家事分担には、「料理は片方、洗濯はもう片方」のような固定分担もあれば、その日の帰宅時間や子どもの予定に合わせて柔軟に交代する家庭もあります。共働きでも家事がほぼ半分ずつの家庭がある一方、一人へ大きく偏る家庭もあります。
こうした違いが生まれるのは、家事分担が単に「何個ずつ家事を持つか」で決まるものではないからです。就業時間、通勤、在宅勤務、子どもの年齢、家族人数、家事に求める基準、利用できる家電や外部サービス、社会や文化の影響など、複数の条件が重なって分担の形が決まります。
結論:家事分担は「使える時間・必要な家事量・家事の基準」の違いで変わる
家事分担の形が家庭によって違う主な理由は、次のように整理できます。
- 夫婦や家族それぞれの就業時間・通勤時間が違う
- 子どもの有無や年齢によって、育児と家事の量が大きく変わる
- 在宅勤務などで、家にいる時間帯が変わる
- 「どこまでやれば十分か」という家事基準が人によって違う
- 家族人数や住環境によって、料理・洗濯・掃除の量が変わる
- 家電や家事代行など、外部化できる範囲が違う
- 国や社会の制度、性別役割意識によって分担の傾向が変わる
つまり、家事分担には一つの正解があるのではなく、家庭ごとの条件に合う形が変わります。
共働きでも「仕事時間」が同じとは限らない
共働きという言葉だけを見ると、二人とも同じ程度に働いているように見えます。しかし、実際には勤務時間、通勤時間、残業、シフト、休日が異なります。
一方が早朝に出勤し、もう一方が夕方まで家にいるなら、朝と夕方の家事を同じ比率で分けるのは難しいことがあります。逆に、勤務時間が近く、帰宅時間も近いなら、同じ時間帯に複数の家事を分担しやすくなります。
総務省統計局の社会生活基本調査は、家事・育児・買い物などの生活時間を継続的に測定しています。6歳未満の子どもがいる夫婦世帯では、夫の家事関連時間は増えているものの、妻との差はなお大きく残っています。
このように、家事分担を考える時は「共働きかどうか」だけでなく、誰がいつ家にいて、どの時間を家事へ使えるかを見る必要があります。
子どもがいると、家事分担は育児との組み合わせで変わる
子どもが生まれると、家事だけでなく、授乳、食事、着替え、送迎、入浴、寝かしつけ、遊び、見守りなどの育児が増えます。
そのため、家事分担は「料理と洗濯をどう分けるか」だけでなく、「育児と家事を誰が同じ時間帯に担うか」という問題になります。
たとえば一人が子どもを入浴させている間に、もう一人が夕食後の片付けをする家庭では、家事と育児を並行して分担しています。一方、一人が子どもの対応と家事の両方を担えば、負担は集中します。
国内の子育て期共働き家庭の研究でも、夫婦がともに家事をしていても、家事の基準や管理の仕方が共有されにくく、分担の困難が生じることが報告されています。
子どもの年齢でも必要な分担は変わる
乳幼児がいる家庭と、中学生や高校生がいる家庭では、家庭内で必要な仕事が違います。
乳幼児期は、食事や入浴、見守りなど、大人が直接関わる時間が長くなります。子どもが成長すると身体的な世話は減る一方、送迎、学校行事、食事時間の調整など別の仕事が増えることがあります。
さらに、子ども自身が片付けや洗濯物の収納などを担当できるようになれば、家事分担へ参加することも可能になります。
このため、家事分担は一度決めた形を固定するのではなく、家族の成長に合わせて組み替える必要があります。
在宅勤務は家事分担を変えるが、必ず平等にするわけではない
在宅勤務では通勤時間が減り、日中に家にいる時間が増えます。そのため、洗濯機を回す、宅配便を受け取る、簡単な片付けをするといった家事へ参加しやすくなることがあります。
一方、在宅勤務だからといって自由時間が増えるとは限りません。会議や締切が多ければ、家にいても家事へ対応できないことがあります。
米国の時間利用研究では、共働き親の在宅勤務と家事・育児時間の関係は、夫婦双方の勤務場所や育児需要によって変わることが示されています。別の研究でも、在宅勤務の拡大が家事分担を必ず平等化するわけではなく、もともとの分担パターンや性別役割の影響が残る場合が報告されています。
つまり、家にいる時間が増えることと、家事責任を引き受けることは同じではありません。
家事の「基準」が違うと、同じ分担でも負担感が変わる
家事分担の違いは、時間だけでは説明できません。
たとえば、一方は「床に目立つゴミがなければ十分」と考え、もう一方は「家具の下まで毎回掃除したい」と考えるかもしれません。料理でも「簡単な一品でよい」と考える人と、「複数のおかずを用意したい」と考える人では、必要な時間が違います。
子育て期の共働き家庭を扱った国内研究では、夫婦ともに家事をしていても、家事をする上での基準や感覚が異なり、その違いが分担の困難につながることが指摘されています。
このため、家事分担は「誰が何個担当するか」だけでなく、「どの程度まで行うか」を共有しないと、同じ担当数でも負担感が大きく変わります。
実作業と「家事の管理」が別の人に偏ることもある
家事には、手を動かす作業だけでなく、在庫確認、献立、予定調整、補充、家族への声かけなどの管理があります。
一方が料理や洗濯を実行していても、もう一方が「いつやるか」「何が足りないか」「次に何をするか」をすべて考えていれば、家事責任は均等とは限りません。
国内研究では、夫が実作業を分担していても、妻が家事のマネジメントや調整を担い続ける家庭があることが報告されています。
そのため、分担の違いを見る時は、見える作業だけでなく、判断や管理まで含めて考える必要があります。
家族人数が増えると、分担が必要になる家事量も変わる
