地震の断層に場所や条件による違いがあるのは、地下の岩盤にかかる力の向き、断層の深さや温度、プレートとの位置関係、断層面の傾きや長さなどが場所ごとに異なるからです。そのため、同じ「断層」でも、上下にずれるもの、横にずれるもの、浅い場所で動くもの、深い場所まで地震を起こすものなど、性質に違いが生まれます。
断層の違いは、単に名前の違いではありません。どの方向から岩盤が押されているか、引っ張られているか、どのくらいの温度・圧力にあるかによって、動きやすい断層面や地震の起こり方が変わります。
断層の違いを生む最も基本的な条件は「力の向き」
地下の岩盤には、プレート運動などによってさまざまな方向から力が加わっています。この力の状態を応力といいます。
地震調査研究推進本部は、地殻内部にかかる力の状態によって、正断層・逆断層・横ずれ断層など、異なる型の断層運動が生じると説明しています。
岩盤が引っ張られるような条件では、断層面の上側の岩盤が下がる正断層が起こりやすくなります。逆に、岩盤が押し縮められる条件では、上側の岩盤が乗り上げる逆断層が起こりやすくなります。
一方、岩盤が水平方向にすれ違うような力を受けると、横ずれ断層が生じやすくなります。
USGS(米国地質調査所)も、正断層は引張の場、逆断層・衝上断層は圧縮の場、横ずれ断層は水平方向のせん断が卓越する場と対応づけています。
日本国内でも断層型に地域差がある
日本列島のどこでも同じ方向から力がかかっているわけではありません。そのため、内陸地震の断層型にも地域差があります。
地震調査研究推進本部によると、日本の内陸地震では、中部地方から西日本にかけて横ずれ断層型が多く、東北地方など北日本では逆断層型が多いとされています。
これは、日本列島内部の応力場が地域によって異なるためです。プレートの沈み込み方向、周辺の地殻構造、過去から続く地殻変動などが組み合わさり、各地域で動きやすい断層の向きや型が変わります。
したがって、「日本の断層はすべて逆断層」「内陸地震はすべて横ずれ断層」と一括りにはできません。
同じ地域でも純粋な一種類の断層とは限らない
正断層・逆断層・横ずれ断層という分類は、断層運動を理解するための基本形です。しかし、実際の地震では上下方向と水平方向の動きが混ざることがよくあります。
地震調査研究推進本部も、実際の断層では純粋な縦ずれや横ずれだけで動く例はむしろ少なく、多くの断層が斜め方向にずれると説明しています。
たとえば、主に横ずれしながら少し上下にも動く断層や、逆断層運動に横ずれ成分が加わる断層があります。このような複合的な動きを斜めずれと呼ぶことがあります。
つまり、断層型は三つの箱に完全に分けられるものではなく、実際には連続的な違いをもっています。
断層の深さによっても動き方が変わる
断層は地表近くだけに存在するわけではありません。地下数kmから数十km、プレートの沈み込み帯ではさらに深い場所でも地震が起こります。
ただし、岩石は深くなるほど高温・高圧になります。温度が低い浅部では、岩石は力が限界を超えると割れたり、既存の断層に沿って急に滑ったりする脆性破壊を起こしやすくなります。
一方、高温になると岩石は長い時間をかけてゆっくり変形しやすくなり、急激に割れる地震性の破壊は起こりにくくなります。
J-STAGEに掲載された日本列島の地殻温度構造に関する研究でも、岩石が脆性的に破壊する領域と塑性的に変形する領域の境界は温度構造に左右され、高温地域ではその境界が浅く、低温地域では深くなることが示されています。
このため、地殻内地震が起こりやすい深さの範囲も全国一律ではありません。
プレート境界の断層と内陸断層では条件が違う
断層は、陸地の活断層だけではありません。沈み込み帯では、海洋プレートと陸側プレートの境界そのものが巨大な断層面として働きます。
プレート境界断層では、数十kmから数百kmにわたる広い面が固着し、長期間ひずみをためた後に大きく滑ることがあります。このような地震では、非常に大きな断層面が動くため、巨大地震や津波につながることがあります。
一方、内陸の活断層は地殻の比較的浅い部分にあり、プレート境界断層より断層面積が小さいことが一般的です。ただし、震源が都市の近くにあれば、地震規模がやや小さくても非常に強い揺れをもたらすことがあります。
つまり、断層がどこにあるかによって、動ける面積、深さ、周囲の温度・圧力、地表への距離が変わり、地震の特徴も変わります。
「活断層」とそれ以外の断層にも違いがある
地質には過去にできた断層が数多くありますが、そのすべてが現在も地震を起こしやすいわけではありません。
地震調査研究推進本部は、最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層を活断層としています。
活断層では、過去の地震によるずれが地形や地層に累積していることがあります。その痕跡を調べることで、過去に何回動いたか、どの程度の間隔で活動したかを推定します。
ただし、地表に明瞭な断層地形が見えないからといって、地下に地震を起こす断層がないとは限りません。厚い堆積物に覆われた伏在断層など、地表から確認しにくい断層もあります。
