なぜ照明の配光はレンズや反射板で光を必要な方向へ振り分けられるのか?

照明器具から出る光は、すべての方向へ同じ強さで広がっているわけではありません。真下へ強く光を集める器具もあれば、壁や天井まで広く照らす器具、特定の対象だけを狙うスポットライトもあります。

こうした光の方向ごとの広がり方を配光といいます。配光は、LEDやランプが生み出した光を、レンズ、反射板、拡散カバーなどで曲げたり反射させたり散らしたりしてつくられます。

配光の仕組みを知ると、なぜ同じルーメンでも照らされ方が違うのか、なぜスポットライトにはビーム角があるのか、照明設計で配光曲線やIESデータが使われる理由が理解しやすくなります。

目次

配光は「方向ごとの光の強さ」を表す

照明器具の光を考えるとき、全体としてどれだけ光が出ているかを表すのが光束です。一方、ある方向へどれだけ強く光が出ているかを表す量が光度です。

配光は、この光度が角度によってどのように変化するかを示したものです。

たとえば、器具の真下方向では光度が高く、斜め方向では低い器具があります。逆に、横方向にも多くの光を出す器具では、広い角度にわたって光度が分布します。

そのため、配光を見ると「光が多いか少ないか」だけではなく、「どの方向へ光を送りやすい器具なのか」が分かります。

LED素子だけでは目的の配光にならないことがある

LEDは小さな発光面から光を出しますが、そのままでは必ずしも照明用途に適した広がり方になるとは限りません。

机の上だけを照らしたい場合、広い空間へ均一に光を出したい場合、壁面をなめるように照らしたい場合では、必要な配光が違います。

そこで照明器具では、LED素子の前後に光学部品を配置し、光の方向を整えます。配光は「光源そのものの特徴」と「器具の光学設計」が組み合わさって決まります。

レンズは屈折を使って光の方向を変える

透明なレンズへ光が入ると、空気とレンズ材料の境界で光の進む方向が変わります。この現象が屈折です。

LED照明では、レンズの曲面や形状を調整することで、広がる光を狭い方向へ集めたり、逆に一定の範囲へ広げたりできます。

スポットライトでは狭いビームをつくるために集光性の高い光学系が使われます。広い範囲を均一に照らしたい器具では、光を広げるレンズや複数の光学面を組み合わせます。

米国エネルギー省も、LED照明では光学部品によってビーム形状を制御し、必要な場所へ光を分布させる技術が重要だとしています。

反射板は反射によって光の向きをそろえる

照明器具には、光を反射する金属面や樹脂面を使った反射板が組み込まれることがあります。

光源から横や後方へ出た光を反射板で前方へ戻すことで、必要な方向へ光を集められます。

反射面の角度や曲率を変えると、光が集中する方向や広がり方も変わります。深い反射板では比較的狭い範囲へ光をまとめやすく、浅い反射板では広い方向へ配りやすくなります。

配光は光源の出力を増やさなくても、光をどこへ向けるかによって大きく変えられます。

拡散カバーは光を多方向へ散らす

シーリングライトや一部のLED電球では、乳白色のカバーが使われています。

こうしたカバーには、入ってきた光を一方向へそのまま通すのではなく、多方向へ散乱させる働きがあります。

拡散によって光源の小さな発光点が目立ちにくくなり、広い面が光っているように見せやすくなります。また、狭い方向へ集中していた光を広げ、空間へ柔らかく配ることもできます。

一方、光を散らすほど特定方向の光度は下がりやすいため、「広く均一にすること」と「特定方向へ強く送ること」は両立しにくい場合があります。

配光は複数の光学部品を組み合わせてつくられる

実際の照明器具では、レンズだけ、反射板だけで配光を決めるとは限りません。

LED素子の一次レンズ、器具側の二次レンズ、反射板、拡散板、プリズム、ルーバーなどを組み合わせて、狙った配光へ近づけます。

たとえば、光を広げながら正面のまぶしさを抑える、床面を均一に照らしながら壁側にも光を送るといった設計では、複数の光学作用を使い分けます。

配光は一つの部品の機能ではなく、器具全体の光学設計の結果です。

ビーム角は光の広がりを表す代表的な指標

スポットライトなどでは、配光の広がりを分かりやすく表すためにビーム角が使われます。

Illuminating Engineering Societyは、ビーム角を、中心付近の最大光度に対して光度が50%になる2方向の間の角度として定義しています。

