洗濯の「すすぎ」は、洗った衣類に残った洗剤成分や、洗濯液へ移った汚れを水で薄めて外へ出す工程です。洗濯機には1回すすぎ、2回すすぎ、ためすすぎ、注水すすぎなど複数の設定がありますが、これは単なる好みの違いではありません。洗剤の性質、衣類の量や素材、使う水の量、洗濯機の方式などによって、必要なすすぎ条件が変わるためです。
大切なのは「すすぎは多いほど必ずよい」と考えないことです。すすぎを増やせば水の交換機会は増えますが、その分だけ水や時間を使います。一方で、条件に対してすすぎが不足すれば、洗剤成分や汚れを十分に排出できないことがあります。目的は回数そのものではなく、必要な範囲まで洗濯液を衣類から除くことです。
すすぎの役割は、衣類に残った洗濯液を新しい水と入れ替えること
洗い工程では、洗剤が水の中で働き、衣類から汚れを離して洗濯液へ移します。しかし洗い終わった直後の衣類には、水分とともに洗剤成分や汚れを含む洗濯液が残っています。脱水でその多くを排出したあと、新しい水を入れて衣類を動かし、再び排水するのがすすぎの基本です。
この操作を繰り返すと、衣類や洗濯機内に残る洗濯液は段階的に薄まります。家庭用洗濯機のすすぎ水を測定した研究では、洗剤成分の量をすすぎ工程中の水から検出でき、界面活性剤の種類によって排出され方が異なることも報告されています。つまり、すすぎは単に泡を消す工程ではなく、衣類と水の間で成分を移動させ、排水する工程だと考えると分かりやすくなります。
なぜ「1回すすぎ」と「2回すすぎ」があるのか
必要なすすぎ性能と節水・時短のバランスが違うから
すすぎを一度行って排水すると、衣類に残っていた洗濯液は薄まります。さらに新しい水ですすげば、残留する成分をもう一段階減らせます。そのため、同じ条件なら水の交換回数を増やすことは残留成分を減らす方向に働きます。
一方、すすぎ回数を増やせば、一般には使用する水や運転時間も増えます。そこで洗剤や洗濯機は、必要な洗浄・すすぎ性能を確保しながら水や時間を減らせるよう設計されています。洗剤の中には「すすぎ1回」に対応する製品もあり、その場合は製品表示と洗濯機の設定に従って使うのが基本です。
逆に、洗剤を規定量より多く入れたからといって洗浄力が比例して高くなるとは限らず、すすぎ側の負担を増やす可能性があります。消費者庁の家庭用品品質表示法に基づく表示でも、合成洗剤には製品特性に応じた使用量の目安を具体的に表示することが求められています。まず適量を守ることが、すすぎ条件を考える前提です。
ためすすぎと注水すすぎは何が違うのか
ためすすぎは、一定量の水をためて衣類を動かす
ためすすぎでは、洗濯槽に一定量の水をため、その水の中で衣類を動かしてから排水します。水をためて衣類全体と接触させ、残った洗濯液をすすぎ水側へ移す方法です。一般に水使用量を抑えやすく、家庭用洗濯機で広く使われます。
注水すすぎは、水を加えながらすすぐ
注水すすぎは、すすぎ中にも新しい水を加える方式です。洗濯機の構造によって具体的な動作は異なりますが、新しい水を供給しながら洗濯液を薄め、排出する考え方です。ためすすぎより多くの水を使う設定になる場合があります。
ただし「注水すすぎなら必ず何倍きれいになる」といった一律の比較はできません。実際の性能は水量、時間、脱水の程度、衣類量、槽内での動きなどにも左右されます。洗濯機ごとのコース設計が違うため、名称だけで性能を決めつけず、取扱説明書で動作を確認する必要があります。
脱水をはさむことがすすぎに重要なのはなぜか
すすぎでは、新しい水を入れる前に古い洗濯液をできるだけ外へ出すことが重要です。衣類が多量の洗濯液を含んだままなら、新しい水を加えても最初から濃い状態になります。そこで洗いとすすぎの間、また複数回のすすぎの間に脱水を行い、衣類が抱え込んだ水分を減らします。
たとえば概念的に、衣類に残る洗濯液が少ないほど、次に同じ量の新しい水を加えたときの希釈効果は高くなります。このため、すすぎは「水を入れて回す」だけでなく、排水と脱水を組み合わせた一連の工程として設計されています。
なお、強い脱水は衣類への機械的負担にも関係します。デリケートな衣類では、すすぎ性能だけを求めて強い処理を選ぶのではなく、衣類の洗濯表示とコース指定を優先します。
洗剤の種類によってすすぎ方を変える必要があるのはなぜか
洗剤は単一の物質ではなく、界面活性剤を中心に複数の成分から構成されています。研究では、家庭用洗濯機の排水を分析すると、異なる界面活性剤が同じ割合ですすぎ出されるとは限らないことが示されています。ある成分は水中の電解質と似た挙動ですすぎ出される一方、別の非イオン界面活性剤は洗濯物や機内に残りやすい挙動を示しました。
