照明を見ていると、明るさが細かく揺れて見えたり、スマートフォンのカメラに横縞が映ったりすることがあります。これが一般に「ちらつき」や「フリッカー」と呼ばれる現象です。
同じLED照明でもほとんどちらつかない製品がある一方、調光すると急にちらつきが目立つ場合があります。また、古い蛍光灯ではちらつきを感じやすいことがあり、白熱電球では比較的目立ちにくい傾向があります。
なぜ照明のちらつきは、光源や電源回路・調光方式で違うのでしょうか。結論からいうと、照明の明るさは電流の変化に応じて時間的に変動し、その変動を光源自身がどれだけならすか、電源回路がどれだけ安定した電流を供給するか、調光時にどのような波形を作るかによって、ちらつきの大きさや見え方が変わるからです。
ちらつきとは、光の明るさが時間とともに変動すること
照明のちらつきは、光出力が時間とともに周期的または不規則に変わる現象です。米国エネルギー省は、こうした光出力の時間変化を「Temporal Light Modulation(時間的な光変調)」として説明しています。
明るさの変化がゆっくりなら、目で「明るい・暗い」が繰り返されていると分かります。一方、変化が速くなると、静止した照明を見ただけでは気づきにくくても、手や物を動かしたときに像が分かれて見えるストロボスコープ効果などとして現れることがあります。
つまり、ちらつきは「目で点滅が見えるかどうか」だけでは判断できません。光がどの周波数で、どの程度の深さまで明暗を繰り返しているかが重要です。
家庭の交流電源そのものが、明るさ変動のきっかけになる
家庭の電源は交流なので、電圧と電流は一定ではなく周期的に変化します。日本では地域によって50Hzまたは60Hzの交流が使われています。
照明がこの変化をそのまま光へ反映すると、光出力も周期的に増減します。整流回路を通した照明では、100Hzや120Hz付近の変動として現れることもあります。
ただし、同じ交流電源につないでも、すべての光源が同じようにちらつくわけではありません。光源の発光原理や、内部の電源回路が変動をどれだけ平滑化できるかによって違いが生じます。
白熱電球はフィラメントの熱が変動をならしやすい
白熱電球は、フィラメントを非常に高い温度まで熱して光を出します。交流電流が周期的に変化しても、フィラメントの温度は瞬間的には大きく下がりません。
つまり、電流が小さくなる瞬間があっても、熱として蓄えられたエネルギーが残るため、光がすぐに消えるわけではありません。この熱的な慣性が、明るさの変動をある程度ならす働きをします。
米国DOEも、白熱電球ではフィラメントが高温を保つため、交流電源による変動があっても光出力の変化が比較的小さくなりやすいと説明しています。
そのため、白熱電球にも光出力の変動はありますが、LEDのように電流変化へ素早く反応する光源より、ちらつきが目立ちにくい場合があります。
蛍光灯は安定器の方式によってちらつき方が変わる
蛍光灯は、管内の放電で紫外線を発生させ、蛍光体を発光させる仕組みです。従来の磁気式安定器を使う蛍光灯では、商用電源の周期に応じて光出力が変化しやすく、ちらつきが目立つことがあります。
一方、電子式安定器では、商用電源よりはるかに高い周波数で蛍光灯を点灯させることができます。周波数を高くすると、目で感じる明暗変化を小さくしやすくなります。
同じ「蛍光灯」でもちらつきに差があるのは、ランプだけでなく、どの方式の安定器で駆動しているかが関係するためです。
LEDは電流の変化を光へすばやく反映する
LEDは半導体へ電流を流すことで発光します。白熱電球のフィラメントのように、高温の物体が余熱で光り続ける仕組みではありません。
このため、LEDへ流れる電流が変わると、光出力も非常に速く変化します。米国DOEは、LEDは電流変化への応答が速いため、ドライバーから供給される電流波形が光出力へ反映されやすいと説明しています。
ここで重要になるのが、LEDの前にある「ドライバー」と呼ばれる電源回路です。家庭の交流電源をLEDに適した電圧・電流へ変換し、できるだけ安定した電流を供給できれば、光出力の変動を小さくできます。
反対に、回路が簡略化されていたり、電流の平滑化が不十分だったりすると、LEDそのものが高速に反応するため、光出力が大きく上下する場合があります。
同じLEDでも製品によってちらつきが違う理由
LEDという光源方式が同じでも、電源回路の設計、コンデンサーなどの部品、制御方式は製品によって異なります。そのため、同じ明るさや同じ消費電力のLEDでも、光出力波形は同じとは限りません。
日本照明工業会のLED照明製品の試買調査でも、一部製品で光出力波形に大きな欠落があり、電気用品安全法のちらつき要求に適合しない例が確認されています。
経済産業省の電気用品安全法に関する資料では、一般照明用LEDについて、光出力が人にちらつきを感じさせないことを求める考え方が示されています。
つまり、LEDだから必ずちらつくわけでも、LEDだから必ずちらつかないわけでもありません。実際の差を生む大きな要因は、LEDを駆動する電源回路の設計です。
