なぜ火山の噴火で噴石が飛び出すのか?

火山と噴石が関係しているのは、火山の噴火でマグマや火口周辺の岩石が爆発的に吹き飛ばされ、その一部が石や岩塊として空中を飛ぶからです。気象庁では、噴火によって火口から吹き飛ばされる、防災上警戒・注意すべき大きさの岩石を「噴石」と呼んでいます。

噴石は、火山灰のように細かな粒子が風で運ばれる現象とは違います。特に大きな噴石は重いため風の影響をほとんど受けず、火口から弾道を描くように飛びます。そのため火口近くでは、噴火が始まってから避難する時間がほとんどなく、非常に危険な火山現象になります。

ただし、噴石はすべて同じ大きさ・成分・飛び方ではありません。マグマがちぎれて飛んだもの、火口壁の古い岩石が爆発で砕かれて飛んだもの、水蒸気噴火によって既存の岩石が吹き飛ばされたものなど、でき方にはいくつかのタイプがあります。

目次

噴石とは何か

気象庁は、噴火によって火口から吹き飛ばされる岩石のうち、防災上警戒・注意すべき大きさのものを噴石と呼んでいます。

火山学では、噴火で放出された固体物質を大きさや状態によって火山灰、火山礫、火山岩塊、火山弾などに分けることがあります。一方、防災情報では、一般の人が危険を理解しやすいように「大きな噴石」「小さな噴石」という呼び方が使われます。

大きな噴石は概ね20~30cm以上で、風の影響をほとんど受けず、弾道を描いて飛散するものです。小さな噴石は直径数cm程度で、風に流されながら遠方まで降る場合があります。

つまり「噴石」は、単に火山から出る石というだけでなく、防災上の危険性を考えるための実用的な呼び方でもあります。

なぜ火山から石が飛び出すのか

噴火では、地下から上昇してきたマグマや火山ガス、あるいは急膨張した水蒸気が、大きな圧力を持って火口から放出されます。

その圧力が周囲の岩石を破壊したり、マグマの一部をちぎったりすると、さまざまな大きさの岩片が空中へ飛ばされます。

爆発的な噴火では、火道や火口壁の古い岩石が砕かれて飛ぶことがあります。また、地表近くまで上昇していた高温のマグマ自身が破片となって飛び出すこともあります。

つまり噴石は、火山内部の圧力が急激に解放されるときに、マグマや岩石が機械的に吹き飛ばされて生じる現象です。

マグマがちぎれて飛ぶ場合と、古い岩石が飛ぶ場合がある

噴石の材料は一種類ではありません。

高温でまだ柔らかいマグマが空中へ飛ばされ、その途中や着地までに冷えて固まったものは、火山学では火山弾と呼ばれます。

一方、噴火前から火口周辺や火道内にあった固い岩石が爆発で砕かれ、そのまま飛ばされたものは火山岩塊や岩片と呼ばれます。

USGSも、爆発的噴火で飛ぶ大きな破片について、まだ粘性を持つ溶岩片をbomb、すでに固体だった岩片をblockとして区別しています。

見た目はどちらも「大きな石」ですが、材料やでき方を調べることで、噴火時に地下で何が起きていたかを推定できます。

水蒸気噴火でも大きな噴石は飛ぶ

噴石は、マグマが地表へ直接出るマグマ噴火だけで発生するわけではありません。

地下水が高温の岩体やマグマによって急激に加熱されると、水が水蒸気へ変わって大きく膨張します。この圧力で火口周辺の古い岩石が破壊されると、マグマがほとんど地表へ出なくても大きな噴石が飛ぶことがあります。

2014年の御嶽山噴火は水蒸気噴火で、気象庁によると大きな噴石が火口列から約1kmの範囲に飛散しました。

この事例は、「噴石が飛ぶ=新しい溶岩が大量に出る噴火」とは限らないことを示しています。

大きな噴石はなぜ風に流されにくいのか

大きな噴石は質量が大きく、空気の抵抗や風による横方向の力に対して慣性が大きいため、風向きに大きく左右されにくくなります。

そのため、火口から飛び出すと放物線に近い弾道を描きながら落下します。

火山学では、このような大きな岩塊をballistic projectile、つまり弾道飛翔物として扱います。

一方、小さな粒子になるほど空気の影響を受けやすくなり、火山灰や小さな噴石は噴煙や風に乗って遠方へ運ばれやすくなります。

この「大きさによる飛び方の違い」が、火山防災で大きな噴石と小さな噴石を区別する理由の一つです。

噴石はどのくらいの速さで飛ぶのか

噴石の速度は、噴火の爆発力、噴出口の形、岩塊の大きさや密度、飛び出す角度などによって変わります。

2022年に発表された蔵王火山1895年噴火の研究では、現地に残る投出岩塊の分布と数値計算を比較し、噴出速度が約110~120m/sと推定されました。

研究では、火山の弾道飛翔物は条件によって数百m/sに達する場合があることも指摘されています。

このような速度で数十cm以上の岩塊が衝突すれば、人体や建物に極めて大きな被害を与えます。

噴石の飛ぶ距離は何で決まるのか

噴石の到達距離は、初速度だけでは決まりません。

飛び出す角度、岩石の大きさ・形・密度、空気抵抗、火口の形、標高差などが関係します。

大きく重い岩塊は風の影響を受けにくい一方、空気抵抗は受けるため、単純な真空中の放物運動とは完全には一致しません。

USGSでは、火山弾や岩塊の弾道を計算するモデルを使い、噴出速度や飛散範囲を推定する研究が行われています。

過去に落下した噴石の分布を調べることは、将来の噴火でどの範囲まで警戒するべきか考える材料になります。

大きな噴石と小さな噴石では危険の広がり方が違う

大きな噴石は、一般に火口近くで特に危険です。

気象庁は、概ね20~30cm以上の大きな噴石について、風の影響をほとんど受けず弾道を描いて飛散し、避難までの時間的猶予がほとんどないため生命への危険性が高いと説明しています。

