なぜ穀物は外皮や胚芽を取り除いて精製するのか?

米を玄米から白米へ精米したり、小麦を製粉して白い小麦粉にしたりするとき、穀物の外側にあるぬか・ふすまや胚芽の一部が取り除かれます。こうした「精製」は、穀物を食べやすく、調理・加工しやすく、保存しやすい状態に整えるために行われてきました。

ただし、精製は良いことだけを生むわけではありません。外皮や胚芽には食物繊維、ビタミン、ミネラル、脂質、ポリフェノールなどが多く含まれるため、取り除くほど栄養成分の一部も減ります。つまり、穀物の精製は「食べやすさ・加工適性・保存性」と「栄養成分をどこまで残すか」のバランスを取る操作だと考えるとわかりやすくなります。

目次

結論:精製は、硬い外層や胚芽を分けて、食味・加工性・保存安定性を整えるために行う

穀物を精製する主な理由は、次の四つです。

  • 外皮やぬか層を減らし、口当たりや食感をやわらかくする
  • でんぷんを多く含む胚乳を中心に取り出し、炊飯・製パン・製麺などに使いやすくする
  • 脂質や酵素を多く含む胚芽を減らし、酸化や風味劣化を起こしにくくする
  • 色や粒度をそろえ、用途に合った白米や小麦粉を作る

一方で、精製が進むほど、ぬかや胚芽に多い食物繊維、ビタミン、ミネラルなども減ります。そのため、精製は「品質を上げる工程」というより、用途に合わせて穀粒の構成を変える工程です。

穀物の粒は、どんな部分からできている?

米や小麦などの穀物は、大まかに見ると、外側の層、胚芽、胚乳からできています。

農林水産省の米の資料では、玄米の外側には果皮・種皮・糊粉層からなるぬか層があり、その内側の大部分をでんぷん貯蔵組織である胚乳が占めています。胚芽は発芽すると根や葉になる部分で、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを比較的多く含みます。

小麦でも構造は似ており、外側のふすま、胚芽、でんぷんとたんぱく質を多く含む胚乳に分けられます。

精製とは、この穀粒全体をそのまま使うのではなく、主に胚乳を残すように外側の層や胚芽を分離する操作です。

米では、なぜ玄米を精白して白米にする?

玄米は、籾殻を取り除いた後も、ぬか層と胚芽が残っています。精米では、このぬか層と胚芽を少しずつ削り取り、白い胚乳部分を多く残します。

農林水産省は、精米加工の目的を、玄米から胚芽とぬか層を除去し、外観と食味に優れた精白米を得ることと説明しています。

ぬか層が残る玄米は、白米より硬く、吸水が遅くなります。日本調理科学会の研究でも、玄米は七分つき米や精白米より吸水速度が遅く、炊飯後も水分含量が少なく、硬い食感になりやすいことが示されています。

つまり精白すると、水が胚乳へ入りやすくなり、短い時間で炊きやすく、やわらかな食感を得やすくなります。

小麦では、なぜふすまや胚芽を分ける?

小麦では、製粉によって粒を段階的に砕き、ふるい分けながら、胚乳を細かい粉として取り出します。

近年の小麦加工レビューでは、工業的な製粉は、外層と胚芽を胚乳から順に分離し、胚乳を細かい粒子にして精製小麦粉を作る工程と整理されています。

胚乳はでんぷんと小麦たんぱく質を多く含むため、パン、麺、菓子などの加工に適しています。細かく製粉すると水を取り込みやすくなり、混捏したときにグルテンのネットワークも作りやすくなります。

一方、ふすまが多い全粒粉では、外皮由来の粗い粒子が生地構造に影響し、精製小麦粉とは異なる食感や膨らみ方になります。

外皮を除くと、なぜ食べやすくなる?

穀物の外側の層には、セルロースやアラビノキシランなどの食物繊維が多く、組織も比較的硬くできています。

植物にとって外皮は、種を物理的な刺激や乾燥、微生物などから守る重要な構造です。しかし、人が食べるときには、この硬い層が噛みごたえ、ざらつき、調理時間の長さにつながることがあります。

外層を減らすと、でんぷんを多く含む胚乳が表面に近くなるため、水が入りやすくなり、加熱でやわらかくなりやすくなります。

このため、白米は玄米より短時間で炊きやすく、精製小麦粉は全粒粉より滑らかな生地や軽い食感の製品を作りやすくなります。

胚芽を取り除くと、なぜ保存しやすくなる?

胚芽には、次の世代の植物を育てるための栄養が集まっており、脂質や酵素を多く含みます。

この脂質は栄養的には価値がありますが、保存中に酸化すると、においや風味の劣化につながります。また、脂質を分解する酵素が働くと、遊離脂肪酸が増え、品質が低下することがあります。

全粒小麦粉は精製小麦粉より脂質と脂質分解酵素を多く含むため、一般に保存中の風味劣化が起こりやすいことがレビューで報告されています。

そのため、胚芽を除いて胚乳中心にすると、脂質由来の酸化を減らし、粉の保存安定性を高めやすくなります。

精製すると栄養が減るのはなぜ?

