照明は、いつでも最大の明るさで使う必要があるとは限りません。読書や料理では手元をしっかり明るくしたい一方、テレビを見るときや就寝前には、少し落ち着いた明るさの方が過ごしやすいことがあります。
なぜ照明の調光は、生活シーンに合う明るさと省エネを両立しやすくするのでしょうか。結論からいうと、調光によって「必要なときに必要な明るさ」へ光出力を下げられるため、見やすさや雰囲気を保ちながら、必要以上の電力を使う時間を減らせるからです。
調光は「暗くする機能」ではなく、必要な明るさへ合わせる機能
調光というと、単に照明を暗くする機能のように見えます。しかし本質は、用途や時間帯に応じて光量を調整することです。
たとえば掃除や細かな作業では明るめにし、夕食後のくつろぎ時間には少し落とす、といった使い分けができます。
日本照明工業会も、生活シーンに応じて必要な照明を必要な明るさで使う「適時適照」の考え方を紹介しています。
生活シーンによって、必要な明るさは変わる
同じ部屋でも、読書、会話、食事、映画鑑賞、就寝前では、求める明るさは同じではありません。
読書では文字を見分けるために手元の明るさが必要ですが、映画を見るときに部屋全体を最大照度にすると、画面が見づらく感じることがあります。
調光機能があれば、部屋そのものを変えなくても、活動に合わせて光環境を調整できます。
必要以上の明るさを下げれば、消費電力を抑えやすい
調光対応LEDでは、光出力を下げると一般に消費電力も下がります。
環境省のZEBに関する資料でも、照度センサーや調光制御を使い、必要な照度を確保しながら照明エネルギーを削減する方法が紹介されています。
ただし、明るさを50%にしたとき、消費電力が必ず50%になるとは限りません。LEDドライバーや制御回路の特性によって、電力の減り方は製品ごとに異なります。
昼間は、窓からの自然光に合わせて照明を弱められる
窓際では、晴れた昼間に自然光だけで十分な明るさを得られることがあります。
明るさセンサーと調光を組み合わせれば、外が明るいときは人工照明を弱め、曇ったり夕方になったりしたら自動で出力を上げられます。
このような昼光連動調光は、必要な明るさを保ちながら人工照明の出力を下げるため、省エネにつながります。
部屋全体を一律に暗くする必要はない
省エネのために部屋全体を暗くすると、必要な場所まで見づらくなることがあります。
そこで、天井照明を少し調光し、読書や作業をする机だけタスク照明で補う方法があります。
米国エネルギー省は、タスクチューニングや局所照明を使い、必要な場所の光を確保しながら全体の照明負荷を下げる考え方を、省エネ手法の一つとして挙げています。
夜は光量を下げることで、落ち着いた環境を作りやすい
夜まで昼間と同じ明るさで過ごす必要はありません。
就寝前には、必要以上に強い光を避け、足元や手元に必要な明るさだけを残すと、視覚的に落ち着いた環境を作りやすくなります。
ただし、夜の快適さは調光だけで決まるわけではありません。色温度、光の向き、まぶしさなども関係します。
調光と調色を組み合わせると、用途への適応範囲が広がる
最近のLED照明には、明るさだけでなく色温度も変えられる製品があります。
調光と調色を組み合わせれば、昼間は明るく白っぽい光、夜は少し暗く暖かい光というように、生活シーンへ合わせた光環境を作れます。
米国DOEも、LEDの色可変照明では、明るさと色温度を別々または連動して制御できる製品があると説明しています。
人感センサーと組み合わせると「必要なときだけ明るく」できる
廊下や玄関では、人が通るときだけ100%点灯し、普段は消灯または低い出力にする方法があります。
人感センサーと調光を組み合わせれば、無人時は完全消灯ではなく、10~20%程度の常夜灯状態にしておき、人を検知したときだけ明るくすることもできます。
この方法なら、安全のため最低限の光を残しながら、常時100%点灯するより電力量を抑えられます。
オフィスでは「必要以上に明るい状態」を補正できる
オフィスでは、設計時に余裕を持って明るさを確保していることがあります。その結果、新品の照明では必要以上に明るくなる場合があります。
こうしたとき、タスクチューニングで必要な照度まで出力を下げれば、見やすさを保ちながら消費電力を減らせます。
DOEは、タスクチューニングを照明制御によるエネルギー削減手法の一つとして紹介しています。
調光は「快適さ」と「省エネ」を同時に調整できる
照明の省エネでは、単純に消灯すれば電力を最も減らせます。しかし、人がいる場所で完全に消灯すれば、見づらさや不便さが生まれることがあります。
調光なら、消灯と100%点灯の間を細かく調整できます。
そのため、必要な見やすさを維持しながら、余分な光だけを減らすというバランスを取りやすくなります。
ただし、暗くしすぎれば作業性は下がる
省エネになるからといって、必要な照度まで下回るほど暗くするのは適切ではありません。
細かな作業、階段、調理、読書などでは、見やすさや安全性を確保する必要があります。
調光は「低いほどよい」のではなく、その場所で必要な明るさへ合わせることが重要です。
利用者が自分で調整できると、好みの違いにも対応しやすい
快適に感じる明るさには個人差があります。
同じ部屋でも、明るい方を好む人と、少し落とした方が落ち着く人がいます。また、年齢や作業内容によっても必要な明るさは変わります。
調光機能があれば、固定された一つの明るさだけでなく、利用者自身が調整できます。これも快適さを高めやすい理由の一つです。
段階調光でも十分な効果を得られることがある
すべての場所で0~100%の連続調光が必要とは限りません。
100%・70%・30%のような段階調光でも、生活シーンや在室状況に合わせて使い分ければ、十分な省エネ効果を得られる場合があります。
シンプルな操作の方が利用者にとって使いやすいこともあるため、調光方式は用途に合わせて選びます。
自動調光は、利用者が操作しなくても無駄を減らしやすい
手動調光は好みに合わせやすい一方、利用者が操作しなければ常に同じ明るさのままです。
明るさセンサー、人感センサー、タイマーなどと組み合わせた自動調光なら、昼光や在室状況に合わせて照明を自動で変えられます。
環境省やDOEも、センサーと調光を組み合わせることで、必要な照度を確保しながら照明エネルギーを減らす方法を紹介しています。
調光で確認したいポイント
- その場所で必要な明るさを満たしているか
- 昼光がある時間に出力を下げられないか
- 無人時に減光・消灯できないか
- 読書や作業では手元照明と組み合わせられないか
- 夜間は必要以上に明るくなっていないか
- 利用者が操作しやすい調光方法か
- LED照明と調光器の組み合わせが適合しているか
まとめ
照明の調光が生活シーンに合う明るさと省エネを両立しやすくするのは、必要なときに必要な光量へ出力を調整できるからです。
読書や作業では十分な明るさを確保し、くつろぎ時や夜間には出力を下げる。昼光がある時間は人工照明を弱め、無人時は減光・消灯する。こうした使い方によって、見やすさや雰囲気を保ちながら、必要以上の電力を減らせます。
大切なのは、単に暗くすることではありません。調光を使って「その場面に必要な明るさへ合わせる」ことで、快適さと省エネの両方を実現しやすくなります。
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参考資料
- 一般社団法人日本照明工業会「LED照明なら調光・調色も可能です」
- 一般社団法人日本照明工業会「基礎編 住宅照明設計のポイント」
- 環境省「ZEBを実現するための技術」
- U.S. Department of Energy「Optimization of Lighting Systems」
- U.S. Department of Energy「Understanding LED Color-Tunable Products」

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