結論からいうと、雲の雲量は、季節や環境によって水蒸気の量、空気の上昇・下降、海と陸の温まり方、季節風、前線、地形などが変わるため、多くなったり少なくなったりします。
雲量は、空のどのくらいが雲で覆われているかを表す量です。同じ場所でも一年中一定ではなく、梅雨には雲が増え、冬の日本海側でも曇天が多くなります。一方、冬の太平洋側では乾いた季節風の影響で晴れやすい日が増えます。
つまり、雲量の季節変化は「気温が高いか低いか」だけでは決まりません。水蒸気がどれだけ供給され、空気がどこで上昇し、どこで下降しているかという大気の流れが重要です。
雲量とは何を表しているのか
雲量は、観測地点から見た空のうち、雲が覆っている割合を表します。Met Officeでは、全雲量を雲の種類や高さにかかわらず空の何割が雲に覆われているかという量として扱い、8分比のoktaで観測しています。
雲量は「雲の個数」ではありません。小さな積雲がたくさんあっても空の一部しか覆わなければ雲量は小さく、一枚の層雲が空全体を覆えば雲量は大きくなります。
そのため、季節や環境による雲量の変化を考えるときは、「雲が何個できるか」よりも「雲がどれだけ広い面積を覆うか」を見る必要があります。
雲量を変える基本条件は水蒸気と空気の上下運動
雲は、水蒸気を含んだ空気が冷えて飽和し、水滴や氷晶ができることで形成されます。そのため、雲量が増えるには、広い範囲で十分な水蒸気があり、空気を冷やす仕組みが必要です。
代表的なのが上昇気流です。空気が上昇すると、周囲の気圧が低くなるため膨張して冷え、雲ができやすくなります。反対に、空気が下降すると圧縮されて暖まり、相対湿度が下がるため、雲は消えやすくなります。
NASAの全球観測でも、赤道付近の熱帯収束帯では貿易風が集まり、暖かく湿った空気が上昇するため、雲が多い帯が形成されます。一方、下降流の多い亜熱帯域では雲の少ない地域が広がります。
梅雨に雲量が増えるのはなぜか
日本で雲量の季節変化がわかりやすい時期の一つが梅雨です。
梅雨前線付近では、暖かく湿った空気と比較的冷たい空気が接し、広い範囲で空気が持ち上げられます。さらに南から水蒸気が継続して供給されるため、層状の雲や対流雲が広範囲に発生します。
このため、短時間だけ積雲が出る晴天日とは違い、空の大部分を雲が覆う時間が長くなり、平均雲量も大きくなります。
福岡管区気象台の平年値解説でも、福岡では梅雨の時期に旬平均雲量のピークが見られるとされています。
秋雨や台風の時期にも雲量が増えやすい
秋になると、秋雨前線や台風の影響で暖かく湿った空気が日本付近へ流れ込みやすくなります。
前線では広い範囲で上昇気流が生まれ、台風では中心へ向かって流れ込む大量の暖湿気が上昇して雲をつくります。そのため、秋にも雲量が増える時期があります。
福岡の雲量平年値では、梅雨だけでなく秋雨・台風の時期にもピークが現れています。このことからも、雲量の季節変化は日射量だけでなく、前線や熱帯低気圧による大規模な空気の流れに左右されることがわかります。
冬の日本海側で雲量が多くなるのはなぜか
冬型の気圧配置になると、大陸から冷たく乾いた空気が日本海へ吹き出します。
この空気は比較的暖かい日本海の上を通る間に、海面から熱と水蒸気を受け取ります。下層が暖められて湿ると大気が不安定になり、対流雲が次々と発生します。
そのため、日本海側では冬に雲量が多くなりやすく、雪や雨を伴う日も増えます。
気象庁の福岡・宮崎・金沢の比較では、日本海側の金沢は冬に雲量が多く、福岡も冬に曇天が増えて日本海側に近い季節変化を示します。
冬の太平洋側では雲量が少なくなりやすい
日本海側で雲をつくった空気が山地を越えると、太平洋側では下降します。下降する空気は圧縮されて暖まり、相対湿度が下がるため、雲は消えやすくなります。
そのため、冬の太平洋側では晴天が多くなり、平均雲量が日本海側より小さくなる地域があります。
福岡管区気象台の解説でも、典型的な太平洋側の宮崎では冬の雲量が少なく、日本海側の金沢と明瞭な違いが見られます。
この地域差は、季節風と日本列島の山地が組み合わさって生じています。
海の上は陸より平均的に雲が多い
NASAのMODIS衛星観測では、地球全体で見ると海上の雲量は陸上より平均的に多い傾向があります。
海は大気へ水蒸気を供給する大きな源で、海面から蒸発した水蒸気が雲の材料になります。また、海上では低い層雲や層積雲が広く持続する地域があります。
NASAの観測では、平均的な雲の割合は陸上がおよそ55%、海上がおよそ72%とされ、陸上のほうが季節変化が大きく、海上では変化が比較的小さいと報告されています。
ただし、すべての海で雲が多いわけではありません。亜熱帯高気圧の下降流が強い海域では雲が少ない場所もあります。
陸上では季節と昼夜で雲量が変わりやすい
陸地は海より速く暖まり、速く冷えます。そのため、地表加熱による対流の強さも季節や時間帯によって大きく変わります。
夏の晴れた陸上では、昼に地面が強く暖められ、午後に積雲が増えることがあります。さらに大気が不安定で湿度が高ければ、積乱雲へ発達して一時的に雲量が大きくなることがあります。
