なぜ気温が高めの雪は水分を多く含む重い湿雪になりやすいのか?

同じ雪でも、さらさらした軽い雪もあれば、握ると固まりやすく、樹木や電線にべったり付く重い雪もあります。後者は「湿った雪」「湿り雪」などと呼ばれます。

結論からいうと、気温が0℃に近い比較的暖かい環境では、雪の結晶や雪片の一部が融けて液体の水を含みやすくなり、その水が雪粒同士を結びつけるため、密度が高く重く、付着しやすい湿雪になりやすいからです。

目次

湿雪とは「水分を多く含む雪」

気象庁は「湿り雪」を含水率の大きい雪とし、大きな雪片となりやすく、着雪の被害を起こしやすいと説明しています。予報では「湿った(重い)雪」などの分かりやすい表現が使われます。

つまり湿雪は雪とは別の現象ではなく、雪の中でも液体の水を多く含んだ状態です。

気温が0℃に近いと雪の一部が融けやすい

十分に寒いとき、雪の結晶はほとんど氷のまま保たれます。しかし気温が0℃に近づくと、落下中や地上に積もった後に雪の表面が融けやすくなります。

雪が完全に融ければ雨になりますが、全部が融け切る前なら、氷の結晶や雪粒の間に液体の水が残ります。この「氷と液体の水が混じった状態」が、湿った重い雪につながります。

水があると雪粒同士がくっつきやすくなる

乾いた雪では結晶同士の結びつきが弱く、粒がばらばらになりやすいのに対し、湿った雪では表面の水が接着剤のような役割をします。

そのため複数の結晶がまとまりやすく、大きな雪片になったり、握ると雪玉のように固まりやすくなったりします。気象庁も、比較的暖かく湿った空気のときにはぼたん雪となり、重い雪になりやすいと説明しています。

同じ深さでも湿雪のほうが重くなりやすい

雪の重さは、積雪の深さだけでは決まりません。雪の密度が高いほど、同じ体積の中に多くの水分と氷が含まれます。

米国NWSは雪の密度を「単位体積あたりの雪の質量」と定義しています。湿った雪は乾いた粉雪より空気のすき間が少なく、水分を多く含みやすいため、同じ深さでも重くなりやすいのです。

雨を吸うとさらに重くなることがある

積もった雪にその後雨が降ると、雪の中に液体の水が入り込み、さらに重くなることがあります。

気象庁は2014年2月の関東地方の大雪について、比較的気温が高いときの雪は水分を多く含む「湿った重い雪」になりやすく、その後雨を吸ってシャーベット状になったことで重さが増し、車庫やビニールハウスなどの倒壊被害につながったと説明しています。

湿雪はなぜ電線や樹木に付着しやすいのか

湿った雪は表面に水分があるため、電線、樹木、建物などに触れたときに付着しやすくなります。気象庁は、湿った雪が電線や樹木などに付く現象を「着雪」と呼んでいます。

付着した雪が増えると、その重みで枝が折れたり、電線や設備に負荷がかかったりすることがあります。そのため、湿雪は積雪深がそれほど大きくなくても、重さによる被害に注意が必要です。

粉雪との違いは水分量と密度

なぜ寒く乾いたときは軽い粉雪になりやすいのか?では、低温・乾燥条件で液体の水が少なく、空気のすき間が多い低密度の雪になる理由を解説しています。

湿雪はその反対に、比較的暖かい条件で水分を多く含みやすく、粒同士がくっついて密度が高くなりやすい雪です。ただし実際の雪質は連続的に変わるため、粉雪と湿雪の間に明確な一本の境界線があるわけではありません。

湿度も関係するが、湿雪は「湿度が高い雪」という意味ではない

「湿雪」という名前から、空気の湿度だけで決まると思われがちですが、湿雪で重要なのは雪そのものが液体の水を多く含んでいることです。

もちろん周囲の湿度は雪片の成長や融け方に影響しますが、湿度が高いだけで必ず湿雪になるわけではありません。雪片の温度、地上付近の気温、降水の強さ、落下中の温度分布などが組み合わさって決まります。

雪と湿度の関係については、なぜ湿度は雪の結晶の育ち方や降り方に影響するのか?で詳しく解説しています。

湿雪は積雪深の増え方にも影響する

湿雪は密度が高いため、同じ水分量でも軽い粉雪より見かけの深さは小さくなりやすい傾向があります。また、重い雪は自重で沈み込みやすく、時間とともに積雪深が変化します。

そのため、降った雪の量と地面に残る積雪の深さは一致しません。詳しくは、なぜ同じ量の雪が降っても積雪の深さは同じにならないのか?で扱っています。

気温が高めでも必ず湿雪になるわけではない

湿雪になりやすさは地上気温だけでは決まりません。上空から地上までの温度分布、湿度、雪片の大きさ、降水の強さ、風なども影響します。

また、気温が高くなりすぎれば雪は完全に融けて雨になります。湿雪は、雪として残れるほどには寒い一方で、一部が融けるほどには0℃に近いという条件で生じやすい雪と考えると分かりやすいでしょう。

まとめ

気温が高めのときに水分を多く含む重い湿雪になりやすいのは、雪の一部が融けて液体の水を含みやすくなるためです。その水が雪粒同士を結びつけ、雪をまとまりやすく、密度の高い状態にします。

その結果、湿雪は同じ深さでも重くなりやすく、電線や樹木に付着しやすくなります。さらに雨を吸えば、シャーベット状になって重さが増すこともあります。

ただし、湿雪になるかどうかは気温だけで決まるわけではありません。湿度や上空の気温、降水の強さなども関係するため、「0℃に近い比較的暖かい雪ほど、水分を含んだ重い雪になりやすい」という傾向として理解することが大切です。

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参考資料

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