洗濯の脱水は、洗い終えた衣類からできるだけ水を取り除き、干したり乾燥機にかけたりする前の水分量を減らす工程です。家庭用洗濯機では、槽を高速で回転させる遠心脱水が一般的ですが、どの衣類にも同じ強さ・同じ時間をかければよいわけではありません。
脱水を強くすれば水分を減らしやすくなり、乾燥に必要な時間やエネルギーを抑えやすくなります。その一方で、衣類には回転や押し付けによる機械的な作用が加わり、しわ、型崩れ、繊維への負担などにも関係します。さらに洗濯物の偏りは洗濯機本体の振動にもつながるため、脱水は「強いほどよい」工程ではなく、水分除去と衣類保護、安定運転のバランスで決まります。
脱水では何が起きているのか
洗濯槽が高速回転すると、衣類と衣類に含まれた水は回転運動をします。穴の開いた内槽では、水が槽の外側へ移動して排出される一方、衣類は槽内に残ります。この作用によって、すすぎ後に衣類が含んでいた水分を短時間で減らせます。
脱水後にも繊維の内部や糸・布のすき間には水分が残るため、脱水だけで完全に乾くわけではありません。そこで家庭洗濯では、脱水後に自然乾燥や乾燥機による乾燥を行います。研究でも、洗濯後の残留水分量は洗濯条件を評価する指標の一つとして測定されています。
なぜ脱水の回転速度を変えるのか
高速回転は残る水分を減らしやすい
一般に最終脱水の回転速度を高めると、衣類に残る水分を減らしやすくなります。洗濯後の残留水分が少なければ、その後に加熱乾燥する場合の負担も小さくできます。洗濯・乾燥のエネルギーを扱った研究でも、洗濯機の脱水回転速度を高めることで衣類の残留水分が減り、乾燥機で必要となるエネルギーを減らせることが示されています。
ただし衣類への作用も大きくなる
高速回転では衣類が槽壁へ強く押し付けられます。丈夫なタオルや綿製品では効率よく水分を減らせる一方、形を保ちたい衣類やデリケートな素材では、強い脱水が適さない場合があります。そのため洗濯機には標準コースだけでなく、デリケート衣類などを想定したコースが設けられています。
実際にどの回転速度になるか、どの程度の時間脱水するかは機種やコースによって異なります。衣類側の洗濯表示と洗濯機の取扱説明書を優先し、数値だけで一律に判断しないことが重要です。
なぜ脱水時間を長くすればよいとは限らないのか
脱水を始めた直後は、衣類に比較的多くの水が含まれています。そのため回転によって排出できる水も多くあります。しかし脱水が進むにつれて残る水は少なくなり、さらに時間を延ばしたときに追加で除ける水分は小さくなっていきます。
一方、衣類が槽壁に押し付けられている時間は長くなります。乾きやすさを優先する衣類では長めの脱水が役立つ場合がありますが、しわや型崩れを抑えたい衣類では短めの脱水が選ばれることがあります。つまり脱水時間は、水分をできるだけ減らす目的だけでなく、脱水後の仕上がりまで含めて決める必要があります。
衣類によって適した脱水が違うのはなぜか
衣類は素材、厚さ、織り方、編み方、形状が異なり、水の含み方も機械的な力への強さも同じではありません。厚手のタオルは多くの水を含みやすいため、十分な脱水によって乾燥時間を短くしやすくなります。一方、ニットや形の崩れやすい衣類は、強い回転や長時間の押し付けによる変形を避ける必要があります。
また、シャツなどは強く長い脱水によってしわが固定されると、その後のアイロン掛けに手間がかかることがあります。洗濯機の弱脱水や短時間設定は、単に脱水性能を落とした設定ではなく、衣類の仕上がりとのバランスを取るための選択肢です。
洗濯物の偏りが脱水に影響するのはなぜか
高速回転する槽の中で洗濯物が一方向に偏ると、回転軸に対する質量のバランスが崩れます。その状態で回転速度を上げると大きな振動が生じる可能性があります。洗濯機の高速脱水に関する研究では、アンバランスを早い段階で検知して高速回転前に補正する技術が検討されています。
家庭用洗濯機が脱水の途中で回転を止めたり、衣類をほぐすような動作をしたり、脱水時間が表示より長くなったりする場合があります。機種によって制御は異なりますが、こうした動作には偏りを修正して安定した回転へ移る目的が含まれることがあります。
特に毛布や大きな衣類、少数の重い衣類などは偏りやすいため、洗濯機が指定する容量や入れ方、専用コースを守ることが重要です。
縦型とドラム式で脱水の感じ方が違うことがあるのはなぜか
洗濯機には縦軸型と横軸型があり、槽の向き、衣類の動かし方、回転制御などが異なります。脱水はいずれも高速回転を利用する方式が中心ですが、最高回転数や回転までの制御、衣類の分布のさせ方は機種ごとに違います。
