結論から言うと、土壌は、岩石などが風化してできた鉱物粒子に、動植物や微生物由来の有機物が加わり、その粒子のすき間を水と空気が満たし、さらに生物の活動や物質の移動が長い時間続くことで成り立っています。つまり土壌は、単に細かく砕けた岩石ではなく、固体・水・空気・生物が互いに作用することでできる複雑な自然体です。
地面を掘ると、上は黒っぽく、下へ行くにつれて褐色や黄褐色になり、さらに深いところでは岩石に近い材料が現れることがあります。これは、地表からの有機物の供給、雨水による物質の移動、鉱物の風化、植物の根や微生物の活動などが深さごとに異なるためです。土壌は、こうした働きが長い時間積み重なって形成された「層を持つ仕組み」として見ると理解しやすくなります。
土壌は何からできているのか
農林水産省は、土壌について、岩石が風化して細かくなった粒子が堆積し、そこへ植物や微生物などの遺体が分解した有機物が加わって形成されると説明しています。また、土壌は固体・液体・気体から構成されています。
この3つは土壌学で固相・液相・気相と呼ばれます。
- 固相:砂、シルト、粘土などの鉱物粒子や腐植など
- 液相:粒子のすき間に存在する土壌水
- 気相:水で満たされていないすき間にある空気
土は固体だけに見えますが、実際には粒子の間に多くのすき間があります。そのすき間に水と空気が入り、植物の根や微生物が活動できる環境がつくられます。したがって、土壌の仕組みを理解するには、「粒子の集まり」だけでなく「粒子の間に何があるか」まで考える必要があります。
最初の材料は岩石や堆積物
土壌の無機物部分のもとになるものを母材と呼びます。母材には、その場所の岩石が風化したものだけでなく、火山灰、河川が運んだ堆積物、風で運ばれた細かな粒子なども含まれます。
岩石は、一度に土になるわけではありません。昼夜や季節の温度変化、水の凍結と融解、植物の根による圧力などによって物理的に細かくなります。同時に、水や酸素、二酸化炭素などとの化学反応によって鉱物自体も変質します。この一連の変化が風化です。
風化が進むと、大きな岩石は砂やシルトの大きさの粒子になり、さらに一部の鉱物は粘土鉱物へ変化します。こうしてできた細かな鉱物粒子が、土壌の骨格になります。
母材が違えば土壌の性質も変わる
母材にどのような鉱物が含まれているかによって、粒の大きさ、色、養分の供給力、酸性化のしやすさなどが変わります。火山灰からできた土と、花こう岩が風化してできた土、河川が運んだ砂や泥からできた土が同じ性質にならないのはこのためです。
ただし、現在の土壌の性質は母材だけで決まりません。気候、生物、地形、時間などが加わることで、同じような母材からでも異なる土壌が形成されます。
有機物が加わることで「土壌らしさ」が生まれる
地表には、落ち葉、枯れた根、枯れ草、動物の遺体や排せつ物など、さまざまな有機物が供給されます。これらは細菌や菌類などの土壌生物によって分解されます。
分解された有機物の一部は二酸化炭素や無機養分になり、一部は比較的分解されにくい複雑な有機物として土の中に残ります。こうした有機物は一般に腐植と呼ばれ、土の表層を暗く見せたり、養分や水を保持したり、土の粒子をまとまりやすくしたりします。
鉱物粒子だけが積もっている状態と、生物由来の有機物が加わって継続的に分解・循環している状態では、性質が大きく異なります。土壌が単なる「砕けた岩石」ではない大きな理由の一つが、この生物活動にあります。
土壌は固相・液相・気相のバランスで働く
土壌の粒子と粒子の間には孔隙と呼ばれるすき間があります。この孔隙には水または空気が入っています。
雨が降ると孔隙の一部は水で満たされます。その後、重力で余分な水が下へ移動すると、大きな孔隙には再び空気が入ります。一方、小さな孔隙には毛細管現象などによって水が残ります。
このため、適度な大きさの孔隙が組み合わさった土では、水を保持しながら空気も確保することができます。植物の根は水だけでなく酸素も必要なので、土壌中の水と空気のバランスは生育に直接関係します。
水が多すぎても少なすぎても働きが変わる
孔隙のほとんどが水で満たされると、空気が入りにくくなり、土壌中の酸素が不足します。すると根の呼吸が妨げられたり、酸素を必要とする微生物の活動が低下したりします。
反対に乾燥しすぎると、植物が利用できる水が減るだけでなく、溶けた養分が根まで移動しにくくなり、微生物活動も弱くなります。土壌は、水と空気が時間とともに入れ替わる動的な環境なのです。
土の粒子は集まって「団粒」をつくる
土壌中の砂、シルト、粘土などは、いつも一粒ずつばらばらに存在しているわけではありません。粘土や腐植、微生物がつくる物質、植物の根などの働きによって、複数の粒子がまとまった団粒が形成されます。
農林水産省は、団粒構造が発達すると、粒子間に大小の孔隙が生じ、通気性や透水性、保水性に関係すると説明しています。
団粒の内部には小さな孔隙があり水を保持しやすく、団粒と団粒の間には比較的大きな孔隙ができ、水が抜けた後には空気が入りやすくなります。この構造によって、「水持ち」と「水はけ」という一見反対の性質が同時に成り立つことがあります。
