地磁気の強さや向きが場所と時間で変わるのは、地球内部の主磁場だけでなく、地殻の磁化や電離圏・磁気圏を流れる電流など、複数の磁場が重なっているからです。さらに、地球内部の流れや太陽活動が時間とともに変化するため、同じ場所でも地磁気は一定ではありません。
地球全体を大まかに見ると、赤道付近では磁場は比較的水平で弱く、極付近ではより鉛直に近く強くなります。NOAAの国際地磁気標準磁場モデルでは、地表の磁場は赤道付近で約3万nT、極付近で約6万nTになると説明されています。
一方、数十年から数百年の時間では地球外核の流れの変化による永年変化が起こり、1日程度の時間では電離圏電流による日変化、太陽活動が激しいときには磁気嵐による大きな乱れが加わります。地磁気は「一つの固定された磁石の場」ではなく、場所と時間で変化する動的な磁場なのです。
地磁気は一つの成分だけでできているわけではない
地表で観測される地磁気には、いくつかの発生源があります。最も大きいのは、地球外核の液体金属の運動によって作られる主磁場です。
そこへ、地殻の岩石が持つ磁化による地殻磁場、電離圏や磁気圏を流れる電流が作る外部磁場が重なります。
したがって、ある地点で測った磁場は、主磁場だけを見ているわけではありません。異なる発生源の磁場を合成した結果が、その場所・その時刻の地磁気になります。
場所によって地磁気の強さが違うのはなぜか
地球の主磁場は、第一近似では地球中心に置いた大きな磁気双極子に似ています。そのため磁場の強さは地球表面で一様ではありません。
NOAAは、地表の磁場が赤道付近ではおよそ3万nT、極付近ではおよそ6万nTであると説明しています。赤道付近では磁場は比較的水平で、極付近では鉛直方向の成分が大きくなります。
これは棒磁石の周囲でも、場所によって磁場の向きと強さが違うのと同じです。地球規模の磁場にも空間的な分布があります。
緯度によって伏角が変わるのはなぜか
伏角は、地磁気が水平面に対してどれだけ下向きまたは上向きに傾いているかを表します。
磁気赤道付近では地磁気はほぼ水平になります。北半球では北へ行くほど磁場は地面へ潜り込む方向へ傾き、磁極に近づくとほぼ鉛直になります。
この違いは、地球の主磁場が双極子状の三次元構造を持つためです。地表の位置が変われば、その場所を通る磁力線の傾きも変わります。
経度によって偏角が違うのはなぜか
方位磁針のN極が指す向きは、必ずしも真北と一致しません。真北と磁北のずれを偏角と呼びます。
偏角が場所によって異なるのは、実際の地磁気が完全な軸対称の双極子ではなく、多極子成分や地域的な磁場のゆがみを含むからです。
気象庁は、東京付近では方位磁針が真北から西へ数度ずれることを示しており、このずれも時代とともに変化しています。
地殻の岩石も地域的な磁場を作る
地殻には、過去の地磁気や形成過程を記録した磁化を持つ岩石があります。これらは主磁場より小さいものの、地域的な地磁気の違いを作ります。
火山岩や鉄を多く含む地質では、周囲とは異なる磁気異常が観測されることがあります。
そのため同じ緯度でも、地質条件が異なる場所では磁場の細かな強さや向きが異なることがあります。
同じ場所でも地磁気が長期的に変わるのはなぜか
地球外核の液体金属の流れは一定ではありません。外核の対流パターンが変化すると、そこで作られる主磁場の分布も少しずつ変わります。
この数年から数十年、さらに長い時間スケールの変化を地磁気の永年変化と呼びます。
USGSは、外核対流の変化によって地磁気の方向が時間とともに変わり、同じ場所でもコンパスの指す方向が変化すると説明しています。
日本でも偏角は昔と今で違う
気象庁は、東京付近の方位磁針の向きが現在は真北から西へずれている一方、伊能忠敬が測量をしていた約200年前にはほぼ真北を指していたと紹介しています。
これは方位磁針そのものが変化したのではなく、地球内部の主磁場が長期的に変化した結果です。
したがって精密な地磁気地図や磁気モデルは、一度作れば永久に使えるものではありません。時間変化を考慮して定期的に更新する必要があります。
国際地磁気標準磁場が定期更新されるのはなぜか
地球内部の主磁場を世界的に表す代表的なモデルが、国際地磁気標準磁場であるIGRFです。
NOAAは、地球内部起源の磁場が時間とともに変化するため、IGRFの係数も時刻依存で扱う必要があり、モデルが一定期間ごとに更新されると説明しています。
これは地磁気が固定値ではなく、空間分布と時間変化の両方を持つことを反映しています。
1日の中でも地磁気が変わるのはなぜか