そのため「縦型だから必ず弱い」「ドラム式だから必ず衣類を傷める」といった単純な区分はできません。脱水後の残留水分や衣類への作用は、方式だけでなく回転速度、時間、投入量、衣類の種類、偏り制御などの組み合わせで決まります。個別製品ではメーカーの仕様と取扱説明書を確認する必要があります。
脱水を強くすると乾燥工程にはどんな利点があるのか
脱水であらかじめ水を多く除けば、自然乾燥では干してから乾くまでの時間を短くしやすくなります。乾燥機を使う場合は、熱で蒸発させなければならない水の量が少なくなるため、乾燥工程のエネルギー削減につながる可能性があります。
近年の洗濯工程を扱う研究でも、洗濯後の残留水分を測定し、洗濯条件と環境負荷の関係を評価しています。洗濯と乾燥を一連の工程として考えると、脱水は乾燥の前処理として重要な位置を占めます。
ただし、乾燥時間を減らしたいからといって、すべての衣類で最大脱水を選ぶのが適切とは限りません。衣類の耐久性や仕上がりを含めた全体最適が必要です。
脱水による繊維への影響はどう考えればよいのか
洗濯中の繊維脱落については、洗濯方式、水量、時間、温度、遠心処理など多くの条件が影響候補として研究されています。ただし、個々の条件がどれだけ繊維脱落を増減させるかについては研究間で結果が一様ではなく、単純に「高速脱水だけが主因」とは言えません。
2024年の系統的レビューでも、繊維特性と洗濯条件の相互作用は複雑で、多くの研究では特定要因の影響を明確に示す証拠が十分ではないと指摘されています。したがって、衣類を長持ちさせる目的では脱水速度だけに注目せず、洗濯ネット、洗濯量、コース、水温、洗剤なども含めて適切な条件を選ぶ必要があります。
脱水設定を選ぶときの目安
| 衣類・目的 | 脱水の考え方 | 優先して確認するもの |
|---|---|---|
| タオル・丈夫な日常着 | 十分に水分を減らして乾燥を早める | 標準コース・衣類表示 |
| シャツなどしわを抑えたい衣類 | 必要以上に長い脱水を避ける選択肢がある | 衣類表示・機種の設定 |
| ニット・デリケート衣類 | 弱い機械作用を優先する | 洗濯表示・専用コース |
| 毛布・大物 | 偏りと容量に注意する | 洗濯機の容量・大物コース |
| 乾燥機を続けて使う衣類 | 適切な範囲で残留水分を減らす | 衣類表示・乾燥可否 |
この表は一般的な考え方です。実際には素材や縫製、装飾、洗濯機の設計によって条件が変わるため、衣類の洗濯表示とメーカー指定が優先されます。
まとめ
洗濯で脱水の強さや時間を使い分けるのは、水分を減らす効率と、衣類のしわ・型崩れなどへの機械的作用、さらに洗濯機の安定運転を両立させるためです。高速・長時間の脱水は残留水分を減らしやすく、その後の乾燥負担を小さくできますが、すべての衣類に最大条件が適するわけではありません。
また、洗濯物が偏った状態で高速回転すると振動が大きくなるため、洗濯機は回転速度や衣類の分布を制御しながら脱水します。脱水は単独の工程ではなく、すすぎ後の水分を除き、次の乾燥工程へつなぐ役割を担っています。
家庭では、丈夫な衣類かデリケートな衣類か、乾燥を早めたいか仕上がりを優先したいかを考え、衣類の洗濯表示と洗濯機のコース指定に従って脱水条件を選ぶことが基本です。
参考資料
- A Capacitive Displacement Sensing Technique for Early Detection of Unbalanced Loads in a Washing Machine. Sensors. 2009.
- Stability analyses of a vertical axis automatic washing machine without balancer. Journal of Sound and Vibration.
- Emission of fibres from textiles: A critical and systematic review of mechanisms of release during machine washing. Science of The Total Environment. 2024.
- Optimizing Laundry for Sustainability: Balancing Washing Efficiency and Environmental Impact in the Clothing Use Phase. Sustainability. 2025.

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