なぜ川の石や砂は下流ほど細かくなりやすいのか?

結論からいうと、上流に大きな石が多く、下流ほど砂や細かな土砂が多くなりやすいのは、川の流れが土砂を「大きさごとに選びながら運ぶ」ことと、運ばれる途中で石がぶつかって割れたり削れたりすることの両方が働くからです。 上流では山から供給された大きな岩や礫が近くにあり、急な流れは大きな粒子も動かします。一方、下流へ行くほど勾配が緩くなり、大きな粒子は途中で止まりやすく、細かな粒子ほど遠くまで運ばれます。

よく「石が下流へ流されるうちに全部すり減って砂になる」と説明されますが、それだけではありません。実際の河川では、選択運搬・選択堆積による分級と、破砕・摩耗による細粒化が組み合わさって、上流から下流へ河床材料が細かくなる傾向をつくります。

目次

上流には大きな石が供給されやすい

川の上流は山地にあり、急な斜面や崖に囲まれていることが多くあります。風化や崩壊によって岩盤からはがれた岩や礫は、谷底や河道へ直接入りやすいため、上流では大きな石が新しく供給されます。

国土交通省中国地方整備局は、上流では岩や大きな石が多く、下流へ行くにつれて小さな石、砂、シルト、粘土が多くなると説明しています。

上流の河床に大きな石があるのは、「川が大きな石だけをつくる」からではありません。近くの山や崖から大きな岩片が直接供給され、そのうち動きにくいものがその場に残るためでもあります。

急な上流は大きな石を動かす力が強い

川の水が石や砂を運ぶ力は、流速や水深が大きくなるほど強くなります。一般に上流は河床勾配が急で、洪水時には非常に強い流れになります。

そのため、平常時には動かない大きな礫も、大雨や洪水のときには転がったり滑ったりしながら下流へ移動することがあります。

一方で、非常に大きく重い岩は、洪水でも簡単には動きません。小さな粒子の方が動きやすいため、上流では細かな粒子が先に流され、相対的に大きな石が河床に残ることがあります。

このように、上流の河床材料が粗く見える背景には、山地からの粗い土砂供給と、流れによる選択的な運搬の両方があります。

下流へ行くほど流れの勾配が緩くなる

多くの川では、上流から下流へ進むにつれて河床勾配が緩やかになります。

勾配が緩くなると、同じ条件なら川底の石を動かす力も小さくなります。すると、上流から運ばれてきた土砂のうち、大きく重いものほど先に移動しにくくなり、途中で堆積します。

一方、細かな砂や泥は比較的弱い流れでも運ばれやすいため、さらに下流まで到達できます。

国土交通省の学習資料でも、上流では大きな石を運ぶ力が大きく、勾配が緩くなるにつれてその力が弱まり、下流では細かな砂やシルトが多くなると説明されています。

「大きい粒から先に止まる」選択堆積が重要

川が運ぶ砂や石には、さまざまな大きさがあります。それらが同じように動くわけではありません。

大きな石は重いため、動き始めるには強い流れが必要です。流れが弱くなると、まず大きな粒子が止まり、それより小さな粒子はさらに下流へ運ばれます。

このように、粒の大きさによって運ばれやすさや堆積しやすさが違う現象を、選択運搬や選択堆積、分級などと呼びます。

日本科学教育学会の研究では、河床堆積物が下流ほど細かくなる原因として、破砕・摩耗だけでなく、流水による砂礫の選択運搬が重要であることが指摘されています。

つまり、下流に細かな砂が多いのは、大きな石が全部粉々になったからではありません。大きな粒子が途中で止まり、小さな粒子だけが遠くまで運ばれることが大きな要因なのです。

石は運ばれる途中でぶつかり、割れたり削れたりする

選択運搬に加えて、石そのものが小さくなる作用もあります。

洪水で礫が転がると、石同士がぶつかったり、川底の岩盤や礫に衝突したりします。その衝撃で角が欠け、表面が削られ、場合によっては割れてより小さな粒子になります。

国土交通省も、上流から下流へ石が運ばれる過程で、石同士の衝突や摩擦によって丸みを帯び、小さくなると説明しています。

堆積学の研究でも、河川を運ばれる砂礫には破砕・摩耗作用が働き、粗い粒子からより細かな粒子が生産されることが確認されています。

そのため、下流ほど石が丸く小さくなる現象には、実際に石そのものが削られる作用も関係しています。

ただし、細粒化の原因は「摩耗だけ」ではない

ここは特に誤解されやすいところです。

昔から、上流の大きな礫が下流へ流されるうちに摩耗して小さくなるという説明はよく知られています。しかし、河川地形学や堆積学では、下流方向の細粒化は破砕・摩耗だけでは説明できず、選択運搬や選択堆積が重要な役割を持つことが示されています。

土木学会の研究では、河床材料の下流方向への細粒化は、選択分級と摩耗の組み合わせで生じ、そのどちらが強く効くかは流域の地質や岩種、粒度構成などによって異なるとされています。

USGSのChetco Riverの研究でも、河床材料が下流ほど細かくなる現象について、破砕・摩耗の影響は認められるものの、多くの研究では選択的な堆積や分級が主要な原因になる場合があると整理されています。

