なぜ岩石をつくる鉱物の種類は温度・圧力・化学組成で決まるのか?

結論からいうと、岩石をつくる鉱物は、特定の元素が一定の化学組成で結びつき、原子が規則正しく並んだ結晶構造をつくることで成り立っています。そして、どの鉱物が岩石の中にできるかは、材料となる元素の種類だけでなく、温度・圧力・水や流体の有無など、その岩石が置かれた地質環境によって決まります。

岩石は一枚岩のように見えても、顕微鏡で見ると石英、長石、雲母、輝石、角閃石、かんらん石、方解石など、複数の鉱物の粒が組み合わさっていることがよくあります。つまり、鉱物は岩石を形づくる基本的な「部品」であり、その種類・量・結晶の大きさ・並び方によって岩石の色、硬さ、密度、割れ方なども変わります。

目次

そもそも鉱物とは何か

産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)の地質標本館は、鉱物を、自然界で生成し、化学式で表せる化学組成をもち、原子や分子が三次元的に規則正しく配列した結晶として説明しています。例外はありますが、この「化学組成」と「結晶構造」が鉱物を理解する基本です。

USGS(米国地質調査所)も、鉱物を、自然に産する無機の元素または化合物で、規則的な内部構造と特徴的な化学組成、結晶形、物理的性質をもつものと定義しています。一方、岩石は一つ以上の鉱物、または鉱物として区別できない物質の集合体です。

つまり、鉱物は一定の構造をもつ物質の単位で、岩石はそれらが集まった天然の集合体と考えるとわかりやすいでしょう。

鉱物は「元素」と「原子の並び方」で決まる

鉱物を成り立たせる最も小さな材料は元素です。地球の岩石には、酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの元素が多く含まれています。

これらの元素が化学結合し、規則的な配置をつくると結晶になります。たとえば石英は主に二酸化ケイ素(SiO2)からできています。長石の仲間はケイ素やアルミニウム、酸素を基本に、カリウム、ナトリウム、カルシウムなどを含みます。

ただし、鉱物は「どの元素を含むか」だけで決まるわけではありません。原子がどのようにつながり、三次元的にどのように並んでいるかという結晶構造も重要です。

日本結晶学会誌に掲載された鉱物記載の解説でも、鉱物種は化学組成と結晶学的性質によって定義され、結晶構造が鉱物を記載するうえで基本的な情報になるとされています。

結晶構造とは何か

結晶構造とは、鉱物の内部で原子やイオンが一定の規則に従って繰り返し並んでいる構造です。外から見ると不規則な石の粒に見えても、内部では非常に規則的な原子配列をもっています。

GSJは、結晶を原子や分子が三次元的に規則正しく配列したものと説明しています。この規則性があるため、条件がよければ鉱物は平らな結晶面や一定の角度をもつ幾何学的な形に成長します。

結晶構造は、硬さ、割れ方、密度、光の通し方などの物理的性質にも影響します。たとえば雲母が薄い板状にはがれやすいのは、原子が層状に結びついた構造をもつことと関係しています。

岩石の中では、なぜいろいろな鉱物が一緒に存在するのか

岩石には、同じ鉱物だけでなく複数の鉱物が共存することがよくあります。それは、岩石をつくる材料に複数の元素が含まれ、ある温度・圧力・化学環境のもとで、それぞれ安定な鉱物へ分かれて結晶化するからです。

たとえば花こう岩には、石英、長石、黒雲母などが含まれます。これらは同じマグマから生じても、化学組成や結晶構造が異なる別々の鉱物です。マグマが冷えていく過程で、条件に応じてそれぞれの鉱物が結晶化し、一つの岩石として組み合わさります。

そのため、岩石を調べるときは「どんな鉱物があるか」だけでなく、「それぞれがどのくらい含まれるか」「どのような大きさや形で接しているか」も重要な情報になります。

火成岩では、マグマから鉱物が結晶化する

火成岩の鉱物は、主にマグマや溶岩が冷える過程で結晶化します。

高温のマグマは液体ですが、温度が下がるにつれて、その条件で安定な鉱物の結晶が少しずつでき始めます。すべての鉱物が同時にできるわけではなく、温度やマグマの化学組成に応じて晶出する鉱物が変わります。

たとえば、鉄やマグネシウムを多く含むマグマでは、かんらん石や輝石などが重要な造岩鉱物になります。一方、ケイ酸に富むマグマでは、長石や石英などが多くなる傾向があります。

また、冷却速度は鉱物の大きさにも関係します。地下深くでゆっくり冷えれば結晶が成長する時間が長くなり、花こう岩のように鉱物粒が肉眼で見える岩石ができます。地表で急速に冷えれば、玄武岩のように細かな結晶が多い岩石や、結晶化する時間が足りず火山ガラスを含む岩石になります。

堆積岩では、鉱物が運ばれたり新しくできたりする

堆積岩の鉱物は、火成岩とは異なる経路で集まります。

まず、地表にある岩石が風化すると、鉱物粒が岩石から分離します。石英のように比較的風化に強い鉱物は砂粒として残り、川や風によって運ばれ、堆積します。その砂が固まれば砂岩になります。

一方、長石など一部の鉱物は水との化学反応によって変質し、粘土鉱物へ変わることがあります。つまり堆積岩では、もとの岩石から受け継いだ鉱物だけでなく、風化や続成作用によって新しく生じた鉱物も含まれます。

