なぜ既存の岩石は高温・高圧で変成岩になるのか?

結論からいうと、変成岩は、もともと存在していた火成岩・堆積岩・変成岩などが、地下で高い温度や圧力、流体の作用を受け、完全には溶けないまま鉱物の種類や並び方、岩石の組織を変えることで成り立つ岩石です。

つまり変成岩は、新しい材料からゼロからできるのではなく、すでにある岩石が地下環境に合わせて「作り替えられた」ものです。たとえば石灰岩が再結晶すると大理石になり、泥岩などが強い熱や圧力を受けると、ホルンフェルスや片岩、片麻岩などへ変化することがあります。

目次

変成岩とは、既存の岩石が固体のまま変化した岩石

産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)は、変成岩のもとになるのは既にある岩石であり、それらが新たに高い温度や圧力を受ける「変成作用」によって変成岩がつくられると説明しています。

このとき大切なのは、岩石が完全に溶けてマグマになるわけではないことです。USGS(米国地質調査所)も、変成作用では岩石が溶融せず、高温・高圧・高温の鉱物質流体などによって元の岩石が大きく変化すると説明しています。

もし温度が高くなりすぎて岩石が溶ければ、その後に冷えてできるのは火成岩です。したがって変成岩は、「溶ける手前までの条件で、固体のまま内部が変化した岩石」と考えるとわかりやすいでしょう。

変成岩ができるまでの基本的な流れ

変成岩ができる仕組みは、次のように整理できます。

  1. 火成岩・堆積岩・既存の変成岩など、もとの岩石が地下へ移動する。
  2. 地下で温度が上がったり、大きな圧力を受けたりする。
  3. 鉱物がその環境で安定な種類へ変わったり、再結晶したりする。
  4. 圧力の向きによって鉱物が一定方向に並ぶことがある。
  5. 新しい鉱物組み合わせや組織をもつ変成岩になる。

この変化は、短時間で一気に起こるものではありません。多くの場合、地下深くで非常に長い時間をかけて進みます。

高温になるとなぜ鉱物が変わるのか

岩石をつくる鉱物には、それぞれ安定して存在できる温度・圧力の範囲があります。地下へ深く入り温度が上がると、地表で安定だった鉱物の組み合わせが不安定になり、その条件でより安定な鉱物へ変化します。

たとえば、もとの岩石中にある小さな鉱物粒が成長して大きな結晶になったり、別の鉱物へ組み替わったりします。このような変化を再結晶や変成反応と呼びます。

石灰岩が変成作用を受けると、方解石の結晶が大きく再結晶し、大理石(結晶質石灰岩)になることがあります。GSJも、大理石を「石灰岩が再結晶して粗粒になった岩石」と説明しています。

圧力は岩石の組織をどう変えるのか

変成作用では、温度だけでなく圧力も重要です。特に、ある方向から強く押されるような差応力が加わると、板状や柱状の鉱物が特定の方向に並びやすくなります。

その結果、岩石の中に平行な面や帯状の構造ができます。このような構造を片理や片麻状組織などと呼びます。

USGSも、変成岩では圧力によって鉱物が一定方向に並び、層状・帯状に見える「foliation(片理)」が発達することがあると説明しています。

たとえば雲母などの板状鉱物が多い岩石では、圧力に対して一定方向へ並びやすいため、薄い板のようにはがれやすい片岩状の組織が生まれることがあります。

変成岩には片理があるものとないものがある

すべての変成岩にしま模様や片理があるわけではありません。

鉱物が強く方向性をもって並ぶと、片岩や片麻岩のような片理のある変成岩になります。一方、圧力の方向性が弱かったり、もとの岩石が方解石や石英など比較的等方的な鉱物を主体としていたりすると、片理が目立たない変成岩になることがあります。

大理石や珪岩(石英岩)は、代表的な非片理状変成岩です。大理石では方解石、珪岩では石英が再結晶し、粒同士が強くかみ合った組織になります。

接触変成作用は、マグマの熱で起こる

変成作用の一つが接触変成作用です。これは、地下に上昇してきた高温のマグマが周囲の岩石を加熱することで起こります。

この場合、主な原因は熱です。マグマの周辺ほど高温になりやすく、そこにある岩石の鉱物が再結晶したり、新しい鉱物ができたりします。

GSJは、主に強い熱を受けてできた変成岩を熱変成岩、または接触変成岩と呼んでいます。泥岩がマグマの熱を受けて緻密になったホルンフェルスは、その代表例です。

接触変成では、広い範囲に強い方向性の圧力が加わるとは限らないため、片理が発達しにくい場合があります。

広域変成作用は、熱と圧力が広い範囲で働く

山脈形成やプレート同士の衝突・沈み込みなど、大規模な地殻変動に伴って起こるのが広域変成作用です。

この場合、岩石は広い範囲で地下深くへ押し込まれ、高温と高圧を同時に受けます。そのため、新しい鉱物ができるだけでなく、圧力の向きに応じて鉱物が並び、片理や片麻状組織が発達しやすくなります。

