地震の断層は、地下の岩盤に力がかかり続けた結果できる「ずれやすい面や帯」で、そこで岩盤が急に相対移動すると地震が起こります。断層は単なる一本のひびではなく、主なすべり面の周囲に細かな割れ目や砕かれた岩石を含む複雑な構造をもつことがあります。
地震の仕組みを理解するうえで重要なのは、断層が「地震のあとにできる傷」だけではなく、過去から繰り返し動いてきた弱い部分であり、そこに力がたまって再び急に動くことがあるという点です。
そもそも断層とは何か
断層とは、岩盤に割れ目ができ、その割れ目を境に両側の岩盤が互いにずれた構造のことです。
USGS(米国地質調査所)は、断層を「2つの岩盤ブロックの間にある破断面または破砕帯」と説明しています。断層に沿った動きは、地震のように急激に起こる場合もあれば、クリープと呼ばれるようにゆっくり進む場合もあります。
実際の地下では、断層が一枚のきれいな平面になっているとは限りません。主なすべりが集中する部分の周囲に、細かな割れ目が多数生じた損傷帯や、岩石が細かく砕けた断層岩が形成されることがあります。
日本地質学会の総説でも、陸域断層は「断層コア」とその周囲の「ダメージゾーン」などからなる複雑な内部構造をもつことが整理されています。
断層はなぜできるのか
地下の岩盤には、プレート運動などによって常に力が加わっています。
岩盤は硬いため、少し力が加わっただけですぐに壊れるわけではありません。ある程度までは弾性的に変形して力を受け止めます。しかし、力が岩盤の強度を超えると割れたり、すでにある割れ目に沿ってずれたりします。
気象庁は、地震を地下で起こる岩盤の「ずれ」によって発生する現象と説明しています。硬い物体に力がかかり、それに耐えられなくなると壊れるのと同じように、地下の岩盤にも力が蓄積し、限界に達すると急激なずれが起こります。
こうしたずれが何度も同じ場所に集中すると、その部分は周囲とは異なる岩石組織や破砕構造をもつ断層帯へ発達していきます。
断層にはどのような種類があるのか
断層は、岩盤に加わる力と、実際にどの方向へずれたかによって大きく分類されます。
正断層
岩盤が左右に引っ張られるような力を受けたときに生じやすい断層です。傾いた断層面の上側にある岩盤が、下側に対して下がる方向へ動きます。
逆断層
岩盤が左右から押し縮められるような力を受けたときに生じやすい断層です。断層面の上側にある岩盤が、下側の岩盤に乗り上げる方向へ動きます。傾きが小さい逆断層は「衝上断層」と呼ばれることもあります。
横ずれ断層
岩盤が水平方向にすれ違うような力を受けたときに生じる断層です。相手側の岩盤が右に見えるか左に見えるかによって、右横ずれ断層と左横ずれ断層に分けられます。
地震調査研究推進本部は、このように正断層・逆断層・横ずれ断層を基本形として説明しています。ただし、実際の断層運動では上下方向と水平方向の動きが組み合わさり、斜めにずれる例も多くあります。
断層があるだけでは地震にならない
断層が存在していても、常に地震を起こしているわけではありません。
断層面には摩擦があり、両側の岩盤が押し付け合っているため、力が加わっても簡単には滑りません。この状態を固着と考えるとわかりやすいでしょう。
固着している間にも、周囲ではプレート運動などによる変形が続きます。そのため、断層の周辺には少しずつひずみと弾性エネルギーが蓄積していきます。
やがて断層面の摩擦抵抗を上回る力が加わると、一部で滑りが始まります。その滑りが周囲へ広がると、大きな断層運動になります。急激なずれによって解放されたエネルギーの一部が地震波となって周囲へ伝わり、地面を揺らします。
岩石摩擦に関する地震学の研究では、断層の滑りやすさは単純な一定値ではなく、滑り速度やそれまでの接触状態などによって変化することが示されています。こうした摩擦の性質が、安定したゆっくり滑りと急激な地震性すべりを分ける重要な要素の一つです。
地震は断層全体が一瞬で同時に動くのか
大きな地震では、長い断層全体が完全に同時に動くわけではありません。
まず地下のある地点で破壊が始まり、そのすべりが断層面に沿って広がっていきます。最初に破壊が始まった地下の地点が震源です。
