結論からいうと、岩石の色に場所や条件による違いがあるのは、含まれる鉱物の種類や割合、鉄などの元素の酸化状態、風化や熱水変質の進み方、形成時の環境、そして地表からの深さが場所ごとに異なるからです。
同じ「岩石」でも、地下深くの新鮮な部分と地表近くの風化した部分では色が違うことがあります。火成岩では、有色鉱物が多いか少ないかで明るさが変わりやすく、堆積岩では酸素の多い環境で鉄が酸化すると赤色や褐色が強くなることがあります。火山や温泉地帯では熱水変質によって白っぽく変わる岩石もあります。
つまり岩石の色は、単なる見た目ではなく、「何でできているか」と「どんな場所・条件を経験したか」の両方を反映した特徴です。
まず、岩石の色は鉱物の種類と割合で変わる
岩石は、複数の鉱物が集まってできていることが多く、それぞれの鉱物には固有の色や光の吸収特性があります。
産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)は、流紋岩や花こう岩では石英や長石などの無色〜白っぽい鉱物が多く、玄武岩やはんれい岩では輝石・角閃石・かんらん石などの暗色鉱物が多いと説明しています。
そのため、石英や長石を多く含む岩石は白色・灰色・淡いピンクなど比較的明るく見えやすく、鉄やマグネシウムに富む暗色鉱物を多く含む岩石は黒色・暗灰色・暗緑色に見えやすくなります。
同じ地域でも、マグマの組成が違えばできる鉱物の割合が変わるため、隣り合う火成岩でも色が違うことがあります。
火成岩では、マグマの組成の違いが色の地域差をつくる
火成岩はマグマが冷えてできる岩石ですが、マグマの化学組成は場所によって同じではありません。
一般に、ケイ酸に富むマグマからできる流紋岩や花こう岩では、石英・長石などの明色鉱物が多くなりやすくなります。一方、鉄やマグネシウムに比較的富む玄武岩質マグマからは、輝石・かんらん石などの暗色鉱物が多い岩石ができます。
GSJの火成岩分類でも、有色鉱物の割合が増えるにつれて、岩石全体の色調が明色から暗色へ移ることが示されています。
そのため、火山地域ごとのマグマ組成の違いは、火成岩の色の違いとして目に見えて表れることがあります。
同じ種類の岩石でも色が違うことがある
岩石名が同じでも、すべてが同じ色になるとは限りません。
たとえば花こう岩でも、カリ長石が多いものは淡いピンク色を帯びることがあり、黒雲母や角閃石が多ければ暗い斑点が増えます。玄武岩でも、風化や気泡、変質の程度によって黒色・灰色・褐色などに見えることがあります。
つまり岩石名は一定の組成範囲や組織を表す分類であり、色を一つに固定する名称ではありません。
その地域のマグマや原岩の組成が少し違うだけでも、構成鉱物の割合が変わり、見た目の色は変化します。
地表に近いほど風化で黄褐色・赤褐色になることがある
岩石が地表に露出すると、雨水・酸素・二酸化炭素・温度変化などの影響を受けて風化します。
とくに鉄を含む鉱物は、酸素や水と反応すると鉄酸化物や鉄水酸化物へ変化し、岩石の色を黄色・黄褐色・赤褐色へ変えることがあります。
島根半島西部の泥質岩を調べた研究では、風化が進むにつれて黄鉄鉱や緑泥石が変質し、鉄の水酸化物または酸化物が生じることが、岩石の色と硬さの変化に対応していました。
つまり、地表に近い風化帯と地下の新鮮岩では、もともと同じ岩石でも色が違うことがあります。
同じ場所でも「表面」と「内部」で色が違うのはなぜ?
