火山の温泉は、雨や雪などが地中へしみ込んで地下水となり、その水がマグマや高温の岩石から熱を受け、地下の割れ目や断層を通って地表へ上昇することで成り立ちます。その途中で、地下水は岩石からさまざまな成分を溶かし込んだり、火山ガスの成分を取り込んだりするため、温度だけでなく泉質にも火山地域ならではの特徴が現れます。
ただし、すべての温泉が火山によってできるわけではありません。火山から離れた地域でも、地下深くへしみ込んだ水が地球内部から伝わる地熱で温められれば温泉になります。ここでは、その中でも火山地域に多い「火山性温泉」がどのような仕組みで生まれるのかを中心に説明します。
火山の温泉の水はどこから来るのか
火山の温泉というと、地下のマグマそのものから大量の水が出てきて温泉になるように思えるかもしれません。しかし、多くの火山性温泉では、もとの水の大部分は地表からしみ込んだ雨や雪などです。
降った雨や雪解け水の一部は、土や岩石のすき間を通って地下へ浸透します。火山地域では、溶岩や火砕物に多くの亀裂やすき間があるため、水が地下へ入り込みやすい場所があります。こうして地下へ入った水は地下水となり、岩盤の割れ目を通りながら深い場所へ移動します。
産業技術総合研究所・地質調査総合センターの有珠火山に関する解説でも、火山に降った雨の一部が地下水となり、その地下水の一部が火山からもたらされる熱に触れることで温泉になると説明されています。
地下水は何によって温められるのか
火山地域では、地下にマグマそのものや、過去のマグマ活動によって高温になった岩体が存在します。マグマは地表の環境よりはるかに高温なので、周囲の岩石を長期間にわたって温めます。
地下水がこの高温の岩石や、そこから上昇する熱水・高温の火山ガスの近くを通ると、熱が地下水へ移ります。米国地質調査所(USGS)は、火山地域では地表水が岩石の割れ目を通って地下へ浸透し、マグマ貯留域の周囲にある高温部で加熱されると説明しています。
このとき、地下水がマグマそのものに直接触れる必要はありません。マグマによって温められた周囲の岩石から熱を受けるだけでも、地下水は高温になります。
温められた地下水はなぜ地表へ戻ってくるのか
地下で温められた水は、冷たい水より密度が小さくなります。そのため、地下の通り道があれば浮力によって上昇しやすくなります。
一方、地表からは新しい冷たい水が地下へしみ込みます。冷たい水が下降し、地下で温められた水が上昇することで、地下には対流するような水の循環が生じることがあります。
USGSは、火山地域で地下水が高温部に達すると温められて密度が小さくなり、亀裂や割れ目を通って再び地表へ上昇すると説明しています。こうした「地下へ入る水の道」と「温められた水が戻る道」がつながることで、温泉が継続的に湧き出す仕組みができます。
断層や亀裂が温泉にとって重要なのはなぜか
岩石は完全にすき間のない物質ではありません。特に火山地域では、噴火や地殻変動によって多くの亀裂や断層ができます。
こうした割れ目は、地下水が深い場所まで入り込む通り道になると同時に、高温になった地下水が地表へ戻る通り道にもなります。もし地下に十分な熱があっても、水が移動できる経路がなければ、地表に温泉として現れにくくなります。
つまり、火山性温泉が成り立つには、単にマグマがあるだけでなく、水・熱・水が通れる地下構造の3つがそろうことが重要です。
温泉の成分はどこから来るのか
温泉の特徴は温度だけではありません。硫黄のにおいがする温泉、酸性の強い温泉、塩分を多く含む温泉など、泉質には大きな違いがあります。
その理由は、地下水が上昇する途中で岩石や火山ガスと反応するためです。高温の水は周囲の岩石から成分を溶かし込みやすく、ナトリウム、カルシウム、塩化物、硫酸イオンなどさまざまな成分を取り込みます。
さらに、マグマから分離した二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などの火山ガスが地下水に溶け込むこともあります。USGSは、火山地域の地下水がマグマ貯留域の上部を循環する過程で、マグマや地殻由来のガス・化学成分を取り込むと説明しています。
そのため、同じ火山の周辺でも、地下水が通った経路や深さ、岩石の種類、火山ガスとの接触程度が違えば、泉質は異なります。
なぜ硫黄のにおいがする温泉があるのか
火山地域の温泉で特徴的なにおいの一つが、いわゆる「硫黄のにおい」です。実際には、硫黄そのものが強くにおっているのではなく、硫化水素などの硫黄を含む気体が関係しています。
地下から上昇した火山ガスが地下水に溶けたり、地下で化学反応を起こしたりすると、硫化水素などを含む温泉水が形成されます。地表近くで硫化水素が酸化されると、硫黄や硫酸を生じることもあります。
このため、火山地域では温泉だけでなく、噴気孔や変色した岩盤、硫黄の沈殿などが近くに見られることがあります。
温泉は地下で沸騰しているのか
高温の温泉でも、地下で必ず激しく沸騰しているわけではありません。地下深くでは上にある水や岩石の重さによって圧力が高いため、水の沸点は地表の100℃より高くなります。