さらに、地下水に溶けていた成分が粒子の間に沈殿し、石英や方解石などのセメント鉱物として粒子を結びつける場合もあります。堆積岩の鉱物組成は、もとの岩石、運搬、風化、堆積後の地下水反応などの履歴を反映しています。

変成岩では、温度と圧力に応じて鉱物が組み替わる

変成岩では、既存の岩石に含まれていた鉱物が、高温・高圧の条件に置かれることで反応し、新しい鉱物へ変わります。

GSJは、変成岩には変成作用によって新たに晶出した鉱物がしばしば含まれ、どの鉱物が生成するかは温度・圧力条件と関係すると説明しています。そのため、変成岩に含まれる鉱物の組み合わせを調べると、その岩石が過去に経験した温度や圧力を推定できます。

たとえば泥質の岩石が変成作用を受けると、条件に応じて黒雲母、ざくろ石などの変成鉱物ができる場合があります。石灰岩では方解石が再結晶して大理石になり、砂岩では石英が再結晶して石英岩になることがあります。

つまり、変成岩の鉱物は、地下環境に合わせて原子が移動し、より安定な鉱物の組み合わせへ再編成された結果です。

温度・圧力が変わるとなぜ鉱物も変わるのか

鉱物には、それぞれ安定して存在しやすい温度・圧力の範囲があります。

地表では安定していた鉱物でも、地下深くへ運ばれて高温・高圧になると、その条件では不安定になることがあります。すると、原子が組み替わり、別の結晶構造をもつ鉱物へ変化します。

逆に、地下深くでできた鉱物が地表に現れると、水や酸素と反応して別の鉱物へ変化することがあります。鉱物は永久に同じ状態を保つものではなく、周囲の環境に応じて生成・変化・分解を繰り返します。

この性質を利用すると、鉱物は「その岩石が経験した環境の記録」として使えます。

水や熱水も鉱物をつくる重要な役割をもつ

鉱物は、マグマが冷えるときだけにできるわけではありません。地下を移動する水や熱水から鉱物が沈殿することもあります。

高温の地下水には、さまざまな元素が溶け込むことがあります。その水が岩石の割れ目を移動し、温度や圧力、化学状態が変わると、溶けていた成分が結晶として析出します。

石英脈や一部の鉱床は、このような熱水作用と深く関係しています。また、熱水が既存の岩石と反応すると、もとの鉱物が分解し、新しい鉱物ができる「熱水変質」が起こります。

このように、岩石中の鉱物は、その場で最初から固定されているのではなく、地球内部の水や熱の移動によっても変化します。

同じ名前の鉱物でも、化学組成に幅があることがある

鉱物は化学組成をもつ物質ですが、天然の鉱物では組成が完全に一つの数値に固定されるとは限りません。

結晶構造を大きく変えずに、似た大きさや電荷をもつ元素が互いに置き換わることがあります。たとえば、かんらん石ではマグネシウムと鉄が置き換わりながら連続的に組成が変化します。

J-STAGEに掲載された鉱物学の研究でも、鉱物の結晶構造の中で陽イオンが置換し、その違いによって構造や性質が変化することが詳しく研究されています。

このため、鉱物は単純な「一つの化学式の粒」としてだけでなく、一定の結晶構造を保ちながら組成に幅をもつ天然物質として理解する必要があります。

鉱物の組み合わせから岩石のでき方がわかる

岩石中の鉱物は、その岩石ができた環境を読み解く重要な手がかりです。

花こう岩に石英や長石が多ければ、珪長質なマグマがゆっくり冷えたことを示します。玄武岩に輝石やかんらん石が含まれていれば、鉄・マグネシウムに比較的富むマグマとの関係がわかります。

変成岩では、ざくろ石や角閃石など特定の鉱物の組み合わせから、変成時の温度・圧力条件を推定できます。堆積岩では、石英粒の丸みや粘土鉱物、セメント鉱物などから、風化・運搬・堆積・続成の履歴を考えられます。

つまり鉱物は、岩石をつくる材料であるだけでなく、岩石がたどってきた地質学的な履歴を保存する記録媒体でもあります。

鉱物と岩石を同じものと考えてはいけない

身近な会話では「石」と「鉱物」が同じように使われることがありますが、地質学では区別します。

石英は鉱物ですが、花こう岩は岩石です。方解石は鉱物ですが、石灰岩は岩石です。花こう岩には複数の鉱物が含まれ、石灰岩も方解石を主体としながら不純物や別の鉱物を含むことがあります。

さらに、黒曜石のような火山ガラスを多く含む岩石では、すべてが結晶質の鉱物でできているわけではありません。したがって「岩石は必ず複数の鉱物だけでできている」と言い切るのも正確ではありません。

基本的には、鉱物は一定の化学組成と結晶構造をもつ物質、岩石はそれらを含む天然の集合体、と区別すると理解しやすくなります。

まとめ

岩石をつくる鉱物は、元素が化学結合し、原子が規則的な結晶構造をつくることで成り立っています。どの鉱物ができるかは、材料となる元素の種類だけでなく、温度、圧力、水や熱水の存在、岩石がたどった地質作用によって変わります。

火成岩ではマグマから鉱物が結晶化し、堆積岩では既存の鉱物が運ばれたり風化・続成作用で新しい鉱物ができたりします。変成岩では、高温・高圧条件に応じて鉱物が再結晶し、新しい組み合わせへ変化します。

つまり鉱物は、岩石を構成する基本単位であると同時に、岩石がどのような環境で生まれ、どのように変化してきたのかを記録する存在です。岩石の鉱物を調べることは、地球内部や地表で起きた過去の出来事を読み解くことにつながります。

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