすると、プレートがどの角度で沈み込み、どこで曲がっているかなどを読み取れると説明しています。

つまり、「震源が地域によって深い・浅い」という違いは偶然ではありません。地下でプレートがどのような形で沈み込んでいるかが、そのまま震源分布の違いとして現れるのです。

同じ地域でも震源の深さが違うことがある

一つの地域の地下に、一種類の地震だけが起こるとは限りません。

たとえば日本の沈み込み帯周辺では、陸側プレートの浅い地殻内地震、プレート境界地震、沈み込む海洋プレート内部の地震が、上下に重なるように発生する場所があります。

そのため、地図上の震央が比較的近くても、震源の深さが10km程度の地震と、50km、100kmを超える地震が別々に起こることがあります。

首都圏のように複数のプレートが重なる地域では、震央だけを見ても地震のタイプを判断できません。震源の深さとプレート構造を合わせて見ることが重要です。

浅い震源と深い震源では地表の揺れ方も違う

一般に、同じ規模の地震なら、震源が浅いほど震源から地表までの距離が短くなるため、震源近くでは強い揺れになりやすくなります。

USGSも、同じ地震規模であれば、深さ500kmの地震より深さ20kmの地震のほうが地表で強い揺れを生じやすいと説明しています。

一方、深い地震では地表までの距離が長いため、震源直上での揺れは弱まりやすいものの、地震波が硬いプレート内部を効率よく伝わることで、震央から遠い地域まで揺れが広がる場合があります。

つまり、「深い地震は安全」という意味ではありません。揺れの強さは、地震規模、震源距離、地震波の伝播経路、地盤条件などを合わせて決まります。

火山地域では震源の深さに違いが出ることがある

火山周辺では、地下の温度が高く、マグマや熱水などの流体が存在するため、地震活動の深さや分布が周辺地域と異なる場合があります。

高温領域では岩石が脆性破壊を起こしにくくなるため、通常の地殻内地震の発生下限が浅くなることがあります。一方、マグマや熱水の移動に伴う火山性地震では、通常の断層地震とは異なる分布や時間変化を示すことがあります。

そのため、震源の深さを見ることは、断層だけでなく地下の温度構造や流体の存在を考える手掛かりにもなります。

震源位置には「観測条件による違い」もある

ここまで述べたのは、地震そのものの物理的な違いです。しかし、発表される震源には観測・解析上の違いもあります。

震源は地下を直接見るのではなく、複数の地震計にP波やS波が到着した時刻から逆算して求めます。そのため、観測点が震央の近くに多いか少ないか、観測点が一方向に偏っていないか、地下の地震波速度モデルがどれだけ実際に近いかによって推定精度が変わります。

特に海域の地震では、陸上観測点だけを使うと震源の片側にしか観測点がない配置になりやすく、深さの推定誤差が大きくなる場合があります。海底地震計などの観測が加わると、震源位置の精度が改善することがあります。

USGSも、震源の深さは水平位置より制約が弱いことが多く、震央近くに地震観測点がない場合は深さの誤差が大きくなりやすいと説明しています。

地震速報の震源が後から変わることがあるのはなぜか

地震直後は、利用できる観測データがまだ少ないため、最初に届いた地震波を使って速報的に震源を推定します。

その後、より多くの観測点の記録が集まり、P波・S波の到着時刻を詳しく読み直すことで、震源の緯度・経度や深さが修正されることがあります。

これは地震そのものが移動したのではありません。観測データが増え、計算条件が改善されたため、震源の推定値がより精密になったということです。

気象庁の震源分布資料でも、速報値には計算誤差の大きなものが含まれる可能性があるため、個々の震源位置だけでなく分布全体を見ることが重要とされています。

震源の深さだけで地震タイプを決めてよいのか

震源の深さは重要な情報ですが、それだけで地震の種類を確定することはできません。

同じ深さでも、プレート境界の地震とプレート内部の地震が近接して発生することがあります。実際の判定には、震源位置、余震分布、発震機構解、地震波形、プレート境界面のモデルなどを組み合わせます。

また、大きな地震では、震源はあくまで断層破壊が始まった一点です。実際の破壊はそこから広い断層面へ広がるため、被害や揺れを考えるときは震源だけでなく震源域全体を見る必要があります。

まとめ

地震の震源に場所や条件による違いがあるのは、地球内部の構造と物理条件が一様ではないからです。

陸側プレートの地殻内では、低温で岩石が脆性的に壊れられる比較的浅い範囲に震源が集中しやすくなります。プレート境界では、沈み込む境界面の形と固着条件に沿って震源が分布します。さらに、沈み込む冷たい海洋プレート内部では、数十kmから数百kmという深い場所でも地震が起こります。

加えて、観測点の配置や地震波速度モデルによって、求められる震源位置・深さの精度にも違いが生まれます。

つまり震源の違いは、「どのプレート・断層で起こるか」「地下の温度と岩石が急に壊れられるか」「プレートがどの深さへ沈み込んでいるか」「どの観測条件で震源を求めるか」という条件の組み合わせで生まれます。

参考資料

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