火山のカルデラは、大量のマグマが短時間に噴出したり地下で別の場所へ移動したりした結果、地下のマグマ貯留域の圧力が下がり、その上にあった広い地盤が沈降・崩落してできる大きなくぼ地です。見た目は巨大な火口のようですが、単に爆発で地面が吹き飛ばされてできるのではなく、地下のマグマが抜けた後に上部の地盤が支えを失って沈むことが、代表的な形成機構です。
気象庁はカルデラを、火山活動によって形成された概ね直径2km以上の凹地形としています。典型的には、短時間にマグマが噴出または側方へ移動したことで、マグマだまりの上側にある地盤が沈降・崩落して形成されます。ここでは、その仕組みを火口との違いから順に見ていきます。
カルデラは「巨大な火口」と同じなのか
カルデラと火口はどちらも火山にできる凹地ですが、一般には大きさと形成過程が異なります。
国土地理院は、火山性の火口状凹地のうち直径が2kmより大きいものをカルデラとしています。通常の爆裂火口は直径2kmを超えないことが多いため、それより大きなくぼ地では、爆発による掘削だけでなく大規模な陥没などの成因が考えられます。
火口では、噴火で火口周辺の岩石が吹き飛ばされたり、火口壁が崩れたりして凹地ができます。一方、典型的な陥没カルデラでは、地下のマグマが減少した後、その上にある広い地盤全体が沈み込むことが中心になります。
カルデラ形成の出発点は地下のマグマ貯留域
多くのカルデラ火山では、地下に大量のマグマが蓄えられている領域があります。一般には「マグマだまり」と呼ばれますが、実際の地下構造は単純な一個の空洞ではなく、溶融部分、結晶の多い部分、複数の貯留域や通路が組み合わさった複雑な系であることがあります。
地下から新しいマグマが供給されると、貯留域周辺の圧力が上がり、地表がわずかに持ち上がったり、岩盤に亀裂や断層が発達したりします。大規模な噴火に至る場合には、こうした地下のマグマ系から大量のマグマが地表へ移動します。
大量のマグマが出ると、なぜ地面が沈むのか
カルデラ形成の中心は、地下のマグマ量と圧力が減ることです。大規模噴火によって大量のマグマが火山灰、軽石、火砕流、溶岩などとして地表へ放出されると、地下の貯留域の圧力が低下します。
それまで上部の岩盤を支えていた地下の圧力が低下すると、その上にある重い地盤を支えきれなくなります。すると、貯留域の上側に亀裂や断層が生じ、地盤が下方向へ沈み込みます。この沈降によって地表に大きなくぼ地ができます。
米国地質調査所(USGS)も、大量のマグマが地下の貯留域から失われると、その上部の地殻が沈降し、大きなカルデラが形成されると説明しています。
なぜカルデラは円形や楕円形になりやすいのか
カルデラの外縁には、地下のマグマ貯留域を取り囲むようなリング状・弧状の断層が形成されることがあります。地下の広い領域が収縮・沈降すると、その境界付近に大きなひずみが集中するためです。
このような断層に囲まれた地盤のブロックが沈むと、平面的には円形や楕円形に近い凹地が生じます。ただし、地下のマグマ貯留域の形、既存の断層、地殻の応力、火山体の地形などによって、実際のカルデラは不規則な形になることもあります。
USGSのイエローストーン火山に関する解説では、カルデラ形成前に地殻が膨張し、同心円状や放射状の亀裂が発達し、その後の大規模噴火とマグマの減少に伴って屋根部分が沈降する典型的な流れが示されています。
カルデラは一瞬で陥没するとは限らない
カルデラ形成というと、山頂全体が一度に巨大な穴へ落ち込むようなイメージを持つかもしれません。しかし、実際の沈降は段階的に進むことがあります。
2018年の米国ハワイ・キラウエア火山では、マグマが山頂部から側方へ移動して大量の溶岩として流出し、山頂のマグマ貯留域の圧力が低下しました。その結果、カルデラ内部では約78日間にわたり、繰り返し起こる陥没イベントによって地面が段階的に沈降しました。
USGSの観測では、最も深い場所で総沈降量が500mを超えました。これは、カルデラ形成が必ずしも一回の巨大爆発だけで起こるわけではなく、マグマの移動に伴って段階的に進む場合があることを示しています。
大規模な爆発的噴火ではどのようにカルデラができるのか
珪酸分の多い粘性の高いマグマが大量に蓄えられた火山では、爆発的な噴火によって非常に多くの軽石や火山灰が放出され、火砕流が広範囲へ広がることがあります。
噴火が進むにつれて地下のマグマ貯留域の圧力が下がり、その上部が不安定になると、地盤がリング状の断層に沿って沈み始めます。沈降によって地下のマグマがさらに押し出される場合もあり、陥没と大規模噴火が相互に進行することがあります。
USGSが紹介する古典的なカルデラ形成モデルでも、大量の珪長質マグマが噴出した後、マグマだまりの圧力低下によって上部地盤が破断・沈降し、その沈降がさらにマグマの噴出を促す過程が説明されています。
マグマだまりは完全に空になるのか
カルデラができるために、地下のマグマがすべてなくなる必要はありません。これは重要な点です。