岩石の表面は空気や水に直接触れるため、内部よりも早く風化します。
そのため、露頭では外側が黄褐色や赤褐色なのに、ハンマーで割ると内部から灰色や黒色の新鮮な岩石が現れることがあります。
山形県白鷹火山周辺のボーリングコアを使った研究では、岩石の色彩値は深度によって変化し、地下浅部ほど風化による黄褐色化が強く、深部では色彩値が一定に近づくことが示されています。
これは、地表から供給される酸素や水が、地下へ進むほど影響しにくくなるためです。
鉄の酸化状態で赤・黄・灰色などが変わる
岩石中の鉄は、どのような化学状態で存在するかによって色への影響が変わります。
USGSは、赤い岩石の色には鉄酸化物、とくにヘマタイトが関係することが多いと説明しています。酸素にさらされた堆積物では鉄が酸化し、赤褐色が残ることがあります。
一方、酸素が少ない環境では鉄の化学状態が異なり、灰色・緑灰色・黒色などになる場合があります。
このため、堆積岩の色は、その岩石が堆積したときや埋没後に、酸素が多い環境だったか少ない環境だったかを考える手がかりになることがあります。
赤い砂岩が多い地域にはどんな条件があるのか
赤色砂岩では、砂粒そのものがすべて赤いとは限りません。
砂粒の表面をヘマタイトなどの鉄酸化物が薄く覆うことで、岩石全体が赤く見えることがあります。
USGSは、米国南西部の赤色砂岩の多くで、鉄と酸素からなる鉱物が赤色の原因になっていると説明しています。また、赤色堆積岩は、堆積物が埋没前または埋没初期に酸素へさらされていた可能性を示す場合があります。
ただし、赤色だけで「乾燥地でできた」と断定することはできません。河川や湖など別の環境で形成された赤色岩もあるため、地層構造や化石、粒子など他の証拠と合わせて判断します。
熱水変質が起こる場所では白色・黄白色などに変わることがある
火山地域や地熱地域では、高温の熱水や火山ガスが岩石中を通り、もとの鉱物を分解したり、新しい鉱物をつくったりします。これを熱水変質といいます。
GSJの薩摩硫黄島の資料では、強酸性の熱水によって原岩が強く変質し、白色の珪化岩が形成されている例が紹介されています。
このような場所では、もとの安山岩・流紋岩などの色が残らず、白色・灰白色・黄白色などの変質帯へ変わることがあります。
つまり、同じ火山地域でも、熱水が強く通った場所と通らなかった場所では、岩石の色が大きく違うことがあります。
熱水変質では「赤褐色」と「白色」が隣り合うこともある
熱水変質では、流体の温度、酸性度、酸素の状態、含まれる元素によってできる鉱物が変わります。
鉄を含む変質鉱物が酸化すれば赤褐色〜黄褐色になり、鉄が溶脱して石英や粘土鉱物が主体になると白っぽくなることがあります。
山形県白鷹火山周辺の研究では、黄褐色化をもたらす常温風化の酸化作用と、赤褐色化をもたらす熱水変質などの高温酸化作用を、岩石色彩値と鉄鉱物の違いから区別できるとしています。
したがって、火山地域の露頭に白・黄・赤・褐色が入り混じって見える場合、それぞれが異なる変質条件を経験した可能性があります。
堆積岩では、堆積した環境の違いが色に表れる
堆積岩の色は、材料となった粒子だけでなく、堆積時の酸素量、有機物量、水深、地下水の化学状態などにも影響されます。
酸素が多い場所では鉄が酸化しやすく、赤色・褐色を帯びやすくなります。反対に、酸素が少なく有機物が多い環境では、黒色や暗灰色になることがあります。
そのため、湖底、湿地、深海、河川、砂漠など、堆積環境の違いによって堆積岩の色が変わる場合があります。
ただし、埋没後の地下水や風化で色が変わることもあるため、現在の色がそのまま形成時の色とは限りません。
有機物が多い岩石は暗色になりやすい
泥岩や頁岩の中には、黒色〜暗灰色のものがあります。
こうした色には、細かな炭質物や有機物が関係している場合があります。酸素が少ない水底では有機物が分解されにくく、堆積物中に残りやすくなります。
