植物は光合成によって空気中の二酸化炭素(CO₂)を取り込み、光のエネルギーを使って糖などの有機物をつくります。ところが、どの植物も同じ速さ・同じ方法でCO₂を取り込んでいるわけではありません。イネやコムギのような植物、トウモロコシのような植物、サボテンや多肉植物では、CO₂の取り込み方そのものに違いがあります。さらに、同じ植物でも、光の強さ、気温、水分、空気中のCO₂濃度などが変わると、取り込み量は大きく変化します。
この違いが生まれる最大の理由は、植物が「炭素をできるだけ多く取り込みたい」という要求と、「水を失いすぎたくない」「高温で光呼吸を増やしたくない」という制約を同時に受けているからです。植物の種類ごとの光合成の仕組みと、そのときの環境条件の組み合わせによって、CO₂の取り込み方が変わります。
CO₂はまず気孔から葉の中へ入る
陸上植物では、空気中のCO₂の多くは葉の表面にある「気孔」という小さな穴を通って葉の内部へ入ります。気孔が開けばCO₂を取り込みやすくなりますが、同時に葉の中の水蒸気も外へ逃げます。つまり、気孔を大きく開くことは光合成には有利でも、水の節約という点では不利です。
植物はこのトレードオフを調整するため、光、湿度、土壌水分、葉内のCO₂濃度などに応じて気孔の開き方を変えます。乾燥すると多くの植物は気孔を閉じ気味にし、水の損失を抑えます。その結果、葉の中へ入るCO₂も減るため、光合成速度は低下しやすくなります。
ただし、同じ程度に気孔が閉じても、植物の光合成型によって影響の受け方は同じではありません。そこで重要になるのが、C3、C4、CAMという代表的な光合成の違いです。
C3植物は最も一般的だが、高温や乾燥では不利になりやすい
多くの植物はC3植物です。イネ、コムギ、ダイズ、多くの樹木などが含まれます。C3植物では、葉に入ったCO₂をRubisco(ルビスコ)という酵素が直接取り込み、カルビン・ベンソン回路へ送ります。
RubiscoはCO₂を固定する重要な酵素ですが、CO₂だけでなく酸素とも反応します。特に高温で葉内のCO₂濃度が低いと、酸素との反応が起こりやすくなり、「光呼吸」による炭素やエネルギーの損失が増えます。暑い日に乾燥が重なると、植物は水を守るために気孔を閉じます。すると葉内のCO₂が減り、C3植物では光呼吸の影響がさらに大きくなりやすいのです。
反対に、比較的涼しく、水分が十分あり、光も極端に強すぎない条件では、C3型は効率よく働きます。余分なCO₂濃縮回路を動かす必要がないため、条件が合えばC4型よりエネルギー面で有利になることもあります。
C4植物は葉の中でCO₂を濃縮して使う
トウモロコシ、サトウキビ、ソルガムなどのC4植物は、CO₂を取り込んだ後、すぐにRubiscoへ渡すのではなく、まずPEPカルボキシラーゼという酵素を使って4炭素化合物に固定します。その化合物を別の細胞へ運び、そこでCO₂を放出してRubiscoの周囲にCO₂を集めます。
この「CO₂濃縮機構」によって、Rubiscoの周囲ではCO₂濃度が高く保たれ、光呼吸が起こりにくくなります。そのためC4植物は、高温、強い光、比較的低い葉内CO₂といった条件でも高い光合成速度を保ちやすい傾向があります。また、少し気孔を閉じ気味にしてもCO₂を効率よく利用できるため、一般にC3植物より高い水利用効率を示します。
ただし、C4型にも代償があります。CO₂を濃縮するためには追加のエネルギーが必要です。そのため、気温が低く光が弱い環境では、C4型がいつでもC3型より優れるわけではありません。植物の分布を見ると、C4植物が暖かく日差しの強い環境に多いことは、この仕組みとよく対応しています。
CAM植物は夜にCO₂を取り込み、水を節約する
サボテン、アガベ、一部の多肉植物や着生植物などにはCAM型光合成を行うものがあります。CAM植物の特徴は、CO₂を取り込む時間をずらすことです。多くのCAM植物は夜に気孔を開いてCO₂を取り込み、有機酸として細胞内に蓄えます。そして昼になると気孔を閉じ、蓄えておいた有機酸からCO₂を放出して光合成に利用します。
夜は昼より気温が低く、空気も比較的湿っていることが多いため、気孔を開いても失う水が少なくて済みます。このためCAM型は非常に高い水利用効率を実現しやすく、乾燥地、岩場、海岸など厳しい水分環境に適応した植物でよく見られます。
一方で、夜のうちに取り込んで貯蔵できるCO₂の量には限界があります。そのため、条件がよいときの成長速度ではC3やC4植物に及ばないCAM植物も多くあります。またCAMは固定的な一種類の動きだけではなく、植物種や水分条件によってC3型に近い状態とCAM型を切り替える例も知られています。
光が強いほどCO₂取り込みが増えるとは限らない