そのため、地下では100℃を超える高温の水が液体の状態で存在することがあります。この水が地表へ向かって上昇すると圧力が下がり、一部が水蒸気に変わる場合があります。
火山地域の地熱地帯では、このような高温の熱水と蒸気が地下で循環しています。温泉はその熱水系の一部が地表まで達したものと考えることができます。
なぜ温泉の温度は場所によって違うのか
温泉の温度は、熱源との距離だけで決まりません。地下水がどれだけ深くまで循環したか、どれくらいの時間高温岩体の近くを通ったか、地表へ上がる途中で冷たい地下水とどの程度混ざったかなどによって変わります。
また、地下から地表へ上昇する速度も重要です。高温の水が速く上昇すれば冷えにくい一方、ゆっくり上がれば周囲の岩石へ熱を失いやすくなります。
そのため、同じ火山の周辺でも、非常に高温の源泉と比較的ぬるい温泉が近い場所に存在することがあります。
温泉が湧く場所はどうやって決まるのか
温泉が地表へ出る場所は、地下の亀裂や断層、岩石の透水性、地形などに左右されます。
地下の熱水は、通りやすい割れ目を選ぶように上昇します。そのため、大きな断層に沿って温泉が並ぶ場合があります。また、谷底や山麓など地下水が地表と交わりやすい場所では、自然湧出しやすくなります。
一方、自然には地表まで届かない熱水でも、井戸を掘って地下の熱水層に達すれば温泉として利用できる場合があります。現代の温泉地には、自然湧出の源泉と掘削によって得られた源泉の両方があります。
火山性温泉と非火山性温泉は何が違うのか
日本の温泉は火山の近くに多いため、「温泉はすべてマグマの熱でできる」と考えられがちです。しかし、実際には火山から遠い地域にも温泉があります。
地質調査総合センターは、非火山地域でも地下へ深くなるほど地温が上昇し、深部の地下水がその地熱によって温められると説明しています。このような温泉では、現在のマグマ活動が直接の熱源ではありません。
つまり、火山性温泉と非火山性温泉の最大の違いは、地下水を温める熱源です。火山性温泉ではマグマや火山活動に伴う高温岩体が重要な熱源となり、非火山性温泉では地球内部から伝わる一般的な地熱などが主な熱源になります。
「温泉」という言葉は火山性だけを意味しない
日本では温泉法によって、地中から湧出する温水・鉱水・水蒸気などのうち、源泉温度が25℃以上であるか、一定量以上の特定成分を含むものが温泉と定義されています。
そのため、法律上の「温泉」は、必ずしも高温である必要も、火山の近くにある必要もありません。25℃未満でも定められた成分を含めば温泉に該当します。
この点からも、「温泉」と「火山性温泉」は同じ意味ではないことがわかります。この記事で説明しているのは、温泉の中でも火山活動の熱やガスの影響を強く受けるタイプです。
火山活動が変わると温泉も変化するのか
火山地域の地下水と温泉は、地下のマグマや熱水系とつながっているため、火山活動の変化に伴って温度、水位、湧出量、化学成分などが変化する場合があります。
地質調査総合センターの有珠火山の解説では、2000年噴火に伴い井戸や温泉で異常な湧出や水位低下など、多くの地下水変化が観測されたことが紹介されています。
ただし、温泉の変化があれば必ず噴火するわけではありません。地下水は降水量や人為的な揚湯など多くの要因でも変化するため、火山観測では地震、地殻変動、火山ガスなど他の観測データと合わせて評価する必要があります。
火山の温泉ができるまでを5段階で整理
- 雨や雪が地下へしみ込む:地表水の一部が岩石のすき間や亀裂を通って地下水になります。
- 地下水が深い場所へ循環する:断層や割れ目などを通って、火山の地下にある高温部へ近づきます。
- マグマや高温岩体の熱で温められる:周囲の岩石や熱水・火山ガスから熱を受けます。
- 岩石や火山ガスの成分を取り込む:地下を流れる過程でさまざまな化学成分が水に溶け込みます。
- 温められた水が地表へ上昇する:浮力や地下の圧力差によって割れ目を上昇し、自然湧出または井戸から温泉として現れます。
この流れを見ると、火山の温泉は「マグマからお湯が出る」のではなく、地下水の循環と火山の熱が組み合わさって生まれることがわかります。
まとめ:火山の温泉は地下水・火山の熱・地下の通り道で成り立つ
火山の温泉は、雨や雪などが地下へしみ込んで地下水となり、その水がマグマや高温岩体から熱を受け、亀裂や断層を通って地表へ戻ることで成り立ちます。
その途中で地下水は岩石や火山ガスと反応するため、硫黄成分や塩類などを含む特徴的な泉質が生まれます。温度や成分が源泉ごとに違うのは、地下水が通る深さ、熱源との距離、岩石の種類、冷たい地下水との混合などが異なるためです。
また、温泉には火山活動と直接関係しない非火山性温泉もあります。火山性温泉を理解するときは、「地表の水が地下へ入る→火山の熱で温まる→成分を取り込む→割れ目を通って上昇する→温泉として湧き出す」という循環で考えるとわかりやすくなります。

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