一人暮らし、二人暮らし、子どもを含む4人世帯では、料理量、食器、洗濯物、買い物量などが違います。
家族人数が増えれば、家事の総量が増えるだけでなく、生活時間もばらつきます。食事時間が違えば配膳や片付けが複数回発生し、洗濯物の種類が増えれば仕分けや収納も複雑になります。
そのため、少人数世帯では一人がまとめて担当できていた家事でも、家族が増えると複数人へ分けた方が回しやすくなることがあります。
住宅や設備によっても、分担しやすい家事が変わる
家事分担は、人間関係だけでなく住環境にも影響されます。
キッチンが狭く二人同時に作業しにくい家庭では、料理を二人で同時に行うより、一人が調理し、もう一人が別室で洗濯や片付けをする方が効率的かもしれません。
洗濯機と物干し場が別階なら、洗濯は身体負担の大きい家事になります。食器洗い乾燥機や乾燥機があれば、担当者の手作業は減ります。
つまり、同じ家族構成でも住宅や設備が違えば、どの家事を誰が担当しやすいかが変わります。
外部サービスを使える家庭では、家族内分担そのものが変わる
家事代行、ネットスーパー、食事宅配、クリーニングなどを利用すると、家庭内で行う家事の一部を外部へ移せます。
たとえば掃除を家事代行へ依頼すれば、夫婦間で掃除をどう分けるかという問題自体が小さくなります。ネットスーパーを利用すれば、買い物へ行く担当を決める必要が減ります。
一方、費用や地域のサービス availability によって利用しやすさは異なります。
このため家事分担は、家庭内の二者だけで完結するとは限らず、外部サービスを含めた家事配分として考えることもできます。
国や社会によって、家事分担の差は大きい
OECDの時間利用データでは、無償の家事・ケア労働に使う時間には男女差があり、その大きさは国によって異なります。
OECDの分析では、女性が男性より多くの無償家事を担う傾向は加盟国全体で見られる一方、その差は国によってかなり異なります。
この違いには、労働時間、育児休業制度、保育サービス、働き方、社会規範など複数の要因が関係します。
つまり、家事分担は各家庭の個人的な性格だけで決まるのではなく、働き方や制度を含む社会環境の影響も受けます。
「公平な分担」と「同じ量の分担」は同じではない
家事を50対50に分ければ、どの家庭でも公平になるとは限りません。
一方が長時間勤務で、もう一方が短時間勤務なら、家事時間を同じにすることが負担の公平さにつながらない場合があります。逆に、片方だけが家事の管理や育児の緊急対応を担っていれば、作業時間だけを同じにしても負担は偏る可能性があります。
家事分担を考える時は、作業数、所要時間、精神的負担、身体負担、就業時間、本人の納得感などを合わせて見る必要があります。
家庭によって適切な分担が違うのは、この「公平」の条件が違うためでもあります。
固定分担が合う家庭と、柔軟分担が合う家庭がある
勤務時間や生活時間が安定している家庭では、「料理はA、洗濯はB」のように固定すると、毎回相談する必要がなくなります。
一方、シフト勤務、残業、出張が多い家庭では、固定担当だけでは家事が止まりやすくなります。この場合は、「基本担当は決めるが、帰宅が遅い日は交代する」といった柔軟な方法が向きます。
つまり、固定と柔軟のどちらが優れているわけではなく、予定の安定性によって使いやすい分担方式が変わります。
分担は生活条件が変わるたびに見直す必要がある
家事分担は、一度決めたら終わりではありません。
転職、在宅勤務、出産、復職、子どもの進学、介護、病気などで、使える時間や必要な家事量は変わります。
以前は合理的だった分担でも、生活条件が変われば負担の偏りが大きくなることがあります。
そのため、「最近どちらかへ家事が集中していないか」「判断や管理が一人へ偏っていないか」を定期的に確認し、担当を組み替える方が実用的です。
まとめ
家事分担の形は、家庭によって大きく違います。なぜなら、家事分担は単純な作業数ではなく、就業時間、通勤、在宅勤務、子どもの年齢、家族人数、家事基準、住宅や設備、外部サービス、社会制度などの条件によって決まるからです。
共働きでも勤務時間が違えば、家事へ使える時間は変わります。子どもがいる家庭では、家事と育児を組み合わせて分担する必要があります。在宅勤務でも家にいるだけで自動的に家事分担が平等になるわけではありません。
また、実作業だけでなく、在庫確認や予定調整などの家事管理が誰に偏っているかも重要です。
家事分担に用途や環境による違いがあるのは、家庭ごとに「使える時間」「必要な家事量」「求める家事基準」「利用できる設備や支援」が異なるためです。大切なのは、一律の正解へ合わせることではなく、その家庭の条件が変わるたびに分担を調整することです。
参考資料
- 総務省統計局「社会生活基本調査とは?」
- 髙山純子「子育て期の共働き家庭における家事分担の困難と家事のマネジメント」家族研究年報, 2020
- 孫詩彧「家事育児の分担に見る夫と妻の権力経験」家族社会学研究, 2019
- OECD「Unpaid housework: Bringing Household Services Out of the Shadows」
- Pabilonia SW, Vernon V. Who is doing the chores and childcare in dual-earner couples during the COVID-19 era of working from home?

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