断層の長さや面積によって起こせる地震規模が変わる
断層には短いものから非常に長いものまであります。
一般に、地震で動く断層面積が大きく、すべり量が大きいほど、地震モーメントも大きくなります。そのため、長く広い断層ほど大規模な地震を起こせる可能性があります。
しかし、地表で確認できる断層の長さだけを見れば地震規模が完全に決まるわけではありません。地下で断層がどこまで連続しているか、複数の断層区間が一緒に動くか、断層面がどの角度で地下へ伸びているかによって実際の破壊面積は変わります。
さらに、断層型によって同じ地表長さでも地下の断層面積が異なることがあります。J-STAGE掲載の研究では、日本の内陸地震について、横ずれ型・逆断層型・正断層型の違いを考慮すると、断層長さと地震規模の関係に差が現れることが検討されています。
断層の傾きが違うと地表への現れ方も変わる
断層面が水平面に対してどれだけ傾いているかを傾斜角といいます。
横ずれ断層は比較的急な角度で立っていることが多く、逆断層や正断層は斜めに傾いていることが多くあります。
傾斜角が違うと、同じ深さまで断層が伸びていても地下の面積や地表に現れる位置が変わります。また、逆断層では上盤側の広い範囲が持ち上がる変形が起こる場合があります。
そのため、地表の断層線だけでは地下の断層面全体を直接見ることはできません。地震波、余震分布、地殻変動、地質調査などを組み合わせて地下の形を推定します。
発震機構解だけでは断層面を一意に決められない
地震がどのような断層運動で起こったかは、P波の最初の動きなどから発震機構解として求めることができます。
気象庁は、発震機構解によって正断層型・逆断層型・横ずれ断層型などを判断できると説明しています。
ただし、一つの発震機構解からは、数学的に二つの候補面が得られます。そのため、どちらが実際に滑った断層面なのかを決めるには、余震の並び方、既知の活断層、地殻変動など別の情報が必要です。
この点からも、断層の「違い」は単純な地表観察だけで決めるものではなく、地下の立体構造と動きを総合的に判断して理解する必要があります。
断層の摩擦や岩石の性質でも滑りやすさが変わる
断層面は完全になめらかな面ではありません。岩石の凹凸や破砕物があり、両側の岩盤は強く押し付けられています。
そのため、同じ大きさの力がかかっていても、断層面の摩擦や岩石の性質によって滑りやすさは変わります。
硬く強く固着している部分では長期間ひずみをためてから大きく滑ることがあります。一方、比較的弱い部分では小さな地震を繰り返したり、地震を起こさずゆっくり滑ったりすることがあります。
断層の性質は場所によって一様ではないため、一枚の断層の中でも大きく滑る部分と滑りにくい部分が存在することがあります。
同じ断層でも地震ごとに動く範囲が違う
一つの活断層帯が、毎回まったく同じ範囲で同じ量だけ動くとは限りません。
ある地震では一つの区間だけが破壊し、別の地震では隣接する区間まで連動することがあります。また、断層面上のすべり量も均一ではありません。
そのため、「この断層では前回M7だったから次回も必ず同じ規模」とは言えません。過去の活動履歴は重要な手掛かりですが、実際の破壊範囲には不確実性があります。
この違いを調べるため、活断層調査では地形・地質調査、トレンチ調査、地震探査、過去の地震記録などを組み合わせます。
断層の違いは揺れ方にも影響する
断層型が違うと、地震波の放射のしかたや断層面の向きも変わります。
J-STAGE掲載の日本の地殻内地震に関する研究では、逆断層型と横ずれ断層型で短周期地震動の強さに統計的な違いが見られることが報告されています。
もちろん、実際の揺れは断層型だけでなく、地震規模、震源距離、地盤、破壊方向など多くの条件によって決まります。それでも、断層の動き方は地震動を左右する重要な要素の一つです。
まとめ
地震の断層に場所や条件による違いがあるのは、地下の応力、温度、深さ、プレートとの位置関係、断層の長さ・傾き・摩擦などが一様ではないからです。
引張の場では正断層、圧縮の場では逆断層、横方向のせん断が強い場所では横ずれ断層が起こりやすくなります。日本国内でも応力場が異なるため、西日本では横ずれ型、北日本では逆断層型が多いという地域差があります。
また、高温になると岩石はゆっくり変形しやすくなるため、地震性断層が動ける深さにも地域差があります。プレート境界か内陸か、断層面がどの程度傾いているか、どのくらい長く連続しているかによっても、地震の規模や揺れ方は変わります。
つまり断層の違いは、「どの方向から力がかかるか」「どの深さ・温度にあるか」「どのような形と摩擦特性を持つか」という条件の組み合わせで生まれます。
参考資料
- 地震調査研究推進本部「正断層・逆断層・横ずれ断層」
- 気象庁「発震機構解と断層面」
- U.S. Geological Survey「What is a fault and what are the different types?」
- 内陸地殻内地震のずれのタイプを考慮した地震規模評価手法の検討

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