また、洗濯排水を調べた別の研究でも、界面活性剤の一部が繊維へ吸着し、その一部がすすぎ工程で再び水側へ移ることが報告されています。このため「泡が見えなくなった=すべての洗剤成分がなくなった」と単純には判断できません。
家庭では成分ごとの残留量を測定できないため、洗剤メーカーが示す使用量と「すすぎ1回可」などの表示、洗濯機メーカーのコース指定を組み合わせて判断するのが現実的です。
すすぎを増やしたほうがよい場合はあるのか
通常は、洗剤と洗濯機が指定する標準的な条件から始めます。そのうえで、洗剤を誤って多く入れた、衣類を詰め込みすぎて十分に動かなかった、標準設定ではすすぎに不安が残るなど、通常条件から外れた場合には追加すすぎを検討する余地があります。
ただし、衣類に白いものが付着している場合でも、それが必ず洗剤残りとは限りません。溶け残った洗剤、柔軟仕上げ剤、皮脂や汚れ、水中の成分、糸くずなど複数の原因が考えられます。原因を確認せず毎回すすぎ回数だけを増やすと、水と時間を余計に使っても問題が解決しないことがあります。
また、皮膚への影響が気になる場合も、自己判断で特殊な洗い方を固定するより、まず洗剤の適量と製品表示、洗濯機の取扱説明書を確認します。症状が続く場合は洗濯方法だけに原因を限定せず、必要に応じて医療機関へ相談することが大切です。
すすぎ方法を選ぶときの考え方
| 条件 | 考え方 | 確認するもの |
|---|---|---|
| 通常の衣類・標準量 | 標準コースを基本にする | 洗濯機の取扱説明書 |
| すすぎ1回対応洗剤 | 対応コースを選べる場合がある | 洗剤表示と洗濯機の設定 |
| 洗剤を入れすぎた | 追加すすぎが必要になる場合がある | 洗剤の適量表示 |
| デリケート衣類 | すすぎ性能だけでなく機械的負担を抑える | 衣類の洗濯表示 |
| 大量・厚手の洗濯物 | 詰め込みすぎを避け、適切なコースを選ぶ | 洗濯機の容量・コース説明 |
このように、すすぎ回数だけを独立して決めるのではなく、「洗剤量」「衣類量」「水量」「脱水」「洗濯機のコース」を一組として考えることが重要です。
すすぎ回数を増やしすぎないほうがよい理由
追加すすぎは残留する洗濯液を減らす方向に働きますが、無制限に増やす必要はありません。すすぎには水と運転時間が必要で、洗濯物を動かす時間も長くなります。必要以上の処理は資源消費を増やし、衣類への機械的な作用を増やす可能性もあります。
研究では、すすぎ工程の状態をセンサーで判別し、必要なすすぎだけを行うことで水を節約する考え方も検討されています。これは、すすぎの本質が「決められた回数を必ず実行すること」ではなく、「必要な残留成分の低減を達成すること」にあることを示しています。
まとめ
洗濯のすすぎに方法や回数の違いがあるのは、洗剤成分や汚れを衣類から水側へ移して排出するために必要な条件が、洗剤、衣類量、水量、脱水、洗濯機の方式によって変わるからです。
1回すすぎは節水や時短に有利ですが、対応する洗剤とコースを使うことが前提です。2回すすぎや追加すすぎは水の交換機会を増やしますが、常に多いほどよいわけではありません。ためすすぎと注水すすぎも、水の使い方とコース設計が異なります。
家庭では、まず洗剤を適量にし、洗剤のすすぎ表示と洗濯機の取扱説明書、衣類の洗濯表示に従うことが基本です。すすぎは「泡をなくす回数」ではなく、洗濯後に残る液体を必要な範囲まで入れ替えて排出する工程だと理解すると、方法の違いを判断しやすくなります。
参考資料
- 消費者庁「合成洗剤」
- Olsson J, Ivarsson P, Winquist F. Determination of detergents in washing machine wastewater with a voltammetric electronic tongue. Talanta. 2008.
- Supervision of rinses in a washing machine by a voltammetric electronic tongue. Sensors and Actuators B: Chemical. 2005.
- The Contribution of the Type of Detergent to Domestic Laundry Graywater Composition and Its Effect on Treatment Performance. Water. 2016.

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