したがって土壌の仕組みは、何の物質が含まれているかだけでなく、それらがどのような構造で並んでいるかによっても大きく変わります。
土壌は5つの生成因子の組み合わせで変化する
土壌学では、土壌の形成を考える代表的な要因として、母材・気候・生物・地形・時間の5つが重視されます。J-STAGEに掲載された土壌生成に関する研究でも、これらは土壌生成因子として扱われています。
母材
土壌の出発材料です。岩石や火山灰、河川堆積物などの種類によって、鉱物組成や粒径などが変わります。
気候
気温や降水量は、岩石の風化速度、有機物の分解速度、水による物質移動などを左右します。高温多雨の地域と寒冷乾燥地域では、同じ母材でも土壌の発達のしかたが違います。
生物
植物は根を伸ばし、落ち葉や枯れ根を土に供給します。微生物や土壌動物は有機物を分解し、養分循環や土壌構造の形成に関わります。人間による耕作や土地利用も、現在では土壌に大きな影響を与えます。
地形
斜面では水や土粒子が移動しやすく、低地では水や堆積物が集まりやすくなります。同じ地域でも尾根、斜面、谷底で土壌が違うのは、地形によって水分状態や侵食・堆積の条件が変わるためです。
時間
風化、有機物の蓄積、粘土や鉄の移動などは少しずつ進みます。そのため、同じような母材でも形成が始まってからの時間が長いほど、もとの材料とは異なる特徴が発達することがあります。
USDA Natural Resources Conservation Service(NRCS)も、土壌は母材に対して気候、地形、生物が時間をかけて作用した自然体であり、もとの材料とは異なる物理・化学・生物学的性質を持つと説明しています。
なぜ土壌には層ができるのか
土壌を縦に切った断面を見ると、色や粒子、有機物量などの違う層が現れることがあります。これらを土壌層位と呼びます。
層ができるのは、物質が上から加わるだけでなく、雨水によって下へ移動したり、ある深さで集積したり、植物が養分を吸収して再び落ち葉として表面へ戻したりするためです。
USDA NRCSは、土壌を、エネルギーや物質の添加・損失・移動・変換の結果として、もとの母材とは区別できる層を持つ自然体として説明しています。
表層では有機物が多くなりやすい
地表付近では落ち葉や枯れ根が供給され、根や微生物の活動も活発です。そのため、有機物が鉱物粒子と混ざり、暗色のA層ができることがあります。
水が物質を下へ運ぶ
雨水が土の中を通ると、溶けた成分や非常に細かな粒子が移動します。上の層から鉄、粘土、有機物などが失われ、下の層に集積することもあります。
このような移動が長期間続くことで、深さごとに色や化学性、粒子組成などが異なる層が形成されます。つまり、土壌断面は、その場所で起こってきた物質移動の履歴でもあります。
土壌の中では生物が絶えず働いている
土壌は無機物と有機物の混合物であるだけでなく、多くの生物が暮らす生態系です。細菌、菌類、原生生物、線虫、ダニ、ミミズなどが、異なる役割を担っています。
微生物は有機物を分解して養分を別の形に変えます。ミミズなどの土壌動物は有機物と鉱物粒子を混ぜ、孔隙をつくります。植物の根は有機物を供給するとともに、土壌から水や養分を吸収します。
こうした生物活動は土の構造や化学性を変え、その変化した土壌環境が再び生物の活動に影響します。土壌は静止した材料ではなく、生物と環境が相互作用し続けるシステムなのです。
「土」と「土壌」は同じものなのか
日常会話では「土」と「土壌」はほぼ同じ意味で使われます。しかし土壌学では、土壌を単なる地表の粒子ではなく、母材、気候、生物、地形、時間の影響を受け、層や特有の性質を形成した自然体として捉えます。
そのため「砂が積もっている場所」や「砕いた岩石」と、長い時間をかけて植物や微生物が関わり、物質移動や層位形成が進んだ土壌とは、仕組みの面で違いがあります。
この視点を持つと、「土壌がどのように成り立つか」という問いは、単に材料を列挙するだけでは答えられません。材料がどのように配置され、水や空気、生物とどう作用し、時間とともにどう変化するかまで含めて考える必要があります。
土壌の仕組みをまとめると
- 岩石や火山灰などの母材が風化し、鉱物粒子になる
- 落ち葉や枯れ根などの有機物が加わり、微生物によって分解される
- 鉱物粒子と腐植などが固相をつくる
- 粒子のすき間には水と空気が入り、液相と気相をつくる
- 粒子がまとまって団粒をつくり、大小の孔隙が形成される
- 雨水によって物質が溶けたり、下へ移動したりする
- 植物・微生物・土壌動物が物質循環と構造形成に関わる
- 母材・気候・生物・地形・時間の組み合わせによって土壌の特徴が変わる
- これらの作用が続くことで、深さごとに異なる土壌層位が形成される
つまり土壌とは、岩石の風化物に有機物が混ざっただけのものではなく、固体・水・空気・生物が相互作用し、物質が移動・変換され続けることで成立する自然のシステムです。地面の下に見える一握りの土にも、鉱物の風化、生物の活動、水の移動、長い時間の積み重ねが組み込まれています。

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