2018年のキラウエア火山を分析したUSGSなどの研究では、浅いマグマ貯留域から失われたマグマが全体の数%程度の段階でも、貯留域の圧力低下によって崩壊が始まった可能性が示されています。
つまり、カルデラ形成は「地下に巨大な空洞が完全に空になり、その天井が落ちる」という単純な仕組みではありません。地下の圧力が地盤を支えられないほど低下し、岩盤の強度を超えると沈降が始まります。
カルデラ形成で山が全部消えるわけではない
大規模なカルデラ噴火では、山体の一部が崩れたり、噴出物として大量の物質が失われたりします。しかし、火山全体が丸ごと消滅するわけではありません。
カルデラの外側には元の火山体の一部が残ることがあり、沈降した内部にも地盤のブロックが残ります。また、噴火で生じた火砕流堆積物や火山灰がカルデラ内外に厚く積もるため、噴火後の地形は「単純な穴」ではなく、さまざまな堆積物と崩壊地形が組み合わさった構造になります。
カルデラの中に湖ができるのはなぜか
カルデラは周囲より低い大きなくぼ地なので、雨水、雪解け水、地下水などが集まりやすくなります。底部から水が抜けにくい条件がそろうと、カルデラ湖が形成されます。
代表的な例の一つが米国のクレーターレイクです。USGSによると、マザマ火山の大規模噴火で大量のマグマが放出された後、マグマ貯留域の上部が崩壊してカルデラが形成され、その後に水がたまって現在の湖になりました。
日本でも、屈斜路カルデラや十和田カルデラなど、カルデラ地形の一部に湖が存在する例があります。
カルデラができた後も火山活動は続くのか
カルデラ形成は火山活動の「終わり」とは限りません。地下のマグマ系が残っていれば、その後も新たなマグマ供給が続くことがあります。
カルデラ形成後、内部で小規模な噴火が起きたり、溶岩ドームや新しい火山体が形成されたり、地盤が再び持ち上がったりすることがあります。地下から新しいマグマが供給されてカルデラ中央部が盛り上がる地形は、再生ドームなどと呼ばれます。
USGSのイエローストーン火山の解説でも、カルデラ形成後に流紋岩質溶岩や小規模な爆発的噴火がカルデラ内外で続くことが示されています。
すべてのカルデラが巨大爆発でできるわけではない
カルデラという言葉から、必ず「超巨大噴火」を想像するのは正確ではありません。気象庁は、短時間にマグマが噴出するだけでなく、マグマが側方へ移動して地下の支えが失われることで形成されるカルデラも示しています。
2018年のキラウエア火山では、山頂部で超巨大な爆発的噴火が起きたわけではありません。マグマが側方へ移動し、大量の溶岩として流出したことに伴って山頂部が沈降しました。
また、気象庁の地形用語では、侵食や山体崩壊によって生じた大きな凹地もカルデラとして扱われる場合があります。そのため、「カルデラ=必ず一つの形成機構」と決めつけず、個々の火山の地形と地質記録を調べる必要があります。
火口とカルデラの違いを整理
- 火口:マグマや火山ガスが噴出する場所の周囲にできる比較的小さな凹地。
- カルデラ:概ね直径2km以上の大規模な火山性凹地で、典型的には地下のマグマ減少に伴う広範囲の沈降・崩落で形成される。
- 爆裂火口:水蒸気爆発などで地表の岩石が吹き飛ばされてできる火口。通常はカルデラより小さい。
この違いを見ると、カルデラは単純に「火口を大きくしたもの」ではなく、地下のマグマ系全体の変化と地盤の陥没が関わる地形だとわかります。
カルデラができるまでを5段階で整理
- 地下に大量のマグマが蓄えられる:火山の下にマグマ貯留域が発達します。
- 大量のマグマが噴出・移動する:爆発的噴火や溶岩流出、地下での側方移動などによってマグマが失われます。
- 地下の圧力が低下する:マグマ貯留域の上部を支える力が弱くなります。
- 上部地盤が断層に沿って沈降・崩落する:広い範囲が下がり、大きなくぼ地が形成されます。
- その後も地形と火山活動が変化する:湖ができたり、新しい火山体や溶岩ドームが形成されたりします。
この流れを押さえると、カルデラは「巨大な爆発で穴が開く」のではなく、地下のマグマ移動に伴う圧力低下と地盤沈降が中心となって形成されることが理解できます。
まとめ:カルデラは地下のマグマ減少による大規模な地盤沈降でできる
火山のカルデラは、地下のマグマが大量に噴出したり側方へ移動したりした結果、マグマ貯留域の圧力が低下し、その上の広い地盤が沈降・崩落してできる大規模な凹地です。
大規模な爆発的噴火に伴って形成される例が有名ですが、キラウエア火山のようにマグマが側方へ移動して溶岩として流出したことで陥没する場合もあります。また、カルデラ形成後にも新たな火山活動や地盤隆起が続くことがあります。
「地下にマグマが蓄えられる→大量のマグマが噴出・移動する→地下の圧力が下がる→上部地盤が沈む→大きなくぼ地が残る」という順番で考えると、カルデラの仕組みを理解しやすくなります。

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