なぜ尖った山と丸い山があるのか?

結論からいうと、尖った山と丸い山があるのは、山をつくる岩石の性質、地殻変動のしかた、雨や川による侵食、風化、氷河作用などが地域ごとに違うからです。 硬く侵食されにくい岩石が残ったり、氷河が山頂を複数方向から削ったりすると鋭い峰ができやすくなります。一方、風化や侵食が広く進んだ山地や、比較的風化しやすい岩石からなる山では、稜線や山頂がなだらかに見えることがあります。

ただし、「尖った山は若い」「丸い山は古い」と単純に決めることはできません。氷河は岩盤を丸く磨くこともあれば、カールが山頂を切り込んで鋭い尖峰をつくることもあります。現在の山の形は、長い時間にわたる複数の地質・地形作用の組み合わせで決まります。

目次

山の形は何で決まるのか

山ができた直後から、その表面には雨、雪、川、風、温度変化、重力などが作用します。岩石は風化して弱くなり、削られた土砂は川や崩壊によって運ばれていきます。

一方、地下では断層運動や褶曲、火山活動などによって山地が隆起したり、新しい岩石が供給されたりします。つまり山の姿は、山を高く・急にする作用と、山を削って形を変える作用の競争でつくられます。

同じ高さの山でも、岩石や気候、過去の氷河作用が違えば、尖った峰になることもあれば、丸みを帯びた山容になることもあります。

尖った山ができる理由1:硬い岩石が侵食から残る

山をつくる岩石は、すべて同じ速さで削られるわけではありません。硬さ、割れ目の多さ、鉱物の種類、風化のしやすさによって侵食への抵抗力が異なります。

周囲の岩石が先に削られ、侵食に強い岩石だけが高く残ると、急な崖や尖った峰が形成されることがあります。国土地理院は、地質や岩質の違いによって削られ方が変わる「差別侵食」によって、鋸の歯のような鋭い山稜が形成される例を示しています。

産総研・地質調査総合センターも、谷川岳では侵食に比較的強い接触変成岩や玄武岩類が高い部分を占め、切り立った崖をつくる例を紹介しています。

つまり、尖った山は単に「強く隆起したから尖っている」のではなく、周囲より削られにくい岩石が残った結果である場合もあります。

丸い山ができる理由1:風化しやすい岩石がなだらかになる

反対に、岩石が風化しやすく、斜面全体が少しずつ崩れやすい場合、鋭い角が保たれにくくなります。細かな割れ目が増え、岩石が土砂へ変わると、重力や雨によって斜面の物質が移動し、山頂や稜線が丸みを帯びることがあります。

産総研・地質調査総合センターは、両神山周辺の例で、硬いチャートからなる山と、比較的柔らかく風化されやすい緑色片岩からなる山の山容が異なることを紹介しています。緑色片岩からなる御荷鉾山では、丸い山容が見られると説明されています。

ただし、どの岩石が必ず尖った形・丸い形になると決まっているわけではありません。同じ岩石でも、割れ目の入り方や気候、地形の高さによって削られ方は変わります。

風化と侵食はどう違うのか

山の形を考えるときは、「風化」と「侵食」を分けると理解しやすくなります。

  • 風化:岩石が温度変化、水、化学反応などによって砕けたり変質したりすること
  • 侵食:風化した岩石や土が水、氷、風、重力などで削られ、運び去られること

産総研・地質調査総合センターは、岩石が大気や水にさらされ、物理的に砕けたり化学的に分解されたりする作用を風化として説明しています。風化して弱くなった岩石が斜面崩壊や河川によって運ばれることで、山の輪郭は少しずつ変化します。

長期間にわたり広い範囲で風化と侵食が進めば、急な角や小さな突起が失われ、なだらかな山容に近づく場合があります。

尖った山ができる理由2:氷河が山頂を削り込む

高山では、氷河が非常に鋭い山頂をつくることがあります。山頂付近の複数方向にカールと呼ばれる氷河地形が発達し、それぞれの谷が山体を削り込むと、間に残った岩峰がピラミッド状に尖ります。

国土地理院は、このような地形を「氷食尖峰(ホルン)」と呼び、3方向または4方向からカール壁が切り合うことで生じることが多いと説明しています。日本では槍ヶ岳が代表例として挙げられています。

また、二つの氷河谷の間が削られて細く鋭い稜線になったものは「アレート」と呼ばれます。高山にナイフの刃のような尾根が見られるのは、過去の氷河侵食が関係している場合があります。

氷河は山を丸くすることもある

興味深いことに、氷河は山を尖らせるだけではありません。厚い氷河に完全に覆われた岩盤は、氷の底に取り込まれた砂や礫によって磨かれ、角が取れて滑らかな形になることがあります。

米国国立公園局は、ヨセミテの地形について、氷河が完全に覆った岩盤を滑らかに磨く一方、氷の上に突き出た高い峰では周囲が削られて鋭さが残ることがあると説明しています。