夜になると地表加熱が弱まり、熱対流だけで維持されていた積雲は減りやすくなります。
NASAの全球観測でも、陸上では午後に雲がやや増え、海上では午後にやや減る傾向が報告されています。雲量の日変化にも海陸差が表れます。
赤道付近の雲の帯も季節で移動する
世界規模で見ると、雲量の季節変化は大気大循環の移動にも関係します。
NASAは、赤道付近に広がる熱帯収束帯の雲の帯が、季節に合わせて南北へ少し移動すると説明しています。
熱帯収束帯では、北半球と南半球の貿易風が集まり、暖かく湿った空気が上昇します。そのため雲と雨が多くなります。この帯が季節移動すると、熱帯地域では雨季と乾季が入れ替わります。
つまり、熱帯の雲量の季節変化は「夏と冬」というより、熱帯収束帯がその地域の上空へ近づくか離れるかによって決まります。
水蒸気が多いだけでは雲量は決まらない
一般に湿った場所では雲ができやすいですが、「水蒸気が多い=必ず雲量が大きい」とは限りません。
NASAの雲量と水蒸気の比較では、熱帯は湿度も雲量も大きい一方、南大洋は水蒸気量がそれほど多くないのに雲量が大きい地域として示されています。
これは、雲形成が水蒸気量だけでなく気温にも左右されるためです。冷たい空気は少ない水蒸気量でも飽和しやすく、雲をつくりやすくなります。
したがって、雲量を見るときは、水蒸気の量と「どれだけ冷えやすいか」を一緒に考える必要があります。
山地では風上側と風下側で雲量が変わる
湿った風が山にぶつかると、空気は斜面に沿って上昇します。上昇した空気が冷えると雲ができるため、山の風上側では雲量が増えやすくなります。
一方、山を越えた空気は風下側で下降し、暖まります。すると相対湿度が下がり、雲が消えやすくなります。
このため、同じ地域でも山の両側で雲量が違うことがあります。冬の日本海側と太平洋側の差も、大きく見るとこの地形効果を含んでいます。
高気圧でも雲量が多い日があるのはなぜか
高気圧では下降気流が起こりやすいため、一般に雲量は小さくなりやすい傾向があります。しかし、高気圧なら必ず快晴になるわけではありません。
下層に湿った空気がたまり、その上に逆転層があると、空気は上へ大きく発達できない一方、低い層雲や層積雲が横に広がることがあります。
また、高気圧の縁では海から湿った空気が流れ込む場合があります。そのため、気圧配置だけでなく、下層の湿度と安定度を見る必要があります。
同じ雲量でも雲の種類は季節によって違う
雲量が同じでも、空を覆っている雲の種類まで同じとは限りません。
梅雨では層状の雲や乱層雲が広く空を覆うことがあり、夏の午後は積雲・積乱雲が局地的に増えます。冬の日本海側では対流雲や筋状雲が広がり、沿岸の冷たい海域では低い層雲・層積雲が多くなる場合があります。
つまり、雲量は「空を覆う割合」を表す指標であり、雲の高さ・厚さ・降水の強さまでは直接示していません。
観測方法によって雲量の表し方にも違いがある
地上観測では、人が空全体を見て雲量を判断する方法があります。Met Officeでは有人観測所の全雲量をoktaで報告しています。
一方、衛星では地球表面を細かい区画に分け、その区画のどれだけが雲で覆われているかをcloud fractionとして求めます。NASAのMODISでは、この方法で全球の月平均雲量分布を観測しています。
地上から見上げた雲量と、衛星から見下ろした雲の割合は観測方法が違うため、数値を直接同じものとして扱うことはできません。ただし、地域差や季節変化を見るうえでは、どちらも重要な情報です。
季節や環境による雲量の変化を整理すると
- 梅雨:前線に沿って暖湿気が上昇し、広い範囲で雲量が増える
- 秋雨・台風期:暖湿気と上昇流が増え、雲量が大きくなりやすい
- 冬の日本海側:寒気が日本海から熱と水蒸気を受け、対流雲が増える
- 冬の太平洋側:山越え後の下降流で雲が減り、晴れやすい
- 海上:平均的には陸上より雲が多く、季節変化は比較的小さい
- 夏の陸上:昼の地表加熱で午後に積雲が増えることがある
- 熱帯収束帯:雲の帯が季節移動し、雨季・乾季の雲量差をつくる
- 山の風上側:地形上昇で雲量が増えやすい
- 下降流の強い地域:空気が暖まり、雲量が小さくなりやすい
まとめ
「なぜ雲の雲量は季節や環境によって変化するのか?」への最も簡単な答えは、雲をつくる水蒸気の量と、空気を上昇・下降させる大気の流れが、季節・海陸・地形・前線・気圧配置によって変わるからです。
日本では梅雨・秋雨に広い雲域が増え、冬は日本海側で雲量が多く、太平洋側で少なくなりやすいという地域差があります。世界では熱帯収束帯が季節移動し、海上と陸上でも平均的な雲量や季節変化の大きさが異なります。
雲量は単なる「曇り具合」ではなく、水蒸気・気温・上昇流・下降流・地形など、その季節の大気環境を反映した指標なのです。
参考資料
- 福岡管区気象台「天気のはなし」
- NASA Science「Cloud Fraction」
- NASA Science「Cloud Fraction & Water Vapor Comparison」
- Met Office「How we measure cloud」

コメント