断層面の破壊は高速で広がりますが、それでも有限の時間がかかります。そのため、大地震では断層の破壊が数十秒以上続くこともあります。
また、断層面のどこでも同じ量だけずれるわけではありません。強く固着していた領域が大きく滑る一方、すべり量が小さい領域もあります。この不均一さが、地震波の出方や強い揺れの分布にも影響します。
「断層」と「活断層」は同じ意味ではない
断層という言葉は、過去に岩盤がずれた構造を広く指します。その中で、比較的新しい地質時代に繰り返し活動し、将来も活動する可能性があると考えられるものを活断層と呼びます。
地震調査研究推進本部では、活断層を、最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層と説明しています。
活断層が何度も動くと、地表の地形や地層にずれが累積することがあります。そのため、空中写真や地形解析、地質調査、トレンチ調査などによって過去の活動履歴を調べることができます。
一方、地下に断層があっても地表にはっきり現れていない場合もあります。したがって、「地図に活断層が描かれていない場所なら地震は起こらない」という意味ではありません。
なぜ同じ断層で地震が繰り返されるのか
一度地震が起きても、プレート運動そのものが止まるわけではありません。
地震によって断層周辺のひずみが解放されたあとも、長い時間をかけて再び力が加わります。その結果、同じ断層や断層帯に再びひずみが蓄積し、将来また動くことがあります。
ただし、地震ごとに全く同じ範囲が同じ量だけ動くとは限りません。隣接する断層区間が連動したり、一部だけが動いたりすることもあります。
そのため、断層の長さや過去の活動間隔は地震評価の重要な手掛かりですが、それだけで次の地震の発生時刻を正確に予測できるわけではありません。
プレート境界の断層と内陸の断層はどう違うのか
断層は陸上だけにあるものではありません。海溝沿いの巨大地震では、沈み込む海洋プレートと陸側プレートの境界そのものが巨大な断層面として動きます。
一方、内陸地震では、陸側プレート内部の活断層などが動くことがあります。
どちらも「岩盤同士が断層面を境に急にずれる」という基本原理は共通していますが、断層の大きさ、深さ、周囲の温度や圧力、力のかかり方などが異なります。
日本の内陸では地域によって断層型にも傾向があり、地震調査研究推進本部は、中部地方から西日本では横ずれ断層型、東北地方など北日本では逆断層型が多いと説明しています。これは日本列島内部にかかる力の方向が地域によって異なるためです。
断層は地震の「原因」なのか「結果」なのか
この問いには、両方の側面があります。
古い断層は、過去の地殻変動や地震によって形成・成長した構造なので、過去の変形の「結果」です。しかし、その断層が周囲より滑りやすい弱い帯として残り、再び力が集中すると、次の地震が起こる場所になることがあります。この意味では、地震発生を支配する重要な構造でもあります。
つまり、断層は「地震によって生まれた傷」であると同時に、「次の地震が起こりやすい場所」になりうるのです。
まとめ
地震の断層は、岩盤に力が加わって割れたりずれたりして形成される、岩盤同士の相対運動が集中する面や帯です。
断層面には摩擦があるため、普段は固着していることがあります。その間に周囲へひずみが蓄積し、限界を超えると断層が急に滑ります。その急激なすべりによって地震波が発生し、地面が揺れます。
断層には正断層・逆断層・横ずれ断層などがあり、加わる力の方向によって動き方が変わります。また、実際の断層は一枚の単純な割れ目ではなく、断層コアや損傷帯などを含む複雑な構造をもつ場合があります。
つまり、地震の断層とは、地殻にかかる力が集中し、摩擦で止まりながらひずみをため、限界に達すると急激にずれるという仕組みで成り立つ地下の弱い構造です。
参考資料
- 気象庁「地震発生のしくみ」
- 地震調査研究推進本部「正断層・逆断層・横ずれ断層」
- U.S. Geological Survey「What is a fault and what are the different types?」
- 重松紀生ほか「陸域断層の内部構造」

コメント