一方、小さな噴石は直径数cm程度で、噴煙に取り込まれて風に流され、火口から離れた場所へ降る場合があります。

そのため、大きな噴石は主に火口周辺の警戒、小さな噴石は風下側を含む広い範囲での注意が必要になります。

火山灰と噴石は何が違うのか

火山灰も噴石も、噴火で放出される固体物質です。

大きな違いは粒の大きさと飛び方です。

気象庁では火山灰を直径2mm未満の細かな固形物としています。火山灰は軽いため噴煙に乗り、風によって数十km以上離れた場所まで運ばれることがあります。

一方、大きな噴石は重く、火口から弾道を描いて比較的短時間で地表へ落下します。

つまり、火山灰は広域に影響しやすく、大きな噴石は火口周辺で瞬間的な衝突危険を生むという違いがあります。

噴石と火砕流も別の現象

噴石と火砕流も混同されることがあります。

噴石は、岩石が空中を一つ一つ飛ぶ現象です。

火砕流は、火山灰・軽石・岩塊などの火砕物と高温ガスが混ざり、地表を集団として高速で流れる現象です。

火砕流の中に大きな岩塊が含まれることはありますが、「噴石が飛ぶこと」と「火砕流が流れること」は別の危険です。

火山周辺では、噴石・火砕流・火山灰・溶岩流など、複数の現象が同時または続けて起こる可能性があります。

噴石は建物や車にも大きな衝撃を与える

大きな噴石が落下すると、屋根や外壁を突き破ったり、車両や道路施設を損傷したりすることがあります。

気象庁も、噴石は落下の衝撃で人が死傷したり、家屋・車・道路などが被害を受けたりする可能性があると説明しています。

火口近くの山小屋や避難施設では、噴石への耐衝撃性を考えた屋根やシェルターが整備される場合があります。

ただし、どの噴石にも完全に耐えられる構造物があるわけではありません。大きな噴石が予想される範囲では、基本は事前に立ち入らないことです。

登山中に噴火した場合、噴石は特に危険になる

活火山では、登山者が火口近くまで入ることがあります。

大きな噴石は発生から落下までの時間が非常に短いため、噴火を見てから遠くへ逃げることは困難です。

2014年の御嶽山噴火では、山頂付近に多くの登山者がいた時間帯に噴火が発生し、死者・行方不明者は63人となりました。

この災害をきっかけに、火山周辺ではシェルター整備、登山者への情報提供、噴火時の退避行動などの重要性が改めて認識されました。

登山前には、噴火警戒レベル、火山情報、火口周辺規制、避難小屋やシェルターの位置を確認することが重要です。

噴石が飛んできたらどう身を守るのか

突然の噴火で近くに大きな噴石が飛散している場合、長距離を走って逃げようとするより、まず頭部を守り、頑丈な建物・シェルター・大きな岩陰などへ退避することが重要です。

ただし、最も安全なのは噴石が届く可能性のある範囲に事前に入らないことです。

気象庁の噴火警報では、大きな噴石や火砕流など、生命に危険を及ぼす現象が予想される範囲を示して警戒を呼びかけます。

火山周辺では、自己判断で規制区域へ入らず、現地自治体や気象庁の情報に従うことが基本になります。

噴石の分布を調べると過去の噴火がわかる

火山の周囲に残っている大きな岩塊を調べることで、過去の噴火の強さや噴出口の位置を推定できることがあります。

USGSがキラウエア火山周辺で行った研究では、多数の弾道岩塊の大きさや分布方向から、過去の爆発源となった火口位置や噴火回数を推定しています。

日本でも、浅間山や蔵王火山などで噴石・投出岩塊の分布を調べ、噴出条件や危険範囲を解析する研究があります。

つまり噴石は危険な火山現象であると同時に、過去の噴火を記録した地質学的な証拠でもあります。

まとめ

火山と噴石が関係しているのは、噴火の爆発力によってマグマや火口周辺の岩石が吹き飛ばされ、その一部が大きな岩片として空中を飛ぶからです。

噴石には、高温のマグマ片が飛んで固まったものと、もともと固体だった火口壁・火道周辺の岩石が砕かれて飛んだものがあります。水蒸気噴火でも大きな噴石が発生することがあります。

特に大きな噴石は風の影響をほとんど受けず弾道を描いて飛び、非常に高速で落下するため、火口周辺では生命に直結する危険になります。一方、小さな噴石は風に流されて遠方へ降ることがあります。

つまり、噴石は火山の爆発的な活動によって岩石やマグマが物理的に吹き飛ばされた結果です。飛散距離や大きさを調べることは、火山の噴火の仕組みを理解するだけでなく、警戒範囲や避難計画を考えるうえでも重要なのです。

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次