ビーム角が小さいほど光を狭い範囲へ集中させやすく、同じ距離なら照らされる範囲も小さくなります。ビーム角が大きいほど広い範囲へ光が届きます。

ただし、ビーム角だけでは配光全体を完全には表せません。中心以外の光の減り方や左右非対称の配光などを見るには、配光曲線や詳細な測光データが必要です。

配光曲線は角度ごとの光度を図にしたもの

配光を詳しく見るときに使われるのが配光曲線です。

IESは、配光曲線を、光中心を通る面の中で光度が角度によってどう変化するかを示す曲線として定義しています。

極座標のような図で表されることが多く、真下方向へ大きく伸びるなら下向きに強い配光、横方向へ広がっていれば広配光であることが分かります。

器具が左右対称でない場合は、一つの断面だけでなく、複数の方向について配光を確認します。

配光は測定して数値化される

配光は見た目だけで決めるのではなく、測光装置を使って角度ごとの光度を測定します。

照明学会のLEDモジュール測光研究では、光源の角度を変えながら照度・光度・配光・全光束を測定するシステムが開発され、広い角度範囲の配光を測る方法が示されています。

こうした測定によって、器具がどの方向へどれだけ光を出しているかを数値化できます。

配光データは製品比較だけでなく、室内や道路の照度分布を計算するときにも使われます。

IESファイルは配光をコンピューターで扱うためのデータ

照明設計では、配光をコンピューターへ読み込むためにIES形式の測光データが広く使われます。

IESによると、IESファイルには器具情報とともに、角度ごとの光度分布などの測光データが記録されています。

照明シミュレーションソフトは、このデータと器具位置、高さ、向き、室内形状などを組み合わせて、床や机、壁面へどの程度の光が届くかを計算します。

一般家庭でIESファイルを直接扱う必要はありませんが、設計者が「器具を何台、どこへ、どの向きで置くか」を決める重要な基礎データになります。

同じ光束でも配光が違えば照度分布は変わる

配光の役割が重要なのは、光束が同じでも、光を送る方向によって照度分布が変わるからです。

照明学会の室内照度分布シミュレーション研究でも、器具の配光特性が変わると、室内の観測面に生じる照度分布が変化することが検討されています。

狭い配光では中心部の照度を高くしやすい一方、周辺は暗くなりやすくなります。広い配光では一か所のピークは低くても、より広い範囲を照らせます。

そのため、必要な照度をつくるには、ルーメンだけでなく配光を合わせて選ぶ必要があります。

器具の高さを変えると配光の届き方も変わる

同じ配光の器具でも、取り付け高さが変われば照らされる範囲は変わります。

低い位置に置くと狭い範囲へ強く光が届きやすく、高い位置へ上げると光は広い範囲へ広がります。その一方で、面へ届く照度は低くなりやすくなります。

このため、照明設計では配光と器具高さをセットで考えます。ビーム角だけを見ても、実際の照射範囲は設置距離によって変わります。

非対称配光は必要な側へ光を多く送る

すべての器具が中心軸のまわりへ均等に光を出すわけではありません。

道路照明、壁面照明、棚下照明などでは、必要な方向へ多くの光を送り、不要な方向を抑える非対称配光が使われます。

たとえば壁際の器具から壁面へ広く光を送りたい場合、室内側と壁側へ同じ量を出すより、壁側へ配光を偏らせる方が効率的です。

配光は単なる「狭い・広い」だけでなく、「どの方向へ偏らせるか」という設計にも使われます。

配光の役割は必要な場所へ光を届けること

照明器具の光束を増やせば、全体として出る光は増えます。しかし、必要でない方向へ多くの光が逃げれば、目的の場所を効率よく照らせません。

配光を整えると、同じ光束でも作業面、商品、壁、道路など必要な場所へ光を振り分けやすくなります。

米国エネルギー省も、LED用光学系でビーム分布を制御することは、光を必要な場所へ効率よく適用し、省エネルギーやまぶしさ低減につなげるうえで重要だとしています。

配光の役割は、光を増やすことではなく、限られた光をどこで使うかを決めることです。

配光を見るときの5つの基本

  • 光度分布を見る:方向ごとに光の強さがどう変わるか確認する。
  • ビーム角を見る:中心光がどの程度の角度へ広がるか把握する。
  • 光学部品を見る:レンズ、反射板、拡散カバーなどが光をどう成形しているか考える。
  • 器具高さを見る:同じ配光でも設置距離で照射範囲と照度が変わる。
  • 用途を見る:作業面、壁面、展示物、通路など、どこへ光を届けたいか決める。

この5点を分けて考えると、配光を「光が広いか狭いか」という感覚だけでなく、器具が光を方向別に制御する仕組みとして理解できます。

まとめ:配光は光学部品で方向別の光度を設計する仕組み

照明の配光は、LEDやランプが出した光を、レンズの屈折、反射板の反射、拡散カバーの散乱などで成形し、方向ごとの光度分布をつくることで成り立ちます。

その結果はビーム角や配光曲線として表され、さらにIESファイルなどの測光データとして照明シミュレーションにも利用されます。同じ光束でも配光が違えば、床や机、壁へ届く光の割合と照度分布は変わります。

つまり配光の役割は、光源が生み出した光を必要な場所へ適切に振り分けることです。仕組みを理解すると、ルーメンだけでは分からない照明器具の違いを読み取り、用途に合った光の広がり方を選びやすくなります。

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