地磁気観測所では、平穏な日でも1日周期の変化が見られます。これを地磁気の日変化と呼びます。
気象庁地磁気観測所は、この日変化が太陽放射によって電離層に電流系が形成され、地球の自転に伴って観測地点との位置関係が変わることに由来すると説明しています。
つまり日変化は、地球内部の磁場そのものが1日ごとに大きく作り直されているのではなく、上空の電流が作る磁場が時間とともに重なり方を変える現象です。
昼と夜で地磁気が少し違うのはなぜか
太陽放射を受ける昼側では、電離層の電離状態や電気伝導度が夜側と異なります。そのため電離層を流れる電流も昼夜で変化します。
その電流が作る磁場が地表の観測値へ加わるため、地磁気は1日の中で規則的に変動します。
気象庁地磁気観測所によると、日本付近の地磁気では、静穏時の日変化は数十nT程度の振幅を持つことがあります。
磁気嵐ではなぜ地磁気が大きく乱れるのか
太陽フレアやコロナ質量放出などに伴って太陽風が大きく変化すると、地球磁気圏の電流系も大きく変化します。
この結果、地表で観測される地磁気が数時間から数日にわたって大きく乱れる現象が磁気嵐です。
気象庁地磁気観測所は、静穏時の日変化が数十nT程度であるのに対し、磁気嵐では数十から数百nT規模の変化が観測される場合があると説明しています。
磁気嵐の見え方も場所によって違う
磁気嵐は地球規模の現象ですが、どこでも同じ波形・同じ大きさで観測されるわけではありません。
地磁気観測所は、観測点の緯度や経度によって地磁気変化の様子が異なると説明しています。
これは、磁気圏や電離圏の電流系が空間的に一様ではなく、観測地点と電流系の位置関係によって地表へ現れる磁場成分が変わるためです。
高緯度ほど変動が大きくなりやすいのはなぜか
高緯度地域では、オーロラ帯に関連する電離圏電流や沿磁力線電流の影響を受けやすいため、地磁気変動が大きくなることがあります。
一方、中低緯度では磁気嵐に伴う環電流などの影響が比較的わかりやすく現れます。
このため世界各地の地磁気観測所では、緯度の異なる地点の記録を比較しながら、磁気圏電流系の変化を調べます。
火山周辺では局所的な地磁気変化も起こる
火山を構成する岩石は磁化を持っています。火山体内部の温度が上昇すると、岩石の磁化が弱くなることがあります。
気象庁は、この性質を利用して草津白根山などで地磁気観測を行い、火山活動の監視に役立てています。
このような変化は地球全体の主磁場とは別の、局所的な地磁気変化です。地磁気は地球内部深部だけでなく、地表近くの地質や温度変化にも影響されます。
磁極の移動も地磁気の時間変化の一部
地球の磁極は固定された一点ではなく、時間とともに移動します。これは外核の流れが変化し、地球規模の磁場分布が変化するためです。
磁極が移動すると、各地域での偏角や伏角、磁場強度も少しずつ変化します。
つまり「北を指す方向」そのものが地質学的・歴史的時間で変わるため、精密な航法や測量では最新の磁場モデルが必要になります。
地磁気を測ると地球内部と宇宙空間の両方がわかる
長期的な地磁気変化を調べると、外核の流れや地球ダイナモの変化を推定できます。
一方、短時間の地磁気変動を調べると、太陽風、磁気圏、電離圏の電流変化を知る手がかりになります。
同じ地磁気観測でも、時間スケールを変えることで、地球深部と宇宙空間という全く異なる領域の情報を得られるのです。
地磁気の強さや向きは「複数の磁場の重ね合わせ」で決まる
地磁気の強さや向きが場所と時間で変わる理由は、一つではありません。場所による違いは、地球の主磁場の三次元構造、地殻の磁化、緯度や経度の違いによって生じます。
時間による違いは、外核の流れが変化する永年変化、電離圏電流による日変化、太陽活動による磁気嵐などによって生じます。
観測される地磁気は、これらすべてを重ね合わせた結果です。そのため地磁気は「地球に固定された一定の磁場」ではなく、地球内部・地殻・大気・宇宙環境が同時に作る、場所と時間に依存した動的な磁場として理解する必要があります。
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参考資料
- 気象庁「気象業務はいま2020」
- 気象庁 地磁気観測所「地磁気の基礎知識」
- NOAA NCEI「IGRF Health Warning, Errors, and Limitations」
- U.S. Geological Survey「Introduction to Geomagnetism」

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