その結果、同じ泥質岩でも、酸化的な環境では褐色・赤色系、還元的な環境では灰色・黒色系といった違いが現れることがあります。
ただし、黒色の原因には硫化鉱物や火山性物質など別の要因もあるため、色だけで原因を決めることはできません。
変成作用でも岩石の色は変わる
地下深くで岩石が高温・高圧を受けると、鉱物が再結晶したり、新しい鉱物ができたりします。
たとえば、緑泥石・角閃石・蛇紋石など緑色系の鉱物が多い岩石は緑色を帯びることがあります。ざくろ石や黒雲母などの量が増えれば、赤褐色の斑点や暗色部分が増えることもあります。
つまり変成帯では、温度・圧力条件と原岩の組成が場所ごとに違うことで、含まれる鉱物が変わり、岩石の色にも地域差が生まれます。
粒の大きさや組織でも「見える色」は変わる
岩石の色は、鉱物の種類だけでなく、粒の大きさや並び方にも影響されます。
花こう岩のように結晶が大きい岩石では、白い長石、灰色の石英、黒い黒雲母などを別々に見分けやすくなります。
一方、玄武岩のように結晶が非常に細かい岩石では、個々の鉱物を肉眼で区別しにくく、全体として均一な暗色に見えやすくなります。
また、火山ガラスを多く含む岩石では、結晶質の岩石とは異なる光の反射や透過を示すため、黒曜石のような独特の黒色・褐色になることがあります。
同じ露頭でも場所によって色がまだらになる理由
岩体の中では、水や熱水が通りやすい亀裂、空隙、断層などに沿って変質が進みやすくなります。
そのため、岩体全体が一様に変色するのではなく、亀裂の周囲だけ赤褐色になる、石英脈の近くが白色化する、表面だけ黄色くなる、といったまだら模様ができます。
同じ岩石でも、流体と接触した時間や量が違えば、変質の程度も変わります。
つまり、色の分布を見ることで、水や熱水がどこを通ったかを推定できる場合があります。
岩石の色だけで種類や環境を断定できない
岩石の色は便利な手がかりですが、色だけで岩石名や形成環境を決めるのは危険です。
たとえば赤褐色は鉄酸化物によることが多いものの、常温の風化でも熱水変質でも生じます。白色も石英・長石が多い場合、強い珪化変質を受けた場合、石灰岩の場合など複数の原因があります。
そのため地質学では、色に加えて鉱物組成、粒径、結晶組織、硬さ、地層、化石、化学組成などを合わせて判断します。
色は「答え」ではなく、その岩石の履歴を調べるための入口として使うのが適切です。
場所ごとの色の違いから何がわかるのか
岩石の色の分布を比べると、次のような情報を考える手がかりになります。
- 鉱物組成の違い:明色鉱物・暗色鉱物の割合を推定できます。
- 風化の深さ:地表側の黄褐色化と地下の新鮮岩の違いを追えます。
- 酸化・還元状態:赤色・灰色・黒色などから鉄や有機物の状態を考えられます。
- 熱水変質:白色化・赤褐色化などの分布から流体の通り道を推定できる場合があります。
- 形成環境:火成岩ではマグマ組成、堆積岩では堆積環境を考える補助情報になります。
ただし、これらはあくまで複数の証拠の一つです。色だけで決めず、岩石の他の特徴と組み合わせて読み解く必要があります。
まとめ
岩石の色に場所や条件による違いがあるのは、鉱物の種類と割合、鉄の酸化状態、風化・熱水変質、堆積環境、変成作用、地表からの深さなどが場所ごとに違うからです。
火成岩では、石英・長石などの明色鉱物が多い岩石は明るく、輝石・角閃石・かんらん石などの暗色鉱物が多い岩石は暗く見えやすくなります。地表では鉄鉱物の酸化によって黄褐色や赤褐色になりやすく、地下の新鮮な部分では元の灰色や黒色が残ることがあります。
さらに、火山や地熱地域では熱水変質によって白色化や赤褐色化が起こり、堆積岩では酸化・還元環境や有機物量の違いが色に表れることがあります。
つまり岩石の色は、岩石の材料と、その岩石がどの場所でどのような水・酸素・熱・圧力の条件を経験したかが重なって生まれる特徴なのです。

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