なぜ地殻変動は山地の形成と地震の両方に関係するのか?

結論からいうと、地殻変動と山地の地震が関係するのは、プレート運動によって地殻に加わる力が、山を隆起させる変形と、断層にひずみをためて地震を起こす働きの両方を生むからです。 山があるから地震が起こるのではなく、山の形成と地震が同じ地殻変動の結果として現れる場合が多い、と考えるとわかりやすくなります。

特に日本のようにプレートが複雑にぶつかり合う地域では、地殻が横から圧縮され、逆断層や横ずれ断層などが発達します。断層運動が長い時間をかけて繰り返されると山地と盆地の高低差が成長し、断層が急にずれると地震になります。

目次

地殻変動とは何か

地殻変動とは、地球の表面をつくる地殻が、プレート運動などの力によって移動、隆起、沈降、伸縮、ずれなどを起こすことです。変化の速さはさまざまで、数百万年以上かけて山脈をつくるようなゆっくりした変動もあれば、大地震の際に数秒から数分で地面の位置が大きく変わることもあります。

国土地理院は、日本列島周辺では複数のプレートがぶつかり合うことで地殻に複雑な力が加わり、隆起・沈降・移動などの地殻変動が起きていると説明しています。また、大地震によって短時間に大きな地殻変動が生じる一方、長い年月をかけて山脈が隆起する例もあるとしています。

つまり「地殻変動」は山づくりと地震を別々に考える言葉ではなく、両方を含む大きな地球の動きです。

なぜ地震は断層で起こるのか

岩盤にはプレート運動などによって少しずつ力が加わります。断層の両側が摩擦などで固着していると、すぐにはずれず、周囲の岩盤がわずかに変形しながらひずみや応力を蓄えます。

やがて断層面に働く力が摩擦による抵抗を上回ると、断層が急激にずれます。そのときに放出されたエネルギーが地震波となって広がり、地面を揺らします。

USGS(米国地質調査所)も、地震は断層上の突然のすべりによって発生し、プレートがゆっくり動くなかで断層が摩擦によって引っかかり、応力が蓄積して、抵抗を超えたときに急にずれると説明しています。

山ができる力と地震を起こす力は同じなのか

多くの山地では、同じプレート運動による力が両方に関係しています。

たとえば地殻が横方向から圧縮される地域では、地層が折れ曲がる「褶曲」や、片側の地殻がもう一方へ乗り上げる「逆断層」が発達します。こうした変形が長期間積み重なると、地殻の一部が持ち上げられ、山地が成長します。

一方、その断層が普段は固着している場合、圧縮の力は断層周辺にひずみとして蓄積されます。そして限界に達して急にずれると地震になります。

したがって、長い時間尺度では山地を高くする断層運動が、短い時間尺度では一回一回の地震として現れることがあります。

なぜ山地と平野の境界に活断層が多いことがあるのか

活動を繰り返す断層では、何度も地面が上下または横方向にずれ、その変位が長い時間をかけて累積します。逆断層で一方の地盤が繰り返し持ち上がれば、山地と低地の高低差が次第に大きくなります。

地震調査研究推進本部は、活動が活発な活断層では、繰り返す断層運動によるずれが累積するため、盆地・平野などの低地と山地の境界を形成する例が多いと説明しています。

たとえば生駒断層帯は、生駒山地と大阪平野の境界付近に位置し、東側が相対的に隆起する逆断層です。山形盆地断層帯も、山地側が相対的に隆起する逆断層として知られています。

このような場所では、現在の地形そのものが過去の断層運動の積み重ねを示す手がかりになります。

日本の山地ではなぜ圧縮と地震が目立つのか

日本列島の周辺では、太平洋プレートやフィリピン海プレートなどが沈み込み、列島内部にも複雑な力が加わっています。

産総研・地質調査総合センターは、日本列島の本州の広い範囲が東西方向の圧縮応力場にあり、内陸地震が発生するとともに、断層運動に伴って山地が隆起し、内陸盆地が沈降していると説明しています。

つまり日本の山地で見られる多くの活断層や内陸地震は、列島全体が受けているプレート由来の力と無関係ではありません。山地の形成と地震活動を同じ地殻変動の枠組みで考えることで、両者の関係が理解しやすくなります。

逆断層型地震は山を高くするのか

逆断層では、圧縮によって断層の片側がもう一方に乗り上げるように動きます。地表近くまで断層運動が及べば、一回の地震でも数十cmから数m規模の上下変位が生じることがあります。

ただし、一回の地震だけで大きな山脈ができるわけではありません。山地の成長には、同じ断層や周辺の断層での変位が、数千年、数万年、さらに長い時間にわたって何度も積み重なることが必要です。

USGSの研究でも、逆断層や正断層などの傾斜した断層では、地震時の変形と地震間の変形が繰り返されることで、盆地や山地などの地質構造が長期的に成長するとされています。