つまり同じ氷河作用でも、岩盤が氷に覆われた位置や、氷河がどの方向から削ったかによって、丸い地形にも尖った地形にもなります。

川や雨による侵食も山の輪郭を変える

氷河のない山では、雨水と河川が地形形成の中心になることが多くあります。雨が斜面を流れ、小さな谷へ集まり、川が山を削ることで谷は深くなります。

谷と谷の間に残った部分が尾根となり、侵食が強く集中すれば細く急な稜線になることがあります。一方、長い時間をかけて斜面全体が風化し、崩壊や土砂移動が繰り返されると、山頂や尾根が丸みを帯びることもあります。

米国国立公園局も、水、風、氷、重力による風化・侵食が長期間にわたって山地の地形をつくり変えると説明しています。

山の「年齢」だけで形は決まらない

よく「若い山は尖っていて、古い山は丸い」と説明されることがあります。長く侵食を受けた山地ほど起伏が小さくなる傾向はありますが、これはあくまで一つの傾向です。

山地が古くても、後から再び隆起すれば川が深く谷を刻み、急峻な地形になることがあります。逆に比較的新しい火山でも、粘性の低い溶岩が広く流れればなだらかな形になる場合があります。

また、高い山では氷河侵食が鋭い峰をつくることがあり、硬い岩石が侵食から取り残されれば長期間経過しても険しい地形が残る場合があります。

したがって、山の輪郭だけを見て「この山は新しい」「この山は古い」と判断することはできません。

火山でも尖った形と丸い形が生まれる

火山の形も、噴火するマグマの性質や噴出物の種類によって異なります。

比較的粘り気の強いマグマや火山灰などが火口周辺に積み重なる成層火山では、円錐形の山体が形成されやすくなります。一方、流動性の高い溶岩が遠くまで広がる火山では、裾野が広く傾斜の緩い形になることがあります。

ただし、火山も噴火後は侵食や崩壊を受けます。そのため現在の火山の形は、噴火でつくられた最初の山体と、その後の風化・侵食を合わせた結果です。

同じ山でも見る方向によって尖って見えたり丸く見えたりする

山の形を比べるときには、見る方向にも注意が必要です。山体は立体的で、斜面の角度や尾根の向きは方向によって異なります。

ある方向からは鋭い三角形に見えても、別方向からは幅広く丸い山頂に見えることがあります。複数の峰が重なって一つの尖った山に見える場合もあります。

そのため、山の成因を考えるときは写真一枚のシルエットだけでなく、地形図、空中写真、地質図などを合わせて見ることが重要です。

日本で尖った山の代表例は槍ヶ岳

槍ヶ岳は、その名のとおり槍の穂先のような鋭い山頂で知られています。国土地理院は槍ヶ岳を氷食尖峰の代表例として挙げ、周囲の千丈沢、天上沢、槍沢、飛騨沢の4つのカールによって山頂部が削り込まれた地形としています。

つまり槍ヶ岳の鋭さは、単に硬い岩石が突き出しただけではなく、過去の寒冷期に発達した氷河が複数方向から山体を削った結果でもあります。

この例からも、尖った山の形を理解するには、現在の気候だけではなく、過去の氷河時代までさかのぼる必要があることがわかります。

丸い山の例からわかる地質の影響

産総研・地質調査総合センターが紹介する御荷鉾山では、比較的風化されやすい緑色片岩が丸い山容に関係しています。一方、近くの両神山には硬いチャートが分布し、より険しい地形が見られます。

このように、近い地域でも岩石の種類が違えば、同じ雨や気候の影響を受けていても山の形に差が生まれます。

山の輪郭は、その地下にどのような岩石があるのかを推測する手がかりになることがあります。ただし、断層や地層の向き、崩壊履歴なども関係するため、形だけで地質を断定することはできません。

尖った山と丸い山の違いを整理すると

  • 尖った山:硬い岩石が侵食から残る、谷が深く刻まれる、氷河が複数方向から削るなどの条件でできやすい
  • 丸い山:風化や侵食が広く進む、比較的風化しやすい岩石が分布する、氷河に覆われ岩盤が研磨されるなどの条件でできることがある
  • 共通点:どちらも地殻変動、岩石、気候、侵食の組み合わせで決まり、一つの原因だけでは説明できない

特に大切なのは、尖っているか丸いかを「山の年齢」だけで説明しないことです。山地の隆起が現在も続いているか、どんな岩石でできているか、氷河があったか、雨や崩壊がどれほど強いかによって形は変わります。

まとめ

尖った山と丸い山があるのは、山をつくる岩石の性質や、風化・侵食・氷河作用・地殻変動の違いによって、削られ方と残り方が異なるからです。

  • 硬く侵食されにくい岩石は、鋭い峰や崖として残ることがある
  • 風化しやすい岩石では、山頂や斜面が丸みを帯びることがある
  • 複数方向からの氷河侵食は、槍ヶ岳のような氷食尖峰をつくる
  • 厚い氷河に覆われた岩盤は、反対に滑らかに磨かれることもある
  • 川や斜面崩壊も長期的に谷・尾根・山頂の形を変える
  • 「尖った山=若い」「丸い山=古い」と一律には判断できない

つまり山のシルエットは、地下の地質と地表の侵食が長い時間をかけて共同でつくったものです。尖り方や丸みを見ることで、その山がどのように生まれ、どのように削られてきたかを読み取る手がかりになります。

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