洗濯機の「脱水」は、すすぎのあとに衣服を高速回転させ、水分を外へ出す工程です。洗剤で汚れを落とす工程ほど目立ちませんが、脱水の強さや時間は、その後の乾きやすさ、しわ、型崩れ、乾燥機の消費エネルギーなどに関係します。
洗濯で脱水を知ることが大切なのは、衣服に残る水分を減らして乾燥を楽にする一方、強すぎる脱水は素材や衣服の形に負担をかけることがあるからです。「長く回せばよい」「短ければ衣服に優しい」と単純に決めるのではなく、素材と乾燥方法に合った脱水を選ぶ必要があります。
脱水は遠心力で水を衣服の外へ移す
洗濯機の脱水では、洗濯槽を高速回転させます。衣服と水には回転による遠心方向の力が働き、水の一部が布のすき間を通って外側へ移動し、槽の穴から排出されます。
この工程では熱を使って水を蒸発させるのではなく、機械的に水を取り除きます。そのため、脱水後も衣服にはある程度の水分が残ります。
海外の洗濯機研究でも、脱水後の残留水分量は回転条件や時間などによって変わり、遠心脱水の性能を評価する重要な指標とされています。
脱水後の残留水分が少ないほど乾燥は楽になる
洗濯物を完全に乾かすには、脱水後に残った水を最終的に空気中へ蒸発させる必要があります。したがって、干し始める時点で衣服に残る水が少ないほど、乾燥で取り除く水分量も少なくなります。
東京都の消費生活情報でも、冬の洗濯物を乾きやすくするポイントとして、まず洗濯物に残っている水分を少なくすることが挙げられています。
部屋干しや自然乾燥では、脱水を適切に行うことが乾燥時間を短くする基本の一つです。
乾燥機を使う場合は脱水性能がエネルギーに影響する
乾燥機は、衣服に残った水を熱で蒸発させて取り除きます。脱水後の残留水分が多ければ、それだけ多くの水を蒸発させる必要があります。
海外の家庭洗濯研究では、洗濯後の残留水分量が乾燥時間と乾燥機のエネルギー消費を左右する主要な要因の一つであると報告されています。
そのため、乾燥機を使う家庭では、適切な脱水によって事前に水分を減らしておくことが、乾燥時間とエネルギーの削減につながる場合があります。
回転数を上げれば残留水分は減りやすい
一般に、脱水時の回転数が高くなると衣服へ働く遠心力が大きくなり、水を外へ押し出しやすくなります。
専門的な研究でも、回転条件と残留水分量の関係が調べられており、遠心力が強くなることで綿布などから取り除ける水分量が増えることが確認されています。
ただし、布の厚さ、繊維の吸水性、織り・編み構造、洗濯物の量などでも残留水分は変わります。同じ回転数でも、タオルと薄手のポリエステル衣料では脱水後の水分量が同じとは限りません。
脱水時間を延ばせば効果がずっと増え続けるわけではない
脱水を始めた直後は多くの水が外へ出ますが、時間が経つにつれて取り除ける水分は少なくなっていきます。
布の中には、遠心力で比較的簡単に出る水と、細いすき間や繊維内部に保持されて出にくい水があります。そのため、一定時間を超えて脱水を続けても、残留水分の減少幅は小さくなります。
「10分回せば5分の2倍乾く」というような比例関係ではありません。必要以上に長い脱水は、時間や衣服への機械的負担を増やすだけになる場合があります。
強い脱水はしわを固定しやすい場合がある
高速回転中の衣服は、洗濯槽の壁へ押し付けられたり、衣服同士が重なった状態で強い力を受けたりします。
その状態で水分が抜けると、折れやねじれが残り、乾燥後のしわにつながることがあります。特に綿やレーヨンなど、濡れた状態で形が変わりやすい衣服では注意が必要です。
東京都の消費生活情報でも、綿のようなしわになりやすい衣服では、脱水時間を長くするとしわが増えることがあるため、乾燥方法と合わせて調整することが案内されています。
ただし「脱水時間だけでしわが決まる」わけではない
しわは、脱水時間だけでなく、洗濯物の量、衣服同士の絡み、洗浄方式、素材、布の厚さ、乾燥方法など複数の要因で生じます。
国内の洗濯しわ研究では、脱水時間を変えて検討しても、条件によってはしわ評価値に大きな変化が見られなかった例もあります。
そのため、「長い脱水は必ずしわを増やす」と断定するのではなく、しわになりやすい衣服では過度な脱水を避け、脱水後すぐに形を整えて干すことが実用的です。
