湖の成り立ちが水深や形に影響するのは、湖の水がたまる「湖盆」が、断層運動・火山活動・氷河・河川の蛇行・地すべりなど、それぞれ異なる地形形成作用によってつくられるからです。 どの作用が地面をへこませ、削り、せき止めたかによって、くぼみの深さ、幅、傾斜、輪郭が違います。その違いが、そのまま湖の深さや形として残ります。
たとえば断層でできた湖は直線的な湖岸や急な斜面を持つことがあり、カルデラ湖は火山の大きな陥没地に水がたまるため比較的大規模で深い湖になることがあります。氷河が削った谷では細長く深い湖ができやすく、川の蛇行が切り離されてできた三日月湖は、旧河道の曲線を残した細長い形になります。
湖の形を決めるのは「水」より先にできた地形
湖は、水が先に存在して形をつくるのではなく、多くの場合、まず地表に水をためられる凹地ができ、そこへ雨、雪どけ水、河川水、地下水などがたまって成立します。この凹地を湖盆といいます。
したがって湖の形を理解するには、「水がどこから来たか」だけでなく、「その器がどうやってできたか」を考えることが重要です。
国土地理院は、日本の湖沼を断層湖、火口湖、カルデラ湖、堰止湖、三日月湖など、地形の成因に応じて分類しています。これは、湖の外形や湖底地形が、その成立過程と強く結びついているためです。
断層湖は地殻変動でできた凹地の形を受け継ぐ
地殻に力が加わると、断層に沿って地面がずれ、一方が沈んだり、帯状の凹地ができたりすることがあります。そこへ水がたまると断層湖になります。
国土地理院は断層湖について、断層によって生じた凹地にできる湖で、断層盆地や地溝に見られ、湖岸は急傾斜、湖底は比較的緩傾斜で広いことがあると説明しています。
つまり、断層の位置やずれ方が湖の輪郭や斜面の急さに反映されます。断層沿いに長い凹地が発達すれば細長い湖盆となり、地盤の沈降が大きい場所では深い部分が形成されます。
琵琶湖についても、湖底の活断層や傾動運動が湖盆形態を決める重要な要素であることが研究されています。現在の深い湖盆は長期間の地殻変動によって発達してきたもので、湖の形は一度に完成したのではなく、地殻運動と堆積を繰り返しながら変化してきました。
火山湖は火口やカルデラの大きさを反映する
火山活動でも大きな凹地がつくられます。噴火口に水がたまれば火口湖、大規模な噴火などで火山体が陥没してできたカルデラに水がたまればカルデラ湖になります。
国土地理院はカルデラを、火山活動によって生じる大きな窪地として説明しています。その全部または大半が水で満たされるとカルデラ湖になります。
カルデラは通常の火口よりはるかに大きな凹地になることがあるため、カルデラ湖も大規模になりやすく、陥没の程度によっては深い湖になります。支笏湖、十和田湖、屈斜路湖などは、その代表例です。
また火山湖の湖岸には、かつてのカルデラ壁や火口壁が反映されるため、円形や楕円形に近い輪郭、急な湖岸斜面などが見られることがあります。ただし、その後の噴火、崩壊、河川の侵食、堆積などで形が変わるため、すべての火山湖がきれいな円形になるわけではありません。
氷河湖は削られた谷の深さと方向を受け継ぐ
氷河は巨大な氷の塊ですが、長い時間をかけて動くと岩盤を強く削ります。その結果、谷底が広く、両側が急なU字谷や、山腹の椀状のくぼみであるカールなどが形成されます。
氷河が後退したあとに、削られた凹地へ水がたまると氷河湖になります。また、氷河が運んだ岩石や土砂でできるモレーンが谷をせき止め、その上流側に湖をつくる場合もあります。
米国国立公園局は、グレイシャー国立公園の多くの湖について、氷河が削ったU字谷が末端モレーンでせき止められた結果、細長く、側面が急で、深い「指のような」湖ができたと説明しています。
このような湖では、氷河が進んだ方向が湖の長軸として残りやすく、氷が特に強く削った場所が深い部分になります。湖の細長さや深さを見ると、過去に氷河がどの方向へ動いたかを読み取れる場合があります。
三日月湖は昔の川の曲がり方をそのまま残す
河川の蛇行から生まれる三日月湖は、成因と形の関係が特に分かりやすい湖です。
平野を流れる川は左右へ大きく蛇行することがあります。蛇行が進み、曲がりの首の部分が洪水などで短絡すると、川はより直線的な新しい流路を流れるようになります。切り離された旧河道に水が残ると三日月湖になります。
国土地理院は三日月湖を、蛇行した河道の湾曲部が切断され、放棄された旧河道が半環状の湖沼となったものと説明しています。
石狩川下流域の三日月湖を調べた研究では、最も深い場所が、かつて川が強く曲がっていた湾曲部付近に残る例が確認されています。蛇行河川では外側の岸が強く削られるため、そのときの深い河道が湖底地形として残ることがあるのです。
つまり三日月湖の細長く弓形の輪郭や深浅は、「昔そこを流れていた川の形」を保存した地形記録ともいえます。