J-STAGEに掲載された田川変成岩類の研究でも、泥質〜砂質片岩や角閃岩に鉱物の定向配列が見られ、高温低圧型の広域変成作用を受けたことが示されています。これは、岩石の組織が過去の温度・圧力条件を記録している例です。

動力変成作用は、断層周辺の強い変形で起こる

断層が動く場所では、岩石同士が強くこすれたり押しつぶされたりします。このような強い変形・破砕を主な原因とする変成作用を動力変成作用と呼びます。

GSJは、断層活動に伴って周辺の岩石が変形・破砕されてできたものを動力変成岩としています。

断層付近では、岩石が細かく砕かれるだけでなく、条件によっては粒子が再結晶し、強く引き延ばされたような組織を示すこともあります。

流体も変成作用を進める

変成岩をつくるのは熱と圧力だけではありません。地下を移動する高温の水や鉱物成分を含む流体も、変成作用に重要な役割を果たします。

流体が岩石の割れ目や鉱物粒の間を通ると、化学成分を運び、鉱物反応を進めることがあります。その結果、もとの岩石にはなかった鉱物ができたり、鉱物組成が変わったりします。

USGSも、変成岩は高温・高圧だけでなく、高温で鉱物に富む流体の作用によっても形成されると説明しています。

なぜ温度と圧力が違うと別の変成岩になるのか

同じ種類の岩石でも、受けた温度と圧力が違えば、できる鉱物の組み合わせが変わります。

地質学では、温度・圧力条件ごとに特徴的な鉱物組み合わせを示す領域を変成相として整理します。たとえば、低温高圧の条件と高温低圧の条件では、安定する鉱物が異なります。

そのため、変成岩に含まれる鉱物を調べると、その岩石が過去にどのくらいの温度・圧力を経験したかを推定できます。

実際に日本の変成帯の研究でも、ざくろ石、角閃石、黒雲母、斜長石などの組み合わせを用いて、過去の温度・圧力条件が推定されています。

「原岩」が違えば、同じ条件でもできる変成岩は違う

変成岩の種類を決めるのは温度・圧力だけではありません。もとの岩石、つまり原岩の化学組成も重要です。

たとえば、石灰岩が変成すれば大理石になりやすく、石英を多く含む砂岩が変成すれば珪岩になりやすくなります。泥岩や頁岩は、変成の程度に応じて粘板岩、千枚岩、片岩、片麻岩などへ変化する場合があります。

つまり、同じ温度・圧力条件でも、原岩が違えばできる鉱物の組み合わせや岩石の見た目も変わります。

変成度が高くなるとどう変わるのか

変成作用の強さを表す考え方に変成度があります。一般に、より高い温度・圧力条件を経験するほど、岩石内部の再結晶が進み、より高温・高圧で安定な鉱物が現れます。

たとえば泥質岩では、比較的低い変成度では細かな鉱物をもつ粘板岩ができ、変成度が高まると千枚岩、結晶片岩、片麻岩のように、鉱物粒が大きくなり、組織も明瞭になることがあります。

ただし、実際の変化は原岩の種類や圧力条件、流体の有無によって異なるため、必ず同じ順序になるわけではありません。

変成岩はプレートテクトニクスの記録でもある

変成岩は、その岩石が地下で受けた温度・圧力条件を記録しています。そのため、プレートがどのように動き、岩石がどの深さまで運ばれ、どのように地表へ戻ったのかを考える重要な手がかりになります。

特に沈み込み帯では、比較的低温のまま高い圧力を受ける変成作用が起こることがあります。一方、火成活動が活発な地域では、比較的高温の変成作用が起こることがあります。

変成岩に含まれる鉱物やその配列、鉱物の化学組成を調べることで、過去の地殻変動やプレート運動を読み解くことができます。

まとめ

変成岩は、すでに存在していた岩石が、地下で高温・高圧・流体の作用を受け、溶け切らないまま鉱物や組織を変えることで成り立ちます。

熱によって鉱物が再結晶し、圧力によって鉱物が一定方向に並び、流体によって化学反応が進むことがあります。マグマの熱で起こる接触変成、広い範囲で熱と圧力を受ける広域変成、断層周辺で強く変形する動力変成など、変成作用にはいくつかのタイプがあります。

また、どの変成岩になるかは温度・圧力だけでなく、もとの岩石である原岩の組成にも左右されます。変成岩は、地球内部で起きた熱・圧力・プレート運動の履歴を残した「地球内部の記録」といえる岩石です。

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参考資料

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