すべての山地地震が逆断層型なのか

いいえ。山地で起こる地震には、逆断層型だけでなく、横ずれ断層型や正断層型もあります。

地殻に横方向のずれを生じさせる力が強い地域では横ずれ断層型の地震が起こります。地殻が引き伸ばされる地域では、上盤側が下がる正断層型の地震が起こります。

また、一つの断層が横ずれ成分と上下成分の両方を持つ場合もあります。六甲・淡路島断層帯の一部は、右横ずれを主体としながら逆断層成分も伴います。

したがって「山地の地震=逆断層」と決めつけるのではなく、その地域にどの方向からどのような力が加わっているかを見る必要があります。

活断層とは何か

活断層とは、最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動する可能性があると考えられる断層です。

過去の地震で断層が何度もずれると、段丘や尾根がずれたり、川が曲げられたり、山地と低地の境界に断層崖が形成されたりします。こうした地形や地層のずれを調べることで、過去の断層活動を読み取ることができます。

地震本部によると、M7程度より大きい陸域の浅い地震は活断層で発生することが多く、将来の地震発生可能性を評価するためには、活動間隔や一回のずれ量、最近の活動時期などを調べることが重要です。

地殻変動は地震の前だけに起こるのか

地殻変動は地震の直前だけに起こる現象ではありません。プレート運動は常に続いているため、地震がない期間にも地殻はゆっくり変形しています。

USGSは、GPSなどの測地観測から、断層が固着している場所では地表の速度が断層をはさんで徐々に変化し、周囲の地殻が曲げられて応力が蓄積することを示しています。

また地震が起こった瞬間には、断層のずれによって急激な地殻変動が発生します。さらに大地震の後には、余効すべりや深部の岩石の変形などによって、数週間から数年にわたり余効変動が続くことがあります。

このため地殻変動には、地震前の長期的なひずみ蓄積、地震時の急激な変位、地震後の余効変動という複数の段階があります。

地殻変動はどのように観測されているのか

現在はGNSS、InSAR(合成開口レーダー干渉解析)、水準測量などを使って、地表の位置の変化を高い精度で測定できます。

国土地理院は全国に電子基準点を配置したGNSS連続観測網「GEONET」を運用し、日本列島の日々の動きを監視しています。大地震が起きたときには、どの地域がどの方向へ何cm動いたかを観測し、そのデータから震源断層モデルを推定することもあります。

こうした観測は、山地が長期的にどの方向へ変形しているか、断層周辺でひずみがどのように蓄積しているか、地震後にどのような動きが続いているかを知るために重要です。

山が高いほど地震が多いのか

山の標高が高いから地震が多い、という単純な関係はありません。

高い山でも現在の断層活動が比較的低い地域はありますし、標高の低い平野の地下でも大きな地震を起こす断層が存在することがあります。厚い堆積物に覆われ、地表から断層が見えにくい「伏在断層」もあります。

重要なのは山の高さではなく、現在その地域にどのような地殻応力が加わり、どの断層がどの程度活動しているかです。

したがって「山だから危険」「平野だから安全」と判断することはできません。地震の危険度は活断層の分布や過去の地震、地盤条件などを含めて評価する必要があります。

火山の地震とは同じものなのか

山地の地震には、プレート運動や活断層に関係する地震だけでなく、火山活動に関連する地震もあります。

火山では、マグマや火山ガスの移動によって岩盤が割れたり、火道周辺で圧力が変化したりして地震が起こることがあります。これは一般的な内陸活断層地震とは原因が異なります。

そのため「山の近くで地震が起きた=火山噴火の前兆」とは限りません。火山地域では、震源の位置、地震波の特徴、地殻変動、火山ガスなど複数の観測を組み合わせて活動を評価します。

地震の積み重ねが山の形に残る

大きな地震が起きると、一回の断層変位が地表に段差や亀裂として残る場合があります。長い年月の間に同じ向きの変位が繰り返されると、その小さな変化が累積し、大きな地形へ成長します。

国土地理院は、地殻変動による代表的な地形として、地震断層、活断層崖、撓曲崖、活褶曲、衝上断層などを挙げています。これらは地震を含む繰り返しの地殻変動が、地表の形として残されたものです。

つまり山地の地形には、過去の地震や断層運動の履歴が刻まれていることがあります。地形を調べることは、将来の地震を日時まで予知することではありませんが、過去にどの断層がどのように動いてきたかを知る重要な手がかりになります。

まとめ

地殻変動が山地の地震と関係するのは、プレート運動による同じ力が、長期的には山の隆起や変形を進め、短期的には断層の急激なすべりとして地震を起こすからです。

  • プレート運動によって地殻に応力とひずみがたまる
  • 断層が固着している間は周囲の岩盤がゆっくり変形する
  • 断層が限界を超えて急にずれると地震が起こる
  • 逆断層などの変位が長期間累積すると山地が隆起することがある
  • 活断層は山地と盆地・平野の境界に分布する例が多い
  • 山地の地震には逆断層型だけでなく横ずれ型や正断層型もある
  • 山の高さそのものが地震の多さを決めるわけではない
  • GNSSなどの測地観測で地震前後や長期的な地殻変動を測ることができる

つまり、山地と地震は「山が地震を起こす」という関係ではありません。地下で続く地殻変動が、ある時間尺度では山をつくり、別の時間尺度では断層地震として現れるため、両者が深く結びついているのです。

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参考資料

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