調光すると、ちらつきが増える場合がある
照明を暗くする調光機能も、ちらつきに影響します。LEDの調光には、流す電流の大きさを変える方法のほか、高速で点灯と消灯を繰り返し、その点灯時間の割合を変えるPWM制御などがあります。
PWMでは、十分に高い周波数で適切に制御されていれば、通常の使用では明るさが滑らかに変わって見えます。しかし、周波数が低かったり、明暗の差が大きかったりすると、ちらつきやストロボスコープ効果が現れやすくなります。
また、壁に取り付けた位相制御式の調光器とLED電球のドライバーがうまく適合していない場合、明るさが不安定になったり、特定の調光位置だけでちらついたりすることがあります。
したがって、調光対応LEDを使う場合は、ランプや照明器具だけでなく、調光器との適合情報も確認する必要があります。
「何Hzなら大丈夫」と周波数だけで決められない
ちらつきの感じやすさは、周波数だけで決まるわけではありません。光が最大から最小までどれほど大きく変化するか、変化の波形がどのような形か、視線や物体が動いているかなども関係します。
DOEは、目で直接点滅として見えない周波数でも、動く物体を照らしたときにはストロボスコープ効果として知覚される場合があると説明しています。そのため、単に「高速だから問題ない」とは言い切れません。
現在の照明評価では、時間的な光変動について、周波数だけでなく変調の深さや波形も含めて考える方法が使われます。
スマートフォンのカメラでは、肉眼で見えないちらつきが映ることがある
照明を肉眼で見ても問題を感じないのに、スマートフォンで撮影すると画面に横縞や明暗の帯が出ることがあります。
これは、照明の明るさ変動と、カメラが画像を読み取るタイミングが重なるためです。多くのデジタルカメラでは、画面全体を完全に同時に記録するのではなく、行ごとに少しずつ読み取る方式が使われています。
そのため、読み取り中に照明の明るさが変化すると、明るい行と暗い行が交互に記録され、縞模様として見えることがあります。
カメラで縞が見えるからといって、必ず肉眼で強いちらつきを感じるとは限りません。反対に、撮影条件によっては実際の光変動が画面に現れにくいこともあります。カメラ映像は参考になりますが、ちらつきの正式な測定そのものではありません。
用途によって、ちらつきへの配慮の重点が変わる
住宅の居間や寝室では、長時間過ごしても不快に感じにくい安定した照明が求められます。オフィスや学校では、読書やパソコン作業、手元作業を長時間行うため、時間的な光変動が小さい照明が重要です。
工場などで回転体を扱う場所では、ストロボスコープ効果によって回転物が止まっているように見えたり、実際とは違う速度に見えたりする可能性にも注意が必要です。
動画撮影や写真撮影では、人の目よりもカメラのシャッター速度や読み出し方式との相性が問題になるため、撮影用照明では高周波化やフリッカーフリー設計が特に重視されます。
つまり、ちらつきへの対策は「見えるか・見えないか」だけではなく、照明をどこで何のために使うかによって重要度が変わります。
ちらつきが気になるときに確認したいポイント
- 特定の照明だけで起こるか、複数の照明で起こるか
- 明るさを最大にしたときと調光したときで差があるか
- LEDランプと調光器の組み合わせがメーカー指定に適合しているか
- 古い蛍光灯では安定器の方式や劣化が関係していないか
- カメラだけで縞が見えるのか、肉眼でも明暗変化を感じるのか
- 回転体や動画撮影など、ちらつきの影響を受けやすい用途ではないか
突然ちらつきが始まった場合は、ランプだけでなく、照明器具の電源回路、調光器、接続状態などの不具合も考えられます。異常な発熱、焦げたにおい、点灯不良などを伴う場合は使用を続けず、器具の取扱説明書やメーカーの案内に従って確認することが重要です。
まとめ
照明のちらつきに方法や用途による違いがあるのは、光源が電流変化へ反応する速さと、電源回路や調光回路が作る電流波形が異なるからです。
白熱電球ではフィラメントの熱が変動をならしやすく、蛍光灯では安定器の方式が影響します。LEDは電流変化へ非常に速く反応するため、ドライバーの設計や調光方式によって、ちらつきの少ない照明にも、大きな光変動を持つ照明にもなり得ます。
また、ちらつきは周波数だけではなく、光の変動幅、波形、調光条件、視線や物体の動き、カメラ撮影などによって見え方が変わります。照明を選ぶときは、明るさや消費電力だけでなく、使用場所に応じた光の安定性も確認することが大切です。
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参考資料
- 経済産業省「電気用品安全法の概要」
- 一般社団法人日本照明工業会「2018年度LED照明製品試買調査報告」
- U.S. Department of Energy「Flicker Basics」
- U.S. Department of Energy「Flicker Research」

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