光は光合成のエネルギー源なので、弱い光の範囲では、光が強くなるほどCO₂の取り込み速度も上がります。しかし、ある程度以上になると、酵素反応やCO₂供給が追いつかず、光合成速度は頭打ちになります。さらに極端に強い光では、光合成装置を守るために余分なエネルギーを逃がす仕組みが働き、条件によっては光阻害も起こります。
また、強光は葉温を上げたり蒸散を増やしたりするため、土壌が乾いていると気孔閉鎖を引き起こすことがあります。この場合、「光は十分あるのにCO₂が入ってこない」という状態になり、光合成は伸びません。したがって、光だけを見てCO₂取り込み量を判断することはできません。
温度によってC3とC4の有利不利が変わる
光合成に関わる反応は酵素反応なので、温度の影響を強く受けます。低すぎる温度では反応全体が遅くなります。一方、高温になるとC3植物ではRubiscoの酸素との反応が増え、光呼吸による損失が大きくなりやすくなります。
C4植物はRubiscoの周囲にCO₂を濃縮できるため、この高温条件での不利を小さくできます。そのため、十分な光があり高温の条件ではC4型の利点が大きくなります。ただし、すべてのC4植物が乾燥そのものに強いという意味ではありません。強い水ストレスでは、C4植物でも気孔閉鎖や酵素活性低下などによって光合成速度は低下します。
水不足では気孔と代謝の両方が制限要因になる
乾燥初期には、まず気孔が閉じてCO₂の流入が減ることが、光合成低下の大きな原因になります。水不足が強く長く続くと、それだけではなく、光合成酵素の働き、電子伝達、葉の構造などにも影響が及びます。つまり「乾燥するとCO₂が入らないから光合成が落ちる」だけでなく、深刻な乾燥では光合成を行う内部の仕組み自体も弱くなります。
C4植物はCO₂濃縮機構のおかげで、ある程度気孔が閉じても光合成を維持しやすい一方、強い水ストレスではやはり光合成が抑制されます。CAM植物は夜間吸収によって水を大幅に節約できますが、成長量を最大化する仕組みというより、厳しい水分条件でも炭素を確保し続ける仕組みと考えると理解しやすいでしょう。
空気中のCO₂濃度が上がったときの反応も光合成型で違う
空気中のCO₂濃度が高くなると、一般にC3植物ではRubiscoがCO₂と反応しやすくなり、光呼吸の相対的な影響も小さくなるため、光合成速度が上がりやすくなります。また同じ炭素量を得るために気孔をやや閉じることができれば、水の損失を減らせる場合もあります。
一方、C4植物はもともと葉内でCO₂を濃縮しているため、通常条件ではC3植物ほど直接的な増加効果が大きくないことがあります。ただし、高CO₂によって気孔が閉じ気味になり、水の消費が減ることで、乾燥条件下では間接的に生育が助けられる場合があります。
植物の種類ごとの違いは「優劣」ではなく環境への適応
C3、C4、CAMの違いを、単純に「どれが最も高性能か」と考えるのは適切ではありません。C3型は追加のCO₂濃縮にエネルギーを使わず、涼しく水が十分な条件で合理的です。C4型は高温・強光のもとで光呼吸を抑えながら高い生産性を得やすい仕組みです。CAM型は成長速度よりも水の節約を重視し、乾燥の厳しい環境で生き残るために有効です。
| 光合成型 | CO₂取り込みの特徴 | 得意な条件の例 |
|---|---|---|
| C3 | RubiscoがCO₂を直接固定 | 比較的涼しく、水分が確保される環境 |
| C4 | 葉内でCO₂を濃縮してからRubiscoに供給 | 高温、強光、開けた環境 |
| CAM | 主に夜にCO₂を取り込み、昼に利用 | 乾燥、水分を節約する必要が大きい環境 |
このように、CO₂の取り込み量や方法の違いは、それぞれの植物が生きてきた環境に合わせて、炭素獲得と水・エネルギーの使い方を調整してきた結果です。
まとめ
光合成でのCO₂取り込みが植物の種類や環境によって違うのは、気孔からのCO₂流入、水の損失、Rubiscoの性質、光呼吸、CO₂濃縮機構などのバランスが植物ごとに異なるからです。C3植物は最も基本的な仕組みを使い、C4植物は葉内でCO₂を濃縮し、CAM植物はCO₂取り込みを主に夜へずらします。さらに、光、温度、水分、CO₂濃度が変わると、気孔の開き方や酵素反応も変化します。
つまり、植物が取り込むCO₂の量は、単に「空気中にCO₂がどれだけあるか」だけでは決まりません。その植物がどの光合成型を持ち、どのような環境で水とエネルギーをやりくりしているかによって決まるのです。
参考資料
- 日本生物環境工学会:イネ科C3、C4植物における光合成および水利用効率の制御と気孔密度および維管束間距離の関係
- 日本作物学会:日本国内に分布するCAM植物及びその生育環境
- C4 photosynthesis and water stress
- Stomatal Biology of CAM Plants

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