デリケートな衣服では短い脱水が向くことがある
ニット、レーヨン、一部のウール製品などは、水を含んだ状態で形が変わりやすいことがあります。強い脱水を長く行うと、伸び、型崩れ、しわにつながる可能性があります。
そのため、おしゃれ着コースや手洗いコースでは、通常コースより回転を弱くしたり、脱水時間を短くしたりする設計が使われます。
実際にどの程度の脱水が適切かは製品ごとに異なるため、衣服の洗濯表示と洗濯機の説明書を確認することが重要です。
タオルや厚手衣料では十分な脱水が乾燥時間を左右しやすい
タオル、トレーナー、厚手の綿衣料などは多くの水を保持しやすく、脱水後にも重く感じることがあります。
こうした衣服では、脱水が不十分だと部屋干しに長い時間がかかりやすくなります。湿った状態が長く続けば、干す場所を長時間占有することにもなります。
しわや型崩れの問題が少ない衣類であれば、洗濯機が想定する範囲でしっかり脱水しておくことが、その後の乾燥を効率よくする方法になります。
脱水はすすぎの効率にも関係する
すすぎの途中で行う中間脱水には、衣服に含まれている洗剤成分や汚れを含む水を外へ出す役割があります。
汚れた水を多く残したまま新しいすすぎ水を入れるより、いったん脱水して液を減らした方が、新しい水へ置き換えやすくなります。
このように脱水は、最後に乾燥しやすくするだけでなく、すすぎ工程の水交換にも関係しています。
洗濯物の偏りによって脱水がうまく進まないことがある
洗濯槽の中で大きなタオルやシーツが一方へ偏ると、高速回転したときに大きな振動が発生します。
洗濯機は安全のため、偏りを検知すると回転を下げたり、いったん停止して衣服をほぐしたりする場合があります。その結果、設定した回転数まで上がらず、脱水後の水分が多く残ることがあります。
脱水が弱いと感じたときは、単に脱水時間を追加する前に、洗濯物が偏っていないか、容量を超えていないかを確認することも大切です。
脱水後にすぐ取り出すことも重要
脱水が終わった衣服は、槽の中で押し付けられた形のままになっています。その状態で長時間放置すると、折れやねじれが残りやすくなります。
脱水終了後はなるべく早く取り出し、一枚ずつ広げて縫い目や形を整えてから干すと、乾燥しやすく、しわも伸ばしやすくなります。
脱水条件だけでなく、「脱水後にどう扱うか」まで含めて考えることが、仕上がりを良くするポイントです。
脱水を知ると乾燥方法に合わせた設定ができる
自然乾燥、部屋干し、乾燥機では、脱水に求める条件が少し異なります。
- 部屋干しでは、しわを増やさない範囲で残留水分を減らす
- 乾燥機を使う場合は、衣服が許容する範囲で十分に脱水して乾燥時間を減らす
- デリケート衣料では、乾燥時間より型崩れ防止を優先して弱い脱水を選ぶ
- しわになりやすいシャツでは、短めの脱水と早い取り出しを組み合わせる
このように、何を優先するかで適切な脱水は変わります。
まとめ
洗濯で脱水を知ることが大切なのは、脱水が衣服の残留水分を減らして乾燥を楽にする一方、強さや時間によってはしわ・型崩れなどの負担にも関係するからです。
適切に脱水すれば、部屋干しの乾燥時間を短くし、乾燥機で蒸発させる水分量を減らせます。しかし、必要以上に強く長く脱水しても効果は次第に小さくなり、衣服によっては仕上がりを悪くすることがあります。
つまり、脱水は「できるだけ強く」ではなく、素材、洗濯表示、乾燥方法、しわの出やすさに合わせて選ぶことが大切です。
関連記事
参考資料
- 日本LCA学会誌「家庭洗濯における衣類乾燥の環境負荷低減のための評価」
- 東京都消費生活総合センター「これでスッキリ! 冬の洗濯」
- The Journal of The Textile Institute「Empirical model of textile water retention in professional washing machines」
- Drying Technology「Fabric properties and electric efficiency limits of mechanical moisture extraction from fabrics」

コメント