結論からいうと、雲の氷晶は、雲の中の水蒸気が氷の表面に付着したり、氷点下でも液体のまま存在する過冷却水滴が凍結したりすることで生まれ、成長します。 そのきっかけには、ちりや鉱物粒子などの微小な粒子が「核」として働くことがあります。
重要なのは、「気温が0℃を下回った瞬間に雲の水滴がすべて凍るわけではない」という点です。実際の雲の中では、0℃未満でも液体の水滴が存在することがあり、そこに氷晶が共存します。氷晶は周囲の水蒸気を取り込みながら成長し、雪の結晶やあられなどの降水粒子につながっていきます。
氷晶とは雲の中にある小さな氷の結晶
氷晶とは、大気中に浮かぶ非常に小さな氷の結晶です。雲は水滴だけでできているとは限らず、気温の低い部分では水滴と氷晶が混在したり、主に氷晶で構成されたりします。
たとえば高い空にできる巻雲は、低温のため主に氷晶からできています。また発達した積乱雲の上部にも多数の氷晶が存在します。気象庁は、発達した積乱雲では細かな氷晶とあられが雲の中に存在し、それらの衝突が雷の発生にも関係すると説明しています。
つまり氷晶は、単に「凍った水滴」というだけではありません。雲の種類、雪や雨の形成、雷などにも深く関わる、雲の重要な構成要素です。
なぜ0℃未満でも水滴のまま存在できるのか
水は0℃で凍ると習いますが、大気中の非常に小さな水滴は、0℃を下回ってもすぐには凍らないことがあります。この状態を過冷却といいます。
液体の水が氷になるには、水分子が規則正しい氷の結晶構造をつくり始めるきっかけが必要です。雲粒のような微小な水滴では、そのきっかけがないまま冷却され、氷点下でも液体の状態を保つことがあります。
Met Officeも、0℃未満でも凍らず液体のまま存在する雲粒を過冷却水滴として説明しています。つまり「氷点下の雲=全部が氷」というわけではなく、実際の雲の中では液体の水と氷が同時に存在することがあるのです。
氷晶が生まれるきっかけは「核」と低い温度
氷晶ができるには、水分子が氷の結晶として並び始める必要があります。そのきっかけの一つになるのが、大気中に浮かぶ微小な粒子です。
気象庁は、雪ができるときには、ちりやほこりなどを核として大気中の水蒸気が氷の結晶になると説明しています。このように氷の形成を助ける微粒子は、一般に氷晶核などと呼ばれます。
雲の中には、土壌由来の鉱物粒子、ちり、微生物由来の粒子などさまざまなエアロゾルが存在します。そのうち氷を作りやすい性質を持つ粒子があると、過冷却水滴の凍結や水蒸気からの氷の形成が起こりやすくなります。
一方、十分に低温になると、特定の核がなくても微小な水滴が凍結しやすくなります。つまり氷晶形成には、温度と水分量、そして核となる粒子の有無が関係しています。
氷晶はどのように大きくなるのか
できたばかりの氷晶は非常に小さく、そのままでは地上まで落ちる雪にはなりません。雲の中でさらに成長する必要があります。
代表的なのは、周囲の水蒸気が氷晶の表面に直接付着していく成長です。気象庁は、氷の結晶にさらに水蒸気が凍って付着することで雪の結晶が成長すると説明しています。
特に水滴と氷晶が共存する冷たい雲では、氷晶が成長しやすい条件が生まれます。NOAAは、冷たい雲で水滴と氷晶が共存すると、水蒸気が液体の水滴より氷晶へ移りやすくなり、氷晶が水滴を犠牲にする形で成長する「氷晶過程」が起こると説明しています。
このため、雲の中に少数の氷晶が生まれると、それが水蒸気を取り込みながら次第に大きくなり、降水粒子へ発達していくことがあります。
過冷却水滴が氷晶に付着すると「あられ」に近づく
氷晶が成長する方法は、水蒸気が付着するだけではありません。氷晶や雪の結晶が過冷却水滴と衝突すると、その水滴が表面で瞬時に凍りつくことがあります。
この過程が繰り返されると、氷の粒はより大きく、丸みを帯びた粒へ成長します。気象庁は、細かな氷の粒のまわりに過冷却水滴が凍りついて成長し、積乱雲の強い上昇気流で支えきれなくなったものがひょうとして落下する場合があると説明しています。
つまり雲の中では、「水蒸気が氷晶へ付く」「過冷却水滴が氷晶へ凍りつく」「氷の粒どうしが衝突する」といった複数の成長過程が同時に進んでいます。
なぜ氷晶は雲の中に浮いていられるのか
氷は空気より重いので、氷晶が雲の中に浮いているのは不思議に感じるかもしれません。しかし、できたばかりの氷晶は非常に小さく、落下速度も小さいため、雲の中の上昇気流や乱流の影響を強く受けます。
発達中の積雲や積乱雲では、上昇気流によって水滴や氷晶が上空へ運ばれます。粒が小さい間は空気の流れに乗って浮遊できますが、成長して重くなると落下速度が増し、やがて上昇気流では支えきれなくなります。
そのため、氷晶が降水になるかどうかは「氷であるか」だけでなく、粒の大きさ、形、上昇気流の強さなどにも左右されます。
氷晶から雪になるまでの流れ
雲の中で氷晶が十分に成長すると、雪の結晶になります。さらに結晶どうしがぶつかって付着すると、より大きな雪片になることもあります。
雪が地上まで落ちる途中の空気が十分に冷たければ、そのまま雪として降ります。一方、途中に0℃より高い層があれば雪の結晶は融け始め、すべて融ければ雨になります。