地すべりや崩壊による堰止湖は谷の形を利用する
地すべりや斜面崩壊によって大量の土砂が谷へ流れ込み、川をふさぐと、その上流側に水がたまって堰止湖ができます。
この場合、新しく大きな穴が掘られるわけではありません。もともとの川の谷を天然のダムでふさぐため、湖の形は谷の形を強く受け継ぎます。
狭い谷なら細長い湖になりやすく、広い谷がふさがれれば幅の広い湖になります。深さは、せき止めた土砂の高さと、元の谷底の高さの差に大きく左右されます。
国土地理院も、堰止湖を地すべりや崩壊などによって河川がせき止められ、生じた凹地に水がたまった湖沼としています。
このタイプでは、湖の深さや大きさだけでなく寿命も成因の影響を受けます。天然の堤防が侵食されれば湖水が流出し、湖が急速に縮小したり消滅したりすることがあります。
同じ成因でも水深や形が同じにはならない
成り立ちが同じなら、湖の形もすべて同じになるわけではありません。
たとえばカルデラ湖でも、陥没した範囲、噴火後の火山活動、流れ込む土砂の量によって深さや輪郭は異なります。断層湖でも、断層の長さ、ずれの量、周辺地形によって細長さや最大水深は変わります。
氷河湖も、氷河の大きさや流れ方、岩盤の硬さ、モレーンの位置などによって形が変わります。
したがって「火山湖なら必ず丸い」「氷河湖なら必ず細長い」と決めつけることはできません。成因は湖の基本的な形をつくる重要な要因ですが、その後の地形変化も合わせて考える必要があります。
湖ができた後も深さと形は変化し続ける
湖盆が形成された時点で、湖の形が永遠に固定されるわけではありません。河川は土砂を運び込み、湖底へ堆積させます。湖岸は波で削られ、崩壊によって土砂が入ることもあります。
三日月湖では、旧河道の深い部分にシルトや粘土がたまり、次第に浅くなっていくことが確認されています。断層湖や火山湖でも、長い時間がたてば河川から運ばれた堆積物が湖底を埋めていきます。
一方、断層運動や火山活動が続く湖では、新たな沈降や変形によって湖盆が深くなることもあります。琵琶湖のように、地殻変動と堆積の両方を受けながら現在の湖盆が形成されてきた湖もあります。
つまり現在の水深や形は、「生まれたときの地形」と「その後の変化」を合わせた結果です。
湖の形は水温や生態系にもつながる
湖の成り立ちによって決まった水深や形は、その後の湖の環境にも影響します。
深い湖では夏に表層と深層の水温差が大きくなり、水温成層が発達しやすくなります。浅い湖では風によって湖底近くまで水が混ざりやすくなります。
また、湖岸が複雑で浅場が多い湖では、水草が生える場所や魚の産卵場所が多くなる場合があります。急に深くなる湖では浅い沿岸域が狭くなり、生息環境の分布も変わります。
このように、断層・火山・氷河・河川などによってつくられた湖盆の形は、水深だけでなく、水温、光、酸素、生き物の分布にもつながっています。
湖の形を見ると過去の地形形成を読み取れる
湖の輪郭や湖底地形は、その地域で過去にどのような自然現象が起きたかを知る手がかりになります。
細長く急深な湖なら断層や氷河谷との関係を考えられます。大きな円形の湖なら火山性カルデラの可能性があります。川沿いの弓形の湖なら旧河道を疑うことができます。
もちろん見た目だけで成因を断定することはできません。地質、断層、火山噴出物、堆積物、周辺地形などの調査が必要です。しかし、湖の形は過去の地殻変動、噴火、氷河、河川活動が残した重要な地形記録です。
まとめ
湖の成り立ちが水深や形に影響するのは、湖水をためる湖盆そのものが、それぞれ異なる地形形成作用によってつくられるからです。
- 断層湖は地殻変動による凹地の長さや深さを反映する
- 火口湖・カルデラ湖は火山による陥没地の大きさや形を受け継ぐ
- 氷河湖は氷河が削ったU字谷やカールに沿って深く細長くなることがある
- 三日月湖は切り離された旧河道の湾曲した形を残す
- 堰止湖は、せき止められた元の谷の幅や深さを反映する
- 湖ができた後も、堆積・侵食・地殻変動によって水深や形は変化する
湖の水深や輪郭は偶然決まるのではありません。その湖がどのように生まれ、どのような地形変化を受けてきたかが、現在の姿に刻まれています。
参考資料
- 国土地理院「1.地殻の変動による地形」
- 国土地理院「2.火山の活動による地形」
- 国土地理院「4.河川の作用による地形」
- 日本地理学会「石狩川下流域に分布する三日月湖の湖盆形態と底質」
- 日本地理学会「琵琶湖湖底の活構造と湖盆の変遷」
- U.S. National Park Service「Lakes and Ponds – Glacier National Park」

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