穀粒の栄養成分は、すべての部分に均等に分布しているわけではありません。

米では、ぬか層や胚芽に食物繊維、脂質、ビタミンB群、ミネラルなどが多く含まれています。農林水産省の資料でも、玄米と精白米を比べると、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などに大きな差があると説明されています。

小麦でも、ふすまや胚芽には食物繊維、ミネラル、ビタミン、ポリフェノールなどが多く、精製によってこれらの一部が除かれます。

つまり、白く精製するほど「不要な部分だけが落ちる」のではありません。食感や保存性を改善する一方で、栄養成分を含む部分も同時に減っているのです。

精製すると、でんぷんの割合が高く見えるのはなぜ?

精製では、でんぷんを多く含む胚乳を主に残します。

そのため、製品全体に占めるでんぷんの割合は相対的に高くなります。これは「精製によって新しくでんぷんが増えた」という意味ではありません。

もともと穀粒にあった外皮や胚芽が取り除かれ、胚乳の比率が高くなるため、結果として炭水化物中心の組成になるのです。

白米や精製小麦粉がエネルギー源として使いやすい一方、全粒穀物より食物繊維や微量栄養素が少なくなるのは、この構造的な理由によります。

精製度を上げれば上げるほど、おいしくなる?

必ずしもそうではありません。

精製すると、硬い外層が減るため、やわらかく滑らかな食感を得やすくなります。しかし、外層や胚芽に含まれる香り、うま味、脂質なども減るため、穀物らしい風味が弱くなることがあります。

米では、玄米、七分づき米、胚芽米、白米のように精米度を変えることで、食感と栄養成分のバランスを選べます。

小麦でも、精製小麦粉と全粒粉では、パンの膨らみ、香り、色、食感が異なります。

つまり、「精製度が高いほど高品質」ではなく、どのような食感や用途を求めるかによって適した精製度が変わります。

全粒穀物なら、精製穀物より常に優れている?

栄養成分を多く残すという点では、全粒穀物には大きな利点があります。しかし、調理や加工のしやすさ、保存性、食感まで含めると、単純な優劣では決められません。

全粒小麦粉は、ふすまや胚芽を含むため栄養価が高い一方、脂質や酵素が多く、精製小麦粉より保存期間が短くなりやすいことがあります。また、ふすまはパン生地のグルテン構造に影響するため、全粒粉パンでは精製小麦粉とは異なる製法の工夫が必要です。

一方、精製穀物では、失われたビタミンやミネラルを強化する食品もあります。

用途によって、全粒と精製を使い分けることが現実的です。

精製で取り除いたぬかや胚芽は捨てられるだけ?

いいえ。ぬかや胚芽は重要な副産物として利用されています。

米ぬかには脂質が多く含まれ、米油の原料になります。農林水産省の資料では、米ぬかには約20%の脂質が含まれ、γ-オリザノールなどの成分も含むことが紹介されています。

小麦ふすまは、食物繊維を多く含む食品素材や飼料として使われます。小麦胚芽も、ビタミンEや不飽和脂肪酸を含む食品素材として利用できます。

近年は、精製で分かれた副産物を「不要物」とせず、栄養価の高い食品原料として再利用する研究が進んでいます。

精製は食品の安全にも関係する?

穀物の外側には、土やほこり、微生物などが付着しやすいため、洗浄や外層除去は異物や一部の汚染を減らすことにもつながります。

ただし、精製すればすべての安全上の問題が解決するわけではありません。カビ毒や重金属などは、種類によって穀粒内での分布が異なり、胚乳にも存在する場合があります。

したがって、精製は食品安全管理の一部にはなりますが、乾燥、貯蔵、検査、衛生管理の代わりにはなりません。

家庭では精製度をどう選べばよい?

家庭では、食べ方と目的に合わせて選ぶのが実用的です。

  • やわらかさや炊きやすさを重視するなら精白米を選ぶ
  • 食物繊維や微量栄養素を多く取りたい場合は玄米や分づき米を取り入れる
  • パンや菓子では、軽い食感には精製小麦粉、香ばしさや食物繊維を増やすなら全粒粉を使う
  • 全粒粉や胚芽を含む粉は、脂質酸化を防ぐため保存状態にも注意する
  • 一つの精製度に固定せず、料理や好みに応じて組み合わせる

精製度は「健康か不健康か」を一つで決める指標ではなく、食感、調理性、保存性、栄養のバランスを調整する選択肢です。

まとめ

穀物が外皮や胚芽を取り除いて精製されるのは、硬い外層を減らして食べやすくし、でんぷんを多く含む胚乳を炊飯・製粉・製パンなどに使いやすくし、さらに脂質の酸化などを抑えて保存安定性を高めるためです。

米ではぬか層と胚芽を取り除くことで白米になり、吸水しやすく、やわらかく炊きやすくなります。小麦では、ふすまと胚芽を分離して胚乳を細かく製粉することで、パンや麺に適した粉を得やすくなります。

一方、ぬかや胚芽には食物繊維、ビタミン、ミネラル、脂質などが多いため、精製が進むほど栄養成分の一部は減ります。つまり穀物の精製とは、食べやすさ・加工性・保存性を得る代わりに、全粒の栄養や風味の一部を手放す工程であり、用途に応じてそのバランスを選ぶことが大切なのです。

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