したがって、「石が削れて砂になる」だけでなく、「大きな石は途中に残り、細かい粒子ほど先へ行く」ことをセットで考えるのが正確です。

なぜ下流では砂や泥が多くなるのか

下流では川幅が広がり、河床勾配が小さくなることが多いため、流れは上流ほど急ではなくなります。

すると、大きな礫を動かし続ける力は弱くなり、粗い粒子は上流や中流で堆積しやすくなります。一方、砂やシルト、粘土のような小さな粒子は、比較的弱い流れでも移動できます。

さらに細かな泥は、水中に浮いた状態で運ばれる「浮遊砂」となり、河口や海まで到達することもあります。

このため、川を上流から下流へ見ていくと、巨大な岩や礫が目立つ河床から、丸い小石、砂、さらに細かな泥が多い河床へと変化していく傾向が生まれます。

川原の石が下流ほど丸くなる理由

石の大きさだけでなく、形にも違いが見られます。

上流に供給されたばかりの石は、角張っていることがあります。それが洪水のたびに転がり、石同士や川底へ衝突すると、尖った角が欠けていきます。

長い距離を移動した礫ほど、一般に丸みを帯びやすくなります。ただし、岩石の種類によって壊れやすさや削れやすさは違います。

2019年の堆積学研究では、渡良瀬川支流の砂礫を調べ、破砕・摩耗の進み方や円磨度が岩種や粒径によって異なることが示されています。

つまり、同じ距離を流れても、硬い石と割れやすい石では残り方が違います。河原の石の形や大きさには、その流域の地質も反映されています。

洪水のときは大きな石も下流へ動く

普段の川だけを見ると、大きな石はほとんど動かないように見えます。しかし、河床材料の移動の多くは洪水時に起こります。

水深と流速が増えると、川底に働く力が大きくなり、大きな礫も転がります。洪水の規模によっては、普段なら上流に残っている大きな石が中流まで移動することもあります。

そのため、河床の粒径分布は一度決まったら固定されるものではありません。大きな洪水のたびに砂州や河床が作り替えられ、粒の分布も変化します。

支流から大きな石が入ると、下流でも急に粗くなる

「下流ほど必ず細かくなる」という傾向にも例外があります。

途中で急な支流が合流し、大きな礫が大量に供給されれば、本川の下流側で一時的に河床材料が粗くなることがあります。

土石流や斜面崩壊によって粗い土砂が一気に流入した場合も同様です。

また、岩盤の種類が途中で変われば、壊れやすさや粒子の供給量も変わるため、単純な上流から下流への細粒化にならないことがあります。

USGSの研究でも、支流から新しい河床材料が供給されることが、下流の粒径変化に影響するとされています。

ダムや砂利採取でも粒の分布は変わる

人間活動も河床材料の大きさに影響します。

ダムがあると、上流から来た砂や礫の一部が貯水池にたまります。その結果、ダム下流へ供給される土砂の量や粒径構成が変わることがあります。

また、河道で砂利を採取したり、河床を掘削したりすると、もともとの粒度分布が変わります。細かな土砂が減ると、河床表面に大きな礫が目立つ「粗粒化」が進む場合もあります。

したがって、現在の川原で見える石の大きさは、自然な上流・下流の違いだけでなく、ダムや河川工事など過去の人為的な変化も反映していることがあります。

同じ川でも場所によって粒の大きさは違う

河床材料は、川の上流・下流という大きな区分だけで決まるわけではありません。

同じ場所でも、流れの速い瀬には比較的大きな礫が残り、流れの弱い淵や砂州の内側には細かな砂がたまりやすくなります。

カーブでは外岸側の流れが強く、内岸側では流れが弱いため、同じ横断面の中でも粒径が違うことがあります。

つまり「上流は大きい石、下流は砂」というのは川全体の平均的な傾向であり、実際の川底はもっと複雑です。

上流と下流の違いを整理すると

  • 上流:山や崖から大きな岩や礫が直接供給されやすい
  • 上流:勾配が急で洪水時の運搬力が大きい
  • 途中:大きな粒子ほど流れが弱まると先に止まりやすい
  • 流下中:石同士の衝突や摩耗で石が割れたり丸くなったりする
  • 下流:細かな砂や泥ほど遠くまで運ばれやすい
  • 河口付近:砂、シルト、粘土など細かな粒子が多くなる傾向がある

まとめ

上流の石が大きく、下流の砂が細かくなりやすいのは、川が粒の大きさによって運び方を変えることと、石が運ばれる途中で破砕・摩耗することが組み合わさるからです。

  • 上流では山地から大きな岩や礫が供給される
  • 急な流れは大きな石も動かすが、特に小さい粒子は下流へ運ばれやすい
  • 勾配が緩くなると、大きな粒子から先に堆積する
  • 細かな砂や泥は弱い流れでもさらに下流へ移動できる
  • 石は移動中の衝突や摩擦によって割れたり丸くなったりする
  • 実際の細粒化は、選択運搬・選択堆積と破砕・摩耗の両方で起こる
  • 支流、地質、洪水、ダムなどによって単純な傾向から外れる場所もある

つまり、下流の砂は「上流の大石が全部すり減ったもの」ではありません。 川が大きな粒子を途中に残しながら小さな粒子を遠くへ運び、その過程で石自体も少しずつ壊れていくため、上流から下流へ河床材料が細かくなる傾向が生まれるのです。

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参考資料

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