気象庁も、上空でできた雪の結晶が地上へ落ちる途中で融ければ雨となり、融けずに到達すれば雪になると説明しています。
つまり、地上で雨が降っている場合でも、その雨粒が上空では氷晶や雪の結晶だった可能性があります。日本のような中緯度地域では、上空の冷たい雲で氷晶過程を経てできた降水粒子が、落下中に融けて雨になるケースも一般的です。
氷晶の形がさまざまなのはなぜか
雪の結晶には板状、柱状、針状、樹枝状などさまざまな形があります。これは、氷晶が成長する温度や湿度によって、結晶のどの方向が成長しやすいかが変わるためです。
氷は六角形を基本とする結晶構造を持っています。そのため雪の結晶にも六角形を基礎とした形が多く見られますが、実際の形は雲の中を移動する間に経験した温度と水蒸気量によって変化します。
同じ雲の中でも高度が違えば温度や湿度が違うため、氷晶は成長しながら形を変えることがあります。雪の結晶の形は、その結晶が雲の中でどのような環境を通ってきたかを反映しているのです。
巻雲が白く細い筋に見えるのも氷晶が関係する
高い空に現れる巻雲は、主に氷晶からできています。高高度では気温が低いため、雲粒が液体より氷として存在しやすいからです。
巻雲の氷晶は上空の風に流され、落下しながら少しずつ位置を変えます。そのため、雲全体が細い筋や羽毛のように見えます。
一方、低い空の層雲などは主に水滴でできることが多く、巻雲とは見た目も性質も異なります。雲の高度と温度によって、水滴主体か氷晶主体かが変わることが、雲の形の違いにもつながっています。
氷晶は雷にも関係する
発達した積乱雲では、氷晶は降水だけでなく雷の発生にも関係します。
気象庁によると、積乱雲の中では細かな氷晶とあられなどが衝突するときに電荷が分離し、雲の中にプラスとマイナスの電荷が偏って分布するようになります。電位差が十分に大きくなると放電が起こり、雷になります。
つまり積乱雲の中で氷晶が生まれることは、単に雪や雨の材料が増えるというだけでなく、雲の電気的な性質にも関係します。
氷晶が増えると雲が消えることもある
過冷却水滴を多く含む雲の一部で氷晶が生まれると、その周囲の水蒸気が氷晶へ集まりやすくなり、水滴側は蒸発しやすくなることがあります。
気象庁は「穴あき雲」の例として、氷点下でも凍っていない水滴からなる雲の中で氷晶が発生すると、氷晶が周囲の水分を取り込んで成長・落下し、その部分の雲が消えて円形の穴ができる場合があると説明しています。
Met Officeも、過冷却水滴からなる雲で一部が凍結すると、成長した氷晶が落下し、雲に穴が開いたような形になるfallstreak holeを紹介しています。
この現象は、液体の雲粒と氷晶が同じ雲の中で互いに影響し合っていることを目に見える形で示しています。
雲の氷晶ができる仕組みを順番に整理すると
- 湿った空気が上昇するなどして冷える
- 水蒸気が凝結し、雲粒ができる
- 雲の一部が0℃未満になっても、過冷却水滴として液体のまま残る場合がある
- 低温と氷晶核などをきっかけに氷晶が生まれる
- 水蒸気が氷晶へ付着し、結晶が成長する
- 過冷却水滴の付着や氷粒どうしの衝突によってさらに大きくなることがある
- 十分に大きくなると雪、あられ、ひょうなどとして落下する
- 落下中に融ければ雨になる場合もある
この流れは雲の温度、湿度、上昇気流、氷晶核の量などによって変わります。同じ氷点下の雲でも、氷晶が多い雲もあれば、過冷却水滴を多く含む雲もあります。
よくある誤解:氷点下なら雲は全部凍っているわけではない
雲と氷晶について最も誤解されやすいのは、「0℃未満の雲はすべて氷晶でできている」という考え方です。
実際には、氷点下でも水滴は過冷却状態で存在できます。そのため、冷たい雲の中では水滴だけの領域、氷晶だけの領域、水滴と氷晶が混在する領域が生じます。
この「液体と氷の共存」があるからこそ、氷晶が急速に成長したり、あられができたり、雷に関係する電荷分離が起きたりします。雲の氷晶の仕組みを理解するには、0℃という温度だけでなく、雲の中で水がどの状態にあるかを見ることが大切です。
まとめ
- 氷晶は雲の中に浮かぶ非常に小さな氷の結晶
- 0℃未満でも液体のままの過冷却水滴が雲の中に存在することがある
- ちりなどの微粒子が核となり、氷晶形成を助けることがある
- できた氷晶は水蒸気の付着によって成長する
- 過冷却水滴が凍りつくことで、あられやひょうへ成長する場合もある
- 氷晶が十分に大きくなると雪として落下し、途中で融ければ雨になる
- 積乱雲では氷晶とあられなどの衝突が雷の電荷分離にも関係する
- 氷晶の発生によって周囲の雲粒が減り、穴あき雲ができる場合もある
「なぜ雲の氷晶はどのような仕組みで成り立つのか?」への最も簡単な答えは、冷たい雲の中で、水蒸気や過冷却水滴が低温と微粒子をきっかけに氷へ変わり、その氷晶が水蒸気や水滴を取り込みながら成長することで成り立っているからです。雲の氷晶は、雪や雨だけでなく、あられ、ひょう、雷など多くの気象現象につながる重要な存在です。

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