なぜ鼻水は出るの?

鼻水が出るのは、鼻の中を乾燥や異物から守るために、鼻粘膜がふだんから粘液をつくっているからです。正常なときにも鼻の中には薄い粘液の層があり、吸い込んだほこり、花粉、微生物などを捕まえています。その粘液は細かな線毛の動きで少しずつのどの方向へ運ばれるため、普段は「鼻水が出ている」と強く意識しません。風邪やアレルギーなどで分泌量が増えたり、鼻の外へ流れ出る量が増えたりすると、鼻水として目立つようになります。

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鼻水は病気のときだけ作られるものではない

「鼻水」というと、風邪をひいたときに急に作られるもののように思えます。しかし、鼻の粘膜では健康なときにも粘液が作られています。鼻腔は外気が直接通る場所なので、乾燥した空気、ほこり、花粉、細菌やウイルスなど、さまざまな外来物質にさらされます。

そのため鼻の表面には粘液の層があり、吸い込んだ粒子を付着させます。日本の鼻粘膜に関する学術資料では、鼻腔には吸気を加温・加湿し、微生物やアレルゲンを粘液に吸着させ、粘液線毛運動によって除去する防御機構があると説明されています。

つまり、鼻水のもとになる粘液は、鼻を守るための「常設の防御システム」の一部です。

鼻の粘液はどこで作られるの?

鼻腔の奥を覆う粘膜には、粘液を分泌する杯細胞や腺組織があります。そこで作られた粘液には水分だけでなく、粘り気をつくるムチンなどの成分が含まれています。

粘液に適度な粘り気があることで、空気中の粒子を捕まえやすくなります。一方で、粘液が適切に移動するためには水分量も重要です。粘液が極端に乾燥したり、線毛の働きが低下したりすると、鼻の自浄作用がうまく働きにくくなります。

2024年の日本の総説でも、気道の粘液線毛輸送機能は「粘液」「線毛」「両者の関係」によって成り立つ重要な仕組みと整理されています。

線毛は鼻水をのどの方へ運んでいる

鼻粘膜の表面には、肉眼では見えないほど細かな「線毛」が並んでいます。線毛は一定の方向へ繰り返し動き、粘液を鼻の奥からのど側へ少しずつ運びます。この仕組みを「粘液線毛クリアランス」と呼びます。

粘液に捕まった異物も一緒に運ばれ、多くは無意識のうちに飲み込まれます。胃へ入れば、胃酸などの消化管の防御機構に引き継がれます。正常な鼻では、この流れが絶えず続いているため、粘液が作られていても前から大量に垂れてくるとは限りません。

鼻水が「外へ出るもの」に見えるのは、作られる量や水分量が増えたり、鼻の中で処理できる量を上回ったりしたときです。

風邪をひくとなぜ鼻水が増えるの?

風邪の多くはウイルスによる上気道感染です。ウイルスが鼻やのどの粘膜に感染すると、体は炎症反応を起こします。血管の反応や分泌の増加などが起こり、鼻づまり、くしゃみ、鼻水といった症状が現れます。

風邪の鼻水は、単に「ウイルスを水で洗い流している」だけではありません。感染に対する粘膜の炎症反応、腺からの分泌、血管から組織への水分移動など、複数の変化が組み合わさって増えます。

そのため、風邪の初期にはさらさらした鼻水が目立ち、その後、炎症の経過や粘液中の細胞・たんぱく質などの変化によって粘り気が増すこともあります。ただし、鼻水の色や粘りだけで「細菌感染かどうか」を確実に判定することはできません。

花粉症ではなぜ水のような鼻水が出るの?

花粉症などのアレルギー性鼻炎では、花粉などのアレルゲンに反応して鼻粘膜の免疫反応が起こります。肥満細胞などからヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が放出されると、くしゃみ、鼻のかゆみ、鼻づまり、鼻水が起こります。

ヒスタミンは感覚神経を刺激し、反射的に副交感神経を働かせることがあります。副交感神経の刺激は鼻の腺からの分泌を増やすため、透明で水っぽい鼻水が大量に出やすくなります。

アレルギー性鼻炎で「止めても止めても鼻水が出る」と感じるのは、鼻の表面にたまっていた液体が一度に出ているだけではなく、炎症と神経反射によって新たな分泌が続いているためです。

寒い場所や刺激物でも鼻水が出ることがある

鼻水は感染やアレルギーがなくても増えることがあります。冷たい空気、急な温度変化、強いにおい、煙、香辛料などが刺激になると、鼻粘膜の神経反射によって分泌が増える場合があります。

こうした鼻水は、必ずしも「免疫が病原体と戦っている」ことを意味しません。鼻粘膜には自律神経による分泌調節があり、環境刺激に応じて腺の活動が変化するからです。

鼻水という同じ症状でも、風邪、アレルギー、温度刺激、薬剤、ホルモン変化など、原因はさまざまです。

涙を流したときに鼻水が増えるのはなぜ?

泣いたときに鼻水が増えるのは、涙の一部が鼻へ流れ込むからです。目の表面をうるおした涙は、目頭にある小さな穴から涙道へ入り、最終的に鼻腔へ排出されます。

たくさん泣くと鼻へ流れ込む涙の量も増え、それが鼻の粘液と混ざるため、さらさらした鼻水が増えたように感じます。これは風邪やアレルギーによる鼻水とは別の仕組みです。

鼻水は体を守るが、多すぎると生活の負担になる

鼻の粘液は、異物を捕まえ、粘膜を乾燥から守り、線毛運動によって異物を外へ運ぶために必要です。その意味で、鼻水のもとになる粘液そのものは「悪いもの」ではありません。

一方で、炎症や神経反射によって分泌が過剰になると、鼻をかむ回数が増え、睡眠や仕事に支障が出ることがあります。また、鼻の奥からのどへ流れる量が増えると、「後鼻漏」としてのどの違和感や咳の一因になることもあります。

鼻水が長く続く場合や、強い鼻づまり、顔面痛、高熱、繰り返す鼻血、呼吸のしづらさなどを伴う場合は、原因を自己判断せず耳鼻咽喉科などで相談することが大切です。

鼻を強くかみすぎないことも大切

鼻水が多いと、何度も強く鼻をかみたくなります。しかし、必要以上に強くかむと鼻の入口の皮膚を傷めたり、耳に圧力がかかったりすることがあります。片方ずつ無理のない強さでかみ、鼻の周囲が荒れる場合はこすりすぎないようにするとよいでしょう。

また、鼻水を完全になくすことを目標にする必要はありません。鼻の粘液には本来の防御機能があるため、症状が強い場合は原因に応じて適切に対処することが重要です。

まとめ

鼻水が出るのは、鼻の中で粘液が常に作られ、吸い込んだ異物を捕まえて粘膜を守っているからです。健康なときは、その粘液の多くが線毛運動によってのど側へ運ばれるため目立ちません。

風邪では感染に伴う炎症、花粉症ではアレルギー反応と神経反射、寒冷刺激などでは自律神経の反応によって分泌量が増え、鼻の外へ流れ出るほどになることがあります。つまり鼻水は、鼻の防御機構が普段から働いている証拠であり、原因によって「なぜ増えるか」の仕組みが異なるのです。

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